これからドローンを飛ばしてみたい、またはドローン事業を始めようとしている方の中には、ドローンを飛ばすにあたって「無線資格が必要なのでは?」と疑問に思っている方もいるのではないでしょうか?
ドローンを飛ばすにあたって資格が必要かどうかは、ドローンが使用する電波の「周波数」と「出力」、「使用目的」によって決まります。
一般的に国内向けに販売されている「2.4GHz使用、10mW以下の技適マークあり」のドローンであれば資格は必要ありません。
そこでこの記事では、
- ビジネス利用で無線資格が必要なケース
- FPV対応ドローンに必要な無線資格
- 無線資格の種類と取得方法
- 開局申請の流れ
などについてお伝えし、ドローン操縦にあたっての無線資格に関する情報や取得方法についてわかりやすく解説していきたいと思います。
この記事を読めば、ドローン操縦に必要な資格の種類や取得方法についての正確な知識が得られ、自分の目的に合った準備を整えることができるでしょう。
目次
無線資格が必要なのは主に産業用ドローンとFPVドローン
無線資格が必要になる可能性があるのは、主に5.7GHz帯の周波数帯を使用する産業用ドローンと、5.8Ghz帯の映像伝送をするFPVドローンです。
産業用ドローンは、文字通り、産業用に使われているドローン。
ドローンは建築・土木、農業、人命救助など幅広い業種で活用されていますが、それぞれの役割に特化したドローンが産業用ドローンと呼ばれています。
FPVドローンは、主にレースなどで使用される、ゴーグルを装着してリアルタイムの映像を見ながら飛行させることができるドローンです。
それぞれについて詳しくみていきましょう。
産業用ドローンは周波数と出力に注目
業務上ドローンを使用する場合、無線免許が必要なのは以下の3つのケースです。
- 周波数169MHz、出力10mW
- 周波数2.4GHz、出力最大1W
- 周波数5.7GHz、出力最大1W
1~3の場合に必要な免許は、第三級陸上特殊無線技士。
第三級陸上特殊無線技士は業務上の資格であり、趣味目的ではなくドローンを使って仕事をするための資格です。
「169MHz/10mW」「2.4GHz/1W以下」「5.7GHz/1W以下」は法改正で新しく設けられたドローン用帯域
ドローンの利用率が上がったことによる2016年8月の電波法改正により新しく設定された周波数帯が5.7GHz帯(105MHz幅)と2.4GHz帯(13.5MHz幅)の2つ。
また、これに合わせて、バックアップとして169MHz帯にも低速データ通信・遠隔制御に使えるドローン用帯域が設けられました。
これらの周波数帯でドローンを使用する場合に「第三級陸上特殊無線技士」の資格が必要となります。
(引用:総務省 電波利用ホームページ)
最近のドローンは、通信手段に無線LANを用いて通信制御と映像伝送を同時に行う製品が多くなっています。
しかし、既存の無線LANでは地上と通信できる距離が短く、産業用のドローンでは使い勝手が悪かったため、新たに長距離映像伝送が可能なドローン用周波数帯が設けられたのです。
新しく設定された周波数帯では、無線LANの200mW(10mW/MHz)の5倍、1Wの出力(空中線電力)で運用できるため、長距離映像伝送が可能になりました。
アマチュア無線が使われるFPV対応ドローンは免許が必要
前章で紹介したケースの他に資格が必要になるのは、ドローンレースなどに使用されるFPV対応ドローンです。
FPVドローンはリアルタイムでの映像が視認必須のため、多くは5.8Ghz帯の映像伝送をしています。
日本では5.8Ghz帯の電波を使用する場合には、個人用途の場合「第四級アマチュア無線技士」以上の資格、ビジネス用途では「第三級陸上特殊無線技士」以上の資格、それに加えて電波を使用するための開局申請が必要になります。
ビジネス用途の定義とは
アマチュア無線の電波法上での定義は「金銭上の利益のためでなく、もっぱら個人的な無線技術の興味によって行う自己訓練、通信及び技術的研究の業務をいう。」(電波法施行規則第3条第1項第15号)となっています。
昨今仕事のあり方が変化していることもあり、解釈の仕方が難しい面がありますが、対価を受ける前提でFPV撮影をしたのならばそれが「仕事」と判断される可能性は大いにあると考えた方がいいでしょう。
大衆向けに販売している汎用型ドローンは免許がいらない
例えばDJI Phantomなどの、大手メーカーが大衆向けに販売している汎用型ドローンは、免許が要らないケースがほとんどです。
電波法上では、要約すると以下のように記載されています。
- 発射する電波が極めて微弱な無線局
- 一定の技術的条件に適合する無線設備を使用する小電力無線局
つまりどういうことかと言うと、2.4GHzで10mW以下の技適マークありのドローンであれば、資格なしで操縦可能ということです。
DJIのような大手メーカーが国内で流通させているドローンの場合、2.4GHz帯の周波数を用いており、送信出力も10mW/MHz以下になっているため、技適マークが付いていれば無線免許も無線局開設も必要ありません。
ただし、DJI製品であっても海外で現地購入した技適マークのない機体や、技適マークが付いているドローンを改造したものは電波法違反になります。
技適マークって?
