雪中でドローンを飛ばすリスクとは?対策と成功へ導く 8個の注意点

雪の中のドローン飛行は可能だが、注意が必要。リスクもしっかり把握しましょう

「雪の中でドローンは飛ばせるのか?」

結論から言うと、自己責任前提となりますが雪の中でもドローンを飛ばせるケースがあります。
自己責任前提とする理由として、基本的に雪中のドローン使用は禁止としているメーカーが多いからです。

一般向けのドローン市場において、約7割のシェアを占めているといわれる有名メーカー「DJI」のマニュアルでも、禁止事項としてあげられています。

しかし、実際に降雪中のドローン映像は様々な動画配信サイトや、個人や企業のブログなどで見ることができますし、近年は完全防水使用の機体も登場しています。

降雪中という環境がドローンに及ぼす影響を考慮し、記事内でご紹介する対策や押さえるべきポイントに注意して、無理のないフライトを行いましょう。

気をつけるべき雪によるドローンへの影響とその対策方針

ドローン禁止の看板

ドローンへの雪の影響は、
1.本体への影響
2.バッテリーの影響
の2つに分けられます。ここではその影響をご紹介します。

【ドローン本体(機体)】への影響

凍結による負荷

降雪中の飛行は、凍結により思ったようなフライト操作が出来なくなることがあります。

プロペラやモーターが凍結すると、通常通りの回転が難しくなってしまうため、機体やシステムの負担が増大し、ドローンのフライトに悪影響を与えてしまう事態につながります。

システム異常を引き起こす可能性も

ドローンには温度計や加速度計など、様々なセンサーが備わっていますが、雪の中での使用はセンサーの正常な働きを阻害してしまう恐れがあります。

その理由は雪によってセンサーが覆われたり塞がれたりすると、信号が遮断され、正常な働きが出来なくなってしまうことがある為です。また、低気温により飛行抑制システムが作動し、飛行自体が出来なくなる場合も。

【対策方針】

◎雪の状態や天候の見極めを

なるべく粉雪のような、水分量の少ないサラサラとした雪の中で飛行させるようにしましょう。

なぜなら、雪が水分を多く含んだビチャビチャとした状態のものだと、機体やプロペラの凍結リスクが高まってしまう可能性があるからです。

乾燥して軽い雪の場合、高速回転するプロペラの風圧で吹き飛ばされ、機体やセンサーに付着しづらくなるという利点もあります。

雪の中のフライトは、いつも以上に天候に気をつけなければなりません。吹雪いてきたり、降雪量が視界を妨げるレベルになってきたらフライトの中断も考えましょう。

下の章で、より具体的な対策を紹介しています。

【バッテリー】への影響

性能が通常より低下する

雪の降る環境下では、バッテリー性能が通常より低下し、ドローン本来のパフォーマンスが発揮出来ない場合があります。ドローンに使用されるリポバッテリーは寒さに弱いという弱点があるからです。

軽量ながらもエネルギー密度が高く、パワフルな出力が可能という非常に優れたバッテリーですが、バッテリー温度が下がってしまうと、パワーが足りず思ったように上昇飛行が出来ない・飛ばしていられる時間が短くなるなどのデメリットが生じる可能性があります。

【対策方針】

◎飛行直前まで温めておく

何よりも、バッテリーを冷やさず温めることが大切です。

下記の「雪の中でドローンを飛ばす際に大切な8個のポイント」で詳しく対策をご紹介するので、ぜひ参考にしてください。

雪の中でドローンを飛ばす際に大切な8個のポイント

8個のポイント

雪中の飛行を実行する際には、雪がドローンへ与える影響を踏まえ、

  1. 降雪に備えた事前準備
  2. 飛行中の注意ポイント

を知ることが重要です。
押さえるべき8個のポイントを、ドローン本体、バッテリー、2つの観点でまとめました。

ドローンとバッテリーについて

ドローン本体(機体)について

【事前準備のポイント】

【1】機体もウォームアップ(ホバリング)させ温める

大空へドローンを飛び立たせる前に、機体もしっかりとウォームアップさせましょう。

地上から30cm〜1m程度の高さと位置をキープして飛ばすホバリングという操作をし、電圧や温度を安定させます。離陸せずにプロペラを回すだけだと温度がなかなかあがらないので、落下しても危険ではない程度の高さに浮かせください。

バッテリーの温度もアプリなどでしっかり確認します。適温は大体25度〜40度なので、最低でも20度を超える数値まで温めてから、出発するようにしましょう。

【2】出来るだけ機体を軽く、綺麗に

降雪中の低気温下では、GoProなどの付属品はできるだけ外し、機体を軽くするようにしましょう。ドローンの重量が重くなる程、飛行にパワーを使うのでバッテリーの消費を早めてしまうからです。

