かなり普及してきたとはいえ、ドローンはまだまだ新しい存在です。
当然、その操縦を教えるドローンスクールも設立してからさほど年数が経っていないということが一般的。
そんな中、既に11年前にはドローンの開発・製作を行い、機体購入者に対し講習も行っていたというのがMAC-FACTORYです。
今回は、ドローンの黎明期から、さらにはドローン以前の固定翼機やヘリコプター時代から無人航空機に深く関わってきたMAC-FACTORY代表の伊尾木様にお話を伺いました。
目次
MAC-FACTORYはこんなスクール!
スクール名称 |
MAC-FACTORY |
設立時期 |
2008年1月 |
開講コース |
▶︎農薬散布ドローン購入者向け講習 ※国家資格取得プランも近日開講予定 |
国家資格取得コースの対応範囲 |
・1等資格および2等資格の両方に対応 |
——本日はどうぞよろしくお願いいたします。
早速お伺いするのですが、MAC-FACTORYは「教えることを専門としているドローンスクール」ではないのでしょうか?公式ウェブサイトで事業内容紹介を拝見したところ、ドローンの「設計、製作、販売」とあったので……。
はい、教えることを専門としているドローンスクールではありません。
講習も行っていますが、機体の販売や開発・製作も行います。
実際、うちでドローンを買っていただく方には必ず講習を受けてもらっているので、それが現在行っている講習の主流ですね。
ただ、国家資格取得プランを近々開講予定なので、今後はスクール事業の比率が上がっていくかと思います。
欲しいドローンは自分で作っていたドローン黎明期
——機体の開発・製作というのは?
たとえば農薬散布用のドローンというものが存在しなかった頃には、自ら開発・製作していました。空撮目的なら空撮用に。そういったのです。
今はもう各用途別に特化した完成品が手に入る時代ですから、一から開発するということはなくなり、中国のドローンを日本仕様に改良するとか、新しい回路やプログラムを組み込むとかですね。
それから、うちの場合は自動飛行に力を入れているので、アプリケーションの開発もします。
——ドローンを飛ばすだけでなく開発するところからですか!
思い描くようなドローンが世の中にない以上、自分で作るほかありませんでしたから。
そもそもドローンというもの自体がまだほとんど知られていなかったような頃には、特許を取得したりもしていましたね。
——特許ですか?
はい、「ラインドローン」です。商標登録もしています。
ロープウェイのように細いロープを利用してドローンをまっすぐに飛ばす、墜落リスクも計画航路を逸脱する恐れもない安全飛行システムですね。
たとえば、東京ドームでは上空からの撮影は原則禁止されているのですが、ラインドローンを使ってコンサート会場を撮影したことがあります。ラインドローンなら安全だということを証明して許可を得たんです。
あとは、そうですね、壁面近くを飛ばさなくてはならない高層ビルの点検にも、壁面に近づきすぎてぶつかる危険性のないラインドローンが重宝がられたり……。
——なんだか発明家のようですね!
もともと飛行機とかヘリコプターとかジェットエンジンとか、特殊なラジコン飛行機を趣味で作っていたんですよ、私。
とはいえ、今ドローンっていうとどちらかというとお仕事用ですが、当時はあくまでお遊びの世界であるラジコンの延長線上だったので、ドローンを面白いと思えなかった私はラジコン飛行機ひと筋でしたが……。
「農薬をドローンで散布する」というアイデア
——ドローンに興味を持てなかった伊尾木様がドローンに関わるようになったきっかけは何だったのですか?
13年くらい前の話になりますが、既にドローンは世にあったものの、その頃のドローンはすぐに飛ばせる形では売っていなくて、自分で組み立ててセッティングもしないといけなかったんです。
それで私がラジコン飛行機を作っていると顧客から「作ってほしい」とよく頼まれていました。
でも、簡単に作れるわけではなく、作ろうと思えば勉強だってしなくてはいけないのでいつも断っていたんですが、あるとき個性強めの知り合いから「これ、買ってしまったから、やってくれ」と……(笑)
仕方がないから作ってあげたんですよ。それこそひと月ほどもかけて。
そのとき「せっかく勉強したのにそのまま終わらせるのもなんだかもったいない」と思ったのがきっかけですね。何か他のことに利用できないかなと思い始めて。
それで、そうだ!農薬散布に使えるドローンなんていいんじゃないだろうか、と。
——ドローンで農薬散布という発想は当時画期的だったのでは?
