2022年12月5日から国家資格となったドローン操縦士のライセンス。その取得を目指す講習に多くのドローンユーザーが関心を寄せていますが、実際に受講してみないとわからないことは多いですよね。
- 講習はどんな感じで進められていくの?
- やっぱり難しい?それとも意外と簡単?
- 通い始めてから「こうしておけばよかった!」と後悔しそうなことは?
- 修了審査対策はどういったところがポイントになる?
このドローン情報メディア「ドローンナビゲーター」を運営し、読者の皆さんにドローン関連情報をお伝えする立場にある者として、国家資格講習を受けて資格を取っておくべきなのでは?————そう考え、2023年4月に受講してきました!
国家資格には一等資格と二等資格とがあり、ドローンスクールでの講習もそれぞれに対応したコースが設けられていますが、「どうせ取るなら一等でしょ!」と意気込んだ私が受講したのは一等資格講習。
とはいえ一等資格講習と二等資格講習の内容は共通している部分も多いですし、二等の場合はどうかについても言及していますので、二等資格講習の受講をご検討中の方のご参考にもなるかと思います。
講習の内容はもちろん、実際に受講してみて気づいたこと、感じたこと、さらには受講前には想定していなかった展開についても、ドローンメディア運営に携わる者として、余すところなくお伝えしていきたいと思います。
国家資格講習のリアルがてんこ盛りの体当たりレポートをぜひご一読ください!
目次
まずはスクール選び。その際基準にしたこと
私が講習に通ったのは、千葉県八千代市にあるDRONE★VILLAGEさんです。
国家資格講習を受けるに当たり「どこのスクールで?」というのは大事ですよね。
私もあれこれ迷いましたが、最終的に以下の4つを基準にして選びました。
- 一等資格講習を開講している(←当たり前)
- せっかく学ぶからにはみっちり教えてくれそうなところ
- 無理なく通えるロケーション
- できれば受講料が手頃だとありがたい
一等資格講習を開講している
基準というよりは前提条件ですが、スクールを探していた3月下旬は一等資格講習の提供を開始するスクールがやっとちらほら出始めていたくらいの頃。そもそも一等資格講習を受けられるスクールというのがごく限られていました。
他の条件で絞り込んでも「一等資格講習を受けられるか」のところで結局空振りということの繰り返しになる可能性大だったので、はじめに一等資格講習を開講済みのスクールをピックアップして、その中から選ぶという手順で進めました。
ちなみに実際に受講した4月上旬の時点でも、一等資格講習を行っているスクールはまだ少ないようでした。
せっかく学ぶからにはみっちり教えてくれそうなところ
これは人それぞれ考え方次第かもしれませんが、私としては同じ受講するなら操縦技術をしっかりと身につけたいと思っていたし、そのためにちゃんと努力するつもりでした。
そんな私にとり、実際にテレビドラマやCM向けの空撮事業を行っていて、その現場で活躍している方が講師としてマンツーマンで教えてくれるDRONE★VILLAGEさんは魅力的な受講環境だと感じられました。
いつも空撮のお仕事でドローンを操縦している人が講習をしてくれるなら、その内容は実践的なものとなるはずですから。
また、実は当メディアでは過去に同スクール様を取材しており(取材記事)、そのときに「本格的な実力派スクール」といった印象を受けていたことも決め手となりました。
無理なく通えるロケーション
何日か通う以上は遠過ぎるスクールはNG、そこそこ通いやすい立地にあることも大切だと考えました。
千葉県八千代市にあるDRONE★VILLAGEさんは、東京23区東部の自宅から電車+バスで片道1時間半程度の距離で、まあ許容範囲内だろうと判断しました。
(※後述しますが、結果的に講習期間終了後も通うことになる可能性もあるので、やはりあまりに通いづらい場所にあるスクールは避けたほうが無難かと思います)
できれば受講料が手頃だとありがたい
受講料はスクールによって金額が結構違うので、できるだけ安いほうが助かるのはもちろんです。
DRONE★VILLAGEさんの受講料は他校に比べ抑えめで、40〜50万円程度かかることが一般的な一等資格講習(経験者対象コース)の受講料が30万円前後(2023年4月当時。本記事執筆時点では385,000円ですが、それでも他校に比べるとお手頃なほうかと思います)。
しかもオプション扱いということが多い目視外飛行と夜間飛行の限定変更*も含んでいるので、かなりお得感がありました。
(*限定変更:「目視内飛行(機体を直接見ながらの飛行)しかできない」という限定を解除することで目視外飛行が可能になり、「日中しか飛行させられない」という限定を解除することで夜間飛行が可能になる。そうした限定条件を解除するための追加的な技能証明のことを限定変更と呼ぶ)
受講前に済ませた公的手続き
DRONE★VILLAGEさんに問い合わせてみると、幸いにも4月上旬に空きがあるとのことだったので、早速申し込みました。
国家資格取得が関係してくるため、スクールと受講生の間で受講契約が成立すればよいだけではなく、国土交通省への詳細情報の登録手続きが必要となってきます。
具体的には次の2つで、どちらもオンラインでの手続きです。
一連の手順の中で2つまとめて行います。
技能証明申請者番号の取得
国土交通省が運営するDIPS2.0(ドローン情報基盤システム2.0)で「技能証明申請者番号」を取得しました。
登録講習機関(国土交通省に登録されているスクール。国家資格講習を行えるのは登録講習機関に限られる)での受講申請に際して必要なだけでなく、学科試験の受験申請の際にも必要な番号です。
詳しい取得申請手順については、こちらのマニュアルをご参照ください。