そして、飛ばす前の機体に雪がついていないか、レンズが曇っていないかの確認を。凍結の危険を防ぎ、綺麗な映像が撮影できるよう、機体やレンズは綺麗に拭いてから飛行させましょう。

【3】離着陸の場所は事前に確認

ドローンをどこから飛ばして、どこに着陸させるかは事前にしっかりと決めておく必要があります。場所を決めずに飛ばしてしまうと、着陸ポイントを探す為に、無駄な時間とバッテリーを使ってしまいます。

詳しい飛行距離や時間を把握する為にも、ドローンのスタートとゴールは出発前に確認しておきましょう。

【飛行中のポイント】

【4】飛行開始直後はゆっくり

ドローンを飛ばして、いきなり急上昇させたりフルスピードを出すのはNGです。

なぜならドローンの飛行開始直後はまだ電圧が安定していないので、急に高度を上げたり速度を出したりするとモーターに過負荷がかかったり、電圧不足になり落下してしまう危険があるからです。離陸直後はゆっくりとしたフライトで、ドローンを飛行に慣らしましょう。

【5】ドローンを飛ばす高度・場所をしっかり把握する

雪の中では、高度の高い場所での飛行はあまり継続させないようにしましょう。

その理由は、ドローンを飛ばす高度が高いほど気圧が下がり、より多くの推進力を生む為にローターが高速回転するので、バッテリーを多く消費をしてしまうからです。

バッテリーの状態確認と共に、機体が今どこにいるのか、GPSのチェックも飛行中は常に行いましょう。

バッテリーについて

【事前準備のポイント】

【6】バッテリーのフル充電は絶対!

当たり前のようですが充電は100%の状態でフライトを開始します。

降雪中の気温が低い環境下の場合、バッテリーの容量が低下し消耗が早まります。飛行途中でバッテリー切れを起こさないよう、しっかり充電されているか確認しましょう。
モニター代わりになるスマホやタブレットも、フル充電がマストです。

【7】飛行するギリギリまでバッテリーを温める

寒さに弱いバッテリーは、飛行開始前から温めておきましょう。

ポケットに入れて人肌で温めたり、暖かい車内に置いておくなど、飛行直前まで冷やさないようにしておくことが重要です。ホッカイロで温めるという方法もありますが、ホッカイロでの直温は急激な温度上昇により、バッテリーの劣化を招く恐れがあるので注意が必要。

最近では自己発熱機能が搭載されたものや、バッテリーヒーターなども市販されているので、活用してみるのもいいですね。

【飛行中のポイント】

【8】バッテリーの状態を常に確認する

雪の降る寒い環境の中では、常にバッテリーの状態を確認することが重要です。

なぜなら低バッテリーでの飛行を続けると、急激な電力低下が起きた際、ドローンが落下したり帰還できなくなってしまうからです。

先でも述べたように、低気温下はバッテリーの消耗スピードが早くなるので、警告表示が出てからではなく、飛行開始時から常にチェックして、バッテリー残量に余裕を持った飛行を意識しましょう。

多くのドローンは、バッテリー残量が一定の数値になったところでアラームを鳴らせるよう設定できるので、そういった機能も有効活用してみてください。

ドローンの使用後のメンテナンスはしっかりと

ドローンのメンテナンス

無事に飛行を終えたら、適切な方法で保管・メンテナンスを行いましょう。

メンテナンス・保管方法

  • 水分を残さない
  • 適切な条件下で保管する(機体・バッテリー別に紹介)
  • メンテナンスは定期的に

水分を残さない

まずはなんといっても、しっかりと水分を拭き取り、乾燥させること。

飛行中に付着した雪は、機体本体はもちろん、プロペラやカメラレンズなど、わずかな隙間も残さずに拭き取ることが大切です。

また、寒い屋外から暖房のきいた暖かい室内へ移動すると、温度変化によって結露ができてしまうので、しっかりと乾かしてから保管するようにしましょう。

適切な条件下で保管する

ドローンは、パソコンや携帯と同じく精密機械です。保管する環境にも気をつける必要があります。

ドローン本体(機体)

全体を綺麗に拭き取り乾燥させたドローンは、埃や振動・衝撃などから守ってくれる、専用の保管ケースなどに入れておくのがおすすめです。そして、直射日光を避け、適した温度と湿度環境で保管します。

理想の温度は22~28℃、湿度は40~50%といわれています。

バッテリー

使用後のバッテリーは、残量40〜60%程度にして保管します。
フル充電の状態で保管していると、バッテリーの劣化が早まってしまうからです。
水漏れや外部の衝撃から守る為に、専用の保管袋などに入れておきましょう。

