ドローンを操縦する方なら誰でも、あわや墜落というようなヒヤリとした経験があるのではないでしょうか?あるいは墜落させた経験があり、原因がわかっていれば…と後悔した経験はありませんか?
ドローンの運航には常に墜落の危険はつきものですが、墜落の原因を知って対策することで、事故を未然に回避することができます。
そこでこの記事では、
- 最新の事故事例
- 墜落の原因とその対策法
- 安全管理の必要性
などについてお伝えし、ドローンの墜落をできる限り防ぐための方法を提案していきたいと思います。
この記事を読めば、ドローンの墜落の原因と対策についての知識が得られ、最小限のリスクでドローンを運用することができるでしょう。
目次
「100パーセント墜落しないドローン」は存在しない
重力というものがある限り、空を飛ぶ物体は墜落します。ドローンも類に漏れず、絶対に墜落しないドローンは存在しません。
購入したばかりのドローンをクラッシュさせてしまったというのも、実はよくある話です。
しかし、ネガティブになる必要はありません。
ドローンの墜落は人為的なミスによるものも多く、操縦者が墜落の原因を理解していれば、ドローンが墜落する可能性を最大限低くすることができるのです。
最新のドローン墜落事故事例
それでは、実際の墜落事故にはどのようなものがあるのでしょうか。
事故事例はDIPSから確認できます。
- 肥料散布のため無人航空機を飛行させていたところ、家屋に衝突・損傷させ墜落した。
【原因】
- 飛行範囲の周囲については35m以上の立入禁止区域を設け、人などが立ち入る可能性がある進入経路にはそれぞれ補助員を配置して安全確認を行った後に飛行を実施する運用を行っていたが、依頼主当事者の空き家については30m以上の距離を取ることができておらず、第三者の物件でないことから操縦者の意識も希薄となってしまっていた。
- 無線交信によるナビゲーターの指示が不通になった時に停止せず、操縦者の自己判断で前進を進めた。
- 進行方向の延長線上に障害物(家屋)がある場合の飛行高度が不十分であった。
- 外壁点検のため無人航空機を飛行させていたところ、突風に煽られ隣家の外壁に衝突落下し、隣家の幕板と外壁を損傷させた。
【原因】
- 補助者を配置しておらず、必要な助言を操縦者が得られなかった。
- 気象条件の確認及び補助者の配置等の遵守事項の知識はあったが、疎かになってしまった。
- 業務のため無人航空機を飛行させていたところ、電波を消失し、墜落した。
【原因】
- 自律航行経路上の標高データの確認不足。
- 自律航行経路が目視内に収まることの確認が十分ではなかった
- 想定外の目視外になってしまった際、即時ミッションを中断できなかった
- 空撮のため無人航空機を飛行させていたところ、機体からの通信が途絶え、機体を紛失した。
【原因】
- 通信途絶した付近は、樹木(杉)の密集地であったので、電波障害が起こったことが考えられる。
- 帰還機能が作動しなかった理由は、設定の際、帰還機能が「OFF」になっていたことが考えられる。
どの事案も事前の確認不足や操縦者のミスによるもので、対策をしておけば回避できたものばかり。
もちろん中には予測不能な事態に陥っての事故もありますが、防ぐことができた事例の方がはるかに多いことがわかります。
ドローン墜落の頻出原因とその対策
ドローン墜落の原因がわかれば、回避する方法が見えてきます。なぜなら、墜落の原因には人為的なミスによるものも多いからです。
ちなみに、ドローンの事故原因で多いものは以下の通り。
第1位:操縦者のスキル不足
第2位:機体のメンテナンス不足
第3位:天候の変化
第4位:電波障害
こちらでは、ドローン墜落の原因と回避する方法について詳しくお伝えしていきます。
①操作ミスによる強制飛行停止(CSC)
ドローンのコントローラーのスティックに一定の動きを加えると、強制飛行停止になる危険があります。
DJI製のドローンは電源を入れただけでは、モーターが始動しません。
CSC(Combination Stick Command)という操作を行うことによってモーターが始動し離陸できるのですが、これは普段の操縦ではしないであろう操作を始動・停止に割り当てることで、不意に作動してしまうことを防いでいます。
(代表的なものはスティックをハの字もしくは逆ハの字に入れる操作ですが、機種によって対応していなかったり別のコマンドでも作動する場合があります。)