『技適マーク』とは、『技術基準適合証明』の略称。
「国内の電波法例で定められている技術基準に適合した無線機であること」を証明するためのマークです。
技適マークのないドローンを飛行させてしまうと、電波法違反になる場合があります。技適マークの記載がはっきりしない時は、購入前に販売元に確認しましょう。
ドローンの無線資格(免許)1つ目:陸上特殊無線技士はどんな資格?
どんな場合にどの資格が必要かわかったところで、次にそれぞれの資格について、取得方法も含めて詳しくご紹介します。
「陸上特殊無線技士」とは、陸上で無線局の無線設備に関する技術的な操作を行う際に必要となる免許。
総務省所管の国家資格です。陸上特殊無線技士には一級、二級、三級の3種類があり、ドローン操縦に必要なのは三級(もちろん三級以上を取得しても操縦可能)です。
営利目的(事業等)で使用するドローンで「169MHz/10mW」「2.4GHz/1W以下」「5.7GHz/1W以下」に該当する場合、第三級陸上特殊無線技士(またはそれ以上)の資格が必要です。
取得方法
第三級陸上特殊無線技士の取得方法は以下の2つです。
- 公益財団法人 日本無線協会が開催している国家試験を受験して合格する
- 養成講座や講習会に参加、もしくはe-ラーニングを受講して修了試験を受けて合格する
国家試験を受験して合格する
陸上無線技士の取得方法の一つは国家試験を受験すること。
公益財団法人日本無線協会が年3回開催していますが、令和4年2月からはCBT方式による国家試験も実施されます。
法規12問と無線工学12問の4択マークシート方式で、難易度は中学程度。合格率は7~8割ということから、きちんと勉強すれば誰でも取得できる内容と言えるでしょう。
受験する場合は、基本的にインターネットで申請を行います。受験に関する詳しい情報はこちらから確認できます。→ 公益財団法人 日本無線協会
養成講座や講習会に参加、もしくはe-ラーニングを受講して修了試験を受けて合格する
独学で勉強して国家試験を受ける方法の他に、養成講座や講習会に参加、もしくはe-ラーニング(通信講座)の受講後に修了試験を受けて取得する方法もあります。
養成課程では一日かけて講習を受け、最後に修了試験を受けて合格すれば取得可能。
必要な知識を学んだ後その日のうちに試験を行うため、きちんと受講していれば合格できます。
日本無線協会本部が行っている養成課程の他、「トライアロー」や「QCQ Planning」のような委託法人、団体も講習会を開催しています。
自宅で学習できるeラーニングも人気
自宅など好きな場所でPCやタブレット、スマートフォンを使用して学習できるeラーニングは、講習会の日程に合わせることができない方や自分のペースで学習したい方におすすめです。
修了試験は全国180箇所のCBTセンターで受験可能。小テストで重点的に試験対策を行い、小テストの結果が悪くても追試を受けて合格点に達するまで繰り返し学習することができます。
eラーニング版も用意されている団体は「トライアロー」や「ベータテック」など。
どの取得方法がおすすめ?
試験内容としては、講習会で一日で学べる内容なので、独学でも数週間もあれば合格できるだけの知識は身につくでしょう。
ただ、コツコツと勉強することが苦手という方や、短期間で取得したいという方は、一日で試験まで終了する養成課程や講習会に参加するのがおすすめです。
価格的には、国家試験の受験料は三級であれば手数料を合わせても6,000円以下、講習会、eラーニングの費用相場は20,000円~ほどです。
ドローンの無線資格(免許)2つ目:アマチュア無線技士はどんな資格?
「アマチュア無線技士」とは、個人の趣味として無線操作を行うことができる国家資格です。
第一級〜第四級の4種類があり、級によって扱える周波数、空中線電力、電波の種類が異なります。
5.8Ghz帯の映像伝送を行うFPVドローンを操作するためには、個人用途の場合「第四級アマチュア無線技士」以上の資格が必要です。
取得方法
第四級アマチュア無線技士の取得方法は以下の2つです。
- 公益財団法人 日本無線協会が開催している国家試験を受験して合格する
- 一般財団法人日本アマチュア無線振興協会または他の委託法人、団体が主催する講習会を受講したのち、修了試験に合格する
国家試験を受験して合格する
第四級アマチュア無線技士を取得する方法の一つは、公益財団法人 日本無線協会が開催している国家試験に合格すること。
法規12問、無線工学12問の4択マークシート方式で、難易度は中学程度、合格率は7割以上です。試験は公益財団法人日本無線協会により全国で開催されており、令和4年2月からはCBT方式による国家試験も実施されます。
受験に関する詳しい情報はこちらから確認できます。→ 公益財団法人 日本無線協会
講習会を受講したのち修了試験に合格する
独学で勉強して国家試験を受ける方法の他に、一般財団法人日本アマチュア無線振興協会または他の委託法人、団体が主催する講習会に参加、もしくはe-ラーニング(通信講座)の受講後に修了試験を受けて取得する方法もあります。
一般財団法人日本アマチュア無線振興協会(JARD)が開催するアマチュア無線技士養成課程講習会は2日間に渡って法規と無線工学を学んだ後、修了試験を受けます。
詳細はこちらから確認できます。→ 一般財団法人日本アマチュア無線振興協会(JARD)
eラーニングもある
「QCQ Planning」では、講習会の他にeラーニング版の養成課程も受講可能です。
一般財団法人日本アマチュア無線振興協会(JARD)にもeラーニング版はありますが、現在受講可能なのはアマチュア無線技士においては第二級と第三級のみ。
どの取得方法がおすすめ?