メンテナンスは定期的に

フライト後は毎回、汚れや破損のチェックは欠かせません。そのほかにも、使用していない間の定期的なメンテナンスも重要です。

累計飛行時間20時間〜を目安に、機体やプロペラを触って亀裂などの破損がないか、モーター音に異常はないかなどの確認を行いましょう。

また、降雪・低温環境での飛行は、パーツの劣化や破損を招きやすいので、プロのメンテナンスを定期的に受けることも、安全なフライトを続ける為の方法の1つです。

より安全・快適に雪中でドローンを使う為のお役立ちグッズ

ドローンの組み立て

降雪中のドローン飛行をアシストしてくれるアイテムをご紹介します。

雪中飛行に便利なアイテム

積雪による白飛びを軽減「NDフィルター」

Neutral Density(ニュートラル デンシティー)、略して「NDフィルター」は、色合いを変えずに、明るさを調節できるアクセサリーレンズのことです。

雪景色は光が反射して白飛びと呼ばれる現象が起きやすいので、光の量を整えてくれるNDフィルターは撮影時の強い味方になりそうですね。

Neewer 4パック NDフィルターキット

車内でバッテリー充電ができる「カーチャージャー」

車内のシガーソケットに繋げてバッテリーを充電できるアイテムが「カーチャージャー」です。

ドローン専用の物が各社から発売されています。使い終わったバッテリーを現地で充電することができるので、充電の減りが早い低気温下では活躍してくれます。

DJI ドローン用充電器 カーチャージャーキット

機体が直接雪に触れるのを防ぐ「ランディングギア・ランディングパッド」

ドローンの機体が地面に直接触れるのを防いでくれる「ランディングギア・ランディングパッド」。ギアはドローンの足に装着して、地面から機体を離して雪に接触しないようにしてくれます。

パッドは地面に敷くシート状のもの。降雪中は事前にセットしておくとパッドの上にも雪が積もってしまうので、着陸前に拭いておくか、ギアの取り付けで雪への接触を防ぎましょう。

ランディングパッド

折りたたみ着陸足 ランディングギア

雪や光の反射からタブレットを守る「サンシェード」

本来、操作モニターの反射を軽減させる日除けアイテムですが、ドローン操縦の手元を雪から守ることもできます。
スマホやタブレットなどの電気製品は、水分に晒されると故障の原因に繋がるので、サンシェードをつけて雪の付着を防ぎましょう。

サンシェード

まとめ

ドローンの飛行

しっかりと対策をすれば、降雪中のドローン飛行も可能となるケースがあります。
最後に記事の要点をまとめました。

【1】雪の中の飛行は可能な場合もあります。ドローンに及ぼす影響やリスクに注意が必要。

【2】雪によるドローンへの影響とその対策

◎本体(機体)への影響

  1. モーターやプロペラなどの凍結の恐れ
  2. センサーやシステムの異常を引き起こす可能性もある

【対策】なるべくサラサラとした乾燥した雪質の時に飛行させる。天候の見極めを。

◎バッテリーへの影響

  1. 低気温下はバッテリー性能が通常より低下する

【対策】飛行直前まで温める

【3】雪の中でドローンを飛ばす際に大切な8個のポイント

◎本体(機体)のポイント
【事前準備】

1.機体をウォームアップ(ホバリング)させ、出発は最低でも20度以上になってから。
2.出来るだけ機体から装備品を外して軽くする。雪の付着やレンズの曇りがないかの確認も大切。
3.無駄のないフライト計画の為にも、離着陸のポイントは出発前にしっかり決めておく。

【飛行中】

4.飛行開始直後は、電圧が安定するまでゆっくりとしたフライトを
5.GPSで飛んでいる現在地を把握する。高度の高い場所での飛行はバッテリーの消耗を早めるので注意。

◎バッテリーのポイント
【事前準備】

6.バッテリーと、モニターがわりになるスマホやタブレットのフル充電は絶対!
7.飛行開始直前まで、バッテリーを冷やさないように温める。

【飛行中】
8.バッテリーの状態を常に確認し、残量に余裕を持った飛行を心がける

【4】ドローンの使用後のメンテナンスはしっかりと

1.わずかな隙間にも水分を残さず拭き取り、乾燥させる
2.機体本体は直射日光を避け、湿度の少ない場所での保管を。
  バッテリーはフル充電状態ではなく、残量40〜60%程度にして保管。
3.累計飛行時間20時間〜を目安に、メンテナンスは定期的に行う。プロに依頼しても◎

【5】より安全・快適に雪中でドローンを使う為のお役立ちグッズ

1.積雪による白飛びを軽減「NDフィルター」
2.車内でバッテリー充電ができる「カーチャージ」
3.機体が直接雪に触れるのを防ぐ「ランディングギア」
4.雪や光の反射からタブレットを守る「サンシェード」

降雪時ではない通常の天候の場合でも、無理なフライトはドローンへの負担が大きく、故障の原因になります。お伝えしたリスクや注意点を踏まえた上で、安全なドローン飛行を行ってください。