運悪く操縦ミスで飛行中にこのコマンドを起動させてしまった場合、プロペラの回転が止まって墜落してしまうのです。
ちなみに以下は飛行中にCSCを実行してみた動画です。
【対策】
飛行時は以下のような極端なスティックの操作を行わない
- 両方のスティックを同時にハの字や逆ハの字に倒す
- グリングリン回す
②プロペラに何かがぶつかる
プロペラに物が接触すると、プロペラの回転が止まり、ドローンはバランスを崩して墜落します。
多いのが木や葉っぱ、電線などに当たってしまうケース。プロペラは飛行する上で最も重要なものなので、当たった瞬間に地面に叩きつけられてしまうということもあり得ます。
【対策】
- 飛行ルートに何か障害物がないか事前に確認する
- 十分な練習を行ったりドローンスクールに通うなどして、障害物に当たらないように飛行させる技術を身につける
③バッテリー切れ
ドローンは搭載したバッテリーによって動いているため、バッテリーがなくなると当然墜落します。
飛行した距離に戻ってくるまでの残バッテリーがなくなって、途中で墜落してしまうケースも。
速度を上げての飛行や冬場の飛行はバッテリーを消耗しやすいので、余裕を持って帰還させることが必要です。
【対策】
- 飛行時にはバッテリー残量をチェックする
- 目安としてバッテリー残量が30%になったら帰還させる
④GPSロス
GPSロスによって操縦不能になり、墜落させてしまうケースです。
GPS機能がオフになるとドローンの制御がいきなり難しくなるため、機体をうまくコントロールできなくなり、墜落させてしまうのです。
【対策】
- GPS機能オフの状態での操縦に慣れておく(GPSをオフにして「ATTIモード」で練習をする)。
⑤突風
ドローンが影響しやすいのは風です。
一定方向の風なら多少流されても機体のバランスを保つことは可能ですが、いろいろな方向からの風や突風が吹いた場合には、バランスを崩して墜落してしまいます。
【対策】
- 飛行場所の天候を事前に確認しておく。
- 「強風だから飛行させない」という判断力も重要。
⑥ブレーキミス
スピードを出してドローンを飛行させていた場合、急にストップするということはありません。
例えば車でも、時速100kmのスピードでブレーキをかけでも慣性の法則で数十m走ってしまいますよね。それを同じことがドローンでも起こるということです。
ドローンの速度を上げれば上げるほど、停止距離は伸びていくので注意が必要。
【対策】
- 停止までの距離も計算して余裕をもって停止させる
- 慣れるまではスピードを出しすぎない
⑦自動帰還中の衝突
自動帰還が作動した時の衝突事故にも注意が必要です。
ドローンには、ドローンとの電波が途絶えた際に発動する自動帰還機能が付いています。
しかし、出発点に戻る際は、飛行させたルートではなく直線ルートで戻ってきます。通常は障害物を避けながら飛行できますが、自動帰還が作動した時には出発点にまっすぐ戻ってきてしまうということ。
そのため、間に建物などの障害物があれば追突は避けられません。
【対策】
- 自動帰還設定において、飛行高度を障害物よりも高く設定にする
⑧バック飛行
ドローンならではの映像が楽しめる「バック飛行」の際にも、墜落の危険があります。
バック飛行とは、ドローンを後退させながら高度を上げていく飛行テクニック。後ろに障害物はないか、どのくらいの距離感があるのかを把握していないと衝突して墜落してしまいます。
【対策】
- 飛行ルートを事前に確認する
- バック飛行の操縦訓練をしておく
⑨水に濡れる
ドローンは、熱を放出するために機体に多くの穴が開いているので、雨などで濡れてしまうとショートを起こしたりプロペラの回転数が崩れてしまったりするリスクがあります。
雨の日ばかりでなく、例えばモーターボートの水しぶきなどにも要注意。
【対策】
- 雨の日の運航は避ける
- 飛行ルートの天候はしっかりチェックしておく
- しぶきがかかるリスクのある場所では、高度に注意(しぶきがかからない高度で飛行する)
⑩整備不良
整備不良も墜落の原因の一つ。プロペラやモーターに異常があるまま飛行させると、バランスを崩しやすくなります。
長い間プロペラを変えずに劣化してしまった場合や、プロペラの取り付けが甘い、モーターに砂が入ってしまったなど、いろいろな原因が考えられます。
【対策】
- 飛行前に機体の状態をチェックする
- 飛行が終わったら汚れや埃を取り除くなど、その都度メンテナンスする癖をつける
