災害時のドローン活用の実績と導入方法・すぐできるアクションプラン

ドローンの操縦訓練をする

今、災害現場におけるドローンの活用に注目が集まっています。遠隔操作による無人飛行が可能なドローンは、災害時の救援活動や状況把握活動において大きな意義を持ちます。

しかし、比較的新しい技術であるため、導入にあたって何から始めてよいかわからないと感じることもあるでしょう。

災害時にドローンを上手に活用するためには、ドローンの特性と災害時の可能性について理解する必要があります。そこで、今回の記事では災害時のドローン活用について知っておくべき情報として、次のような内容を紹介します。

  • 災害時にドローンができること
  • 災害時におけるドローンのメリット・デメリット
  • ドローンの災害活用における今後の課題
  • ドローン運用に関わる規制と災害時の特例
  • 過去の災害時におけるドローン活用事例
  • 災害ドローン導入のためのアクションプラン

この記事を読めば、災害時のドローンの可能性について理解できるだけでなく、実際の施策導入のために今行うべきことがわかることでしょう。

災害時にドローンでできること

建物を見るドローン

災害の現場において、ドローンの持つ機動力や汎用性は大きな意義を持ちます。特に、その小さな機体や操作のしやすさ、無人飛行が可能であるといったメリットを生かした活躍が期待されています。

実際、過去の災害や実験においても次のような活動が行われました。

災害時にドローンができること

要救助者の捜索

災害現場においてドローンに最も期待される役割は、要救助者の捜索といって良いでしょう。ドローンの航空撮影技術を利用すれば、空から広範囲にわたって要救助者を捜索することができます。

また、赤外線カメラやサーモシステムを併用すれば、肉眼では発見が困難な要救助者の捜索も可能です。

さらに、ドローンはヘリコプターなどに比べて稼働音も小さいため、救助を求める声をかき消しにくいというメリットもあります。2019年には富士山での遭難者捜索を想定した実証実験も行われ、上空からの捜査で無事遭難者役スタッフの発見に成功しています。

物資などの輸送

無人飛行の技術を活かした物資の運搬も災害時ドローンが果たす重要な役割のひとつです。例えば食料や医療器具・薬などを必要としている場所へ飛行して運搬することができます。特に、衛生用品や日用品など比較的軽い物資であればより多くの物資を運ぶことでき、大きな助けとなります。

2019年の台風災害の際には孤立した東京都檜原村の集落への物資輸送にドローンが活用され、衛生用品など火急の物資をいち早く届けることができました。

被災地の状況把握・ハザードマップの作成

被災地の被害状況把握ハザードマップの作成にもドローンが活用されています。被災地の上空を飛行し撮影することで、より広域な地域の被害状況やリアルタイムの被害の程度を把握することができます。

被災地につながる道路の状況建物・地域の倒壊の程度などの情報は、支援隊の活動にとって大変重要な情報です。これらの情報をリアルタイムに得られることは、適切で安全な支援を可能とし、また、二次災害のリスクを低減することにもつながります。

実際、2021年の熱海土石流災害の際にはドローンが作成したハザードマップを元に救助者が連携し、スムーズな救助活動が可能となりました。

救助活動

実際の救助活動においても、ドローンにできることがあります。例えば火災の現場で水を撒いて消化活動を行ったり、水害の際逃げ遅れた要救助者のところまで浮き輪を運んで投下したりといった活動が可能です。

特に水害の救助は救助者が巻き込まれるなど二次災害のリスクも高く、ドローンによる救助活動の果たす意義は大変大きいと言えます。

東京消防庁ではドローンでの浮き輪の投下による救助訓練も行っており、その様子を公開しています。

 

災害時におけるドローンのメリット

空を飛ぶドローン

無人飛行が可能な小型モビリティであるドローンは、災害の現場においてその特徴を活かし、従来の機材では実現が難しかった活動を実現することができます。

例えば、災害現場におけるドローンならではのメリットとしては次のようなものがあります。

災害時におけるドローンのメリット

場所を選ばず出動できる

ドローンの大きなメリットとして、活動する場所や時間帯の制限を比較的受けにくいという点があります。

これまで、空からの活動はヘリコプターや小型飛行機で行なっていました。これらの機材を離着陸させるためには、広い土地が必要です。その点ドローンは離着陸のためのスペースは小さくてすみ、ほとんどどこからでも出動させることができます。

