200g未満のドローンも規制対象に!4つの規制内容や開始時期を紹介

ドローン禁止の看板

「ドローンを飛ばしたいけれど、いろいろと規制があるのは面倒……」

そんな風に考える人が多いからこそ、航空法の規制対象外となる200g未満のドローンが注目され、ギリギリの線である機体重量199gの製品が発売されると大人気となりました。

しかし、その航空法の改正に伴い、200g未満のドローンも2022年に規制対象となる見通しです。

小型ドローンの高性能化の流れの中での必然といえる規制範囲の拡大ですが、200g未満のドローンを所有している人にとっては間違いなく大きな状況変化です。

きちんと把握しておかなければ、気づかないうちに法を犯してしまう恐れもありますよね。また、これから200g未満のドローンを購入しようとしているなら、「今買っても問題ないか?」と迷ってしまうのではないでしょうか。

そこでこの記事では、現時点で見込まれている航空法の改正内容をご紹介するとともに、200g未満のドローンにどのような影響が及ぶかを「飛ばし方別」に確認していきます。

ドローンを今買うべきか、当面は様子見すべきかについての判断もしやすくなる内容となっていますので、ぜひお役立てください!

2022年から200g未満のドローンも航空法の規制対象になる可能性大

ドローン禁止の看板

以前より段階的に改正されてきた航空法ですが、今回ついに、これまでは対象外だった200g未満のドローンも規制対象となる見込みとなりました。

2021年6月に「航空法等の一部を改正する法律」が成立し、その施行にあわせて規制範囲が「200g以上の無人航空機」から「100g以上の無人航空機」へと拡大される公算が高いためです。

同法律の施行日は未定ですが、2022年中の施行はほぼ確実と考えられており、施行されれば200g未満のドローンにも適用されることに。この法改正の骨子を、飛行形態別に確認しておきましょう。

リスク高めの「ちょっと特別な飛行」を対象とする改正

イベント会場の上空の飛行や夜間飛行など、リスクが高めと判断される形態の飛行は「特定飛行」と呼ばれ、それ以外の形態の飛行とは区別されています。(特定飛行に該当するのは下図の9種類の飛行形態)

特定飛行のケース

この特定飛行を行うケースを対象とした法改正が次の2つとなります。

操縦ライセンス制度の導入

行いたい飛行の形態

立ち入り管理措置の可否 操縦ライセンス保有の必要性
特定飛行 措置をとれる 任意。ただし、飛行の許可・承認を都度得る手間を減らしたければ、二等ライセンスを取得しておくのがオススメ。
措置をとれない 一等ライセンスの保有が必須。
特定飛行以外 飛行に当たりライセンスは不要。

ドローン操縦にライセンス制度が導入されます。

ライセンスは技能レベル別に一等資格と二等資格の2種類での運用となる見込みで、一等、二等それぞれのライセンスの条件やメリットは以下のとおりです。

<一等ライセンス>
条件: 特定飛行を立ち入り管理措置なしで行うのに必須。
    (※立ち入り管理措置=補助者や看板設置などにより第三者の立ち入りを管理すること)
メリット: 立ち入り管理措置をとる手間が省ける。

<二等ライセンス>
条件: 取得は任意。特定飛行(立ち入り管理措置あり)の審査の全部または一部が省略される。
メリット: 立ち入り管理措置をとれるのであれば、審査の手間なく特定飛行が可能で便利。

機体認証制度の導入

行いたい飛行の形態

立ち入り管理措置の可否 機体認証の必要性
特定飛行 措置をとれる 任意。ただし、飛行の許可・承認を都度得る手間を減らしたければ、第二種機体認証を受けておくのがオススメ。
措置をとれない 第一種機体認証を受けておくことが必須。
特定飛行以外 飛行に当たり機体認証は不要。

機体の安全性を認証する制度が導入されます。

ライセンス制度同様に、第一種機体認証と第二種機体認証の2種類での運用となる見込みで、第一種、第二種それぞれの条件やメリットは以下のとおりです。

<第一種機体認証>
条件: 特定飛行を立ち入り管理措置なしで行うのに必須。
メリット: 立ち入り管理措置をとる手間が省ける。

<第二種機体認証>
条件: 取得は任意。特定飛行(立ち入り管理措置あり)の審査の全部または一部が省略される。
メリット: 立ち入り管理措置をとれるのであれば、審査の手間なく特定飛行が可能で便利。

なお、製造者の申請により型式認証を受けているドローンは、機体認証の検査の全部または一部が省略されます。

どんな飛ばし方でも適用される改正

対象を特定飛行に限らない法改正は次の2つです。

2022年中に見込まれている航空法改正に合わせ、規制対象が200g未満のドローンにまで拡大されることが確実視されているため、これらの改正内容も200g未満のドローンにまで適用されるようになると想定しておきましょう。

所有者登録制度の導入

所有者登録制度が2022年6月を目処に導入される方向です。(こちらは先行して成立していた改正法に基づく改正となります)

国土交通省への事前登録が必要なのは、現行の航空法では200g以上のドローンですが、こちらも将来的には200g未満のドローンも対象となる可能性が高いと考えられます。

なお、同制度の導入前に購入したドローンや海外から持ち込んだドローンも登録対象である点に注意しましょう!

