ドローンとは?国土交通省の定義や語源、ヘリ・ラジコンとの違いも解説!

ドローン

「ドローンとはこういうものを指す」と明確に定義できますか? ラジコンとドローンの違いは何でしょう?かなり身近な存在となってきたドローンですが、はっきりしないこともまだまだ少なくありませんよね。

そこで今回は、「ドローンとは結局何なのか?」について、航空法における定義、名称の由来といった複数の視点から見ていきいます。

また、同じように回転翼で飛ぶヘリコプターとの違いや、これまた同じように遠隔操縦するラジコンとの違いについても考察。 ますます裾野が広がっているドローン活用の実情も併せてご紹介します。

この記事を読んで、ドローンについての理解が曖昧だった部分をぜひ解消してください! 来たるべきドローン社会をクリアな思考で迎えるために、この記事がお役に立てば幸いです。

ドローンとは何か

そもそもドローンとは何か?について確認しておきましょう。

ドローンは一般に「いくつもプロペラのある飛行体」

「ドローン」と聞いてイメージされるのは、通常、複数のプロペラを持った“マルチコプター”です。

ドローン

プロペラの数は4個が主流ですが、6個あるいはそれ以上ということもあります。

「プロペラが複数なければドローンではない」ということではありませんが、一般にドローンといえば、いくつもプロペラを持ったこの姿であるといってよいでしょう。

ちょうどラジコンのように、手元のコントローラーで操縦して飛行させます。

「ドローン」という名前の由来

「ドローン(drone)」とは、英語でオスの蜂を意味する言葉です。

ドローンの飛行音が蜂の羽音に似ているからといわれていますが、蜂と結び付けられることになった理由は、20世紀前半の英国軍および米国軍の射撃訓練現場にあります。

当時の英国軍では、飛行する飛行機から垂らした幕を対空射撃訓練用の標的としていました。しかし、万一機体に弾が当たった場合を考えると、パイロットが乗って操縦するのは危険です。

そのため、標的機には無線で遠隔操縦する無人機、通称「女王蜂(Queen Bee)」が使われていました。それを真似て米国軍に導入された無人標的機の呼び名が、本家イギリスの「女王蜂」にちなんだ「オス蜂(drone)」でした。

それが「無人航空機=ドローン」というイメージにつながり、今日のドローンの由来となっているといわれています。(ただし、ドローンの由来・語源には諸説あります)

航空法におけるドローンの位置付け

道を走る車に道路交通法が関係するように、上空を飛行するドローンには航空法が関係してきます。
航空法におけるドローンの位置付けを確認しておきましょう。

ドローンは無人航空機の一種

航空法におけるドローンの位置付けは「無人航空機」です。

無人航空機とは「人が乗ることができない飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船であって、遠隔操作又は自動操縦により飛行させることができるもの」を指し、ドローンはこの括りに該当します。

ラジコン機や農薬散布用のヘリコプターなども無人航空機に当たりますので、ドローンはあくまで無人航空機の一種ということになります。

ドローン自体の定義はない

滑空機や飛行船もドローンと同じ「無人航空機」の括りであることからもわかるように、形状やサイズ、プロペラの有無や数などは無人航空機であるかどうかに関係しません。

航空法にあるのは無人航空機の定義だけ。ドローンについての定義はありません。

しかし、やはり一般的には前述のとおり、ドローンといえばマルチコプター(複数のプロペラを持つ飛行体)を指すと考えてよいでしょう。

航空法が適用されるのは100g以上のドローン

ドローンの航空法

前述のように、航空法上ドローンは無人航空機に当たるため、基本的には航空法の「無人航空機」に関わる部分について規制を受けます。しかし、規制対象となるかならないかは機体重量により線引きされており、航空法が規制するのは機体重量が100g以上のものと定められています。

つまり、100g未満のドローンは航空法上の無人航空機の定義の枠から外れ、航空法の適用範囲外となります。

※2022年6月20日に航空法の規制対象になるドローンの重量が200g未満⇨100g未満に引き下げられました。制度改正について詳しくは、こちらの記事で解説しています。

100g台のドローン規制はいつから?開始日程や9つの規制内容を解説

ヘリコプターとドローンの違い

ヘリコプターとドローンの違い

ヘリコプターといえば、機体上部にあるメイン回転翼1個と、テール部分の小さな回転翼1個という組み合わせが一般的。対してドローンはほとんどの場合4個以上のプロペラを持っています。

ですが、プロペラの数とドローンであるかどうかに関係がないのであれば、同じ回転翼機であるヘリコプターとドローンの違いは何なのでしょうか?