救助困難地域でも活用が可能

ドローンのメリットとして、救助困難地域と呼ばれる場所での活動が可能である点も大きいです。ドローンにはパイロットが搭乗する必要がなく、操作は無線で行います。そのため、例えば海上や余震の続く被災地など、二次災害が想定されるような危険な場所でも活動が可能です。

また、小型のドローンを使えば、森の中やトンネルなど、ヘリコプターが入れないような場所を通ることできます。

分断された地域などに到達できる

土砂災害などで分断された地域への支援活動も、ドローンのメリットを最大に活用できる場面といえます。

災害時には地域につながる道路が被害を受け、車両が到達できなくなることが少なくありません。そのような場合空からの支援が検討されますが、山間地でヘリコプターが着陸できる場所がないような場合、救助活動は大変困難でした。しかし、ドローンであれば小さいスペースで着陸することができるため、支援の幅が広がります。

少ない人数でより広域での活動ができる

ドローンでの支援の場合、必要な人員は従来の支援方法よりもずっと少ないです。例えばヘリコプターや飛行機、あるいは車両などは操縦・運転する人材が少なくとも1名は搭乗する必要があります。その点ドローンは無人飛行ですから、機材の数だけ人が必要ということはありません。

一人のオペレーターが複数のドローンを管理することにより、少ない人数でより広域の活動が可能となります。

導入費用や運用にかかる費用が比較的安価である

費用面においても、ドローンの活用にはメリットがあります。災害時のドローン活用に関しては、ドローンのオペレーションを専門としている企業や団体と協定を結び、有事の際支援を受けるという形が一般的です。その際自治体は委託料を支払いますが、年間で数十万円程度が相場です。

また、もし自治体が独自にドローンを所有したいと考え場合も、ヘリコプターや飛行機を購入するよりもずっと安価で入手可能です。災害用ドローンであっても、安価なものでは20〜30万円程度で購入できるものもあります。

飛行機やヘリコプターを購入し、メンテナンスを続けることに比べると、少ないコストで多くのメリットが期待できるのです。

災害対策にドローンを活用するための課題(デメリット)

荷物を運ぶドローン

このように災害対策に新たな可能性を広げてくれるドローンですが、一方で活動における課題もあります。

これらの課題は現状で弱点やデメリットと言えますが、これら解消することでさらに活動の幅を広げることができる、ヒントでもあります。実際、多くの企業や団体が機体やシステムの開発を続けるなど、改善に向けた取り組みが数多く行われています。

将来に向けて解決するべき課題としては、例えば次のようなものがあります。

災害対策にドローンを活用するための課題

運搬できる量に限りがある

ドローンの多くは小型モビリティとして開発されており、積載できる資材の量に限りがあるのが現状です。

一般的なドローンが運搬できる重さは概ね1kg程度までと言われています。そのため、軽いものや小さいものの運搬には大きな力を発揮しますが、重い資材を運ぶことは今後の課題と言わざるを得ません。

解決に向けての取り組み

より大きく重い資材の運搬は、災害活用だけでなく運送業での活用などでも期待される機能であり、活発な研究が進められている分野でもあります。実際、最新機種では約10kgの資材の運搬が可能なものも販売されています。

また、イギリスではなんと最大積載量2tという機種も開発中で、テスト飛行も行わたということです。運搬できる量の問題については、近い将来飛躍的に改善することでしょう。

バッテリー容量に限りがある

充電した電気で飛行するドローンは、そのバッテリー容量以上に飛行することができません。そのため、小型でバッテリー容量が少ない機種の場合、短時間で帰還し、頻繁に充電する必要が生じます。

一般的なドローンの連続飛行時間は30分前後です。被災地における安定した活動のためには、より長時間飛行可能な機種の登場が期待されます。

解決に向けての取り組み

現在、バッテリーの改良や、ガソリンなど他のエネルギー源を併用する仕組みなどを使い、連続飛行時間を伸ばす研究は進められています。実験では11時間以上飛行した機体も出てきています。安全性とのバランスを見つつ、すぐれた機種の早い実用化を期待したいところです。

電波の到達圏内でしか活動できない

ドローンは無線操縦ですから、電波の到達圏内でしか活動できない機種も少なくありません。そのような機種の場合、活動が可能な範囲は大きく制限されます。

一般的に、ドローンに使用される電波が届く範囲は約300〜2000m程度です。これを超えた範囲では、無線での操縦はできません。

解決に向けての取り組み

この問題を解決するには、自律制御の技術が役に立ちます。ドローンにあらかじめ目的地設定しておけば搭載されたGPS情報やカメラの情報から現在地を特定し、ドローンが自律的に目的地まで飛行するという技術です。