登録講習機関コードの登録
各登録講習機関には「登録講習機関コード」が付与されているので、技能証明申請者番号取得手続きを進める途中で、DRONE★VILLAGEさんの同コードもDIPS上で登録しました。
受講予定のスクールの登録講習機関コードはこちらの一覧でも確認可能ですが、スクールからの受講申込受付確認メール中にも記載されていることが多いと思います。
DRONE★VILLAGEさんからのメールにも記載されていました。
なお、入力・登録したコードは後から変更可能なので、「もう登録しちゃったから受講するスクールを変えられない」ということはありません。最終決定前にとりあえずで登録しても大丈夫です。
一等・二等資格講習(経験者コース)で学ぶ内容
1年半ほど前に民間資格(JUIDA)を取得している私は、一等資格講習の経験者コースを受講しました。
国家資格の取得を目指す講習であるため、必修科目が国土交通省により定められており、講習はそれに沿って進められます。この点はどのスクールでも同じです。
スクールごとに変わってくるのはこれらの必修科目をどのように教えるか、どのような講師陣か、どういった環境で練習させるかといった点になります。
【一等および二等資格講習(経験者コース)の実地講習の必修科目】
※初学者コースは、それぞれの経験者コースの内容を内包し、講習時間もより長くなります。
(夜間/目視外を含めた場合、一等講習は最低58時間、二等講習は最低13時間)
講習方法 |
講習科目 |
講習時間数 |
履修有無 |
||
---|---|---|---|---|---|
一等 |
二等 |
一等 |
二等 |
||
講義または演習 |
1 飛行計画、リスク評価結果及び飛行環境の確認 |
基本:10h |
基本:2h |
◯ |
◯ |
2 運航体制、手順、役割分担当の管理の確認 |
◯ |
— |
|||
講義、演習または実習 |
3 機体の状況、操縦モード、バッテリーの確認 |
◯ |
◯ |
||
4 フェールセーフ機能の適切な設定、飛行経路の設定、自動飛行の設定 |
◯ |
◯ |
|||
実習 |
5 基本操縦(手動) |
◯ |
◯ |
||
6 基本操縦(自動) |
△(*2) |
△(*2) |
|||
7 基本操縦以外の機体操作 |
◯ |
△(*2) |
|||
8 様々な運航形態への対応 |
◯ |
◯ |
|||
講義、演習または実習 |
9 安全に関わる操作 |
◯ |
◯ |
||
10 緊急時の対応 |
◯ |
◯ |
|||
講義または演習 |
11 飛行後の記録、報告 |
◯ |
◯ |
*1:飛行機型、ヘリコプター型の場合のみ履修。ただしDRONE★VILLAGEの講習はマルチコプターが対象のため非実施
*2:目視外飛行のための限定変更がある場合のみ履修
【一等および二等資格(経験者コース)の学科講習の必修科目】
※初学者コースは、それぞれの経験者コースの内容を内包し、講習時間もより長くなります。
(夜間/目視外を含めた場合、一等講習は最低18時間、二等講習は最低10時間)
講習科目(章は教則に同じ) |
講習内容 |
講習時間数 |
|
---|---|---|---|
一等 |
二等 |
||
2章 無人航空操縦者の心得 |
—— |
1h |
1h |
3章 無人航空機に関する規則 |
1 航空法全般 |
||
2 航空法以外の法令等 |
|||
4章 無人航空機のシステム |
1 無人航空機の機体の特徴(種類及び飛行の方法) |
2h |
1.5h |
2 飛行原理と飛行性能 |
|||
3 機体の構成 |
|||
4 機体以外の要素技術 |
|||
5 機体の整備・点検・保管・交換・廃棄 |
|||
5章 無人航空機の操縦者及び運航体制 |
1 操縦者の行動規範及び遵守事項 |
4h |
1h |
2 操縦者に求められる操縦知識 |
|||
3 操縦者のパフォーマンス |
|||
4 安全な運航のための意思決定体制 |
|||
6章 運航上のリスク管理 |
1 運航リスクの評価及び最適な運航計画の立案の基礎 |
2h |
0.5h |
2 気象の基礎知識、気象情報を基にしたリスク評価及び運航計画の立案 |
|||
3 機体の種類に応じた運航リスクの評価及び最適な運航計画の立案 |
|||
4 飛行の方法に応じた運航リスクの評価及び最適な運航計画の立案 |
|||
合計受講時間数 |
9h |
4h |
一等資格講習(経験者コース)の具体的な内容と進行
ここからは、私の受講した一等資格講習(経験者コース)のおおまかな流れや様子を時系列でお伝えしていきたいと思います。
(毎日朝10時から夜8時まで、4日間の講習で習ったのは、飛行方法だけでも細かいものまで含めると30種類ほどあり、すべてはとても書ききれないため、主だったもののみ)
なお、学科講習は国土交通省による「無人航空機の飛行の安全に関する教則」に記載された内容の講義ですので詳述はせず、ここでは主に実地講習の進行と具体的な内容をご紹介します。
講習0日目(開始前)
受講申込み完了後にスクールから届いた確認メールには、一等資格は難易度が高い旨の記載がありました。
《受講前にスクールより送られてきたメールから抜粋》
一等経験の合格率は現在6〜7割程度です。
民間資格受講時や実務経験を通してATTIモードの操縦経験がおありかと思いますが、
難易度は非常に高いですので、受講までに練習をお勧め致します。
(※ATTIモードとは、一般にAモードと呼ばれる、GPSや各種センサーのほとんどを無効にした飛行モードのことで、一等資格取得にはAモードでの操縦スキルが必須)