実は、両者の違いは翼の数ではなく「翼の構造」にあります。

ヘリコプターの回転翼はローターと呼ばれるもので、根本から先端までの角度は一定となっています。

ヘリコプターの翼の構造

一方、ドローンや飛行機に使われている回転翼は、根本から先端にかけてねじれた形状となっているプロペラです。

ドローンの翼の構造

ただし、ドローンの翼がプロペラであるのはあくまで一般論。

回転翼がプロペラでなければドローンではないというわけではなく、ヘリコプターと同じ構造のドローンも存在するため、「プロペラではなくローターだから、これはドローンではなくヘリコプター」とは断言できません。

《ドローンにプロペラが4個以上ある理由》
ヘリコプターとドローンの違いがプロペラの数にあるわけではないのに、4個以上のプロペラが事実上のドローンの特徴となっているのはなぜでしょうか?

ねじれのないローターを持つヘリコプターは、ローターと回転軸の接続部分の角度を調整し、ローターの傾きを変化させることで前後左右の動きを可能としています。

他方ドローンでは、各プロペラの回転数を調節し、機体自体の姿勢を傾けることで意図する方向へと飛行させます。

つまり、ドローンでは4個以上のプロペラが一般的であるのは、まずプロペラの数ありきではなく、こうした制御方法を実現するメカニズムを追求した結果であるといえるのです。

ラジコンとドローンの違い

プロポ(送信機)を使った遠隔操作で飛行させるという点で、ラジコンとドローンは共通しています。

では、ラジコンとドローンを区別するものは何かといえば、それは自動飛行機能の有無であるといえるでしょう。

ラジコンは、飛行している間は常に操縦者によるプロポ操作を必要とします。一方、ドローンの場合は事前にプログラムされた飛行ルートに従った自律飛行も可能です。

すべてのドローンが自律飛行可能というわけではありませんが、ドローンにはごく一般的な機能であり、ラジコンとの明確な違いとなっています。

ドローンの受ける各種規制

空を飛行するものとして、ドローンは各種の規制を受けざるを得ません。ドローンに関係してくるものとしては、主に次のような規制があります。

航空法による規制

「航空法におけるドローンの位置付け」で触れたように、機体重量が100g以上のドローンは無人航空機として位置付けられ、航空法の規制対象となります。

具体的には、たとえば特定区域(150m以上の高さの空域、空港周辺、人口集中地区など)の飛行が制限されたり、特定の飛行方法(夜間飛行、イベント上空飛行、目視外飛行など)に国土交通大臣の承認が必要となったりします。

なお、緊急用務空域の原則飛行禁止といったもののように、機体重量を問わず適用される規制もあることに留意しましょう。

(「緊急用務空域の設定に関するQ&A」参照)

小型無人機等飛行禁止法による規制

国会議事堂などの政府・政治関連施設、皇居、原子力発電所といった重要施設周辺でのドローン飛行は原則禁止されています。

(「重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律」参照)

文化財保護法による規制

寺社、近代建造物といった重要文化財周辺でのドローン飛行は原則禁止されています。

文化財保護法第195条参照)

電波法による規制

特定の周波数帯を使用するドローンのうち「技適マーク」や「微弱無線適合マーク(ELPマーク)」が表示されていないドローンについては、総務大臣の免許や登録が必要となります。

(「ドローン等に用いられる無線設備について」参照)

民法による規制

他人の所有地上空を飛行させる場合は、土地の所有者の同意・承諾を得なくてはなりません。
無断で飛行させると、土地所有権の侵害となります。

民法第207条「土地所有権の範囲」参照)

自治体の条例等による規制

都市公園条例に代表されるような自治体の条例によりドローン飛行が制限されている場所では、ドローンを飛行させることはできません。

ドローンの各種用途と対応機種

ひと口にドローンと言っても、その利用シーンはさまざまです。
また、多種多様な機種が揃っており、用途により選ぶべき機種は変わってきます。

娯楽として

ラジコンを楽しむ場合と同様に、操縦することそのものの醍醐味を味わうケースです。

そこまで高価な機種を買い求めるのは一般的ではなく、ほどほどの機能を持った低価格帯の機種で楽しむ人が多数派。

「トイドローン」と呼ばれる小型・軽量タイプは手軽に購入できるため、ホビー目的のドローンとして特にポピュラーです。

★機種例★
Ryze Technology社のTello(トイドローン)