そうですね。ただ、私としてはまったくの白紙からというわけではありませんでした。
実はちょうどその頃、GPS機能を搭載してホバリングもできるようなヘリコプターを農薬散布用に開発して、実際に製作していたんです。
そのヘリコプターがたまたま農業雑誌に掲載されたのですが、反響がとにかく大きかった。欲しがる人がいっぱい出たんですね。
でも、操縦が難しい上にパーツが数百個ほどもあるヘリコプターを操縦経験のない人が扱えば、細かい部品の破損が人身事故につながるリスクがあり、そう考えると一般に販売しようとはなかなか思えませんでした。
そういった背景があったので、もう少し操縦が容易で、欠けたり壊れたりすれば墜落につながるパーツの数もヘリコプターに比べずっと少ないドローンならいけるんじゃないかと考えたわけです。
——それが現在のドローン事業につながるわけですね。
はい。
ただ、当時ドローンを作っている会社は国内では見つかりませんでした。
中国にはあるとわかったのですが、農薬散布用のドローンとなると中国でも見つけられませんでした。
だからパートナーとなる企業を中国で探して、共同開発を始めました。それが11年前のことで、今に至ります。
——今でこそ普及している農薬散布ドローンですが、まさかその先駆者のお話を伺えるとは思ってもみませんでした……!開発にはやはりご苦労があったのでしょうか?
テスト飛行では墜落もいっぱいしましたが、もともとヘリコプターをやっていましたし、そういった面で苦労したという記憶はありません。
ただし、開発にお金はかかりましたね。当時はモーターのスペックが今みたいに良くなかったんで、特注モーターを指示を入れて数十個単位で何度か製作しました。
長年飛ばし続けてきたからこそ知っている安全性の大切さ
——ところで、実用的なドローンとしてたとえば空撮用ドローンもありますが、なぜ農薬散布用を選んだのですか?
北は北海道、南は九州と全国から空撮用ドローン製作の依頼がしょっちゅう舞い込んでいたので、空撮用ドローンも作っていました。
また、空撮がこの先流行るだろうということも想像できていました。
ですが、空撮は高所を飛ばすので墜落したときの損害が大きい。
一方、農薬散布だと低いところを飛ばしますし、落ちたところで作物の上なので人身事故にはなりにくい。だからそっち方面に力を入れたいなと考えました。
それに、農薬散布ドローンを売り出してみたらユーザーがすごく喜んでくれるんですよ。作業性がいいし体が楽で、安くはないけどそれだけの価値があると。
——リスクを考えるとヘリコプターは売りにくいというお話でも感じたのですが、ラジコン飛行機を作ったり飛ばしたりしてきた方がそういった安全面を非常に気にされるというのはなんだか意外です。
安全性重視の姿勢は、むしろラジコン飛行機を飛ばしていたからこそです。
空を飛ぶ物体が落ちるというのは大変危険なことで、間違えた考え方で飛ばせばリスクは極めて高くなります。
そこのところを軽く受け止めて、周囲に迷惑をかけてしまっている例は結構あるのではないかと思いますね。
——MAC-FACTORYでは機体販売と講習はセットというお話でしたが、それも安全性重視の姿勢が理由なのですね。
はい、そうです。
ドローンを飛ばすこと自体にもリスクがあるし、しかも農薬は劇物ですから、ただ適当にドローンを飛ばして農薬を撒けばいいという考えではあまりに危険です。
安全に、迷惑をかけないように飛ばす責任があるということを伝える必要があるので、うちの講習を受けていただかない限りは販売をしておりません。
——長年ドローンに携わってきた方のそうしたブレない姿勢は、ドローンが急速に普及しつつある今日だからこそとても大切だと感じます。
「講師はドローン界のパイオニア」という稀有なスクール
——ところで、ドローンスクールを選ぶに当たっては講師の経歴やスキルも重要な検討要素になってくるかと思います。伊尾木様の実力はよくわかりましたが、他の講師の方はどういったご経歴の持ち主なのでしょうか?