1年半ほど前に民間資格(JUIDA)を取得しているとはいっても、取得後はドローンに一切触っていなかった私はいわばペーパー操縦士。ちょっと不安になり、事前練習としてトイドローンを購入して家の中で飛ばすことにしました。
家で飛ばすとなるとトイドローンしかないですし、GPSや高性能センサーが搭載されていないトイドローンはAモードに近い感覚で飛ばせるのでAモードでの操縦の練習にも使えると聞いたからです。
《私が買ったトイドローンとそれを選んだ理由》
私が練習用に購入したのはHoly Stoneというメーカーの「HS420」。
これを選んだ理由は次の3つです。
- Holy Stoneというそれなりに知られたメーカーのわりと新しい製品であること
- 機体本体だけでなくバッテリー3個や収納ケースもついて8千円台という手頃な価格
- 実際に同機を使ってAモードを練習している動画をYouTubeで観た
実際に飛ばしてみて、Aモード飛行の練習に十分役立つものだったと思うので、私と同じようにペーパー操縦士なのでAモードを練習しておきたいという方は、この機種を選んでおけば問題ないでしょう。
ちなみに有名どころでいうと他にTelloも検討したのですが、予備バッテリーなどを揃えると一式で2万5千円くらいかかってしまうことがわかり、予算オーバーで断念。
(バッテリー1個で3分前後しか飛ばせないため、予備バッテリーなしで練習するというのは現実的ではありません)
あくまで事前練習用の機体なので、リーズナブルであることが少なくとも私にとっては重要でしたが、予算に余裕のある方であればTelloもおすすめできるかと思います。
(ただし予備バッテリーは付属していないため、別途購入する必要あり)
機体下方のビジョンセンサーをテープで覆って効かなくした上で飛ばすという練習方法やその様子もYouTubeで紹介されています。
講習1日目
購入したトイドローンでの事前練習時間は結局合計で1〜2時間ほどでしたが、民間資格取得者として一定の操縦経験はあるのですから、腕慣らしにはそのくらいで十分と考えていました。
むしろ、ちゃんと事前練習までしてきたという事実が自信となって、意気揚々と講習初日を迎えた私。
しかし、その考えは甘かったことをその後思い知ることになります……。
受講環境
最寄りのバス停から1分ほど歩いてスクールの近くまで来ると、受付のある建物のすぐ脇に練習エリアがあるのが見えますが、これは敷地のごく一部。
建物の奥にはかなり広い練習エリアが広がっています。
座学を行う教室、屋内練習場、屋外練習場が1ヶ所に集まっていて、しかも特に屋外練習場については他所ではなかなか見かけないくらいに広々としていて、恵まれた練習環境です。
飛行前点検・設定
講習がスタートしてまず最初に行ったのが飛行前点検および設定です。
プロペラに損傷がないか、バッテリーが十分に充電されているか等の確認、プロポ(コントローラー)の操作モードや最大高度等の設定を、初日だけでなく講習期間中は毎日ドローンを飛ばす前に実施することになります。
民間資格の講習のときよりも細かく、アプリの詳細な設定や、機体の各箇所のチェックが必要な理由まで、2時間くらいかけて丁寧に教えてもらいました。
細かく具体的に教えてもらえたので、「現場で機体を取り出したら、どこをどう点検するか」のリアルな感覚が身についたように感じました。こういうのが本で読むだけというのとは違う、対面の講習ならではの良さですよね!
《修了審査までにそらでできるようになっておく必要あり》
講習時の点検ではリストを見ながらでもOKですが、修了審査(指定試験機関での実地試験に代わる講習終了時の審査)では何も見ずに行わなくてはならないため、手順をしっかり覚えないといけません。
Pモードでスクエア飛行
点検が終わったら早速ドローンを飛ばします。
一等資格の実技試験(受講生は修了審査)では、Aモード(GPSや各種センサーのほとんどが無効の状態)でのスクエア飛行が審査されるのですが、まずはPモード(GPSや各種センサーをすべて有効にした状態)で練習することに。
《AモードとPモード》
ドローンの飛行モードにはPモード(ポジショニングモード)とAモード(ATTIモード)があり、必要に応じ切り替えます。(その他スピード重視のSモードなどもありますが、ここでは割愛します)
Pモード:GPS機能や各種センサーをすべて有効にした状態で飛行させるモード。車でいえばオートマに当たります。操縦者がプロポ(コントローラー)のスティックから手を離してもその場でホバリングするなど高度な自律制御が働くため、安定した飛行が可能。通常ドローンを飛行させる場合に選択する標準的なモードです。
Aモード:GPS機能や各種センサーのほとんどを無効にし、機体の高度のみ保つようにした状態で飛行させるモード。車でいえばマニュアルです。放っておくと勝手に動いてしまうので、相応の技術を持った操縦者でないと衝突や落下の危険性があります。
高度なテクノロジーにより誰でも容易に飛ばせるのがPモード。楽勝かと思いきや、自分から見て左右方向(側方)への移動は問題ありませんでしたが、手前から奥、奥から手前という奥行き方向の移動がうまくいきません。
奥行き方向の距離感を正確に把握できないのが原因だったので、講師の方の提案により距離感をつかめるよう立ち位置を変えて操縦してみたところ、奥行きのズレの問題は改善されました。(下図参照)
このときに限らず4日間の講習を通して、ペーパー操縦士である私のレベルに合わせいろいろと教え方をカスタマイズしていただき、とてもありがたかったです。
Aモードでスクエア飛行
Pモードでのスクエア飛行を終えると、次はAモードに切り替えてスクエア飛行を行いました。
各種センサーが無効となっているため、ほぼ全て自力でコントロールしなくてはならず、これがとにかく難しい!
