ESCがドローンの中でどのような役割をになっているか知っていますか。普段は目立つことの少ないパーツですが、ESCがなくてはドローンが飛行することはできない、大変重要なパーツなのです。
この記事ではESCの概要や機能、購入する際の選び方などについて紹介します。
ESCを交換するだけで、ドローンの飛行が格段に良くなることもあります。この記事を読めば、ESCの役割や重要性、そして自分にあったESCの選び方がわかります。その結果、ドローンライフをより楽しく魅力的に変えることができるでしょう。
目次
ESCはドローンのモータースピードをコントロールする部品
ESCとは、「Electric Speed Controller」の略で、その名の通りスピードをコントロールするための部品です。
ラジコンを知っている人の間では「アンプ」と呼ばれることもあります。
(引用元:セキドオンラインストア)
では、ESCは何のスピードをコントロールしているのでしょうか。
答えはモーターです。モーターの回転数を調整し、プロペラが回るスピードを調整します。イメージしやすいように、ドローン全体の模式図を引用します。
その結果として、プロポやフライトコントローラーからの命令を実際の飛行動作へかえるという役割を持っているのです。
ドローンが飛行するためにはESCがモーターを回す必要がある
ドローンが飛行するためには、ESCは欠かせません。
それは、ドローンの飛行における上昇や下降、左右への方向転換や回転など、ほとんど全ての動作にESCが関わっているためです。
ほとんどのドローンは4枚 のプロペラを搭載しており、そのプロペラの回転で機体の動きを制御しています。回転や方向転換も、左右や前後のプロペラの回転バランスを変えることで実現しているのです。一部のプロペラがその反対のプロペラよりも早く回れば、ドローンは遅いプロペラの方向へ進みます。
例えばドローンを前進させるためには後ろのプロペラを速く、前のプロペラを遅く回します。右に進ませるためには左のプロペラを速く、右のプロペラを遅く回すわけです。
ドローンの動きは全てこのようにプロペラの速度で制御しています。そのため、ドローンにおいてはESCからプロペラへ伝わる回転の情報が大変重要なのです。
ESCの用語と機能
ドローンに使用できるESCは単独ではなく、さまざまな種類があります。
そのため、思い通りのフライトを実現するためには、ESCの持つ機能や特徴を理解し、求める機能を有した製品を選ぶ必要があります。
ここでは、ESC選びに重要な用語や機能について解説します。
カットオフ機能
カットオフ機能とは、バッテリーの電圧が低くなった際に自動で電圧をカットする機能です。
ドローンのほとんどの機能はパッテリーから送られる電気で制御されています。そのため、長時間フライトや負荷の多いフライトの際にはバッテリーの消費が激しく、思ったより早くバッテリー電圧が低くなってしまうことがあります。
そのような状態でバッテリー消費を続けてしまうと、バッテリー容量がゼロに近くなり、その結果バッテリーに重大なダメージを与えてしまうことがあります。
バッテリーへのダメージを避けるため、電圧低下時に自動で電圧をカットする機能がカットオフ機能なのです。
BEC出力機能
BECとは「Battery Eliminator Circuit」の略で、一つのバッテリーから複数の部品へ電力を供給するための機能です。
ドローン内には受信機やサーボモーターなど、電力を必要とする部品が複数載せられています。これらの部品ひとつひとつに専用のバッテリーを搭載すると、重量も増えますし、回路も複雑になります。
その点BEC出力機能のあるESCを搭載していれば、一つのバッテリーから複数の部品に給電が可能となります。
スタートパワー
スタートパワーとは、モーターの回転の立ち上がりをどれくらいの速さで行うかを調整する機能です。
通常、プロポからモーターを回転させるよう命令が出されると、ドローン側のモーターはできるだけ早く命令の出力値までモーターに通電しようとします。
しかし、時にはこのモーターの立ち上がりをゆっくり、ソフトに行いたいこともあります。そのような際に、スタートパワーを調整できる機能がESCにあれば、プロポ側では最初から最大回転の命令を出したとしても、自動でソフトに立ち上げてくれる、というわけです。
ブレーキタイプ
ブレーキタイプはスタートパワーとは逆に、スロットルを下げた際にモーターの回転をすぐに止めるか、徐々に止めるかを設定することができる機能です。
プロポからの命令をダイレクトに届けたければすぐに止める設定に、エアブレーキを活用したい際など徐々に止めたい場合にはそのような設定にすることで、ドローン操作の幅が広がります。
アクセラレーション
アクセラレーションは、プロポのスロットルを開いていった時のモーターの反応速度を設定する機能です。
アクセラレーションの設定は例えば、回したいプロペラの大きさなどにより変えることがあります。大きなプロペラを回したい際には遅く設定する、といった具合です。
ガバナー
ガバナーとは、モーターの回転数を一定に保つための機能です。
一般的にプロポのスロットル操作では、モーターに送る電流の強さを操作します。基本的に電流が強くなれば回転数は上がりますが、モーターにかかる負荷が大きくなれば回転数は落ちます。例えば風が強い日などには、プロペラにかかる負荷が飛行中に変動します。
その結果、同じ電流を流してしてもモーターの回転数が変化してしまうことがあるのです。
ガバナー機能を利用した場合には、スロットル操作でプロペラの回転数を制御できるようにします。つまり、モーターにかかる負荷が高い時には電流を強く、低い時には電流を弱く、と自動で調整してくれる機能です。