かなり昔から、それこそドローン以前のヘリコプターの頃から教えてきたいわば教え子たちが国家資格取得プランでの指導員を務めます。
教え子といっても、今ではテレビ番組、PVなどの空撮といった分野で大活躍している人たちですよ。
首都圏から離れた群馬県みなかみ町で個人事業レベルで小さくやっていますので、たくさんの講師を雇ったりはしていませんが、その代わりにそうしたパートナーたちとの強固な横のつながりをフルに活かしています。
みなかみ町の弊社では国家資格取得に対応する講習を4月から行なっていく予定ですが、実は茨城県、栃木県、宮城県、そして高知県でも弊社傘下のスクールを6月頃に開校する予定で動いています。
こうした各地での展開も、横のつながりがあればこそです。
——開講を控えた国家資格取得プランでは、必要な講習内容が国交省によって規定されている中で、どういった点を意識した講習を実施していくご予定でしょうか?
趣味で飛ばす方は別として、ドローンを飛ばすこと自体に満足していても意味がなく、効果がやはり重要です。
ですから、ドローンを飛ばして何をしたいのかを踏まえ、受講生の方の最終目的を高いレベルで達成できるような講習としたいと考えています。
たとえば空撮をするなら観る人の目を奪うような動画を撮れるだけの技量を身につけるべきですし、農薬散布の場合も作物の種類によって異なる飛ばし方ができないといけない。
そのように飛行の原理は同じでも用途によって学ぶべき内容はまったく異なってくるのですが、うちは空撮機も農薬散布機も存在していなかった頃からやっているので、その辺りの精度が抜群に高いと思います。
国家資格取得プランの中だけではお伝えしきれない部分については、オプションとして提供していこうかなとも検討中です。
——開講コースの中には「ドローン組み立てフライト講習会」というのもありますが、これも初期の頃のドローンは組み立てが必要だったことが活きているということでしょうか。
そうですね。
とはいっても、ドローンの機構面での基礎知識というか、そういうのに興味ある人には教えますよというもので、ビジネスになるかと言われたら正直ならないんですけどね(笑)
まあマニア向けです。
提携宿泊施設は温泉旅館!
——みなかみ町というと水上温泉ですね。首都圏からは距離があるので泊まりがけで受講する形になりそうです。
遠方からお越しいただくのは心苦しいのですが、ドローンを飛ばす敷地に困らない環境も首都圏にはない良さかと思います。
ただドローンを飛ばすというだけでなく、こういうことを知りたい聞きたいというのが明確にある方はぜひいらしてください。
黎明期より培ってきたものすべてを動員して精一杯お応えしていきます。
提携している宿泊施設もあります。土地柄、ビジネスホテルではなく温泉旅館ですが、安くていいところをご紹介しますよ!
——ちょっと豪勢な免許合宿といった気分を味わえそうですね……!
本日は貴重なお話をありがとうございました。
MAC-FACTORYについてもっと詳しくお知りになりたい方、問合せ先情報をご覧になりたい方は、こちらをご参照ください。
さいごに
競合他社がほとんどいなかった時代から続くMAC-FACTORYは、宣伝広告活動をほとんどしてこなかったにもかかわらず、長くドローンを飛ばしているという方には結構知られているようです。
その一方で、最近になってドローンに興味を持ち始めたという方にはあまり知られておらず、お話を伺った伊尾木様も「『なんだこのインチキくさいところ』と思われてしまうのでは?(笑)」とコメントされていました。
ですが、ドローンというものが世に出始めた頃からずっと続いているドローンスクールはそうあるものではなく、それは価値あることといえるでしょう。
おそらくどのスクールにも負けない長い経歴と、それに由来する知識や対応範囲の広さはMAC-FACTORYの大きな強みです。
- 単なるドローン操縦にとどまらない活用スキルを徹底的に身につけたい
- 表面的なことだけでなくドローンの真髄を学びたい
- エンジニアリングの見地からもドローンに興味がある
といった方は、ぜひMAC-FACTORYでの受講をご検討になってはいかがでしょうか。
コメント