民間資格取得時にもAモードでの飛行は一応経験していましたが、そのときは屋内、今回は屋外で風の条件が異なります。
わずかな風でも機体がふらつくため、ただホバリングするのさえひと苦労で、プロポのスティックを常に細かく操作していないとあっちにフラフラこっちにフラフラ……。
さらに進行方向に合わせて機首の向きを変えた状態でAモード飛行を行うとなると激ムズです。
(なぜそれが激ムズなのかについての詳細は後述します)
《二等資格の場合のAモード飛行》
二等資格でもAモードに切り替えての飛行は行いますが、求められる動きはホバリングと側方への直線移動のみで、機首の向きも操縦者の目線と同じでOK。一等でのAモード飛行に比べ、難易度はずっと低いです。
Aモードで高度変化を伴うスクエア飛行
次は縦横だけでなく上下の移動も伴うスクエア飛行に挑戦しました。この「高度変化を伴うスクエア飛行」は修了審査の試験科目でもあるので(つまりできないと資格を取得できない)、その後毎日練習しました。
側方移動は一定の高度で飛ばすのですが、奥行き方向の移動時に高度1.5mから3.5mまで上昇しながら移動、逆に3.5mから1.5mに下降しながら移動させます。
高度変化を伴わない2Dの移動でも大苦戦したのに、3Dとなると操作・調整すべき事柄が増えて大パニックに陥り、最初のうちはまともに飛ばせませんでした。
(これの難しさについても後で詳述します)
《二等資格の場合のスクエア飛行》
二等資格の実地試験(受講生は修了審査)でもスクエア飛行を行うため、二等資格講習でもスクエア飛行を行いますが、一等資格とは次の2点で異なります。
- Pモードで行う
- 高度は一定とし変化させない
日中に実地講習、日没後に学科講習
実地講習後は教室へと移動して、学科講習を受けました。
神経を張り詰めまくりの実地講習の後なだけにかなり疲れた状態での座学でしたが、頑張りました。
明るい日中は屋外の練習場(天候によっては屋内)で実地講習、暗くなる日没後は教室で学科講習というのが毎日の講習の進め方の大枠です。
ただし、これは屋外での練習が基本のDRONE★VILLAGEさんだからこうなるのであって、たとえば屋内練習場やシミュレーターを多用するスクールなどではまた違った進め方になるのかなとも思います。
講習2日目
前日に受けた初回の講習では、Aモードでの操縦が思った以上に難しいことを痛感しました。
「一等資格を甘く見ていたかも……」と早くも焦りを感じていましたが、講習はまだ始まったばかり。
4日目に控える修了審査に向け必死に取り組み、腕を上げるしかありません。
気を取り直して2日目の講習に臨みました。
Aモードで高度変化を伴うスクエア飛行
飛行前点検を済ませ、初日に行った内容を再び練習しました。
相変わらず満足できる飛行とはいえないものの、いくらか慣れてきたような気も……。
2日目は、スクエア飛行以外の飛行についてもAモードでの操縦をメインに練習しました。
Aモードでピルエットホバリング
ホバリングさせたその場で進行方向をぐるりと360°回転させるピルエットホバリング。
AモードではGPSや各種センサーが働かないため、ただその場でホバリングさせているときでさえ、絶え間ない機体のふらつきをきめ細かなプロポ操作で制御し続けなくてはなりません。
しかも回転に伴い機体正面(機首方向)が変化し続けるため、常にプロポのスティックを細かく動かして機体の姿勢を調整するのと並行して、スティックを倒す方向をリアルタイムで滑らかに変えていくことも必要に。これもかなり難しかったです。
《二等資格の場合のピルエットホバリング》
二等資格の実地試験(受講生は修了審査)ではピルエットホバリングは試験科目に含まれないため、講習でもピルエットホバリングは行いません。
Aモードで8の字飛行
スクエア飛行やピルエットホバリングも十分に難しかったですが、8の字飛行はさらにそのはるか上を行きました。
進行方向を常に変化させながら飛ばす8の字飛行では、
- 前方に進ませる
- 左右方向に舵を切り、機首を進行方向に向ける
- 左右方向に機体を動かしてコースから外れないようにする
という3種類の微調整を同時に行う必要があります。
8の字飛行自体の難易度が高く、手始めにPモードで行ったときでさえ最初のうちはちゃんとコースに沿って飛ばすのに苦労したほどです。
それをAモードでとなるとリアルタイムでの情報処理が追いつかず、頭の中は大混乱。
テンパりながら、このAモードでの8の字飛行が一等資格取得に向けた挑戦の最大の難関となることを確信しました。
《二等資格の場合の8の字飛行》
二等資格の実地試験(受講生は修了審査)でも8の字飛行を行うため、二等資格講習でも8の字飛行を行いますが、AモードではなくPモードで飛行させる点が一等資格とは異なります。
その後、学科講習を受けて2日目の講習を終えました。
講習3日目
初日そして2日目と、思っていたのと全然違って満足に操縦できないという事実に直面。
しかも、事前にメールで知らされていた「合格率は6〜7割」というのは、あくまで業務でドローンを毎日のように飛ばしている現役バリバリのプロの合格率がその程度という話なのだと聞き、自信喪失気味に……。
それでも講師の方からは「飲み込みがかなり早い」と言ってもらえていたので、諦めずに頑張ろうと気持ちを引き締め3日目の講習を受けました。
Aモードでの飛行3種
初日・2日目にも行ったAモードでの飛行3種類(高度変化を伴うスクエア飛行、ピルエットホバリング、8の字飛行)を練習しました。
進行方向の変化への対応にはいくらか慣れてきましたが、スムーズにできるようにはなかなかなりません。
フェールセーフ機能の体感
バッテリー切れなどの不測の事態のフェールセーフ機能(緊急時に自動で離陸地点に戻る機能)を意図的に起動させて体感しました。
離陸地点に自動で戻るといっても数mくらいずれてしまうこともあるそうで、そういった場合には自動帰還を停止して、手動で位置調整した上で着陸させます。
自動航行
ドローンが自律的に飛行する「自動航行」がどんなものなのかを体験しました。
目視外飛行
DRONE★VILLAGEさんの講習には目視外飛行と夜間飛行を行うための限定変更に対応する内容が含まれているため、目視外飛行の練習も行いました。
機体を直接見るのではなくプロポに取り付けたカメラの映像を見て、建物の裏に回ったドローンを操縦します。
ドローンの近くに補助者(この場合講師の方)がついて「少しずれたからちょっとだけ前に進めて!」などと操縦者に声で知らせ、二人三脚的に飛行させるのですが、これがなかなか難しい!
カメラ映像のわずかなタイムラグ(体感0.5秒くらい?)を踏まえたプロポ操作、常に目的地を写しているための高度変化に応じたカメラアングル切り替えの必要性が、難易度をさらに上げます。
あっちもこっちも意識しながら操縦するというのは本当に大変です。
Aモードでの目視外ホバリング
これも目視外飛行の一種で、機体を直接見ることなくAモードでホバリングさせます。
何度もお伝えしているように、ただホバリングするだけでも常に細かく操作して位置を微調整し続ける必要があって大変なのに、それを目視外飛行でやるのですからなお一層大変。
カメラに映したヘリパッド(離着陸地点)のHマークの位置がずれないよう左右前後に調整すればうまくいくはずと思いましたが、カメラ映像には若干のタイムラグがあることを計算に入れて操縦しなくてはならず、やはり苦労しました。
その後、風が強くなり、さらには雨も降ってきたため、屋内練習場に移って苦手な箇所を重点的に練習。実地講習後にはいつも通り学科講習を受けて、3日目の講習が終了しました。
講習4日目
いよいよ最終日、修了審査が行われる日です。
これまでの講習で必死に練習してきましたが、正直厳しいかなと思わざるを得ない状況。
奇跡よ起これ……!