簡単にいうと、プロポのスロットル操作と実際のプロペラの回転数を一致させるための機能がガバナー機能なのです。
クーリング機能
クーリング機能とは、ESCが過度に熱を持つことを防ぐための機能です。
ESCには常に電流が流れているため、大変熱を持ちやすいです。ESC自体の温度が過度に高くなると、ESCや周辺の機器にダメージが蓄積する危険性が高くなります。
そのため、熱を外に逃してESC自体や周辺の機器を守るクーリング機能が必要になります。
ESCの選び方
実際にドローンに搭載するESCを選ぶ際には、次の3つのポイントに注意して選ぶ必要があります。
必要な機能を全て搭載しているか
理想的な操縦を叶えてくれるESCを選ぶためには、それぞれのESC製品の特徴を理解し、必要な機能を全て搭載した製品を選ぶことが大切です。
安全のため必ず選びたい機能
まず、安全のためにぜひ搭載されている商品を選びたい機能が次の2つです。
- カットオフ機能
- クーリング機能です。
バッテリーがゼロになるまで使い続けた結果の墜落事故などを防ぐため、カットオフ機能はぜひあるものを選んでください。
また、常に電流が流れ続けるESCは大変熱を持ちやすい部品でもあります。熱暴走によるトラブルや故障を防ぐためにも、クーリング機能がしっかりしたものを選ぶことは大切です。
目指す操縦内容に合わせて拘りたい機能
自分の実現したい飛行や付属した操縦を可能にするため、次のような機能にもこだわりたいところです。
- BEC機能:ドローンに多くの拡張機能を持たせるために部品を複数載せたい場合にはBEC機能があることが重要となります。カメラやマイク、スピーカー、あるいはスポットライトなど、幅広い機能を楽しみたい方はBEC機能のあるESCを選びましょう。
- ガバナー機能:ガバナー機能があった方が良いのかどうかは 操縦者によって好みが分かれるところです。スロットルに対して直感的にプロペラのリアクションがある方が良い人はガバナー機能のあるものを選ぶと操縦しやすくなります。逆に風や空気抵抗を読みながらよりマニュアルに操作したい人はガバナー機能なしのものを選ぶと良いでしょう。
- スタートパワー/ブレーキタイプ:スタートやブレーキのリアクション速度を調整することで、より幅広い操縦が可能となります。ドローンの操縦に慣れてきて、操縦をより自由に楽しみたい場合、これらの機能があるESCもおすすめです。逆に操縦はある程度一定化させ、撮影など他の機能に集中したい場合には不要な機能と言えます。
このように、ESCの機能にはそれぞれ特徴があります。
これらはどちらが優れているというものではなく、操縦スタイルやドローンに求める役割などによっても異なります。
それぞれの機能について自分の目指す飛行に必要なのかをしっかり検討することで、自分に合ったESCが見えてくるはずです。
最大出力値をチェック
ESCの最大出力値も事前に調べておく必要があります。
使用しているモーターの最大値に対し、ESCの最大出力値の方が少なければ、モーターの能力を最大限に引き出すことができなくなってしまいます。
最大出力値はそのESCのスペック表などを見るとわかります。「最大連続電流」などの表記になっていることもあります。
一般的なESCでは、30A以上のものが多いようです。中には100Aを超える大出力のものもあります。気軽に操縦して楽しむくらいであれば30A〜50Aくらいのものでも十分です。より負荷の高い環境での操縦が想定される場合や、多くの機能を同時に使用したい場合などにはより大きな出力のESCを選ぶと安心でしょう。
ドローン用にはブラシレスモーター用ESCを選ぶ
ドローン用にESCを選ぶ際には、ブラシレスモーター用を選ぶようにしましょう。
モーターにはブラシモーターとブラシレスモーターの2種類があり、それぞれに適合するESCが異なります。ブラシモーターはラジコン機などによく使用されていますが、ドローンのモーターはほとんどがブラシレスモーターです。
適合するモーターの種類を見分けるためには、ESCから出ているコードの数に着目します。モーターとESCを繋ぐコードが3本のものがブラシレスモーター用、つまりドローン用です。一方ブラシモーター用のESCはコードが2本です。
異なるモーター用のESCを購入してしまうとドローンに使用することができないため、購入時にはしっかりチェックしておく必要があります。
まとめ
普段耳慣れない部品かもしれませんが、ESCはドローンにとってはなくてはならない部品なのです。最後にもう一度、今回の記事の内容をまとめます。
◎ESCとは
ESCとは、プロポからの命令に合わせて、ドローンのモーターの回転を制御する機械
◎ドローンにはESCがなぜ必要なのか
ESCが複数プロペラの回転を制御することでドローンが操縦可能になるから
◎ESCの用語と機能
- カットオフ機能
- BEC出力機能
- スタートパワー
- アクセラレーション
- ブレーキタイプ
- ガバナー
- クーリング機能
◎ESCの選び方
- 必要な機能を全て搭載しているか
- 最大出力値をチェック
- ドローン用にはブラシレスモーター用ESCを選ぶ
モーターはESCなしには回転しません。つまり、ドローンはESCがなければ飛行しませんし、操縦することもできません。逆に言えば、ドローンの飛行性能や操作性はESCに依存するところが大変大きいのです。
ESCの性能はドローンの性能に直結するといっても過言ではありません。ESCを自分で購入し搭載する際には、自分の叶えたい飛行内容や操作性をしっかり意識し、それに応えてくれるESCを選ぶことが大切です。