
日本の空、ひいては日本の社会は今、大きな変革期を迎えているといえます。
なぜなら、街中をドローンが飛び交い国民生活に貢献する未来を実現するための法整備がかねてより進められ、ついに昨年2022年12月5日にはドローンの操縦ライセンス制度がスタートしたからです。
しかし、同制度詳細を正確に把握しようと多数の公的資料資料を読めば読むほどかえって混乱してしまう——そんな方は少なくないでしょう。
そこで当メディアでは、制度創設に向けた政府議論が煮詰まり始めた2021年から、改正航空法並びに政府分科会の資料計76ページをはじめ各種文書を丁寧に読み込み、2022年12月以降に公開された最新情報もいち早く確認。
また、無人航空機ヘルプデスクに問い合わせるなどして、この新制度を徹底的に調べ上げました。
さらにドローンスクール関係者へのインタビューを重ね、ドローンスクールの今後についても見解を展開。
こうした調査によって得た知見をもとに、あなたにとって資格取得が必要かどうかを判断できるチャートもご用意しています。
(資格取得の要不要をすぐに知りたい方は、こちらからお飛びください)
- 今後日本社会でドローンがどのように活用されていくのか気になる方
- 制度運用開始後も自分が安全かつ合法的にドローンを飛ばすことができるのか心配な方
- 資格取得を目指しドローンスクールに通うべきか悩んでいる方
など「ドローンの国家資格」と聞いて気になる方は、この記事でその詳細を事細かく解説していますので、ぜひお読みください。
目次
- 1 《どんな制度?》2022年12月5日からドローン免許が国家資格に!操縦ライセンス制度とは
- 2 《最大の注目点は?》レベル4飛行が可能となるのがドローン国家資格(免許)制度の目玉
- 3 《なぜ作られた?》ドローン国家資格(免許)制度創設の背景
- 4 《勘違いに注意!》ドローン国家資格(免許)取得は必須ではない
- 5 《何が利点?》ドローン国家資格(免許)取得のメリット
- 6 ドローン国家資格のメリットを享受するには「機体認証」も必要
- 7 《見極めよう》ドローン国家資格(免許)は必要?
- 8 ドローン国家資格(免許)が不要なあなたは、その他のルールに注意!
- 9 ドローン2等資格がおすすめなあなたが資格(免許)を取得するとできるようになること
- 10 ドローン1等資格が必須なあなたが資格(免許)を取得するとできるようになること
- 11 《いつから受けられる?》ドローン国家資格(免許)の受験・受講スケジュール
- 12 《いくらかかる?》ドローン国家資格(免許)の取得にかかる料金(費用)
- 13 《どうやって取る?》ドローン国家資格(免許)の取り方
- 14 《参考》ドローン国家資格(免許)にあたりどのようなスクールを選ぶべき?
- 15 《詳細》ドローン2等資格(免許)取得希望者がスクールに通う場合の受講時間数やカリキュラム、必要な事前準備
- 16 《詳細》ドローン1等資格(免許)取得希望者がスクールに通う場合の受講時間数やカリキュラム、必要な事前準備
- 17 《詳細》ドローン国家資格(免許)学科試験の内容・会場・日程・申込方法など(1等・2等共通)
- 18 《詳細》ドローン国家資格(免許)身体検査の内容・会場・日程・申込方法など(1等・2等共通)
- 19 《詳細》ドローン国家資格(免許)実地試験の内容・会場・日程・申込方法など ※スクールに行かない人だけが受講
- 20 (おまけ)操縦ライセンス制度がドローンスクールに与える影響
- 21 ドローンの国家資格(免許)取得と併せて、個別の機体認証を申請する際に気をつけたいこと
- 22 まとめ
《どんな制度?》2022年12月5日からドローン免許が国家資格に!操縦ライセンス制度とは
操縦ライセンス制度と聞いても、「結局何がどうなるんだ?」と、ピンと来ない方も多いことと思います。
そこでこの章では、今回導入される操縦ライセンス制度の全体像を、これまでのドローンの飛行制度についての解説も交えながらご紹介していきます。
操縦ライセンス制度の対象は、9種類の飛行方法+25kg以上の機体での飛行
運転するには免許が必要な自動車とは異なり、一定のルールさえ守れば誰でも飛ばすことが可能だったドローン。
しかし、2022年12月5日、ついにドローンにも操縦ライセンス制度が導入されました。
とはいっても、自動車のように「免許を持っていないと運転できない」というわけではなく、特定の空域や方法での飛行(特定飛行)を行う場合に免許取得が必要あるいは推奨されるというもの。
対象となる「特定飛行」は、もともと国土交通省への事前申請が必要だった種類の飛行で、具体的には次の9種類(またはその組み合わせ)です。
- 上空150m以上の飛行
- 危険物輸送を伴う飛行
- 空港周辺の飛行
- 物件投下(液体を含む)を伴う飛行
- イベント上空の飛行
- 人や物との距離が30m以内となる飛行
- 夜間飛行
- 目視外飛行(機体を目視できない状態での飛行)
- 人口集中地区上空の飛行
なお、機体重量が25kgを超える大型のドローンを飛行させるケースも今回の新制度の対象となっています。
新設されるドローン国家資格(免許)は2種類
新設された免許は国家資格の扱いであり、1等資格(一等無人航空機操縦士)と2等資格(二等無人航空機操縦士)の2種類に区分されています。
2種類のドローン国家資格(免許)の違い
取得していると特定飛行時の申請が不要となる、あるいは簡略化されるという点は、1等資格でも2等資格でも同じ。
1等と2等で異なるのは、飛行時の立入管理措置(補助者や看板の配置などによりドローンとは無関係な第三者の立ち入りを規制する措置)の必要性です。
2等資格では立入管理措置を講じないで特定飛行を行うことは認められませんが、1等資格では立入管理措置を講じなくても行えます。(ただし事前申請は必要です)
つまり、2等資格ではいかなる飛行方法であれ無人地帯でしかドローンを飛ばせない一方、1等資格を取得していれば有人地帯(第三者の人の上)でもドローンを飛行させられるのです。
国家資格取得によるこれらの優遇措置を受けるには「機体認証」を行ったドローンを飛行させることが大前提となっています。機体認証については、後の章で詳しく解説します。
《最大の注目点は?》レベル4飛行が可能となるのがドローン国家資格(免許)制度の目玉
操縦ライセンス制度導入に当たり注目を集めているのが、「レベル4飛行」です。
レベル1:機体を目視しながらの操縦飛行
レベル2:機体を目視しながらの自動飛行
レベル3:無人地帯における、機体を目視できない状態での自動飛行(補助者なし)
レベル4:有人地帯における、機体を目視できない状態でのでの自動飛行(補助者なし)
立入管理措置を講じないということは、飛行エリアに人が立ち入る可能性があるということ。
したがって、1等資格を取得していると可能な「立入管理措置を講じないで行う(目視外飛行を含む)特定飛行」はレベル4飛行と概ね同等です。
この「操縦ライセンス制度導入によりレベル4飛行が可能となる」ことこそが制度新設の最重要ポイントなのです。
レベル4飛行の具体例
レベル4飛行(有人地帯での補助者なし目視外飛行)が実現することで、ドローンの活用範囲は大幅に広がります。
想定される活用例は、たとえば次のようなものです。
- 観客の入っているスタジアムでのスポーツ中継
- 市街地の住宅への荷物配送
- 工場設備などの保守点検
- 広域施設での警備
《1等資格取得で可能となるのは厳密には「カテゴリーⅢ飛行」》
(「中間とりまとめ骨子(案)説明資料」(国土交通省)をもとに作成)
飛行はまた、リスクレベル別にもカテゴライズされており、カテゴリーⅠからカテゴリーⅢまで分類されています。
カテゴリーⅠ:特定飛行に該当しない飛行
カテゴリーⅡ:立入管理措置を講じた上で行う特定飛行
カテゴリーⅢ:立入管理措置を講じないで行う特定飛行
「1等資格取得者はレベル4飛行が可能」という言われ方がされていますが、特定飛行は目視外飛行以外にも複数種類あるため、1等資格取得者が行えるのは厳密には「カテゴリーⅢ飛行」です。
《なぜ作られた?》ドローン国家資格(免許)制度創設の背景
操縦ライセンス制度への理解を深めるには、前述したレベル4飛行の実施を含め、同制度が創設されるに至った背景を知っておくことが欠かせません。
日本の未来のインフラ基盤としてのドローン
この制度が作られた大前提として、国のドローン構想があります。
ご存知のように、日本社会では少子高齢化が留まるところを知らず、労働人口の減少、特に物流業界では人手不足が常に叫ばれています。
また、都市と地方との格差が広がり、地方では財源が確保できずインフラ基盤の維持が困難になってきている実情も。
そうした課題を解消し社会を発展させていくために、政府はドローンを積極活用していきたいと考えているのです。
たとえば、荷物の配送だったり、
災害時の救援物資の運搬、
あるいはワクチンなどの医療物資の運搬、
農薬散布や、
インフラの点検など。
こうしたシーンでのドローンの活用が、私たちの社会にとりとても重要な存在となることは想像に難くありません。
ドローン飛行によるリスクの低減
とはいえ、ドローンの活用は社会課題の解決につながるであろう一方、リスクが存在しているのも事実です。
ドローンの墜落事故は実際に起きており、例を1つ挙げれば、2017年にあるイベントで上空からお菓子を撒こうとしたところドローンが操縦不能になり墜落、地上にいた子どもがけがをした事例があります。
従来は、この事例のようなイベント会場上空での飛行が、事前申請することで認められていたほぼ唯一の「人の上を飛ばすドローン飛行」でした。
しかし、今後ドローンを多岐にわたって活用していくには、より広範囲に人の上を飛行させる必要があり、そうなれば事故リスクはより高まるでしょう。
そこで、一定のリスクを伴う飛行については高度な操縦技能を持つと認められた人(≒資格取得者)だけに許可することで、市民の安全と社会の発展のバランスを取ろうとしているのです。
申請体系のスリム化