修了審査の事前練習
修了審査で実技として課せられる飛行(すべてAモードで)は次の3種類です。
- 高度変化を伴うスクエア飛行
- ピルエットホバリング
- 緊急着陸を伴う8の字飛行
そこで、修了審査のリハーサルといった感じでこの3種類の飛行を事前練習しました。
最後の追い込みです。
修了審査
そしてついに迎えた修了審査に、祈るような気持ちで臨みました。
修了審査の詳細については次章でお伝えします。
夜間飛行
審査修了後に夜間飛行の練習を行いました。(限定変更なしなら不要な練習ですが、前述した通りDRONE★VILLAGEさんの講習にははじめから限定変更が含まれているためです)
暗い中でも位置と向きを把握できるように脚部に緑色と赤色のライトがついているのですが、どちらが前なのかが一瞬わからなくなってしまうことがしばしば。
撮影時は映り込み防止のため前脚側のライトが消灯するので、余計に混乱します。
アプリを見ればどっちの方角を向いているかはわかるのでそこから見当をつけたり、最悪ちょっとだけ右もしくは左に移動させてみて、動いた方向を見て判断したりしました。
やはり難関だった一等資格の修了審査
スクールで受講せず指定試験機関で実技試験を受ける場合もそうですが、修了審査は減点方式で、一等資格の場合は審査終了時に100点満点のうち80点以上を確保していれば合格です。(二等資格は100点満点中70点以上確保で合格)
机上・口述・実技と分かれていますが、そのうち口述と実技はドローンを飛行させる一連の流れの中で審査されます。たとえば「充電量も確認して……」と説明しながら飛行前点検するのが口述試験に当たるといった具合です。
【一等資格の試験科目】
試験科目 |
減点基準 |
試験種類 |
---|---|---|
飛行計画の作成 |
誤答・未回答1問につき5点減点 |
机上 |
飛行空域及びその他の確認 |
確認漏れ・記載漏れ・誤りがあれば、その数にかかわらず10点減点 |
口述 |
作動前点検 |
||
作動点検 |
||
高度変化を伴うスクエア飛行 |
不合格区域への進入などがあれば即不合格。 |
実技 |
ピルエットホバリング |
||
緊急着陸を伴う8の字飛行 |
||
飛行後点検 |
記入漏れや誤記入があればその数に関わらず5点減点 |
口述 |
飛行後の記録 |
記入漏れや誤記入があればその数に関わらず10点減点 |
|
事故又は重大インシデントの説明 |
誤答・未回答があればその数に関わらず5点減点 |
口述 |
事故等発生時の処置の説明 |
机上と口述は問題なし。ネックとなるのは実技
机上試験(飛行計画時に注意すべき点などについて4択)と口述試験は、真面目に受講していればクリアできるかなと感じました。
問題はやはり実技、Aモードで行う3種類の飛行です。当日の風速は2m/sくらいで条件としては悪くなくラッキーでしたが、これって言い訳はできないということですよね……。
まずは高度変化を伴うスクエア飛行
[画像出典]一等無人航空機操縦士実地試験実施細則 回転翼航空機(マルチローター)
実技の最初は「高度変化を伴うスクエア飛行」。
飛行経路を逸脱したり、安定した速度で飛ばせなかったり、飛行にふらつきがあったりなどで1点減点、減点区画(上図参照)への進入で5点減点、大きく飛行経路を逸脱して不合格区画に進入させると即不合格です。
5点減点時に審査官によって吹かれる笛が鳴らなかったこともあり、自分としては意外と結構いけたのでは?と思っていたのですが、後から話を聞くと、1点減点が積み重なり7点減点されたとのこと。
一発アウトにならなかっただけでも良かったか……。
次にピルエットホバリング
[画像出典]一等無人航空機操縦士実地試験実施細則 回転翼航空機(マルチローター)
実技の2つ目はピルエットホバリング。
なかなかスムーズに回転させられず、半径1.5mの円内の外の減点区画にも進入してしまい……。
減点されまくったらしく、残りの許容減点数が既にかなり少なくなっている旨のアドバイスを審査官からもらいました。
この時点でもう「無理だな」という後ろ向きな気持ちになりかけましたが、諦めるわけにはいきません。
首の皮1枚でつながっているような状態で、実技試験の最終科目である8の字飛行へと進みました。
実技試験の最後として緊急着陸を伴う8の字飛行
[画像出典]一等無人航空機操縦士実地試験実施細則 回転翼航空機(マルチローター)
そして最後の「緊急着陸を伴う8の字飛行」。
複数の微調整を同時に行う必要があるためPモードでも難しい8の字飛行なだけに、Aモードでとなるとものすごく難しいです。
練習中にも満足にできていたとは言い難かったので予想はしていましたが、コースの途中で大きく膨らませてしまい、不合格区画に進入。
試験の最終ステップまで進めはしましたが、残念ながら途中で審査終了となってしまいました。
合格までには大きな壁があると感じたというのが正直な感想です。もしもその場で再挑戦させてもらえていたとしても、おそらく同じ結果だったと思います。
《二等資格の実技試験での8の字飛行》
二等資格の実技試験での8の字飛行は、AモードではなくPモードで飛行させること以外にも、緊急着陸を伴わない点が一等資格とは異なります。(二等資格では緊急着陸が単独で試験科目となっています)
急遽受けることにした二等資格の審査
一等の修了審査が不合格だったため、「せめて二等資格を取得しておこう」ということで二等の審査も受けました。(同日中に一等と二等の両方を受けるのは不可なので、日にちを変えて受審)