試験内容としては、独学でも数週間あれば合格できるだけの知識は身につくでしょう。
ただ、コツコツと勉強することが苦手や短期間で取得したいという方は、二日で試験まで終了する講習会に参加するのがおすすめです。
価格的には、国家試験の受験料は四級であれば5,100円+振込手数料、講習会・eラーニングの費用相場は10,000~20,000円ほどです。
ドローンの無線免許(資格)取得後の開局申請にはかなりの労力と時間が必要
産業用ドローン、またはFPV対応ドローンに必要な免許を取得したら次にしなければならないのが無線局の開局申請です。
自動車に例えて言うなら無線技士の資格が運転免許、無線局の開局が車検のようなもので、ドローンにおいても無線技士免許を取得しただけではドローンを操縦することはできません。
開局申請は、免許取得とは比べ物にならないくらい面倒で、かなりの労力と時間が必要になります。
申請手続きは、電子申請による方法と書面による方法があります。
開局申請の流れ
開局申請手続きの大まかな流れは以下の通りです。
①実際に使用するドローンに搭載する映像送信機(VTX)の系統図を入手する
↓
②回路図と仕様情報が記載された系統図を第三者機関に保証してもらう(JARDかTSS)
↓
③必要書類を準備する
- 無線局免許申請書
- アマチュア局の無線設備の開設保証願書
- 無線局事項書及び工事設計書(A4×2枚)
- 返信用封筒1枚(84円切手貼付)
- 電波使用料 前納申出書
↓
④申請書類を提出する→免許状が届く
↓
⑤第三者機関かが届く調査報告書に記入して返信する
免許がおりるまでの期間は2~3ヵ月見ておいた方がいいでしょう。
また、開局申請手数料や保証料、電波使用料などの費用も必要となり、費用はすべて合わせると7,000~8,000円程度です。
初心者にとってはかなり面倒な作業になるので、一切の手続きをやってくれる日本ドローン無線協会の申請代行サービス(新規開局費用は22,000円)を利用するというのも一つの方法。
まとめ
ドローン操縦にあたっての無線資格に関する情報や取得方法について紹介してきましたが、もう一度大まかな要点を確認しておきましょう。
- 無線資格が必要になる可能性があるのは、主に5.7GHz帯の周波数帯を使用する産業用ドローンと、5.8Ghz帯の映像伝送をするFPVドローン
- 産業用ドローンを使用する場合、無線免許が必要なのは以下の3つのケース
- 周波数169MHz、出力10mW
- 周波数2.4GHz、出力最大1W
- 周波数5.7GHz、出力最大1W
これらの周波数帯でドローンを使用する場合に「第三級陸上特殊無線技士」の資格が必要。
- アマチュア無線が使われるFPV対応ドローンは、個人用途の場合「第四級アマチュア無線技士」以上の資格、ビジネス用途では「第三級陸上特殊無線技士」以上の資格、それに加えて電波を使用するための開局申請が必要。
- 2.4GHzで10mW以下の技適マークありのドローンであれば、資格なしで操縦可能
- 第三級陸上特殊無線技士の取得方法は以下の2つ
- 公益財団法人 日本無線協会が開催している国家試験を受験して合格する
- 養成講座や講習会に参加、もしくはe-ラーニングを受講して修了試験を受けて合格する
- 第四級アマチュア無線技士の取得方法は以下の2つ
- 公益財団法人 日本無線協会が開催している国家試験を受験して合格する
- 一般財団法人日本アマチュア無線振興協会または他の委託法人、団体が主催する講習会 を受講したのち、修了試験に合格する
- 必要な免許を取得したら無線局の開局申請を行わなければならない。かなりの労力と時間を要するので、申請代行サービスを利用するのも手。
一般的に販売されている汎用型ドローンを飛ばすだけなら資格も免許も不要ですが、ドローンの種類、目的、用途によっては無線資格が必要になります。
そして、免許を取得するよりもその後の開局申請に多くの手間がかかるということを知っておくべきでしょう。
事業において資格が必要なドローンを使用する場合、時間に余裕を持って早めに準備を始めることをおすすめします。
本記事で得られた知識を元に、あなたのビジネスにおいてドローン導入がスムーズに進むことを願っています。