実際、過去の災害においても自律制御で物資を運んだ実績もあり、今後もその精度の向上や安定した供給が期待されるポイントです。

雨天や強風、低気温など悪天候下では活動が制限される

機体の小ささや軽さは機動力を飛躍的に上げるドローンの強みの一つでもありますが、一方で環境の影響を受けやすい要因でもあります。

また、寒冷によりバッテリーが劣化し、活動可能時間が著しく短縮するという課題もあります。そのため、台風や豪雨災害の場面、雪山での活動などにおいては課題が残ります。今後、より広い範囲・より多くの環境下での活動が実現されるよう、各社様々な開発を続けています。

熟練した操縦者の育成が必要

ドローンを思い通りに扱うには、それなりの訓練が必要です。例えば、要救助者に安全にできるだけ近くまで近づく、あるいは狙った位置に正確に物資や救命具を投下するといった活動には、熟練した操縦の技術が不可欠となります。

現状ドローンの操縦には特別な免許や資格は不要ですが、実際のところ、なんの訓練も受けずにドローンを操作するのは現実的ではありません。

解決に向けての取り組み

熟練した操縦者を育成するため、全国各地でドローンスクールが作られています。ドローンスクールで学ぶことができる内容は、ドローンの基本的操作方法やメンテナンス方法、実際の活用を想定した学習など多岐にわたります。

今後独学ではなく専門的な機関で学んだスペシャリストが増えれば、ドローン活用の可能性はぐっと拡大することでしょう。

ドローン操縦に関わる規制と災害時の特別対応

ドローンを禁止する標識と飛行機

ドローンは空を飛びますので、航空法の適用を受けます。ドローンを使用する際には、自分や周りの人の安全を守るため、次の規則に従う必要があります

  • 飛行禁止区域(市街地など)で飛行させない
  • 飛行方法の規則を守る(ドローンから物を落とさない、夜間は飛行させないなど)

平時においてこれらの場所・条件下でドローンを飛行させるためには、特別な手続きや申請・承認が必要となります。

このような状況を解決する方法として災害時のドローン活用における特例が設定されています。災害時の特定活動のためであれば、特別な承認や許可を受ける手続きなく活用することができるという特例です。

この特例を受けるためには、次の2点を満たす必要があります。

  • 国や地方自治体から依頼を受けた人・事業者が実施する
  • 捜索や救助を目的とした飛行である

近年、災害時にこの特例を活用してスムーズに救助活動を行えるよう、あらかじめ自治体と事業者の間で災害時のドローン活用について協定を結んでおくケースが増えています。災害時にはこの事業者に救助活動の依頼を行う、とあらかじめ協定で定めておくことで、災害が起きた際に迅速に活動を開始することができます。

過去の災害におけるドローン活用事例

災害におけるドローン活用事例
出典:国土地理院・熊本県

このように、ドローンは災害救助の活動においても多くの可能性を持っています。実際、過去の災害においても既にこれらの強みを活かして活動を行なった実績があります。

ここでは、国内で起こった災害においてドローンが活用された事例を紹介します。

熊本地震での活用事例

 

(出典:国土地理院・熊本県)

2016年 熊本地震

2016年に発生した熊本地震では、ドローンの活躍に大きな注目が集まりました。この時には空撮を行い、被災地に通じる道路状況の確認や、神社や仏閣といった建造物の被害の程度などの把握に活用されました。

この前年に航空法が改正されていたこともあり、国内で初めてのドローンによる本格的な災害活動事例となりました。

2019年台風19号での活用事例

2019年 台風19号

2019年の台風19号では、東京都の奥多摩地域の集落に通じる唯一の道が崩壊し、集落が孤立しました。この孤立した集落への物資の運搬にドローンが活用されたのです。

この活動では自律制御システムを用い、片道約2.5kmを自律飛行しての物資の運搬が実現されました。大規模な離着陸施設を持たない孤立地域に対する迅速な初期支援に成功したことは、今後の災害対策においても大きな意義を持つ実績と言えます。

熱海市土石流災害での活用事例

熱海市土石流災害での活用事例

(提供:静岡県 https://www.geospatial.jp/ckan/dataset/20210703-atami-movie

2021年 熱海市 土石流災害

最近の事例では、2021年に起こった熱海市での土石流災害においても、ドローンは大きな活躍を見せました。特に、この事例においてはドローンの空撮映像をもとにハザードマップを作成することができ、救助活動に大いに役立てられました。

