「ドローンって結局どれくらいの高さまで上昇可能なの?」と気になったことはありませんか。アクロバティックな飛行やよりダイナミックな空撮をしようと思うと、機体の高度は大変重要です。無人航空機であるドローンは実際にはどの程度の高度まで実現可能なのでしょうか。
この問いかけには、実は2つの回答があります。つまり、次の通りです。
- 機体の性能としては数km上空まで飛行可能な機体も多い
- 申請不要で飛行可能な高度は地上150mまで
この記事では、ドローンが飛行可能な高度について、ドローンの性能・現行の規制制度・安全性の側面から解説します。
今回の内容を読むことで、ドローンの高度と空撮の関係、理想とする飛行・撮影のためにどのようなドローンを購入すれば良いのかなど、ドローンの高度についてしっかりと理解できる内容になっていますのでぜひご覧ください。
目次
ドローンの最高高度には、機能上の最高高度と法律上の最高高度がある
実は、「ドローンはどれくらいの高度で飛行可能なのか?」という問いに一言で回答するのは困難です。なぜなら、ドローンの最高高度には次の2つ の要素があるためです。
ドローンの機体自体の最高高度は数km
機体の性能だけでいうと、一般的なドローンの最高高度は数kmということが多いようです。
ドローンそれぞれの最高高度は「航行限界高度」などの表記でスペック表に記載されています。これは、風や天候の影響を受けず、熟練した操縦者が操縦した場合の数値です。つまり、理想的な環境を整えた場合に出しうる最高の数字、ということになります。実際の飛行の際には航行限界高度まで飛行できることは稀でしょう。
ちなみに、現在のところ記録として残っているドローンの最高高度の記録は10,200mです。これはロシアのユーチューバーが自身の番組内で達成したものです。
また、ドローンの機種によっては安全のため購入時に最高高度の制限が設定されていることもあります。その場合、設定された最高高度以上には上昇しないようドローンが自動で制御をかけます。購入後設定を変更できることもありますので、説明書などを確認してみてください。
このように、ドローンの性能だけで言えば数km上空まで高度を上げられるモデルが多いのです。
無許可で航行できる高度は地上高150mまで
次に意識しておきたいのが、日本国内において無許可でドローンを航行させることができるのは地上高150mまでである、という点です。これは、航空法により定められている制限で、高度150mを超えて飛行させる際には 適切な申請を行い、許可を受ける必要があります。
機体重量200g未満のドローンは現行法では高度制限を受けない(2023年現在は100g未満)
実は、現行法では重量200g未満のドローンには高度150mの制限は適用されません。それは、航空法の対象となる機体は、現行では200g以上の機体のみとされているためです。
ただし、この対象設定については今後の法改正で変更される可能性が濃厚と見られています。今後は200gを下回る機体についても高度制限の対象となる可能性が高いため、動向を注視していく必要があります。
2023年2月追記
2022年夏頃に航空法の改正が行われ、高度制限を受ける機体の重量が200g未満⇨100g未満に変更になりました。
100g以上200g未満の機体を持っている方は、150m以上の上空で飛ばすためには申請が必要になりますので中止いましょう。
航空法の改正見通しについてより詳しくはこちらの記事で紹介しています。関心のある方はぜひ読んでみてください。
正しい高さで航行するために理解しておきたいドローンの 2つの「高度」
すでに前項で用語として出てきましたが、ドローンの高度の表現には「地上高」と「海抜」に2種類があります。
これらをきちんと理解しておかないと、「知らないうちに法律上の制限を超えて飛行させてしまった」という結果につながりかねません。ややこしく聞こえるかもしれませんが、理解してしまえば簡単です。ぜひ次の説明を読んでみてください。
航空法による高さの制限は「地上高」
航空法によって規制を受ける高さは、「地上150m」つまり、地上高に則った高さです。
地上高とは、ドローンが飛行している場所から真下の地面までの距離のことをいいます。つまり、地面からドローンまでの高さです。地上高を理解する上で気をつけたいのが、地上高は地形によって変化する、ということです。