こちらはめでたく合格。
大半がPモードで行われますし、少しだけあるAモード飛行は機首の向きを変えない直線移動だけなので、余裕を持って行えました。
とはいえ、それは「一等資格講習で練習した高難易度な飛行に比べると容易」という話であり、もしも受講したのが二等資格講習だったら、合格できなかった可能性もあると感じました。
二等の審査も一等同様に記述・口述・実技と分かれており、実技試験科目は次の3種類です。
スクエア飛行
[画像出典]二等無人航空機操縦士実地試験実施細則 回転翼航空機(マルチローター)
Pモードでスクエア飛行を行います。飛行中の上昇・下降は求められません。
機首を常に進行方向に向けた状態で飛ばす点は一等資格と同条件ですが、各種センサーが働いて姿勢制御が自動で行われるPモードでは、ある程度のゆとりを持って判断・操縦できます。
8の字飛行
[画像出典]二等無人航空機操縦士実地試験実施細則 回転翼航空機(マルチローター)
Pモードで8の字を書くような経路で、制限時間8分で連続して2周の飛行を行います。(一等資格は指示があるまで連続して飛ばし続け、制限時間5分)
機首を常に進行方向に向けた状態で飛ばす点は一等資格と同じです。
一等資格のようにAモードで行うことを思えばずっと楽ですが、それでも滑らかなカーブを描くコースに沿って飛行させるのは容易ではなく、ひと言で言えば「フツーに難しい」です。
試験中は「減点されているかも……?」と思いながら操縦していました。
異常事態における飛行
[画像出典]二等無人航空機操縦士実地試験実施細則 回転翼航空機(マルチローター)
一等資格では8の字飛行とまとめて行う緊急着陸ですが、二等資格では独立した試験科目として実施されます。
Aモードで、機首を操縦者から見て前方に向けた状態で側方へと直線移動させ、指示があり次第緊急着陸を行うというものですが、機首の向きを変えずに済むので一等に比べて楽に感じられました。
ただし、既に前述した通り、楽に感じられたのは一等の講習で散々Aモードを練習していたからこそ。
もしも私のようなペーパー操縦士が一等資格講習ではなく二等資格講習(経験者コース)を受けていたとしたら、失敗もあり得そうです。
二等資格を無事取得!
ヒヤヒヤするところもあった二等の審査でしたが、結果は合格!やりました!
(後日、指定試験機関での学科試験を受け、そちらも合格したので、二等資格を取得することができました)
一等に比べ難易度はいくらか下がる二等の審査ではあったものの、少なくとも「楽勝〜♪」という感じではなく、「もしかして二等も不合格となってしまうのでは?」という不安もよぎったというのが正直なところ。
特に8の字飛行は結構難しく、もしも自分が一等ではなく二等資格講習(経験者コース)を受けていたとしたら、合格の確率は7〜8割くらいだったろうなと思います。
(つまり2〜3割の確率で不合格になっていたのではなかろうかと)
それだけに、修了証を手にして卒業することができて、本当に嬉しかったです……!
DRONE★VILLAGEさんの講習は、とても実践的で充実していました!
実際に現場でドローンを活用されているプロの方が講師を務められていることもあり、
私の不得意なポイントがあったら的確なフィードバックをくださったり、
講習中に質問を行なった際も、全て「現場での運用」を踏まえた回答を行なってくださったりと、とても充実した講習を受けることができました!
一等資格取得がやたら難しい理由は「機首の向きを変えた状態でのAモード飛行」と「風」
ここまでお読みいただいて「どうしてできないの?一等資格取得ってそんなに難しい?」と不思議に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
一等資格取得がここまで難しくなる理由は、次の2つです。
- 機体の機首の向きを正面から変えた状態でAモード飛行させる必要があること
- 屋外でのAモード飛行は風の影響がとても大きいこと
実際、Aモードであっても機首方向を前方に向けてホバリングさせるだけなら少し練習すればできるようになりますし、風の吹かない屋内ならはるかに楽に飛ばせます。
なんだか言い訳がましくなってしまいそうですが、思うように操縦できない理由を、修了審査の試験科目である3種類の飛行それぞれの中で具体的に説明したいと思います。
《二等資格で求められるAモード飛行は一等資格に比べシンプルで難易度低》
二等資格で求められるAモードでの飛行スキルは、ホバリングと側方への直線移動だけなので、機首の向きの変化が伴いません。
また、実技試験は屋内で行うことが認められているので、その場合は風の影響をほとんど受けずに済みます。
そのため、同じAモードでの飛行であっても、一等資格よりも難易度が低いです。
高度変化を伴うスクエア飛行
ドローンの機首の向きと操縦者である自分の向きが一致していれば、機体を右に動かしたいときはプロポのスティックを右に倒し、左に動かしたいときは左に倒すといったように直感的な操作が可能です。
ですが、左折したりカーブしたりするたびに機首の向きが変わる一等資格では、操縦者視点での前後左右とドローン視点での前後左右が一致しません。その結果、どちら方向にスティックを倒せばよいのかをとっさに判断できなくなり、うっかり直感的に操作して機体をあらぬ方向に飛ばしてしまうのです。
加えて、風の影響を相殺するための絶え間ない手動制御、奥行き方向の移動距離の調整や高度変更にも同時に対応する必要があり、頭の中はひっちゃかめっちゃかです……!
