皆さん、ドローンを係留する方法をご存じでしょうか。
係留と聞くと船を港に繋ぎ止めてられている場面をイメージされる方も多いかもしれません。
実はドローンも船のように強度な紐やワイヤーで繋ぎ止めながら飛行させる事が可能なのです。
なぜドローンを係留させる必要があるのか。
それはドローンの飛行範囲を制限する事によりドローンが暴走飛行するリスクを減らす事です。
実際にドローンが制御不能により暴走する可能性はあります。
2021年の1年間だけでも通信障害・制御不能によるドローンの暴走事故が国土交通省へ21件報告されています。
国土交通省へ報告されていない事例も含めると件数はさらに多くなるかもしれません。
そのため、ドローンを係留させることは万が一の暴走に備えて考えておくべき飛行の手段なのです。
しかし、ドローンの係留はやり方を間違えると落下や暴走を引き起こしてしまう危険性があります。
そこで今回は、ドローン係留とは何か、安全に係留させるためにはどうすれば良いのかを徹底解説していきます!
ドローンの係留とは?
ドローンの係留とはドローンを強固な紐で繋ぎ止めながら飛行をさせる事です。
操作ミスやドローンの暴走による、想定範囲外への飛行を防止する事が出来ます。
つまり、係留をする事によりドローンをより安全に飛行させる事が出来るようになります。
1章ではまず、そんなドローン係留の具体的なイメージや必要性を解説していきます。
ドローンを強固なワイヤーや釣り糸で繋ぎ止める事
ドローン係留のイメージはこちらです。
係留に必要なものは固定地点と紐です。
紐の起点となる固定地点を作り、その紐をドローンに括り付けながら走行させます。
国土交通省の発表では、ドローンに括り付ける紐は「十分な強度を有する紐等」と定義されています。
具体的に「十分な強度を有する紐等」はどのようなものかと国土交通省へ問い合わせたところ、明確な規定は無く、ワイヤーや釣り糸などを想定しているとの事です。
自動車や航空機等の移動する物に紐を固定する又は人が紐等を持って移動しながら無人航空機を飛行させる行為は係留には該当しません。
ドローンを係留させる場合は必ず動かない物体を固定地点として設定する必要があります。
係留の目的はドローンの暴走を防ぐ事
ドローンを係留する目的は、ドローンが暴走して想定外の範囲への飛行を防ぐ事です。
ドローンが突如制御不能となり暴走をする可能性は0とは言えません。
実際に、国土交通省へ報告されている過去のドローン暴走事故はこちらです。
■事故例1
・発生日:2021/4/28
・事故概要:操縦訓練のため無人航空機を飛行させていたところ、機体操作が不能となり、機体が海上へ墜落し、紛失した。
・原因;購入してから一度も通信が途絶したことはなく、周囲に通信を遮断するような障害物も存在しなかったため、原因は不明。
■事故例2
・発生日:2021/5/9
・事故概要:無人航空機を飛行させていたところ、通信不能となり、機体を紛失した。
・原因:通信不能によるもの
■事故例3
・発生日:2021/7/23
・事故概要:試験飛行のため無人航空機を飛行させていたところ、自動制御が働かず山中に墜落し、紛失した。
・原因:不明
このようにドローンが原因不明の制御不能により事故・紛失につながったという事例は国土交通省に何件も報告されています。
ドローンは突如制御不能となり暴走する危険性があると認識をしておかなければなりません。
ドローンを係留すれば万が一ドローンが暴走した場合や操作を誤ってしまった場合でも、係留範囲内にドローンを止める事が出来ます。
ドローンの係留は、ドローンをより安全に飛行させるための手段なのです。
係留をするとドローン飛行がより手軽に行える
ドローンの係留が注目された背景は、2021年10月に施行されたドローン飛行規制の緩和です。
ドローンを係留する事により、今まで一定条件下で必要だったドローンの飛行許可申請が不要になりました。
つまり、ドローンを係留する事により、今までよりも手軽にドローンを利用出来るようになったという事ですね。
2章ではその規制緩和の内容や申請が免除されるための条件について解説をしていきます。
係留すると、手間だった飛行許可申請が免除される
今までは下記5つのケースでドローンを飛行させる際、国土交通省への飛行許可申請が必要でした。
・人口密集地上空における飛行
・夜間飛行
・目視外飛行
・第三者から30m以内の飛行
・物件投下
引用 https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001425120.pdf
しかし2021年10月の規制緩和で、係留飛行をすれば許可申請が不要となりました。
国土交通省への飛行許可申請手続きは手間がかる上に、承認に時間を要するため飛行の10日前には申請が必要です。
その手間を省く事が出来ると同時に飛行の安全性も確保出来るという事で、ドローンの係留はより注目をされるようになりました。