また、ドローンを楽しむ人の数は年々増えており、国土交通省に対する申請件数も増加の一途を辿っています。
(2016年度は年間13,535件だったのに対し、2021度は75,049件に増加)
[出典]無人航空機飛行に係る許可承認申請件数の推移(国土交通省)
ドローンの市場規模拡大に伴い、今後もこの流れは続くでしょう。
社会インフラとしてドローン活用を推進するのであれば、申請体系をスリム化し、手続きをスピーディーにしたい。
その解決策として、一定以上の技術があると認められた人(=資格取得者)の飛行については、個別審査の一部を省略もしくは簡略化することにしたのです。
国家資格化までの経緯と現状
急ピッチで進められてきたドローンの操縦ライセンス制度に係る法整備。これまでの経緯と現状は下記のとおりです。
2021年6月11日:操縦ライセンス創設に関する法律の公布
2021年6月28日:操縦ライセンス制度開始までのスケジュール目安の公開
2022年9月5日:登録講習機関*の事前登録申請受付開始
(*登録講習機関:講師や施設・設備等につき国が設ける要件を満たし、一定の水準以上の講習を実施する機関として登録されたドローンスクール)
2022年12月5日:国家資格(免許)新設、操縦ライセンス制度スタート
2022年12月5日:2等資格の学科・実地試験受付開始
2023年1月10日:1等資格の学科試験受付開始
2023年1月24日:1等資格の実地試験受付開始
[出典]空の産業革命に向けたロードマップ2022より引用
《他規制は従来通りである点に注意!》
ドローン操縦ライセンス制度は航空法が定めるもの。
ドローン飛行時には航空法以外にも遵守しなくてはならない各種規制が存在し、それらについては従来通り遵守が必要ですので注意しましょう。
ドローン飛行に関連する規制には、たとえば次に挙げるようなものがあります。
- 小型無人機等飛行禁止法(重要施設周辺での飛行は禁止)
- 民法(他人の所有地上空を無断飛行すると土地所有権の侵害に)
- 道路交通法(公道上での離着陸など道路交通を妨げる行為は禁止)
- 自然公園法(国立公園、国定公園、各都道府県の自然公園内の立入禁止区域内での飛行は禁止)
- 各自治体の条例(ドローン飛行が制限されている場所での飛行は禁止)
こちらの記事の「200g未満のドローンも対象とする規制は現在もある」の項で詳細を解説していますので、ご参照ください。
《勘違いに注意!》ドローン国家資格(免許)取得は必須ではない
当メディアとしては、前述のようなメリットのある資格取得をおすすめしますが、ドローン操縦者全員が資格を必要とするわけではありません。
なぜなら、新設される制度が対象としているのは特定飛行に限られ、逆に言えばそれ以外の飛行は対象外だからです。
特定飛行を行わず、しかもあくまで趣味としてのドローン飛行であれば、資格取得は必ずしも必要ではないといえます。
特定飛行であっても都度申請して許可・承認を受ければ飛行可能
また、たとえ特定飛行であっても、1等資格取得が必須条件となるカテゴリーⅢ飛行を除けば、申請して許可・承認を受けることで(手間と時間はかかりますが)飛行可能です。
ライセンス制度が新設されたと聞いて「資格がないから飛ばせない!」と勘違いしている方も少なくないと思われますが、そうではない点に注意が必要です。
インタビュー結果:ドローンの国家資格(免許)の取得予定割合
ドローンナビゲーターでは、2022年12月6日に「過去半年の間にドローンの操縦経験があるユーザー」313名に対して「ドローンの国家資格(免許)を予定しているか?」についてのネットインタビューを行いました。
その結果、既に民間資格を取得しているユーザーは8割以上が「国家資格を取得予定」と回答したものの、ドローンスクールに通った経験のないライトなドローンユーザーの取得予定割合は1割程度という結果になりました。
上述したように、ドローンの国家資格(免許)は全員が全員必要な資格ではありませんので、この記事で必要性を判断した上で、取得するべきかどうかを判断するようにしましょう。
《何が利点?》ドローン国家資格(免許)取得のメリット
新設された国家資格を取得するかしないかを考える上で、資格を取得した場合に得られるメリットは大きな検討材料となりますよね。
国家資格取得の主なメリットは次の3つです。
【メリット1】特に初心者には少し面倒な飛行申請手続きが不要となるもしくは簡略化される
資格を持っていなくても申請して許可・承認を得れば特定飛行も可能ですが、手続きに一定の時間を要します。
また、内容的にも煩雑で、特に初心者であれば少々難しく感じられるでしょう。
資格を取得しておけば、そうした申請手続きが不要となるか、必要な場合にも審査が簡略化されますので、時間や労力の節約になります。
【メリット2】特定飛行時に限らず大切な信頼性が担保される
外壁点検のために建物から30m以内の距離で飛行させる、報道・取材のためにイベント上空を飛行させるなど、ビジネス目的で特定飛行を行わざるを得ないというケースは多いでしょう。
そうしたケースはもちろん、特定飛行ではない場合であっても、国家資格を取得していれば対外的な信頼性が担保されます。
「はい、弊社のドローン操縦者は国家資格保有者ですのでご安心ください」のひと言を言えるかどうかの違いです。
【メリット3】今までできなかった種類の飛行が可能になる(1等資格の場合)
2種類ある資格のうち1等資格を取得している場合に限られますが、機体を目視することなく遠く離れた住宅地の上空を飛ばすなど、これまではリスクが高いとして認められていなかった種類の飛行ができるようになります。
ドローン国家資格のメリットを享受するには「機体認証」も必要
ここまでドローンの国家資格について色々と説明してきましたが、国家資格を取得するなら、操縦ライセンス制度と並び新設された機体認証制度に基づく「機体認証」を併せて取得しておくことが欠かせません。
なぜなら、飛行させるドローンが機体認証を取得していないと、国家資格取得者に対する優遇措置が受けられないから。
しかし、機体認証取得は少なくとも現時点ではあまりにハードルが高く、国家資格を取得しても今はまだその恩恵を享受できないのが実際のところという実情があります。
機体認証に関するそうした事情を把握するために、機体認証とは何か、機体認証の取得の必要性、機体認証制度の現状について詳しく見ていきましょう。
機体認証は「ドローンの車検」
機体認証とは、飛行させるドローンの強度・構造・性能が安全基準に適合していることを証明するものです。
自動車でいうところの車検のイメージといってよいでしょう。
認証には有効期限が設定されており(3年または1年)、その点も車検に似ています。
[参考]
機体認証(国土交通省)
無人航空機の型式認証・機体認証の検査(無人航空機登録検査機関)
機体認証を受けていないと国家資格を取っても恩恵を受けられない
飛行させるドローンが機体認証を受けていないと、特定飛行申請時の審査の省略・簡略化や立入管理措置なしでの特定飛行(1等資格取得者の場合)といった国家資格の強みは無効に。
車検とは異なり、機体認証を受けていないとドローンを飛ばせないというわけではありませんが、せっかく国家資格を取得しても意味がなくなってしまうため、国家資格を取得するなら機体認証は実質的に必須といえます。
機体認証は2種類
機体認証には「第一種機体認証」と「第二種機体認証」の2種類があり、第一種のほうがより高い安全性基準をクリアすることを求められます。
第一種機体認証は、立入管理措置を講じずに特定飛行を行うのであれば必須条件です。
(つまり、立入管理措置を講じないで特定飛行を行うには、1等資格と第一種機体認証の両方が揃っていなくてはなりません)
2等資格のメリット(立入管理措置を講じた上での特定飛行の申請手続きの省略・簡略化)も、少なくとも第二種機体認証を受けていなければ一切得られません。
「メーカーによる型式認証」→「個別の機体認証」が基本の流れ
また、個別の機体を対象とした機体認証を受けるに当たっては、第一種であれ第二種であれ、その機種が「特定メーカーの特定機種(量産機)に対して与えられる“お墨付き”」ともいえる「型式認証」を受けていることがほぼ前提となっています。
つまり、
- メーカーが自社製の量産機について型式認証を取得
- 型式認証を取得している機種のドローンを持つユーザーが個別に機体認証を取得
というのが基本的な流れです。
(※型式認証はメーカーが自社製の量産機について取得申請するものであり、ユーザー側として直接何かを行う必要はありません)
型式認証を取得していない機種のドローンについて機体認証を受けるのは不可能ではありませんが、型式認証取得機に比べはるかに多くの費用と長い期間がかかってしまいます。
その費用・期間は(ビジネス用途でしかも大変急いでいるといったケースを除けば)現実的とは到底いえないレベル。型式認証を受けていない機種のドローンが個別の機体認証を受けるのはかなり困難といってよいでしょう。(詳細後述)
型式認証済みの機種は未だ0のため、国家資格の恩恵はまだ受けられない(2月上旬時点)
しかし、機体認証制度はスタートしたものの、残念ながら2023年2月上旬時点では明確な検査基準は定まっておらず、型式認証取得済みの機種もまだ存在しません。
つまり、長い審査期間と高額な費用をかけることなく機体認証を受けられる機種(=型式認証を受けている機種)がまだない以上、現時点では国家資格取得の恩恵を受けられない状態に限りなく近いといえます。
特に第一種型式認証(第一種機体認証に対応)については、従来は認められていなかった種類の飛行を想定したスペックが求められるため手探り状態で、まだ先の話となりそうです。
メーカーと国土交通省の間で意見を擦り合わせながら必要なスペックを備える機体を開発・製造し、同機体に型式認証を付与する流れとなるでしょう。
現状では、ACSL社が同社製の物流ドローンについて第一種型式認証を申請済みですが、認証取得までには数ヶ月はかかると見られます。
第二種型式認証取得機の登場は、もう少し早期になると予想されます。
《見極めよう》ドローン国家資格(免許)は必要?