例えば山頂からドローンを水平飛行させたとして、ドローンと地面の距離は山頂付近では短く、谷の上では長くなります。そのため、ドローンの地上高は山頂付近では低い数字に、谷の上では高い数字になるのです。
実際の飛行の際には、高い場所から離陸させたドローンを夢中で操縦しているうちに、地上高が150mを超えてしまっていた、ということにならないよう注意が必要です。
ドローンのスペックによる高度制限の多くは「海抜」
一方、ドローンの航行可能高度としてスペック表に表示されている数字の多くは海抜で測定されています。
海抜とは、近隣の海の平均海面を0mとした時の高度のことです。地上高とは異なり、真下の地面がどのような高さであろうと変わることはありません。
例えば、富士山の高さは3776mです。富士山山頂の地面から10mの高さを飛行しているドローンの高度は「地上高10m」であり「海抜3786m」ということになります。
ドローンの飛行に高度制限が設けられている理由は航空機の航行に影響を与えないため
ドローンの高度制限が設けられている理由は、航空機の航行に影響を生じさせないためです。
現在、世界中で旅客機や貨物機など、様々な理由で多くの航空機が空を飛行しています。万一ドローンがこれらの航空機の軌道上に入り込んでしまうと、衝突や接触など、危険な事故が起こる危険性があります。実際、2017年にはカナダ国内でドローンと見られる飛行体と旅客機が衝突する事故が起きています。
ほとんどの航空機は、空港付近など特別な場所以外では地上150m以上の高さで飛行しています。そのため、地上150m以下の場所であればドローンを飛行させていても航空機とのニアミスの可能性はほとんどありません。
ですから、地上150m以下での飛行は申請不要、150m以上での飛行には特別な申請が必要とされているのです。
高度150mでも迫力ある空撮は十分可能
ダイナミックな空撮を実現するためには150m以上での撮影を申請する必要があるのでしょうか。
結論としては、必ずしもそうではありません。申請不要で飛行できる上限である150m上空からでも、十分に迫力ある空撮を行うことができます。それは、実際に地上150mから空撮できる範囲を計算してみることでわかります。
ドローンによる空撮が可能となる範囲は、地上高とカメラの視野角によって計算で求めることができます。計算式はやや複雑なのでここでは紹介しませんが、インターネット上で計算してくれるツールなどもあるので、気になる人は検索してみてください。
ここでは、一般的な撮影可能範囲について紹介します。多くのドローンではカメラの視野角は80〜90度前後です。視野角90度のカメラの場合、高度の2倍の範囲まで撮影可能です。
例えば高度100mから撮影した場合、200mの範囲で撮影が可能です。16:9のモードで撮影した場合、200m×112.5mの範囲の撮影が可能ということです。
150mでは、約300×170mの範囲が撮影可能ということになります。
ちなみに、こちらはGoogle Mapsで表示させた東京都庁周辺の航空写真を、約200×110mの範囲にトリミングしたものです。実際のドローンからの撮影画像とは異なりますが、撮影可能範囲の参考になるのではないかと思います。
(引用元:Google Maps)
このように、法制限の範囲内である100m程度の高度でも十分に広い範囲で迫力のある画像を撮影することが可能です。
150m以上での飛行のための申請は用意するものも多く、手続きも簡易とは言い難いものです。目的とする飛行内容や撮影したい内容を検討し、本当に150m以上の高度が必要なのかについてはよく検討すると良いでしょう。
ドローンで 高度150m以上を航空させるための申請内容と方法
ドローンを150m以上の高度で飛行させるためには、所定の手続きを踏んで申請を行い、許可を受ける必要があります。ここでは、必要となる手続きの内容と方法について紹介します。
申請書の内容
150m以上での飛行の申請のためには、定められた申請書を作成し、提出する必要があります。申請書の内容としては、次のようなものが盛り込まれています。
- 飛行の目的
- 飛行の日時
- 飛行の経路
- 飛行の高度
- ドローンの製造者・メーカーなどの詳細
- 操縦者の知識や能力に関する事項
- ドローン操縦時の安全体制について
- 空域管理者の特定と調整内容
- 賠償保険への加入状況