しかし、係留をすると必ず飛行許可申請が免除されるわけではなく一定の条件があります。
続いては係留による飛行許可申請免除のために必要な条件をご紹介します。
30m以内の飛行と第三者の立入制限が申請免除の条件
ドローンを係留すれば必ず飛行許可申請が免除されるわけでなく、下記2つの条件を満たす必要があります。
①係留で利用する紐は長さ30m以下のものを利用する
飛行許可申請が免除されるにはドローンに括り付ける紐の長さを30m以内に制限しなければなりません。
逆に30m以上の飛行の場合には通常通り飛行許可申請が必要となります。
②飛行範囲内(30m以内)に第三者の立入制限を行う
係留する場合は飛行範囲内に人が立ち入らないようにコーンや人を配置する必要があります。
立ち入り制限に具体的な条件があるか国土交通省に確認を取ったところ、必ずしも人を配置する必要は無く飛行範囲の4隅にコーンを置くなどして外から来た人が立ち入ってはいけない事が分かれば良いとの事でした。
人の配置は必須ではありませんが、看板やコーンを設置する事により人が必ず入って来ず安全性が確実に確保される状況を作る必要があります。
このように、係留により飛行許可申請が免除される場合は、ドローンの飛行が制限されます。
飛行許可申請免除の活用場面としては、初心者のドローン訓練などのスポットでのドローン利用(30m以内)でしょう。
一方で農薬散布や空撮など30m以上ドローンを飛行させる必要があるケースでは飛行許可申請免除の活用は出来ません。
ビジネスでドローンを活用する場合は、飛行許可申請免除が利用できる場面は限られてくるでしょう。
続いてはドローンを安全に係留する方法をご紹介していきます。
安全にドローンを係留する方法
ドローンを安全に飛行させるには市販の係留装置を手配する必要があります。
専用の係留装置はテンションを自動で調節してくれる機能があり、紐の巻き込みや引っ張りによる暴走リスクを防ぐ事ができるからです。
一般的に利用されている係留方法は、1点係留(地上型)、1点係留(屋上型)、2点係留、多点係留の4種類です。
しかし1点係留(地上型)以外の方法においては、装置が市販で発売されておらず専門の業者などが行うものです。
そのため今回は、係留初心者の方が実施できる1点係留(地上型)の方法をご紹介していきます。
①市販の係留装置を手に入れる
現在市販で販売しているドローンのシリーズは「ドローンスパイダー」、「ミヤ・リードロン」の2つです。
どちらかのドローンを購入しましょう。
しかし購入には10万円以上の費用がかかってしまいます。
係留装置を手に入れるのにそこまでお金をかけられないという方は、レンタルサービスを実施している会社(ドローンレンタルセンターなど)でレンタルをしましょう。
1日1万円以内でドローン係留装置をレンタルする事が出来ます。
②飛行申請免除の場合は飛行範囲の立ち入りを制限する
飛行許可申請の免除を利用している場合は飛行範囲内の立入制限を行いましょう。
2章でもお伝えしましたが、立入制限の具体的な規則はなく、飛行範囲内に人が入ってきてはいけないと分かるようになっていれば問題ありません。
コーンや看板を4隅に配置するなどして、明確に立入制限を行なっている事が分かるようにしましょう。
コーンや看板だけでは人が立ち入ってくる可能性がある状況では、人を配置して確実に立入制限を行えるようにしましょう。
③係留装置を用いてドローンを係留飛行
ドローン飛行範囲の立ち入り制限を行なった後に係留装置をセッティングしていきます。
今回はドローンスパイダーの設定方法をご紹介します。
①係留装置のワイヤーをドローン本体に取り付け
取り付け方法はとても簡単で、係留装置にあるワイヤーをドローンに結びつけるだけです。
ドローンの下部などに取り付けましょう。
②係留装置の設定
係留装置の設定もドローンスパイダーの場合非常に簡単です。
機体重量により小(1.5kg未満)、中(1.5kg〜3.5kg)、大(3.5kg以上)の中から1つ選択するだけです。
設定した重量によってワイヤーのテンションを調節してくれます。
これで係留装置の設定は完了です。
③ドローンを飛行させる
下記2つの工程を終えれば後はドローンを飛行させるだけです。
ワイヤーの調節は係留装置が自動で行なってくれるので、ワイヤーがもたれて引っかかることはありません。
また、ドローンが暴走してもテンションがかかってドローンを繋ぎ止めてくれます。
ミヤリードロンの場合も土台を本体に固定する必要がありますがそこまで手間はかかりません。
初心者の方でも気軽に利用する事が出来ます。
簡単にセッティングの方法を説明しましたが、このようにドローンの係留装置はセッティングがとても簡単です。
詳しいセッティング方法は本体同梱の取扱説明書に記載されているので、商品が届いたら説明書に沿って正しくセッティングをしましょう。