ドローンの国家資格(免許)は、結局のところあなたにとって必要なのでしょうか?
他のみんなはどうするつもりなのかも気になりますよね。
インタビュー結果も参考にしながら考えていきましょう。
また、この章の最後に判断チャートをご用意していますので、そちらもご活用ください。
特定飛行を行う可能性があるなら取得がおすすめ
当メディアとしては、事前申請の必要な特定飛行を行う可能性があれば、取得をおすすめします。
特定飛行とはどういった種類の飛行であるかをここでもう一度確認しましょう。
- 上空150m以上の飛行
- 危険物輸送を伴う飛行
- 空港周辺の飛行
- 物件投下(液体を含む)を伴う飛行
- イベント上空の飛行
- 人や物との距離が30m以内となる飛行
- 夜間飛行
- 目視外飛行(機体を目視できない状態での飛行)
- 人口集中地区上空の飛行
特定飛行は“特別”な飛行ではない
上記9種類の特定飛行(またはその組み合わせ)は、実はさほど特別なものではなく、山間部や離島ででなければ「特定飛行に当たらない飛行」のほうがむしろ珍しいかもしれません。
たとえば、人家や車などに限らず街灯なども「物」に当たりますので、人のいない河川敷のような広々とした場所であっても街灯や電柱・電線から30m以上離して飛ばすのでなければ特定飛行になります。
また、次のようなケースも多くは特定飛行に当たります。
- 東京都内でドローンを飛行させる
→東京都内は西部の山間部や島しょ地域を除き大半が人口集中地区 - 空撮映像の確認のため時々モニターを見ながら飛行させる
→機体から少しでも目を離せば目視外飛行に該当 - 夕焼け空の撮影を目的に飛行させる
→わずかであっても日没時刻を過ぎれば夜間飛行に該当
こうしたケースが一切ないというのでなければ、事前申請を行うか、申請不要(もしくは簡略化された審査)で飛ばせるように免許を取得するかの2択です。
国土交通省への事前申請は飛行開始予定日の少なくとも10開庁日以上前に行わなくてはならないことを考えると、「いちいち申請しなくても思い立ったらすぐに飛ばせる立場」はやはり魅力的といえるでしょう。
ビジネスなら国家資格がほぼ必須
迅速さの要求されるビジネスの場では、申請の手間を省くためだけでも資格を取得しておきたいところですが、それ以上に信頼性の観点から資格取得がほぼ必須といえるでしょう。
ドローンのパイロットを探している人の目に、ドローン操縦の国家資格があるのにそれを取得していないパイロットはどう見えるでしょうか?
十分な実績があったとしてもそこを蔑ろにしているという点で「信頼できなさそう…….」と思われてしまうのも無理のないことでしょう。
国家資格を取得しておくことで、お客様に信頼感を与えられるのです。
機体重量25kg以上のドローンを飛ばす可能性があるなら取得がおすすめ
機体重量が25kg以上のドローンを飛行させるケースも操縦ライセンス制度の対象となるため、特定飛行の可能性がある場合と同様に国家資格取得がおすすめです。
25kg以上のドローンを飛行させる場合、国家資格を取得していても許可申請は必要ですが、国家資格取得者に対する優遇措置として審査が簡略化されます。
既に民間資格を取得している人は国家資格を取得すべき
国家資格としてのドローン免許が創設される前から、ドローン操縦に関連する民間資格は存在していました。
そうした民間資格を既に取得している人についても国家資格を取得したほうがよいというのが当メディアの見解です。
民間資格を取得していると、特定飛行申請時にドローンの飛行経歴や知識・スキルの有無の審査プロセスが省略されるので早く許可・承認を得られるという概ね2等資格取得者相当のメリットがあります。
それだけに、従来は禁止されていた種類の飛行ができるようになる1等資格ならともかく、2等資格を取得することにあまりメリットを感じない——そう考える方は少なくないでしょう。
それでも当メディアが2等資格も含めた国家資格の取得をおすすめする理由は次のとおりです。
この先も利便性を享受したいなら国家資格取得は避けて通れない
民間資格取得者ならではの利便性を今後も引き続き享受したいなら、国家資格の取得が不可欠です。
というのも、新制度運用開始後も従来の申請制度が残されるとはいうものの、それはあくまで当面の措置。将来的には新制度に一本化する方向で国土交通省が動いていることはまず確実と見られるからです。
事実、ユーザーの質問に対する国土交通省の回答(下記)で示されているように、特定飛行の許可・承認の申請時の審査が簡略化されるという民間資格の効力も3年後には無効となる見込みです。
HP掲載講習団体が発行する民間技能認証については個別の飛行毎の許可・承認の操縦者の技量審査のエビデンスとして活用しておりますが、現時点の想定としては、本年12月5日の3年後をもって、飛行申請時のエビデンスとしての活用を取りやめることとしております。(民間技能認証のみを取得されている場合は、申請書類の省略が認められない運用に変わります。)
出典:国土交通省
簡単に言えば「民間資格を取得しているだけだと、3年後以降は審査に時間がかかって面倒になる」ということです。
国家資格の優遇措置は民間資格よりも手厚い
さらに言えば、国家資格取得者に対する優遇措置は、民間資格取得者に対する優遇措置よりも手厚く、メリットが大きいです。
特定飛行の許可・承認の申請時に民間資格取得者が受けられる優遇措置はあくまで「審査の簡略化」です。
一方、国家資格取得者は、リスクが比較的低めの特定飛行(人・物件との距離30m以内、夜間、目視外、人口集中地区上空)であれば審査省略、つまり申請不要で飛行させられます。
より手軽にドローンを飛行させられるようになる方法として、国家資格を取得する価値はあるでしょう。
必要?不要?何等?ドローン国家資格(免許)判断チャート
頭の中を整理したい……!
そう感じている方のために判断チャートをご用意しました。
なお、判断チャートの後には各選択肢(資格不要、2等資格取得、1等資格取得)の解説章が続きますが、もう心は決まっている!という方は、国家資格の取り方を解説している章や資格取得にかかる費用について説明している章へと飛んでください。
《今あえて民間資格を取得するという選択肢も一応あり》
上のチャートには含まれていませんが、従来から存在する民間資格を取得するという選択肢も残されています。
国家資格創設後も継続される民間資格保有者への優遇措置は、前述のとおり3年後には終了予定。
今あえて民間資格を積極的に取得する理由は見当たりませんが、通える範囲に国家資格取得コースを開講するスクールはないがスキルを身につけておきたい人などは、民間資格取得コースの受講を検討することになるでしょう。
ドローン国家資格(免許)が不要なあなたは、その他のルールに注意!
資格が不要だったあなたは、事前申請の不要な場所・方法での飛行(=特定飛行に当たらない飛行)であれば、自由にドローンを楽しむことができます。
(もしも特定飛行を行うことになった場合にも、前述のとおり、事前に国土交通省に申請し許可・承認を得る手間さえかければ大丈夫です)
とはいえ守るべきルール(飲酒時・夜間はNG、機体の状況の常時確認、他人に迷惑をかけない等)は存在するので、そこはお気をつけください!
必ず無人航空機(ドローン、ラジコン機等)の 安全な飛行のためのガイドライン(国土交通省航空局)を読むようにしてくださいね!