その他、状況や申請内容によって追加資料が必要となることもあります。
行おうとする申請内容に合わせて、必要な内容をしっかりと理解し、正確に記入・資料の準備をすることが大切です。
申請前に管理者との調整が完了している必要がある
150m以上での飛行に関しては、飛行予定の空域の管理者を調べ、事前に調整を完了させておく必要があります。空域管理者は国道交通省のサイトなどで調べることができます。
飛行計画や安全管理計画などをもとに空域管理者と当日の飛行について調整を行い、完了させた上でその旨を申請書に記入することが必須です。申請前にその分の時間が必要となりますので、できるだけ早めに準備を始めることが大切です。
ドローン申請に強い行政書士へ依頼する方法も
最近では、ドローンの飛行申請に特化した行政書士事務所なども登場しています。行政手続きやそのための調整などに自信がない場合には、これらプロの力を借りるというのもひとつの方法です。
慣れるまではプロに手伝ってもらいながら行い、慣れてきたら自分で申請する、というのも良いでしょう。
高高度でもドローンを安全に航行させるためのポイント
飛行体であるドローンを楽しむためには、安全に配慮して行う必要があります。
上空を飛行させるドローンには、どうしても他者に対する危険性がつきまといます。安全にドローンを楽しむためには、次のようなポイントに留意して行うことが大切です。
高度維持機能のあるドローンを選ぶ
ドローンの中には、自動で高度を維持してくれる機能を搭載している機体があります。
この機能を利用すれば、ドローンが自動で一定の高度を維持してくれるため、気づかないうちに高度が上がり過ぎてしまった、ということがありません。
ただし、高度維持機能のほとんどは高度を海抜で測っています。山間部など、地面の高さの変化が大きい地形の場所での飛行時には、地上高の変化に注意が必要です。
ドローンの操縦は目視可能な範囲内が基本
安全のためには、ドローンは原則として目視可能な範囲で操縦するようにしましょう。
上空に向けてドローンを上昇させていくと、ドローンの姿はあっという間に小さな点のように見えるようになります。うっかり見失ってしまわないように気をつけましょう。
特殊な目的など一部の特別な飛行の際には目視外飛行が認められるケースもありますが、基本はドローンの操作は目視範囲内で、というのがルールです。機体をしっかりと自分の目で捉えられる範囲で操縦することで、様々なリスクからドローンと自分自身、そして周囲の人の安全を守ることにつながります。
まとめ
ドローンが航行することができる高度について、機体の性能・制限と法規制の面から紹介しました。
ダイナミックな撮影を楽しむためには、高い高度を実現することと同時に、自分や周囲の安全を守ることも不可欠です。
愛機の性能や自分の操縦技術、そしてドローンを取りまく最新の法令をしっかりと理解し、適切な高度で楽しむことがとても大切です。最後にこの記事の内容をもう一度まとめます。
◎ドローンの最高高度には機能上の最高高度と法律上の最高高度がある
(1)ドローンの性能による最高高度は数km
(2)無許可で航行できる高度は地上高150mまで
(3)機体重量200g未満のドローンは現行法では高度制限を受けない
◎正しい高さで航行するために理解しておきたい二つの「高度」
(1)航空法による高さの制限は「地上高」
(2)ドローンのスペックによる高度制限の多くは「海抜」
◎高度制限が設けられている理由は航空機の航行に影響を与えないため
◎ドローンの高度と撮影可能範囲は高度100mで約200×110m程度
◎地上高150m以上を航空させるための申請内容と方法
(1)申請書の内容
(2)申請前に管理者との調整が完了している必要がある
(3)ドローン申請に強い行政書士へ依頼する方法も
◎安全に航行させるためのポイント
(1)高度維持機能のあるドローンを選ぶ
(2)ドローンの操縦は目視可能な範囲内が基本
(3)現行法では重量200g未満の機体は航空法の制限を受けない
ドローンが安全に飛行できる最高高度は法律のほか、その機体の性能によって異なります。また、飛行させる場所やその日の天気、風などの環境、そして操縦者の技術や相性によっても左右されます。
数字だけを気にするのではなく、総合的な飛行コンディションによって最適な高度を選んで飛行できるようになることが最も大切なことなのです。