ピルエットホバリング
ホバリングしたその場で進行方向をぐるりと360°回転させる。人間で喩えると、立っているその場でクルッと回転するイメージです。
プロポのスティックを一定方向に傾けているだけでよいなら難しくはないのですが、回転により機首の向きが刻々と変化し続けることが難易度を爆上げ。
機体を回転させ続けながらその場に留まった状態での飛行を維持することがなかなかできません。
さらに、20秒程度で1回転する速度で回転させるという条件付き(±5秒以上で減点)なので、なおのこと厳しいです。
緊急着陸を伴う8の字飛行
進行方向を緩やかに変化させながら飛ばす8の字飛行では、前述した通り、
- 前方に進ませる
- 左右方向に舵を切り、機首を進行方向に向ける
- 左右方向に機体を動かしてコースから外れないようにする
という3種類の操作を、Aモード飛行に伴う手動制御と同時に行う必要があります。
もとより結構難しい8の字飛行に上記の並行操作の必要性が加わって、こっちに対処しているとあっちが間に合わず、あっちに気を配っているとそっちが留守になってしまうんです。
機首を進行方向に向けるのが追いつかずコースから外れそうになり、慌てて機体を左右に移動させ軌道修正していると、今度は機首の回転が遅れ機体が正面を向かずに飛んでしまっている……という感じ。
ものすごく細かく調整できればスーッと滑らかに飛ばせるはずですが、この3種類を同時にリアルタイムで調整するというのは大変難しく、どうしてもカクカクとした飛行経路になってしまうのです。
一等資格講習を終えてわかったこと、感じたこと
残念ながら不合格となってしまった修了審査。一等資格を取得することはできませんでしたが、今回の挑戦を通じてわかったこと、実際に受講してみて感じたことをお伝えしたいと思います。
一等資格の最大のポイントは「屋外で機首方向を変えながら行うAモードでの飛行」
敗因は明らかに「屋外で機首方向を変えながら行うAモードでの飛行」です。そしてこれこそが一等資格講習でもっとも苦戦する部分であり、同時に修了審査(または試験機関での実地試験)の根幹部分でもあります。
実のところ、プロであろうがアマであろうが通常は簡単に安定飛行させられるPモードしか使わず、Aモードに切り替えて飛ばすことはまずありません。
それにもかかわらず困難な状況下でのAモード操縦スキル習得が必須となっているのは、人の上を飛ばすことが認められる一等資格の試験のコンセプトが「不測の事態、制御不能になったときにいかに安全を確保するか」だからです。
風の影響は大!
各種センサーで自動的に機体を安定させているPモードで飛ばしていても、風が強めだと機体がかなりふらつきます。
センサーが効かずひたすら手動で位置調整するAモードでは風の影響ははるかに大きく、強めの風の中でほんの0.5秒でも流されれば大きくコースアウトしてしまいます。
講習3日目に屋内練習場で練習したときには屋外で飛ばすよりも明らかに楽で、風の影響の大きさを痛感しました。
(とはいえ、風のほとんどない屋内でもそれなりに位置はずれるのですが……。Aモードでの操縦は本当に大変です)
修了審査は運も味方につける必要あり!?
屋外で行われる修了審査は、風速5m/s以上になると延期されますが、それは言い換えるとギリギリ5m/s弱の風までなら、たとえ風が吹いていても審査は行われるということ。
どんな達人であろうと5m/s近い風の中をAモードで飛行させるというのは至難の業であるのは間違いなく、こうなると審査当日の風の強さという運の要素も多分にあると感じました。
普段からドローンを飛ばしているのでなければ、規定の受講時間だけでは全然足りない
民間資格を1年半前に取得してから一度もドローンを触っていない自分が急遽10数時間練習しただけでは到底合格レベルには達しそうにもないということは、講習初日にして薄々感じてはいました。
追加で10時間くらい練習をして、その上で運良くほぼ無風状態で修了審査を受けられていればもしかしたら合格できるかも?……くらい。
自信を持ってとなると、2ヶ月くらいみっちり訓練する必要がありそうです。
機首の向きに応じた操縦を感覚として身につけるにはもっと時間が必要
常時微調整している必要があるAモードでの飛行は(変な喩えかもしれませんが)玉乗りでもしているかのような感じで決して簡単ではないですが、それでもそれだけならなんとかできるようになると思います。
一等資格のAモード飛行の難易度を一気に上げているのは、機体の正面が前を向いているとは限らず「右折させたいからスティックを右に傾ける」といった直感的な操作ができない点。
「左向きの機体を右折させるにはスティックをどちらへ倒せばいい?」
「機体が右を向いているときに後退させたければ、スティックはどっち方向?」
こうした直感的には対応できない操縦方法が感覚として身につき、自然にできる動作として身体になじむまで十分に時間をかけて訓練しないと、合格するのは厳しいです。
学科講習について
ここまで実地講習についてばかりご紹介してきましたが、学科講習についても少しだけお伝えしておきます。
学科講習はオンライン受講も可
スクールによっては学科講習をオンラインで行うコースもあって、その場合はその分だけスクールに通う日数が減ります。
DRONE★VILLAGEさんでもオンライン受講コースが最近設けられました。
自宅で学科講習を済ます分だけ講習日数が短くなるので、たとえば平日に休みを取ることなく週末だけ通えばよくなるといった利点があります。
マルチコプター以外の内容も含まれる
実地講習とは違い、学科講習で必要なのはとにかく聞いて読んで覚えることですから、できる限り1回で覚えてしまおうと真剣に受講しました。
ただ、ドローンと聞いてすぐにイメージされるマルチコプターは、あくまで無人航空機のうちの一つの種類。
ヘリコプターや飛行機も無人で飛べば無人航空機なので、学科講習ではマルチコプターだけでなくヘリコプターや飛行機に関する内容も含まれていて、それが地味につらかったです……。
学科試験は自動車運転免許の学科試験程度の対策を行えば十分
学科試験の内容がめちゃくちゃ難しいかといえば、そこまでではありません。特に私の受けた二等資格に関してはさほど難しくないと言ってよいかと思います。
(ただし、私の場合、もともとメディアを運営する中である程度の知識を持っていたからということもあるかもしれません)
民間資格よりはやはり難しいので舐めてかかっては危険ですが、自動車運転免許の学科試験を受けるときの感覚で勉強すればまず問題ないでしょう。
ちなみに私は教則を2回読み、YouTubeの解説動画も利用した上で試験に臨み、ちょっと自信のない問題も1問か2問ほどはありましたが、ほぼ満点で合格しました。
一等資格の学科試験には計算問題も
一等資格の学科試験には計算問題も出てきます。
一見すると難しく感じられますが、特定の公式をいくつか暗記しておけば対処できるレベルのものとのこと。
二等資格だけでなく一等資格も含めて、受験に備えて教則をちゃんと読み込んでさえおけば、学科試験が資格取得の大きな足枷となることはまずないでしょう。
ドローン国家資格取得を検討中の方にぜひお伝えしたいこと
一等または二等資格の取得、ドローンスクールでの受講をご検討中の方に、一体験者としてお伝えしたいことがあります。
民間資格を取得しているから経験者コースを選ぶべきとは限らない
一等資格の経験者コースを受講する場合、目視外と夜間の限定変更分を含めても実地講習はわずか(と今は感じる)16時間。
しかもしっかりとブランクがあった私の場合、感覚を取り戻すだけでも随分と時間を要しました。
民間資格取得後に実際に飛行させる機会がなかったという私のようなペーパー操縦士は、経験者コースではなくあえて初学者コースを受講することを検討してもよいのではないかと思います。
そもそも国土交通省側は「民間資格取得者=経験者」と定義も明言もしていません。
実際、私自身、初学者コースで58時間飛ばしていたらおそらく合格できたろうとは思うものの、強めの風の影響でうまくいかない可能性もあるわけで、間違いなく合格できるとまでは言えない感じです。
さらに短い二等資格の経験者コースの実地講習
経験者コースの実地講習時間の短さでいえば、二等資格はさらに短くたったの4時間に過ぎません。(目視外と夜間の限定変更分も含む。限定変更なしならなんと2時間だけ!)