《各種条例の遵守、機体登録も必要》
ドローンに関する条例(都市公園条例等)を各自治体が独自に設けていることも少なくありません。ドローンを飛ばす際には、航空法やガイドラインのほか、そうした条例も遵守する必要があります。
また、2022年6月20日付けで航空法が改正され、法規制の対象となるドローンの条件が従前の「機体重量200g以上」から「機体重量100g以上」へと変更されました。同改正に伴い機体登録も義務化されたため、機体重量100g以上のドローンは機体登録手続きを済ませていないと飛ばせませんので注意しましょう。
ドローン2等資格がおすすめなあなたが資格(免許)を取得するとできるようになること
【一部の特定飛行の申請が不要となる】
2等資格を取得すると、本来申請が必要な特定飛行のうち次の飛行(カテゴリーⅡB飛行)については申請不要となります。
- 人口集中地区上空の飛行
- 人・物との距離が30m未満の飛行
- 夜間飛行
- 目視外飛行
(※上記すべての特定飛行について立入管理措置を講じることが条件)
【一部の特定飛行の申請が簡略化される】
申請が必要な下記の特定飛行(カテゴリーⅡA飛行)についても、審査が簡略化されます。
- 空港周辺の飛行
- 上空150m以上の飛行
- イベント上空の飛行
- 危険物輸送を伴う飛行
- 物件投下を伴う飛行
(※上記すべての特定飛行について立入管理措置を講じることが条件)
2等資格を取得しておけば、このように申請が不要となったり簡略化されたりするため、貴重な時間の節約につながるといえるでしょう。
2等資格が役立つシーン例
2等資格が役立つ具体的な飛行シーン例としては、インフラ点検や夜景空撮などが考えられるでしょう。
また、申請は必要ですが、イベント撮影や農薬散布などでも役立ちます。
ただし、繰り返しとなりますが、いずれのケースでも立入管理措置を講じた上で飛行を行わないといけない点に注意が必要です。
ドローン1等資格が必須なあなたが資格(免許)を取得するとできるようになること
【立入管理措置なしの特定飛行が可能となる(※要事前申請)】
1等資格を取得すれば、下記の特定飛行9種類(またはその組み合わせ)を立入管理措置を講じることなく行えます。
- 上空150m以上の飛行
- 危険物輸送を伴う飛行
- 空港周辺の飛行
- 物件投下(液体を含む)を伴う飛行
- イベント上空の飛行
- 人や物との距離が30m以内となる飛行
- 夜間飛行
- 目視外飛行
- 人口集中地区上空の飛行
たとえば静岡県内にいるオペレーターの管理下で東京都内のオフィス街にドローンを飛行させるといった「立入管理措置を講じないで行う目視外飛行」も可能に。
新設される資格は1等も2等もあくまで任意資格ですが、立入管理措置なしの特定飛行が認められるのは1等資格取得者だけです。
そのため、たとえば「配送センターから市内の各戸に向け飛行させて荷物を届ける」といったような立入管理措置を講じることが難しい飛行を行うなら、1等資格取得が必須ということになります。
《要申請だが柔軟な運用も》
立入管理措置を講じないで特定飛行を行う場合、つまりカテゴリーⅢ飛行を行う場合、たとえ1等資格保有者であっても事前に申請が必要です。
しかし、たとえば宅配業者が荷物の配送時に都度申請しなくてはならないのでは、実用性の面で問題があるでしょう。
そのため、運航管理体制が確立されている事業者等については包括許可など柔軟な運用を行う方向で検討が進められているようです。
【一部の特定飛行の申請が不要となる】
1等資格を取得すると、2等資格取得時と同様に、本来申請が必要な特定飛行のうち次の飛行については申請不要となります。(ただし、申請を行わずに飛行させる場合は立入管理措置を講じることが条件となります)
- 人口集中地区上空の飛行
- 人・物との距離が30m未満の飛行
- 夜間飛行
- 目視外飛行
【一部の特定飛行の申請が簡略化される】
申請が必要な下記の特定飛行についても、2等資格取得者と同様に、審査が簡略化されます。(こちらについても立入管理措置を講じることが条件となります)
- 空港周辺の飛行
- 上空150m以上の飛行
- イベント上空の飛行
- 危険物輸送を伴う飛行
- 物件投下を伴う飛行
1等資格が役立つシーン例
1等資格が役立つ具体的な飛行シーン例としては、ドローンを活用した宅配ビジネスや報道取材、有人地帯上空を長距離飛行して行う空撮などが想定されます。
立入管理措置を講じることが実質的に困難な状況(広範囲、長距離、危険を伴うエリア等)で特定飛行を行うには、1等資格がマストです。
《いつから受けられる?》ドローン国家資格(免許)の受験・受講スケジュール
国家資格取得のための試験はいつから受けられるのでしょうか。
また、資格取得のためにスクールに通う場合、いつから通えるのでしょうか。
国家資格を取得する方法には「スクールで受講して取得する方法」と「独学で知識・スキルを習得して受験する方法」の2種類がありますが、ほとんどの人はスクールに通うことになると考えられます。
(「《どうやって取る?》ドローン国家資格(免許)の取り方」の章で詳しく解説しています)
なぜなら、もしもスクールに通わない場合、試験に備えた対策をすべて自力で行わなくてはならないだけでなく、実地試験も受けなくてはならないからです。(スクールに通うと実地試験は免除)
詳細は後述しますが、ドローンスクールはちょうど自動車の教習所のような機関であり、国家資格試験のシステムも自動車の運転免許試験のそれに似ています。
そのため、自動車の運転免許のケースと同様に、ドローンに精通し高度な操作・操縦技術を持っている人を除く大部分の人がスクールに通うことになると予想されるのです。
そこでここでは、大半の人が通うことになるであろうドローンスクールではいつから対象講習を受講できるようになるのか、また、資格取得希望者全員が受ける必要のある資格試験はいつから受験できるようになるのかをご紹介します。
皆さんが実際に国家資格を取得できるのはいつ頃になりそうかというところまで含めご紹介していますので、どうぞご参考になさってください。
スクールで受講する場合のスケジュール
前述のとおり、資格取得希望者の多くがスクールで受講して資格取得するようになると予想されていますが、制度整備が急ピッチで進められたためスクール側の準備が間に合っていないのが現状です。
いくつかのドローンスクールにヒアリングしたところ、2等資格取得コースは2月から3月にかけて開講予定、1等資格取得コースの開講は早くても4月以降になるというドローンスクールが多い模様です。
スクールで受講する場合に資格取得にかかる日数目安は「スクールでの受講期間」+「学科試験・身体検査を受けて試験合格証明書が発行されるまで最短15日」。さらに、資格取得の証である技能証明書の発行は申請後(1等資格の場合は登録免許税納付後)10開庁日程度かかります。
したがって、2等資格を取得するために最速の2月から3月にかけて受講した場合、正式に資格を取得できるのはスムーズに進んだ場合で約1ヶ月後の3〜4月頃に、1等資格を取得する場合は早くても5月以降となると考えられます。
スクールで受講しない場合のスケジュール
スクールで受講せずに学科試験〜実地試験〜身体検査をすべて受け、試験合格証明書が発行されるまでに最短で1ヶ月、資格取得の証である技能証明書の発行は申請後(1等資格の場合は登録免許税納付後)10開庁日程度かかります。
したがって、1月中に受験・受検し、合格後速やかに手続きを進めた場合、2〜3月には正式に資格を取得できる(=技能証明書が発行される)と予想されます。
1等資格も2等資格も全試験・検査の受付が既に始まっており、学科試験のスケジュールはこちらで、実地試験および身体検査のスケジュールはこちらで確認できます。
《いくらかかる?》ドローン国家資格(免許)の取得にかかる料金(費用)
ドローンの国家資格(免許)取得までには、大きく分けて下記4つの費用が発生します。
- 登録講習機関での講習受講料(スクールに通わない方は不要)
- 各試験の受験料(登録講習機関で受講する場合は学科試験のみ受験するため、実地試験の費用は不要)
- 無人航空機操縦者技能証明書の交付手数料
- 機体認証の手数料
それぞれの費用について詳しく見ていきましょう。
登録講習機関での講習受講料(※全費用の大部分を占める)
3つの費用のうち多くのケースで大部分を占めるのが、登録講習機関(講師や施設・設備等につき国が設ける要件を満たし、一定の水準以上の講習を実施する機関として登録されたドローンスクール)での講習受講料です。
ですが、現在はまだ各ドローンスクールが登録講習機関として登録されるための申請手続きや、国家資格取得コースの開講準備を進めている段階であり、公開されている受講料関連情報は限られています。
そのため、あくまで推測とはなりますが、当メディアがドローンスクールから得た情報や国が定める1等・2等それぞれの必要講習時間から、おおよそ下記のようになると予想されます。
《2等講習の料金:25〜35万円程度》
2等資格取得コースの受講料相場は、受講料が高めなスクール(例:JUIDA傘下スクール)の一般的なコースの受講料相場(20〜30万円程度)よりも若干高い25〜35万円程度となると予想されます。
その理由は、2等資格取得に当たり求められる知識・スキルと必要な受講時間数はそうしたスクールの従来講習内容と概ね同じである一方、一定以上の飛行実績を有する講師や基準を満たす施設の確保でコスト増が見込まれるから。
また、昨今の物価高が影響する側面も考えられるでしょう。
現状で受講料10万円台の格安コースを設けているドローンスクールについても、値上げが行われる見込みです。
なぜなら、そういった格安コースは講習時間数が少なめであることが安さの主な理由であり、必要受講時間数が定められている国家資格取得コースの場合は必要受講時間数に応じた価格帯とせざるを得ないからです。
なお、以前スクールに通って民間資格を取得済みの経験者が受講する場合は、割安な料金設定となります。(詳細後述)
《1等講習の料金:50万円〜60万円程度》
本記事執筆時点では各スクールとも詳細公表前であることに加え、従来は認められていなかった種類の飛行が可能となる資格に係る費用であるため、現時点での予測は困難です。
しかし、国家資格取得コース開講に向け動いている各ドローンスクールから得た情報によると、50〜60万円程度が主流となりそうです。
民間資格を取得済みの人が受講する場合は受講料が安くなり講習も一部免除
上記の受講料目安は、初学者が講習を受ける場合のもの。
既に民間資格を取得済みの人が受講する場合、経験者であることが考慮されて必要受講時間数が減免されるため、その分だけ受講料も安くなります。
受講料はスクールごとに設定されるため一律ではありませんが、経験者向けの必要受講時間数の減免措置は国土交通省が定めているものですので、民間資格取得者が「講習の一部免除」「割安な受講料」という優遇を受けられるのはどのスクールでも共通です。