DJIのドローン

(出典:DJIオンラインストア

空撮目的で

空撮は、まさに「鳥の目」を体験できる、ドローンならではの楽しみ方といえるでしょう。

ビジネスとしても成り立っており、世界のドローン市場においてトップシェアを占める分野です。
テレビ番組やミュージックビデオといった映像ジャンルのほか、分譲マンションの広告に上空からのロケーション写真や眺望写真が掲載されているのもよく見かけますよね。

空撮目的であれば、最初からカメラが搭載されているカメラドローンを購入するか、カメラを後付けするかになります。

高精細な画像が求められるビジネス空撮の場合、搭載されるカメラは4Kや8Kといったハイスペックなものが実質的なスタンダードとなっています。

★機種例★
DJI社のAir 2S(趣味の空撮向き)

DJI社のAir 2S

(出典:DJIオンラインストア

 

DJI社のMavic 2 Pro(ビジネス空撮向き)

DJI社のMavic 2 Pro

(出典:DJIオンラインストア

ドローンレース参戦

競技人口が世界規模で年々増加しているドローンレースは、ドローンのスピードを競う一種のeスポーツです。

複数の種類があるレースの中でも、ヘッドマウンティングディスプレイ(FPVゴーグル)を装着し、ドローンのカメラ映像を見ながら操縦するFPVレーシングは、操縦者自身が飛行しているような没入感から特に人気が高いです。

最高時速150kmともいわれる速さで飛行するFPVレーシング出場ドローンのほとんどは、フルカスタマイズされたもの。スピードを追求するため、GPSやWi-fi、各種センサーなど飛行を安定させる機能をあえて搭載しておらず、一般的な市販ドローンに比べ操縦が大変難しくなっています。

★機種例★
DJI社のDJI FPV

DJI社のDJI FPV

(出典:DJIオンラインストア

測量のため

ドローン活用が労働人口不足問題の解決策として有望視されている中、その導入効果の高さから近年急速に普及が進んでいる分野が測量です。

人が機材を担ぎながら歩き回って行う従来の方法に比べ、ドローンによる上空からの測量は時間もコストも圧倒的に少なくて済みます。

空撮写真をもとに行う「写真測量」と、地表に放射したレーザーの反射からデータを収集する「レーザー測量」がありますが、特にレーザー測量用のレーザースキャナ搭載機種は数百万円と大変高額です。

★機種例★
DJI社のPhantom 4 RTK

DJI社のPhantom 4 RTK

(出典:DJI JAPAN 株式会社公式サイト

設備・インフラの点検に

室内外設備やインフラの点検も、人手がかからないだけでなく危険も避けられるとしてドローン活用が進んでいる分野です。

採用されるのは、地下空間やプラント内部といった特殊な環境下での飛行に適応した機種

具体的には、万一の衝突に備えた保護フレームの装備、金属の多い空間でもコンパスエラーを生じない仕様、GPS衛生からの電波を受信できない場所でも安定飛行できる技術といった特徴を持つ機種です。

また、産業用ドローンは中~大型であることが多い中、屋根裏やダクト内部といった狭小空間の点検では小型ドローンも活躍しているのも特徴です。

★機種例★
Flyability社のELIOS

Flyability社のELIOS

(出典:FLYABILITY社公式サイト

農薬散布に

農薬・肥料散布は以前より無人ヘリコプターを使って行われていましたが、より小型で廉価なドローンへと切り替わった形です。特に日本市場では早い段階からドローン活用が始まっていた分野で、現在では既にある程度の市場が確立されています。

専用アタッチメント(タンク)を交換することで肥料散布に利用したり、種まきに利用したりといった使い方もできるのが、農薬散布向け機種の特徴です。

★機種例★
マゼックス社の飛助MG/DX

マゼックス社の飛助MG/DX

(出典:株式会社マゼックス公式サイト

まとめ

一般的なイメージとしては4つ以上のプロペラを持つマルチコプター、航空法においては無人航空機の括りに含められるドローン。

「ドローン(オス蜂)」という名称は、その飛行音が蜂の羽音に似ていることが理由となっているといわれますが、蜂と結び付けられることになった背景は20世紀前半の英国軍および米国軍にあるというのが定説です。

ヘリコプターとの違いはその翼の形状に、ラジコンとの違いは自動飛行機能の有無にあります。

ドローンレース用、測量用、点検用など各用途向けのドローンにはそれぞれ特徴があります。飛行目的にふさわしい機種を適切に選んで、ドローンをより身近な存在、頼もしい存在として感じられたら嬉しいですね!