また、ドローンの型式や製造番号、所有者の情報などを登録すると付与される登録番号を、シールを貼るなどして機体に表示させることも併せて求められます。(登録番号表示については、将来的にはリモートIDでの表示へと移行予定です)

登録手続きという一定の手間はかかるようにはなりますが、おそらくそこまで煩雑な手続きではないと予想されます。

運航管理ルールの明確化

飛行時のルールが法令で明確に定められ、遵守が求められるようになります。

たとえば、立ち入り管理措置をとった上での特定飛行中に人の立ち入りがあった場合の即時飛行停止義務や、事故が起きた際に必要な措置をとる義務などが定められ、これらの義務を怠った場合は罰金などの罰則対象となります。

飛行計画の通報義務や飛行日誌の記録義務など、従来も飛行の許可・承認に当たり条件として求められていた内容が明文化されたものも含まれています。

特定飛行を対象としたルールが中心となっているため、人のいない場所で目視しながら飛ばすようなケースでは大きな影響はないでしょう。

【飛ばし方別】航空法改正により200g未満のドローンが受ける具体的な影響

航空法改正後は規制対象となることが確実視される200g未満のドローンですが、影響の受け方は「飛ばし方」によって異なります。

海や山で趣味の空撮なら影響はほとんどなし

ドローンを操縦する男性

海や山など人がほとんどいない場所でドローンを使って空撮するといった運用方法では、航空法改正の実質的な影響はほとんどないでしょう。

自然豊かなエリアでの空撮を趣味として楽しんでいるのであれば、さほど心配する必要はなさそうです。海や山だからといって規制が一切ないというわけではありませんが、それはこれまでも同じ。法改正を気にしてドローン購入のタイミングを遅らせる必要はないでしょう。

・ライセンスや機体認証
→特定飛行に当てはまらないのでライセンスや機体認証が求められることはない。都度審査も不要。

・所有者登録や運航管理ルール
→200g未満のドローンにも所有者登録が将来的に必要になる可能性は高いが、事故や違反があった際の所有者特定を目的とした制度であり、情報を登録するだけの簡単な手続きと予想される。運行管理ルールは大きな影響なし。

街中で飛ばしたいなら操縦ライセンスや機体認証の取得が要検討

ビルを飛ぶドローン

街中での飛行を行う場合、200g未満のドローンであっても2022年を目処に許可や承認が必要となる見込みです。

ただし、操縦ライセンスや機体認証を取得していれば、そうした都度の申請手続きを省略できます。飛行頻度が高い人ほど恩恵を受けるシステムといえ、一定以上の頻度で飛ばす予定であれば、ライセンスや機体認証の取得は検討する価値ありです。

これからドローンを購入する予定で、購入後は頻繁に街中を飛行させたいのであれば、機体認証の手間を減らせる型式認証取得済み機種が判明するまで待ってみるのも一つの方法といえそうです。

・ライセンスや機体認証
→取得していなくても飛行は可能だが、二等ライセンスを取得しておけば都度の申請手続きなしに(あるいは簡略化された審査だけで)街中で飛ばせる。

・所有者登録や運航管理ルール
→200g未満のドローンにも所有者登録が将来的に必要になる可能性は高いが、事故や違反があった際の所有者特定を目的とした制度であり、情報を登録するだけの簡単な手続きと予想される。運行管理ルールの遵守は必要だが、従来も求められていた内容が明文化されただけのものも多く、そこまで負担となる内容ではない予想。

これまでは認められていなかった有人地帯の目視外飛行を希望しているならチャンス到来!

ビルを飛ぶドローン

規制強化とルール整備が進むことで、リスクの高い飛行も許容できる環境が整い、従来は認められていなかった「有人地帯の目視外飛行」が可能となる見込みです。

そうした飛行の実現を待ち望んでいた人にとっては、待ちに待ったチャンス到来といえるでしょう!