実際にどの程度の減免を受けられるのかは、「《詳細》2等資格(免許)取得希望者がスクールに通う場合の受講時間数やカリキュラム、必要な事前準備」「《詳細》1等資格(免許)取得希望者がスクールに通う場合の受講時間数やカリキュラム、必要な事前準備」の章で解説していますので、ご参照ください。
民間資格取得済みの人が卒業校で受講する場合はさらにおトクになりそう
民間資格を取得済みの人は割安な受講料で受講できるのは前述のとおりですが、以前通ったスクールで受講する場合はさらにおトクな料金で受講可能なケースが多くなりそうです。
というのも、受講者の囲い込みの観点から、自校の修了生向けに特別料金の設定を検討しているスクールが目立つためです。
各試験の受験料
試験には学科試験と実地試験とがありますが、いずれの受験料も1等と2等とで若干異なります。
(各試験詳細については「《詳細》1等・2等に共通の学科試験の内容・会場・日程・申込方法など」「《詳細》身体検査の内容・会場・日程・申込方法など」「《詳細》実地試験の内容・会場・日程・申込方法など」の章で詳しく解説しています)
学科試験の受験料
スクールで受講しているかいないかにかかわらず、全員が受験しなくてはならないのが学科試験です。
1等資格と2等資格で受験料が異なります。
2等:8,800円
1等:9,900円
実地試験の受験料
ドローンスクールの指定講習の受講者は実地試験が免除されるため、実地試験を受ける必要はありません。しかし、独学で学んだ人が実地試験を受ける場合は下記の受験料がかかります。
2等:19,800〜20,400円(マルチローターの場合)
1等:20,800〜22,200円(マルチローターの場合)
《限定変更試験の受験料》
なお、夜間飛行・目視外飛行・25kg以上の機体での飛行のいずれかを行うには、実地試験でそれぞれの限定変更のための試験にも合格しなくてはなりません。
その際、1種類の限定飛行につき下記の受験料がかかります。
2等:限定変更1種類につき19,800円
1等:限定変更1種類につき20,800円
ただし、こちらも各限定を解除するための講習をスクールで受けている場合は基本の実地試験同様に試験免除となります。
身体検査
身体検査にも受検料がかかりますが、指定試験機関の準備する会場で実際に検査を受ける場合と公的書類(自動車運転免許証等)の提出で検査に代える場合とで金額が異なります。
公的書類での受検:5,200円
会場での受検:19,900円
[参考]技能証明試験の種別・手数料(一般財団法人日本海事協会)
無人航空機操縦者技能証明書の交付手数料
晴れて試験に合格した後は、国家資格を取得していることを証明する「無人航空機操縦者技能証明書」の交付を受けるための手数料も必要となってきます。
初めて交付を受ける場合(新規申請)の手数料は3,000円です。
[参考]
無人航空機操縦者技能証明書の交付手数料額(国土交通省)
登録検査機関等に係る登録免許税の納付要領(国土交通省)
◆1等資格については登録免許税の納付も必要
1等資格を取得して技能証明書の交付を受ける場合は、上記手数料に加えて登録免許税(3,000円)の納付も必要です。
なお、この登録免許税は新規登録時のみ納付が必要で、更新時には不要です。
[参考]登録検査機関等に係る登録免許税の納付要領(国土交通省)
機体認証の手数料
国家資格取得者にとって実質的にマストといえる機体認証。その手数料はドローン1機ごとに発生します。
手数料額は、機体重量、第一種機体認証か第二種機体認証か、新規申請か更新申請か、型式認証を受けている機体かどうかによって変わってきますので、ケース別の手数料額は『無人航空機の機体認証の手数料額』(国土交通省)でご確認ください。
ここでは、本記事をお読みの皆さまにとって一番現実的で最多ケースとなると思われる「型式認証を受けている量産機について新規申請する場合」の手数料をご紹介します。(下表)
型式認証機はまだ存在しないが、その登場を待つのが現実的
上の表は型式認証を受けている量産機の機体認証を新規申請するケースについてまとめたものですが、そうした量産機は現時点では存在しておらず、型式認証未取得機としての申請しかできない状況です。
そんな状況下、特段の事情がない限り、飛行させる予定の機種が型式認証を受けるのを待ってから機体認証の検査を受けるのが現実的です。
なぜなら、型式認証を受けていない機種としてフルコースで行われる検査には相当の時間がかかると見込まれ、検査に手間がかかる分だけ手数料もかなり高額となるからです。
【ケース1】型式認証を受けていない新品の量産機(機体重量4〜25kg)1機を、第二種機体認証を受けるために国土交通省にて検査する |
【ケース2】型式認証を受けていない、既に使用を開始している機体1機を、特定空域(人口密度が1km2当たり1万5千人以上の区域の上空を含む空域)を飛行させる前提で、第一種機体認証を受けるために国土交通省にて検査する |
型式認証を受けていない機種で機体認証を受ける場合、上記2例のように数十万円、場合によっては100万円以上の費用がかかってきます。そこまでのコストを負担してでもというケースはごく限られるでしょう。
[参考]無人航空機レベル4飛行ポータルサイト〜機体認証〜(国土交通省)
《どうやって取る?》ドローン国家資格(免許)の取り方
[出典]レベル4飛行実現に向けた新たな制度整備(同資料内画像を加工)
新設される資格(無人航空機操縦士)の取り方は、自動車の運転免許の取り方に似ています。
同資格を取得するには、国が指定する試験機関(自動車でいうところの運転免許試験場のような機関)で実施される試験に合格することでドローンに関する技能を証明しなくてはなりません。
取得の方法は2種類
新設される国家資格の取得方法が2通りある点も、自動車の運転免許の取得方法と似ています。
【取得方法1】ドローンスクールで講習を受ける
登録講習機関として国土交通省に登録されているドローンスクールで対象講習を受けることで、資格を取得できます。(上図の「スクール講習修了者の場合」)
ただし、講習を修了すれば自動的に資格が取得できるわけではなく、指定試験機関で学科試験を受ける必要はあります。
自動車教習所に通って運転免許を取得するのと同様ですね。
【取得方法2】指定試験機関で直接試験を受ける
知識や技能を独学で習得した上で、国土交通省の指定する試験機関に出向いて受験する「直接試験」という方法もあります。
なお、指定試験機関は、現時点では「一般財団法人 日本海事協会」の1ヶ所のみとなっています。
2種類の取得方法の決定的な違い:実地試験が免除されるかどうか
2通りある資格取得の方法の決定的な違いは、指定試験機関での実地試験受験の有無です。
指定試験機関で実施されるのは、学科試験・実地試験・身体検査(視力・色覚・聴力検査等)の3つですが、登録講習機関での指定講習修了生は実地試験が免除されるのです。
つまり、スクールで対象講習を修了していれば学科試験と身体検査の2つで済みますが、スクールに通わず指定試験機関で直接試験に臨む場合は免除措置は一切なく、学科試験・実地試験・身体検査をフルで受ける必要があります。
おすすめはドローンスクールで受講して取得する方法
当メディアとしておすすめする資格取得方法は、上記【取得方法1】のドローンスクールで受講して取得する方法です。
その理由を一言で言うと、ドローンスクールで受講して取得するほうがスムーズであると考えられるから。
教材を自ら揃えて学習し、ドローンを自由に飛ばせる場所を自力で確保して一定時間以上の操縦訓練を積むというのは決して簡単なことではありません。
その点、ドローンスクールでは必要な教材や設備、練習場所があらかじめ用意されており、国家資格取得に求められる知識やスキルをプロの指導のもと効率的に習得できます。
インタビュー結果:約8割がドローンスクールに通って試験を受ける予定
ドローンスクールで受講しての資格取得は、主流となると考えられる方法でもあります。
実際にドローンナビゲーターが2022年12月6日に行った、ドローンの国家資格を取得予定の方115名に対するネットインタビューで、どちらの方法で国家資格を受講予定かを聞いたところ「ドローンスクールで受講後に受験」が79.1%と大多数を占めました。
この結果を見ると、大部分の方はドローンスクールで講習を受けた上で国家資格を取得するつもりであることがわかります。
逆に、試験期間で直接受験を予定している方は、ドローン業界に一部いるような「ドローンの操縦経験が豊富で、自分自身の腕前に自信がある方」であると考えられます。
このことからも、ドローンの取り扱いに確固たる自信がある方以外は、ドローンスクールで講習を受講する方法を取ることが無難といえるでしょう。
国家資格取得の流れ
国家資格取得の流れは、前述のように、スクール(登録講習機関)で受講するかしないかで変わってきます。
申込方法を含む各試験・検査の詳細については後述していますので、ここではおおまかな流れをご紹介します。
登録講習機関で受講する場合(上図の左半分の緑色の流れ)
- 受講や試験予約に必要な技能証明申請者番号をDIPS(ドローン情報基盤システム)にて取得する。
- スクールで学科講習および実地講習を受け、修了審査を受ける。
- 試験申込システムでアカウント登録の上、学科試験の受験をオンラインで申し込み、指定試験機関で学科試験を受ける。
- 身体検査の受検をオンラインで申し込む。書類を提出することで身体検査に代える受検方法が主流になると見られるが、実際に身体検査を受ける場合は指定試験機関で受検する。
- 身体検査にも合格したら、DIPSで技能証明の発行申請を行う。
※なお、必ずしも上記の順序である必要はなく、2の受講に先駆けて3の学科試験および4の身体検査を済ませることも可能です。
登録講習機関で受講しない場合(上図の右半分のオレンジ色の流れ)
- 受講や試験予約に必要な技能証明申請者番号をDIPS(ドローン情報基盤システム)にて取得する。
- 試験申込システムでアカウント登録の上、学科試験の受験をオンラインで申し込み、指定試験機関で学科試験を受ける。
- 学科試験に合格したら、実地試験の受験をオンラインで申し込み、指定試験会場で実地試験を受ける。
- 身体検査の受検をオンラインで申し込む。書類を提出することで身体検査に代える受検方法が主流になると見られるが、実際に身体検査を受ける場合は指定試験機関で受検する。
- すべてに合格したら、DIPSで技能証明の発行申請を行います。
※実地試験は学科試験合格後でないと受けられませんが、身体検査受検のタイミングは問われませんので、3と4は前後しても構いません。
[参考]
初めて無人航空機操縦士試験を受験される方(登録講習機関の講習を受講)
初めて無人航空機操縦士試験を受験される方(指定試験機関で実地試験を受験)
《参考》ドローン国家資格(免許)にあたりどのようなスクールを選ぶべき?