前述したように、もしも私が二等資格講習の経験者コースを受けていたとした場合の予想合格確率は(あくまで自分の感覚としてですが)おそらく7〜8割。
操縦スキルに自信がないという方ならその確率はもっと低くなるでしょう。
ですから、目標が一等資格ではなく二等資格であったとしても、民間資格取得後にブランクがあるなら、初学者コースの受講も選択肢として検討すべきではないかと考えます。
「どうせ取るなら一等を」はちょっと待って!
これは私の反省点でもあるのですが、「どうせ取るなら一等だよね」的なノリだけで一等を選ぶのではなく、もっと慎重に検討することを強くおすすめします。
ドローン物流のような最先端ビジネスで必要というなら話は別ですが、そうでなければ原点に戻って「人の上を飛ばすこと(レベル4飛行)が自分にとって必要か(=一等資格取得が必須か)?」をよく考えてみましょう。
もし私が58時間ドローンを飛ばせる初学者コースを受けていたら、修了審査に合格したかもしれません。しかし、それは合格する可能性が上がるというだけのことで、確実に合格していたはずとまでは思えません。
重ねて言いますが、私は講師の方から「飲み込みがかなり早い」とおっしゃっていただいていました。
ということは、どちらかというと苦手な方であればなおのこと、60〜70万円出して初学者コースを受講したけれど不合格という大ダメージな結末もおおいにあり得るでしょう。
スクールの説明を聞いた上で受講を申し込もう
私はメディア運営サイドの人間として体験してみるという目的があったため、すぐに申し込み手続きを進めましたが、一般の方は申込前に一度スクールに話を聞くとか、説明会に参加するとかしておいたほうがいいと思います。
なぜなら、一等にするか二等にするか、初学者コースにするか経験者コースにするかといったことは、たくさんの受講生を見てきたプロの意見も参考にして決めたほうがよいからです。
事前練習を強くおすすめ
長らくドローンを操縦していないという人は特に、しっかりと事前練習をしておくことをおすすめします。
私は結局たいして練習もしていない状態で受講してしまいました。
もっと事前練習をしておけば合格できた……かどうかはわかりませんが、少なくとももう少し早く勘を取り戻し、肝心のAモードの訓練にもっと時間を充てられたのではないかと思っています。
練習しておきたいのはやはりAモード
二等でもAモードでの飛行はありますし、一等では機首を変えながらのAモード飛行という難関が待ち受けており、事前に練習しておくべきはやはりそうしたAモードでの飛行です。
できれば実際に講習で使うことになるような機体重量100g以上の機種、それが難しいならトイドローンでも一定の効果はあるはずです。
Aモードでのピルエットホバリングや8の字飛行を練習しましょう。
スクールへのアクセスも重要
スクールへは追加で通う必要が出てくる可能性があるため、短期間通えばいいだけだから遠方でも構わないとは考えず、無理なく通える範囲でスクールを探すことをおすすめします。
特に一等資格取得は決して容易ではなく、再度審査(有料)を受けに行くこととなる確率は低くありません。
また、再受審に当たりAモード飛行の追加練習をするためにスクールに通う可能性も。
現行のDJI製ドローンにAモード切り替えが可能な機種はなく、切り替えを可能にするファームウェアの提供先はスクールに限られているためです。
そうした再訪があり得ることも念頭に置いた上で受講先を決めましょう。
《二等資格だから簡単というわけではない》
二等資格はスクールでの履修範囲や難易度において民間資格相当といわれています。
しかし、国家資格となっただけに試験・審査の厳格さはかなりアップしています。
過去に民間資格を取得したときの感覚とはだいぶ違うと思っておいたほうがよいでしょう。
最後に
ドローン操縦ライセンスの国家資格化を含む今回の航空法改正は、ドローンを取り巻く環境を大きく変化させるものであり、これまでの民間資格と新しい国家資格とでは要求レベルが大きく異なっています。
操縦技術の面はもちろん、知識の面でもより多くを求められるようになったにもかかわらず、民間資格と同じ感覚で国家資格が捉えられがちなのが実情です。
その結果、私のように「簡単に受かると思っていたのにまさかこんなに苦戦するとは……!」と愕然とする方が今後しばらく大勢出てくるのではないかと危惧します。
特に一等資格に関しては、業務でドローンを毎日のように飛ばしている現役のプロを想定した超難関と考えておいたほうがよさそうです。
「せっかくだから一等を取っておこう」という発想はNG。
一等資格を取るぞ!という心意気を否定するわけではありませんが、当メディアとしては、自分にとり一等資格が本当に必要なのかを冷静に見定めた上で一等資格講習を受けるか二等資格講習を受けるかを決めることを強くおすすめします。
また、国家資格講習の初学者コース・経験者コースを検討する際、「民間資格取得者=経験者」では必ずしもないということをぜひ頭の隅のほうに置いておいていただければと思います。
経験者コースは、日頃からドローンを飛ばしていて腕前にも自信があるというドローンユーザーを対象とした講習であるという認識がむしろ実態に近いでしょう。
本レポート記事が、国家資格取得をご検討中の皆さんのお役に立ちますことを心より願っています。