また、下記動画ではドローンスパイダーのセッティングや使い方が紹介されているので、参考にしてみてください。
市販のドローン係留装置3選
先ほどご紹介したドローンスパイダーには2品番、ミヤリードロンは1品番あり、現在市販で売られている係留装置は合計3品番あります。
それぞれの特徴をまとめた表はこちらです。
それぞれのドローン係留装置について、それぞれどのような特徴があるのかご紹介をしていきます。
DS-005PRO(ドローンスパイダー)
引用 https://www.multicopter.co.jp/
飛行申請免除のためにドローン係留を行う場合はDS-005PRO(ドローンスパイダー)がおすすめです。
DS-005PROの特徴は航空法の規制緩和条件を満たすために必要最低限の機能が備えられています。
リールの長さは規制緩和条件を満たす30m以内であり、操作ボタンも3つしかなくシンプルな作りになっています。
価格は係留装置の中では最安値であり、価格を抑えて規制緩和条件を満たす係留を行いたい方には最も適している機種です。
DS-005PROはこちらの空撮技研公式サイトより購入が出来ます。
DS-004PRO(ドローンスパイダー)
引用 https://www.multicopter.co.jp/
DS-004PROの特徴はブレーキ機能があるという事です。
市販の係留装置では唯一DS-004PROにのみブレーキ機能があります。
そのため、ドローンが万が一暴走した時に遠くへ飛んで行かないように動きを制御したいという場合はDS-004PROの利用をお勧めします。
一方で係留による飛行申請免除を得たい、300m以上の飛行をしたいという場合にはDS-004PROはおすすめしません。
DS-004PROはこちらの空撮技研公式サイトより購入が出来ます。
ミヤ・リードロン
引用 http://www.leadrone.net/shopdetail/000000000003/
ミヤ・リードロンの特徴はアラーム機能がある事とリールの長さが300mと最長である事です。
アラーム機能は本体で設定した距離とその10m手前に到達した際に、音で知らせてくれるというものです。
例えばアラームを50mに設定した場合は40mを過ぎた時点で「ピー・ピー・ピー…」と音がし、50mを超えると「ピーーー」という連続音に変わります。
モニターを見ながらドローンを操作しリールの長さを都度確認出来ない時などに役立ちます。
100m以上の長距離飛行をしたい、飛行範囲をアラームで把握したいという人にはミヤ・リードロンがお勧めです。
一方で、本体と土台をネジで固定したりなどセッティングに少し手間がかかるので、価格を抑えて30m以内の飛行において手軽に係留をしたいという人にはおすすめしません。
ミヤリードロンはこちらのミヤリードロン販売サイトより購入が出来ます
自作の係留が危険な2つの理由
ドローンの係留には十分な強度を有する紐を用いるという規定がありますが、免許や資格が必要な訳ではありません。
しかし自作で安易な係留を行うとかえって事故を起こしてしまう危険性があります。
5章では具体的にどのような危険性があるのかご紹介していきます。
紐が巻き込まれる危険性がある
自作で紐を用意する場合、余った紐がプロペラなどに巻き込まれドローンの飛行機能が失われる可能性があるので大変危険です。
紐を固定地点に括り付けているだけだと紐にテンションをかける事が出来ず、紐が余って弛んでいる状態になります。
特に風が吹いている状態だと、余った紐が想定外の動きをする可能性が高くなるので危険性が増します。
自作の紐による係留は、紐がプロペラに巻き込まれ墜落してしまう危険性があります。
紐が張った状態だと暴走する可能性がある
自作の場合、紐の長さが最大になるまでドローンを飛行させると紐にあそびが無くなります。
そのためドローンが紐の飛行範囲ギリギリまで到達した場合、紐に引っ張られてドローンの動きを制御しづらくなってしまうのです。
自作の紐でドローンを固定して最大範囲まで飛行をさせると、ドローンが傾き墜落してしまう可能性があるので大変危険です。
このようにドローンの自作による安易な係留はかえって事故の危険性を高めます。
係留を行うには免許や資格は必要ありませんが、正しく安全な方法で実施するようにしましょう。
まとめ
ドローンの係留飛行を活用する事により今までより安全にドローンを走行させる事が可能になります。
また、一定の条件を守れば国土交通省への飛行許可申請が免除されより円滑にドローンを活用する事が出来ます。
一方で、正しい手順で係留を行わないと安全性が確保されず、法律に反してしまう可能性もあります。
これから自力でドローン係留を行う際は、市販の装置を取り寄せて法律を守って走行をさせましょう。
ドローン係留により皆さんのドローンライフが充実する事を願っています。