登録講習機関での受講を決めた場合、どのドローンスクールを選べばよいかで迷う方も多いでしょう。
どういったポイントを見ればよいかをご紹介します。
【ポイント1】取りたい資格に対応しているか
国家資格には、限定変更との組み合わせも含めると全部で8通りの取得パターンがあります。
そのスクールが「自分の希望する資格取得パターン」に対応しているかを確認しましょう。
(※限定変更については基本資格を取得してから後日追加受験することも可能です)
1等資格を取得したいのに、2等資格取得コースしか開講していないスクールでは目的を達成できません。
また、機体重量25kg以上の機体を飛行させるつもりでいるなら、25kgの限定変更に対応しているスクールであることが大前提です。
特定のスクールが取りたい資格に対応しているかどうかは「登録講習機関情報一覧」(国土交通省)で確認できますので確認しましょう。
【ポイント2】アクセスは良好か
問題なく通える範囲内にあるかどうかもスクール選びで欠かせないポイントです。
なぜなら、国家資格取得コースは最短でも数日間は通う必要があり、アクセスがあまりに悪いスクールでは修了するまで通い続けられないことも考えられるからです。
【ポイント3】ドローン経験値の高いスクールであるか
ポイント1および2をクリアしている複数のスクールのうちのどこに通うかで迷うなら、スクールとしてのドローン経験値の高さを参考にするとよいでしょう。
具体的には……
- スクール運営会社が実際にドローンを使って事業を行っているか
- 自分が想定する飛行現場の経験が豊富な講師がいるか
といった点を特に重視して検討するのがおすすめです。
《決めかねたら所属管理団体で選んでも》
どこのドローンスクールに通うかをそれでもなお決めかねる場合には、候補校がどの管理団体に所属しているかの観点から考えてみるのも一案です。
その理由は、ドローンスクールの多くがスクールを指導・監督する立場にある「管理団体」に属しており、所属する管理団体の規模や特色が講習内容にある程度影響するからです。
主要な管理団体を以下に挙げますので、ご参考になさってください。(国内全スクールの過半数が下記6団体のいずれかに所属しています)
▼エアロエントリー(DJI JAPAN系列)
世界最大手ドローンメーカーであるDJI社が自社製品ユーザーを対象に行う「DJI CAMP」の運営会社です。2022年11月時点で230校のドローンスクールが所属しています。
▼JUIDA(一般社団法人日本UAS産業振興協議会)
多くの団体や企業が参加する産学連携による管理団体です。
また、管理団体として古参の部類であり、「ドローンスクールといえばJUIDA」というほどのメジャーな存在でもあります。2022年11月時点で219校のドローンスクールが所属しています。
▼DPCA(一般社団法人ドローン撮影クリエイターズ協会)
ドローン空撮事業をメインとする団体です。災害時のドローン運用の在り方の研究・実証にも注力しています。2022年11月時点で219校のドローンスクールが所属しています。
▼農林水産航空協会
農業用ドローンに強い管理団体です。2022年11月時点で73校のドローンスクールが所属しています。
▼ドローン検定協会
ドローン関連の民間資格のうち認定者数が最多といわれる「ドローン検定」を実施する管理団体です。2022年11月時点で62校のドローンスクールが所属しています。
▼日本ドローンビジネスサポート協会
ビジネス活用を目的とした実践的なドローン運用スキルの習得をサポートする管理団体です。2022年11月時点で56校のドローンスクールが所属しています。
ドローンスクールの選び方については別記事にて「ドローンに関する全般的な知識や基本的スキルを学びたい場合のチェックポイント」や「特定分野に特化した知識・スキルを身につけたい場合のチェックポイント」を解説しています。より詳しくお知りになりたい方はぜひご参照ください。
《詳細》ドローン2等資格(免許)取得希望者がスクールに通う場合の受講時間数やカリキュラム、必要な事前準備
(※限定変更:資格には「目視内飛行でないとダメ」「日中の飛行でないとダメ」「機体重量25kg未満でないとダメ」という3種類の限定がかかっており、これらの限定を解除するには限定変更のための実地講習の受講が必要です。限定変更分の追加実地講習を受けることで、目視外飛行・夜間飛行・重量25kg以上の機体での飛行が可能となります)
ドローンスクールで講習を受けて2等資格を取得する場合の受講時間数やカリキュラムを確認しておきましょう。
受講時間数
2等資格取得希望者に必要な受講時間数は、初学者の場合と経験者の場合とで異なります。
その理由は、経験者については必要受講時間数が大幅に減免されるからです。
初学者の場合:20時間以上(学科講習と実地講習の合計)
経験者の場合:6時間以上(学科講習と実地講習の合計)
また、目視外飛行・夜間飛行・重量25kg以上の機体での飛行を行うにはそれ専用の実地講習(限定変更)が必要となりますが、その場合の追加受講時間数は以下のとおりです。
<目視外飛行を行うための追加受講時間数>
初学者の場合:2時間以上
経験者の場合:1時間以上
<夜間飛行を行うための追加受講時間数>
初学者の場合:1時間以上
経験者の場合:1時間以上
<機体重量25kg以上の機体での飛行を行うための追加受講時間数>
初学者の場合:2時間以上
経験者の場合:1時間以上
カリキュラム
講習は、ドローン関連の知識(法令・規則、飛行原理等)習得のための「学科講習」と、操縦・操作スキル(飛行前準備・緊急操作・飛行後措置等)習得のための「実地講習」から構成されます。
学科講習
カリキュラムはスクールごとに異なってきますが、必修科目として定められている科目は当然網羅しているはずです。
2等資格取得希望者向けの学科講習で履修が必要な科目は下表のとおりで(初学者も経験者も同内容。受講時間数は異なります)、これらの科目を学科試験対策の要素も交えながら学んでいくことになるでしょう。
履修科目についてさらに詳しくお知りになりたい場合は、「無人航空機の登録講習機関及び登録更新講習機関に関する省令」(国土交通省告示第九百五十一号)をご参照ください。
1 無人航空機操縦者の心構え |
一 航空法全般 二 航空法以外の法令等 |
3 無人航空機のシステム |
一 無人航空機の機体の特徴(種類及び飛行の方法) 二 飛行原理と飛行性能 三 機体の構成 四 機体以外の要素技術 五 機体の整備・点検・保管・交換・廃棄 |
4 無人航空機の操縦者及び運行体制 |
一 操縦者の行動規範及び遵守事項 二 操縦者に求められる操縦知識 三 操縦者のパフォーマンス 四 安全な運航のための意思決定体制(CRM等の理解) |
5 運航上のリスク管理 |
一 運航リスクの評価及び最適な運航計画の立案の基礎 二 気象の基礎知識、気象情報を基にしたリスク評価及び運航計画の立案 三 機体の種類に応じた運航リスクの評価及び最適な運航計画の立案 四 飛行の方法に応じた運航リスクの評価及び最適な運航計画の立案 |
実地講習
2等資格取得希望者向けの実地講習で履修が必要な科目は下表のとおりです。(初学者も経験者も同内容。受講時間数は異なります)
さらに詳しくお知りになりたい場合は、「無人航空機の登録講習機関及び登録更新講習機関に関する省令」(国土交通省告示第九百五十一号)をご参照ください。
1 飛行計画、リスク評価結果及び飛行環境の確認 |
2 運航体制、手順、役割分担当の管理の確認(※飛行機型、ヘリコプター型のみ) |
3 機体の状況、操縦モード、バッテリーの確認 |
4 フェールセーフ機能の適切な設定、飛行経路の設定、自動飛行の設定 |
5 基本操縦(手動) |
6 基本操縦(自動)(※目視内飛行の限定変更ありの場合のみ) |
7 基本操縦以外の機体操作(※目視内飛行の限定変更ありの場合のみ) |
8 様々な運航形態への対応 |
9 安全に関わる操作 |
10 緊急時の対応 |
11 飛行後の記録、報告 |
必要な事前準備
登録講習機関での受講を申し込む際には「技能証明申請者番号」が必要です。
DIPS(ドローン情報基盤システム)の技能証明メニューで、あらかじめ取得申請を行っておきましょう。
取得申請手順はこちらのマニュアルでご確認ください。
《詳細》ドローン1等資格(免許)取得希望者がスクールに通う場合の受講時間数やカリキュラム、必要な事前準備
(※限定変更:資格には「目視内飛行でないとダメ」「日中の飛行でないとダメ」「機体重量25kg未満でないとダメ」という3種類の限定がかかっており、これらの限定を解除するには限定変更のための実地講習の受講が必要です。限定変更分の追加実地講習を受けることで、目視外飛行・夜間飛行・重量25kg以上の機体での飛行が可能となります)
ドローンスクールで講習を受けて1等資格を取得する場合の受講時間数やカリキュラムを確認しておきましょう。
受講時間数
1等資格取得希望者に必要な受講時間数は、初学者の場合と経験者(既に民間資格を取得している者等)の場合とで異なります。
その理由は、経験者については必要受講時間数が大幅に減免されるからです。
初学者の場合:68時間以上(学科講習と実地講習の合計)
経験者の場合:19時間以上(学科講習と実地講習の合計)