機体認証や操縦ライセンスの取得だけでなく都度の許可・承認も併せて必要なのは少々面倒ですが、不可能だったものが可能となることのインパクトは決して小さくありません。

制度や手続き内容の詳細は今のところまだ公表されていませんが、公表され次第、機体認証やライセンス取得に向け具体的なアクションを起こしましょう。

・ライセンスや機体認証
→有人地帯の目視外飛行を行うなら一等ライセンス・第一種機体認証の取得が必須。

・所有者登録や運航管理ルール
→200g未満のドローンにも所有者登録が将来的に必要になる可能性は高いが、おそらく手間は少ないと予想される。運行管理ルールの遵守は必要だが、従来も求められていた内容が明文化されただけのものも多く、そこまで負担となる内容ではない予想。

100g未満のドローンなら規制対象外。ただし屋内での飛行が現実的

Children and drones

航空法改正に伴い拡大される規制対象の範囲は「100g以上のドローン」です。

言い換えれば、100g未満のドローンは引き続き航空法規制の対象外ということであり、航空法の規制を受けたくないという理由で100g未満のドローンを選ぶという選択肢も確かにあります。

しかし、小型軽量であることは飛行速度などの性能にも関わってきますし、風の影響も受けやすくなります。事実、200gを切る機体重量のドローンは少し強めの風が吹くと流されがちですが、100g未満となればなおさらで、不安なく飛行させようと思うなら屋内飛行が現実的でしょう。

また、近年の技術の進歩により小型のドローンでも高性能な機種が出てきていますが、100g未満の超小型ドローンとなるとやはり性能面で見劣りすると言わざるを得ません。

今後の技術革新により、性能面も十分な100g未満のドローンが登場する可能性はもちろんありますが、少なくとも現時点では、100g未満のドローンは気軽に屋内で楽しむためのものと捉えておくのが良さそうです。

200g未満のドローンも対象とする規制は現在もある

現行の航空法

現行の航空法では200g未満のドローンは基本的に規制対象外ですが、だからといって200g未満なら規制を一切受けないということではありません。

航空法には機体重量にかかわらない種類の規制も定められていますし、ドローン飛行を規制するのは航空法だけとは限らないため、200g未満のドローンであっても規制を受けるケースは多々あります。

各省庁の法令による規制

各省庁が定める法令により規制される飛行例には、次のようなものがあります。

重要施設周辺地域上空の飛行

国会議事堂

「小型無人機等飛行禁止法」による規制です。

国会議事堂、各省庁舎などの政府・政治関連施設や皇居、原子力発電所といった重要施設周辺でのドローン飛行は禁止。ただし、所定の手続きを行えば飛行可能です。(「重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律」参照)

飛ばせない場所:国会議事堂、議員会館、各省庁舎、政党本部などの政府・政治関連施設、皇居、原子力発電所やその関連施設の周辺地域

緊急用務空域の飛行

航空法による規制ですが、機体重量を問わずすべてのドローンに遵守が求められるもので、緊急用務空域は原則飛行禁止です。(「緊急用務空域の設定に関するQ&A」参照)

飛ばせない場所:救助活動や消防活動などの緊急用務を行う航空機が飛行する空域

重要文化財周辺地域上空の飛行

文化財保護法による規制です。

重要文化財周辺地域上空のドローン飛行は、当該文化財の管理団体により禁じられていることがほとんどのため、管理団体への事前確が必要です。また、万一重要文化財を毀損した場合には文化財保護法違反となります。(文化財保護法第195条参照)

飛ばせない場所:寺社、近代建造物などの重要文化財周辺地域の上空

他人の所有地上空の飛行

民法による規制です。

他人の所有地上空を無断飛行すると、民法で定められている土地所有権の侵害となります。たとえ航空法に基づく許可・承認を得た上での飛行であっても、民法による解釈は別問題となるため、土地の所有者の同意・承諾が必要です。(民法第207条「土地所有権の範囲」参照)

飛ばせない場所:他人の所有地の上空

道路交通を妨げるような飛行

道路交通法による規制です。

歩道を含む公道上でドローンを離着陸させるなど、道路交通を妨げる行為は禁止されています。ただし、事前に道路使用許可を取得している場合はその限りではありません。

また、公道上空の飛行自体は問題ありませんが、飛行により多くの人が集まり、結果的に交通を妨げれば道路交通法違反となりますので、注意しましょう。(道路交通法第77条「道路の使用の許可」参照)

飛ばせない場所:歩道を含む公道上(道路交通を妨げない公道上空の飛行自体は問題なし)

飛行自粛が求められている河川・河川敷での飛行

川の上を飛ぶドローン

河川法による規制です。

ドローン飛行が河川の適正利用を妨げると判断した河川管理者によりドローン飛行自粛が求められている河川・河川敷では、管理者の許可なくドローンを飛行させてはなりません。(「河川法」参照)