また、この事例においては、有志の活動も注目を集めました。具体的には、静岡市がテレビやインターネットを通じて一般公開したドローン映像をTwitterユーザーが有志で3D化し、公開しました。ドローン単体だけでなく、メディアと融合することでさらなる可能性が見出された事例と言えます。

ドローンの災害活用のためのアクションプラン

ドローンを操縦し救助活動する消防士

災害が起こった際の対策は、何よりもスピード感が重要です。実際の災害の際に迅速にドローンを活用するためには、平時からの準備が大切です。

しかし、いざ災害対策としてドローン施策を導入したいと思っても、何から手をつけて良いか迷うこともあるでしょう。

スムーズな施策導入のためには、まず次のようなステップから始めると良いでしょう。

ドローン災害活用のためのアクションプラン

既に活用している自治体・企業の話を聞く

施策導入にあたり、実際に過去に活用した実績を持つ自治体や企業の話を聞くことは大変有効です。前の項での紹介した通り、国内においてもドローンは複数の災害において活用が開始されています。

過去にドローンを災害時活動に使用した自治体や実際にドローンをオペレートした事業者に話を聞くことで、施策導入に対する具体的なイメージアクションプランを明確にすることができます。

例えば、今回紹介した自治体の防災担当部署へ問い合わせをする、企業窓口へ問い合わせをするなど方法が考えられます。今回紹介した以外にも多くのケースでドローンが活用されています。「災害 ドローン ⚪︎⚪︎県」などのキーワードで検索し、近くの自治体でのケースを探してみるのも有効です。

ドローンスクールを見学する

ドローンスクールを見学する・訪問して話を聞くことも役に立ちます。近年、ドローンの操縦者の育成や更なる活用を目的としたドローンスクールが大きな広がりを見せています。

また、スクールによっては、単なる操縦方法の伝達や練習だけでなく、実際の活用場面を想定した教育を行なっている機関もあります。さらに、卒業生の実績やドローンを活用した事業を行なっている企業の情報を持っていることもあります。

「ドローンスクール」で検索すると様々なスクールが見つかります。立地やカリキュラムなどの条件が合うスクールを探してみると良いでしょう。

まとめ

夕焼けの下でコントローラーでドローンを操縦

災害の現場において、ドローンが大きな役割を果たしうることがわかりました。特に、災害大国と言われる日本において、ドローンは今後さらに重要な意味を持っていくことは間違いありません。

最後にもう一度、今回の記事で紹介した内容をまとめます。

◎災害時ドローンにできること

  1. 要救助者の捜索
  2. 物資などの輸送
  3. 被災地の状況把握・ハザードマップの作成
  4. 救助活動

◎災害時におけるドローンのメリット

  1. 場所・時間を選ばず出動できる
  2. 救助困難地域でも活用が可能
  3. 分断された地域などに到達できる
  4. 少ない人数でより広域での活動ができる
  5. 購入価格導入費用や運用にかかる費用が比較的安価である

◎災害対策にドローンを活用するための課題(デメリット)

  1. 運搬できる量に限りがある
  2. バッテリー容量に限りがある
  3. 電波の到達圏内でしか活動できない
  4. 雨天や強風、低気温など悪天候下では活動が制限される
  5. 熟練した操縦者の育成が必要

◎ドローン操縦に関わる規制と災害時の特別対応

 

・ドローンの飛行に当たっては遵守すべき規制がある

  1. 飛行禁止区域で飛行させない
  2. 飛行方法の規則を守る

・協定を結んだ災害活用においては規制が緩和されるケースも

◎過去の災害におけるドローン活用事例

  • 被災地につながる道路の被災状況の確認
  • 神社や仏閣、建造物などの被災状況の確認
  • 地割れ調査
  • 通信線の被災状況の確認
  • 震災で生じた瓦礫などの処理状況の把握・進捗確認
  • 物資の運搬
  • 被災地の被災状況の確認
  • 被災範囲の確認
  • 共通状況図の作成・公開
  • 3D図の作成・公開 など

◎ドローンの災害活用のためのアクションプラン

  1. 既に活用している自治体・企業の話を聞く
  2. ドローンスクールを見学する

災害の多いこの国にとって、無人飛行が可能なドローンは災害対策においてなくてはならない存在となっていくでしょう。

実際、海や山など救助困難地域での要救助者の捜索や救助、孤立した地域への物資運搬など、これまで困難であったり危険が伴ったりした活動が安全に実施できるようになってきています。

この素晴らしい技術を活用し、一人でも多くの人命が救われることを願ってやみません。