また、目視外飛行・夜間飛行・重量25kg以上の機体での飛行を行うにはそれ専用の実地講習(限定変更)が必要となり、その場合の追加受講時間数は以下のとおりです。
<目視外飛行を行うための追加受講時間数>
初学者の場合:7時間以上
経験者の場合:5時間以上
<夜間飛行を行うための追加受講時間数>
初学者の場合:1時間以上
経験者の場合:1時間以上
<機体重量25kg以上の機体での飛行を行うための追加受講時間数>
初学者の場合:2時間以上
経験者の場合:1時間以上
カリキュラム
講習は、ドローン関連の知識(法令・規則、飛行原理等)習得のための「学科講習」と、操縦・操作スキル(飛行前準備・緊急操作・飛行後措置等)習得のための「実地講習」から構成されます。
学科講習
1等資格取得希望者向けの学科講習で履修が必要な科目は、2等資格取得希望者向けの学科講習の場合と同じ(ただし受講時間数は増える)ですので、前章をご参照ください。
実地講習
1等資格取得希望者向けの実地講習で履修が必要な科目は下表のとおりです。(初学者も経験者も同内容。受講時間数は異なる)
さらに詳しくお知りになりたい場合は、「無人航空機の登録講習機関及び登録更新講習機関に関する省令」(国土交通省告示第九百五十一号)をご参照ください。
1 飛行計画、リスク評価結果及び飛行環境の確認 |
2 運航体制、手順、役割分担当の管理の確認(※飛行機型、ヘリコプター型のみ) |
3 機体の状況、操縦モード、バッテリーの確認 |
4 フェールセーフ機能の適切な設定、飛行経路の設定、自動飛行の設定 |
5 基本操縦(手動) |
6 基本操縦(自動)(※目視内飛行の限定変更ありの場合のみ) |
7 基本操縦以外の機体操作 |
8 様々な運航形態への対応 |
9 安全に関わる操作 |
10 緊急時の対応 |
11 飛行後の記録、報告 |
必要な事前準備
登録講習機関での受講を申し込む際には「技能証明申請者番号」が必要です。
DIPS(ドローン情報基盤システム)の技能証明メニューにて、あらかじめ取得申請を行っておきましょう。
取得申請手順はこちらのマニュアルでご確認ください。
《詳細》ドローン国家資格(免許)学科試験の内容・会場・日程・申込方法など(1等・2等共通)
実際に受験することになった場合に備え、学科試験の内容や受け方などの詳細を確認しておきましょう。
内容
学科試験では、国土交通省が発行する「無人航空機の飛行の安全に関する教則」に準拠する内容が出題されます。
出題科目は1等も2等も全体としては概ね同じですが、1等のほうが出題範囲が広く、たとえば「カテゴリーⅢ飛行におけるリスク評価」は2等では出題されず1等だけ出題される科目です。
出題科目について詳しくお知りになりたい方は、日本海事協会のこちらのページをご参照ください。
勉強方法
スクールの国家資格取得コースでは座学も提供されます。受験に必要な内容を効率的に学べるようカリキュラムが組まれているはずですので、受講する場合はそれに沿って学べばしっかり対策できるでしょう。
独学で臨む場合は、参考書や問題集は販売されていない模様ですので、「無人航空機の飛行の安全に関する教則」を読み込み、サンプル問題(1等・2等)を参照しましょう。
合格基準
現時点での合格ラインは下記のとおりです。
2等資格:正答率80%程度
1等資格:正答率90%程度
ただし、問題改定のあるたびにこの合格基準と等しくなるような値を統計的に推定して設定し直されるため、多少変動する可能性があります。
受け方
コンピュータに表示された試験問題にマウスやキーボードを使って解答するCBT(Computer Based Testing)方式で受験します。
2等資格:3択問題50問を30分で解く
1等資格:3択問題70問を75分で解く
指定試験機関からの通知をもって正式に合格と判定されますが、採点まで含めた全プロセスがコンピュータ化されているため、合否自体は終了直後に判ります。
試験会場
学科試験の会場は、こちらの検索画面で探せます。
日程
学科試験の日程は、こちらの試験会場検索・開催日程確認画面で確認できます。
申込方法
- 無人航空機操縦士試験申込システムで試験申込を行います。(ここでの申込みはあくまで受験する旨の申請であり、実際の試験申込は次の手順2で行います)
- 申込完了画面および申込完了通知メールに記載されているURLからCBT運営会社(学科試験に採用されているコンピュータを利用して実施する方式の試験を実施している会社)の無人航空機操縦士試験学科試験オンライン受付ページにアクセスします。
- 同ページ上での予約手続きに必要な「プロメトリックID」を記載されている指示に従い取得します。(他の資格試験をCBT方式で受けたことがありプロメトリックIDを既に所有している場合は本プロセスは不要)
- 続けて学科試験の申込みを行います。
詳細な手順については「無人航空機操縦士試験申込システム操作マニュアル」をご参照ください。
必要な準備
- 指定試験機関が運営管理する「無人航空機操縦士試験申込システム」でのアカウント登録(受験申込み前に必要な手続き。スクール受講生の場合は、講習修了と受験の前後は問われないものの、修了後にアカウント登録を行うのが基本的な流れ)
- 試験会場で提示する本人確認書類(写真付きの公的身分証明書等)の準備
※登録講習機関で受講していない場合は、DIPS(ドローン情報基盤システム)の技能証明メニューからの「技能証明申請者番号」の申請が最初に必要です。取得申請手順はこちらのマニュアルでご確認ください。
[参考]
手続きの案内(日本海事協会)
試験の案内〜学科試験〜(日本海事協会)
《詳細》ドローン国家資格(免許)身体検査の内容・会場・日程・申込方法など(1等・2等共通)
ドローンの国家資格を取得するには、身体検査にも合格することが必要です。
1等資格と2等資格に共通の内容となっています。
内容
視力、色覚、聴力、運動能力等について必要な身体基準を満たしているかの確認が行われます。
合格基準
上表の基準を満たしていれば合格です。
※1等資格で25kg以上の機体を飛行させたい場合の基準は別に設定予定で、現時点では未定です。
※基準に満たない場合であっても、メガネや補聴器などの矯正器具を用いたり、機体に特殊な設備・機能を設けたりして飛行の安全を確保できるようにすれば、条件付きで資格が付与されることもあります。
受け方
指定試験機関で実際に検査を受ける以外に、有効な公的証明書(自動車運転免許証等)や医療機関の診断書のオンライン提出に代えることも可能です。
具体的な必要書類などについては、こちらのページでご確認ください。
※1等資格で25kg以上の機体を飛行させたい場合の受検方法は、医療機関の診断書の提出のみとなります。
試験会場
身体検査の会場は、こちらの試験会場候補地一覧で探せます。
日程
身体検査の日程は、こちらの日程一覧で確認できます。
申込方法
指定試験機関が運営管理する無人航空機操縦士試験申込システムで身体検査の申込みを行います。
なお、公的証明書等の提出で身体検査に代える場合、証明書等の提出はデータ添付で行うため、申込みと同時に受検は終了となります。
必要な準備
- 公的証明書等を提出する方法で受検する場合は、提出する書類データ(PDFまたはJPEG)を用意(受検タイミングは特に問われないが、学科試験申込み時に併せてもしくは学科試験を受けた後にデータを提出するのが一般的な流れとなると予想される)
- 会場で受検する場合は、会場で提示する本人確認書類(運転免許証やパスポートなどの写真付き公的身分証明証等)を用意(受検タイミングは特に問われないが、学科試験を受けた後に受検するのが基本的な流れ)
- 会場で受検する場合は、必要であればメガネや補聴器などの矯正器具を用意
《詳細》ドローン国家資格(免許)実地試験の内容・会場・日程・申込方法など ※スクールに行かない人だけが受講
学科試験合格者が次に受けるのが実地試験です。
ただし、登録講習機関で受講している受験者については実地試験は免除されるため、受験が必要となるのはスクールに通わず直接試験に臨む人に限られます。
実地試験は機体の種類ごとに実施されますが、ここではドローンに一般的なマルチローター(回転翼航空機)向けの実地試験についてご紹介します。
内容
2等資格では立入管理措置を講じた上で行う昼間かつ目視内での飛行、1等資格では立入管理措置を講ずることなく行う昼間かつ目視内での飛行を安全に実施するための知識および能力を有しているかどうかが、机上試験・口述試験・実技試験で判定されます。
夜間飛行や目視外飛行、25kg以上の機体の飛行を行いたい場合の実地試験(限定変更に係る実地試験)では、それぞれの飛行を安全に実施するための知識および能力を有しているかどうかが判定されます。
試験内容や減点採用基準について詳しくお知りになりたい方は、日本海事協会のこちらのページをご参照ください。
勉強方法
下記の実地試験実施細則や減点基準を参考にして実地での練習を積みましょう。
《2等》
基本(昼間・目視内・25kg未満)に係る実地試験の実施細則
昼間飛行の限定変更に係る実地試験の実施細則
目視内飛行の限定変更に係る実地試験の実施細則
最大離陸重量25kg未満の限定変更に係る実地試験の実施細則
減点適用基準
《1等》
基本(昼間・目視内・25kg未満)に係る実地試験の実施細則
昼間飛行の限定変更に係る実地試験の実施細則
目視内飛行の限定変更に係る実地試験の実施細則
最大離陸重量25kg未満の限定変更に係る実地試験の実施細則