飛ばせない場所:河川・河川敷(ドローン飛行自粛が求められている場合)

制限のもうけられている海水浴場での飛行

海岸法による規制です。

海水浴場の管理責任者によりドローン飛行が制限されている場合は、制限に従います。
海岸法第5条「管理」および第37条の3「管理」参照)

飛ばせない場所:海水浴場(ドローン飛行が制限されている場合)

海上での「作業」に当たるような飛行

海上交通安全法と港則法による規制です。

船舶交通に影響を及ぼす恐れがある海上でのドローン飛行は「作業」に当たるとみなされ、海上保安庁長官あるいは港長の許可を得るか、事前の届け出が必要となります。(海上交通安全法第36条「航路及びその周辺の海域における工事等」1項港則法第31条「工事等の許可及び進水等の届出」参照)

飛ばせない場所:海上(ドローン飛行が「作業」に当たるとみなされる場合)

国立公園・国定公園・自然公園内の立入禁止区域や私有地の上空の飛行

国立公園

自然公園法による規制です。

国立公園・国定公園や各都道府県の自然公園内の立入禁止となっている区域でのドローン飛行は禁止されています。
また、公園内の私有地の上空の飛行には土地所有者の同意・承諾が必要です。それ以外の区域でも他の利用者に迷惑をかけるような行為は禁じられています。(「自然公園法」参照)

飛ばせない場所:国立公園、国定公園、各都道府県の自然公園内の立入禁止区域や私有地

特定の周波数帯の無線電波を使用するドローンの飛行

電波法による規制です。

特定の周波数帯を使用するドローンには、総務大臣の免許や登録が必要となります。

ただし、「技適マーク」や「微弱無線適合マーク(ELPマーク)」が表示されているドローンについては免許・登録は不要です。(「ドローン等に用いられる無線設備について」参照)

プライバシーや肖像権を侵害するような撮影を伴う飛行

個人情報保護法による規制です。

ドローンで撮影した画像のインターネット上での公開がプライバシーや肖像権を侵害する可能性があること、被撮影者の同意を前提とすべきであることに留意しなくてはなりません。(「『ドローン』による撮影映像等のインターネット上での取扱いに係るガイドライン」参照)

その他の規制

各省庁の法令による規制のほかにも、次のような飛行に対する規制があります。

自治体の条例等で制限されている場所での飛行

自治体の条例などによりドローン飛行が制限されている場所でのドローン飛行は禁止されています。

飛ばせない場所:都市公園内(「都市公園条例」で禁止されている場合)など

被災地での飛行

大規模災害発生時の被災地では、ドローン飛行の自粛や飛行情報の提供が求められる場合があります。
ただし、これはあくまで任意の協力要請となります。

飛ばせない場所:大規模災害発生時の被災地

まとめ

ドローン産業の本格化を見据えて段階的に進められてきたドローン規制強化ですが、近く見込まれる航空法改正は大きな節目となりそうです。

併せて200g未満のドローンまでの規制対象拡大が確実視されているため、これまで航空法の規制をほぼ受けなかった200g未満のドローンを持っている人あるいは購入しようとしている人は特に、気になるところではないでしょうか。

本記事の内容をまとめてみましょう。
今回の航空法改正により実施されるドローン規制強化策は、次の4つです。

1.操縦ライセンス制度の導入(特定飛行のみ対象)
2.機体認証制度の導入(特定飛行のみ対象)
3.所有者登録制度の導入
4.飛行条件に応じた運航管理ルールの明確化

そして、この法改正にあわせ航空法の規制対象が「200g以上のドローン」から「100g以上のドローン」に拡大される見通しで、従来は規制対象外であった200g未満のドローンにもこれらの新規制が適用されると考えられています。

これらの規制強化が及ぼす影響は、「どういったドローン飛行を行っているか(あるいは行いたいか)」により変わってきます。

海や山での趣味の空撮 → 特段の影響なし。ほぼこれまで通り。
街中での飛行 → 都度の申請手続きを省略・簡略化するには、ライセンス・機体認証の取得が条件に。
有人地帯の目視外飛行 → ついに解禁!ライセンス・機体認証は必須なので、詳細情報が判明次第動こう!

現在ドローンの購入を考えている人の場合、購入するドローンをどのように飛ばしたいと思っているかによって購入タイミングが変わってきそうです。

街中などでも飛ばしたいなら、どのくらいの頻度で飛ばしたいのか、機体認証や操縦ライセンス取得も視野に入れるか、それとも飛行の許可・承認を都度申請する手間をいとわないかといったことも、あらかじめ考えておきたいですね。

今後も法整備が進められていくと考えられますので、関連情報に対し常にアンテナを張り、こまめにチェックしていきましょう。