減点適用基準
合格基準
減点方式で採点され、下記基準を満たしていれば合格です。
2等資格:持ち点を100点とし、各試験科目終了時に70点以上確保できている
1等資格:持ち点を100点とし、各試験科目終了時に80点以上確保できている
受け方
機体等の必要備品が準備された試験会場で受験する集合試験方式のほか、受験者側で機体等の備品を準備した場所に試験員を派遣してもらい受験する出張試験方式もあります。
試験会場
実地試験の会場は、こちらの試験会場候補地一覧で探せます。
日程
実地試験の日程は、こちらの日程一覧で確認できます。
申込方法
指定試験機関が運営管理する無人航空機操縦士試験申込システムで実地試験の申込みを行います。
※実地試験は学科講習に合格した後しか受験できません。
必要な準備
- 会場で提示する本人確認書類(運転免許証やパスポートなどの写真付き公的身分証明証等)を用意
- 持参する筆記用具の用意
- プロポ用ネックストラップを持ち込みたい場合はその用意
- 会場に準備されている保護メガネとヘルメットではなく自前のものを使用したい場合はその用意
[参考]
技能証明申請者番号取得手続操作マニュアル(国土交通省)
手続きの案内(日本海事協会)
試験の案内〜回転翼航空機(マルチローター)〜(日本海事協会)
《合格証明番号には有効期限がある》
学科試験に合格しても、実地試験や身体検査が不合格となるといったケースは当然考えられます。
そうした場合、合格日から一定の期間内であれば、不合格だった試験・検査だけ改めて受け合格することで資格を取得できます。
▶︎学科試験の合格証明番号の有効期間は、合格の正式な通知日(学科試験合格証明番号の発行日)から起算して2年間です。
▶︎身体検査の合格証明番号の有効期間は、合格の正式な通知日(身体検査合格証明番号の発行日)から起算して1年間です。
(おまけ)操縦ライセンス制度がドローンスクールに与える影響
ドローンスクール を運営されている方や、ドローンスクールに通われている方は、ここまでお読みになって「今後自分たちにはどんな影響があるんだろうか?」とお思いではないでしょうか。
今後の影響を可能な範囲で予測してみましょう。
ドローンスクールが4種類に分類される
全国各地のドローンスクールは、操縦ライセンス制度の創設に伴い大きく次の4種類に分類されるようになるでしょう。
- 1等資格取得に向けた講習が可能なスクール
- 1等資格には対応しないが2等資格取得に向けた講習は可能なスクール
- 技能証明の更新に必要な講習が可能なスクール
- 現行の民間資格への対応を今後も継続するスクール
ドローンの操縦ライセンスは国家資格として新設されるため、同資格取得に必要な知識・スキルの習得の場として機能するスクールは所定の要件を満たす「登録講習機関」に限られます。
しかし、要件を満たせるスクールばかりとは限りませんので、すべてのスクールが登録講習機関となれるわけではありません。
そのため、登録講習機関としては上記1〜3に該当するスクールに分かれ、そこに4の従来型の民間資格対応スクールも共存するようになると考えられます。
競争が激化する
競争の激化も考えられます。
ドローンの需要増加に伴い、ドローンスクール の数も年々増えています。
操縦ライセンス制度が創設されることで、登録講習機関として登録されたスクール の信用性が高まり、競争が激化。
そこに、大手企業が資本力とネームバリューを生かして新しくスクール を創設し、登録講習機関として参入してくることは十分考えられます。
現に2021年夏にJR九州グループのJR九州商事株式会社がドローンスクールを開校したことをはじめ、2022年も参入が増え続けています。
であれば、スクールとして生き残るために何ができるのでしょうか。
生き残るには他スクールとの差別化ポイントが必要となる
当メディアとしては、ドローンスクールが今後競争を勝ち抜くためには
- ドローンの各用途(空撮、農薬散布、点検etc)に特化した講習やノウハウの提供
がより重要になると考えています。
制度導入により全国のドローンスクールのシラバスは統一されますが、ドローンをビジネス等に活用したいユーザーにとっては、この統一された講習を受けただけでは、すぐに現場でドローンを活用することは難しいでしょう。
(範囲が拡がり続けているドローンの活用方法のすべてをマニュアル化するのは困難と思われます)
そうした中、現在一部のスクールにみられるような「特定用途(空撮、農薬散布、点検、測量etc)に特化したコースやノウハウの提供」は大きな差別化ポイントになるでしょう。
生徒さんに資格を取らせることがゴールではなく、資格を取った後の生徒さんのビジネス/ドローン活用の成功をゴールとする。
このような思想を持ってスクールを運営することが、多くの人に愛されるスクール作りの鍵となるのではないでしょうか。
ドローンの国家資格(免許)取得と併せて、個別の機体認証を申請する際に気をつけたいこと
最後に補足として、機体認証に関するより具体的な情報をお伝えします。
前述のとおり、国家資格取得者としてのメリットを享受するには、飛行させるドローンが機体認証を取得していることが条件です。
飛行させる個々のドローンについて機体登録を申請する際に気をつけたいことがありますので、以下に挙げます。
検査機関は2ヶ所あるが、いずれも受付窓口は国土交通省
個別の機体認証申請時に検査を行う機関は、国指定の登録検査機関と国土交通省の2ヶ所です。(登録検査機関は現時点では一般財団法人日本海事協会のみとなっています)
ただし、たとえ登録検査機関での検査を希望する場合であっても、申込先は国土交通省です。
検査申請時に登録検査機関での検査を希望することを明示すると、それを受けて国土交通省から登録検査機関に検査が依頼されるという流れになっています。
なお、2ヶ所ある検査機関のどちらかを選べる場合もあれば、国土交通省しか選べない場合もあります。
詳細は上の表のとおりですが、ざっくりと言うと、特に厳しい安全性確認が必要なケースについては国土交通省でしか検査を受けられません。
《登録検査機関での検査が可能なケースは基本的に登録検査機関で》
第二種機体認証を受ける場合で「型式認証取得済みの新品の機体」あるいは「型式認証取得済みかつメーカー等による整備済みの中古の機体」については、登録検査機関でも国土交通省でも検査を受けられます。
ただし、こうしたケースでは基本的には登録検査機関で検査を受けることとなっており、国土交通省による検査を希望する場合は登録検査機関での検査よりも時間がかかります。
申請するなら事前調整が必要
機体認証を受けるに当たっては、いきなり申請するのはNG。
申請に先立って検査内容や日程、費用見積もりなどについて、国土交通省または登録検査機関と事前に調整する必要があります。
なぜなら、安全性基準への適合性を証明する方法は一律ではなく、検査を受けようとするドローンにより想定される検査内容や回数が異なり、検査手数料も変わってくる可能性があるためです。
事前調整がないまま申請しても受理されませんので注意しましょう。
《制度導入に伴い定められた4つの義務》
操縦ライセンス制度導入に当たり、次の4つの義務も定められました。
- 飛行計画の通報(特定飛行の場合)
- 飛行日誌の記載(特定飛行の場合)
- 事故・重大インシデントの報告
- 負傷者発生時の救護
これら4つの義務すべてについて違反時の罰則が規定されています。
[参考]運航ルール(国土交通省)
まとめ
▼2022年12月5日からスタートした操縦ライセンス制度の対象は、次の9種類の特定飛行および25kg以上の機体での飛行。
- 上空150m以上の飛行
- 危険物輸送を伴う飛行
- 空港周辺の飛行
- 物件投下(液体を含む)を伴う飛行
- イベント上空の飛行
- 人や物との距離が30m以内となる飛行
- 夜間飛行
- 目視外飛行
- 人口集中地区上空の飛行
▼国家資格を取得していると、特定飛行に必要な事前申請が不要となったり簡略化されたりする。
▼新設される2種類の資格「1等資格(一等無人航空機操縦士)」と「2等資格(二等無人航空機操縦士)」の違いは、特定飛行時の立入管理措置の必要性の有無。
2等資格では立入管理措置を講じることが必須だが、1等資格なら立入管理措置を講じなくても飛行可能。(ただし事前申請は必要)
▼1等資格を取得していると「立入管理措置を講じないで行う目視外飛行」(具体的にはたとえば、陸上輸送が困難な地域で生活物品や医薬品などを空から配送するなど)が可能に。
▼新設された国家資格を取得しても、機体認証を受けなければ特定飛行時に申請不要(または簡略化)というメリットは享受できないため、国家資格取得希望者にとり機体認証は実質必須。
▼資格を取得する方法には、
- 登録講習機関で受講後、指定試験機関で学科試験と身体検査を受ける
- 独学で知識・スキルを身につけ、指定試験機関で学科試験・実地試験・身体検査を受ける
の2通りがあるが、当メディアとしては1の登録講習機関で受講する方法がおすすめ。
▼民間資格を取得している場合は、経験者であるとして必要受講時間数が大幅に減免される。それに応じて登録講習機関での受講費用も初学者向けコースより安くなる見込み。
▼2等資格向けコースの受講料は25〜35万円程度となると予想される。1等資格向けコースの受講料は50〜60万円程度が相場となりそう。