⑪信号損失
電波干渉による信号損失による墜落のケースもあります。
ドローンとコントローラーは電波によって操縦を行っているので、電波干渉が大きな影響を及ぼすのです。
電力線、磁場の強い場所、ラジオアンテナ、携帯電話の基地局などが近くにある場合は要注意。また、オフィス街のような電波が入り混じっている場所でも、信号損失する可能性が高くなります。
【対策】
- 事前にアンテナや基地局、電波塔などがないかどうかを確認し、ある場合は飛行経路を見直す
ドローンの電波干渉で実際に起きた事故の例や、より具体的な電波干渉の対策については、こちらの記事で詳しく解説しています。
ドローン墜落事故を防ぐためのその他の対策
ドローンの墜落を防ぐためには、前章で紹介した原因と対策を理解した上で、以下の防止策を実施することが大切。
スキルアップは事故回避の最善策
事故回避の最善策は、操縦者のスキルアップです。
なぜなら、これまでの原因を見てわかる通り、ドローンの墜落は操縦者のスキル不足によるものが多いからです。
そのため、基本的な知識の他に、想定外の状況にも慌てず対処できるための高い操縦技術の習得が必要。
効率的にスキルアップするには、ドローンスクールに通うのも一つの方法です。
アシスタントを配置しよう
ドローン飛行の際、慣れるまでは単独での操縦はやめましょう。初心者のうちはどうしてもドローンや画面に意識が行ってしまい、周囲の状況に気を配ることが難しくなります。
操縦者の他に周囲の状況を確認してくれるアシスタントを用意することで、事故を未然に防ぐことができます。
アシスタントは、操縦者と口頭で連絡を取り合える距離に配置し、障害物や急な天候変化がないかの確認や、着陸ポイントの安全確認を行ってもらいましょう。
墜落事故を防ぐための飛行前チェックリスト
飛行前チェックリストを作り毎回飛行前に確認することで、機体に起因する事故を未然に防ぐことができます。
障害物センサーなどが働いているか?
多くのドローンには障害物センサーが標準搭載されています(DJIドローンの場合VPSといいます)。
機能としては、機体から30m圏内の障害物を認識し、5m手前でアラートを出し、2m手前で機体を静止させるというもの。
【確認手順】
- 送信機・機体の電源を入れ、送信機とスマートフォン・タブレットを接続する。
- アプリを起動し、カメラビュー→ビジュアルナビゲーションシステム設定
- 障害物回避機能が有効になっているか確認する。
コンパスキャリブレーションは行ったか?
コンパスキャリブレーションとは、本体のGPSに正しい方角を認識させることです。
【手順】
- 送信機・機体の電源を入れ送信機とスマホ・タブレットを接続する。
- アプリを起動して機体ステータス一覧からコンパスを選び、“キャリブレーションします”をタップ。
- 表示の指示通りに機体を回転させる。
バッテリーの残量はあるか?
バッテリー電源ボタンを1回押すと「バッテリー残量インジケーター」が点灯し、現在のバッテリー残量を表示してくれます。
プロペラの取り付けは甘くないか?
機体によりますが、プロペラに付いているマークと同じマーク(色)のモーターに取り付けます。
回しながら動かなくなるポイントまで押し込みます。
モーターに埃などが入っていないか?
ドローンのモーターは中の構造が見えているものがほとんど。
飛行ごとの手入れが基本ですが、飛行前に埃などが確認された場合にはエアーブロアーやエアーダスターなどで取り除きましょう。
最新の天候状況を確認したか?
天候状況は短時間でも変わることがあります。
飛行直前に、アプリなどで最終確認を行いましょう。
万が一に備えた保険加入も必要
ドローンは機体が高価であることに加え、事故や故障で多額の費用が発生する可能性があるため、もしもの事態に備えてドローン保険に加入することをおすすめします。
人や物に被害を与えてしまった場合の賠償金のことも考えると、保険加入は必須と言っても過言ではありません。
ドローン保険には、賠償責任保険と機体保険の2つの補償内容があり、使用目的によって個人向けか法人向けかを選ぶことになります(趣味で飛ばす場合は個人向け、事業目的で使用する場合は法人向け)。
賠償責任保険だけでなく機体保険にも加入しておけば、墜落させてしまった際の修理費用なども保障されます。
まとめ
ドローンの墜落の原因や対策について紹介してきましたが、もう一度おおまかな内容を確認しておきましょう。
- ドローンの墜落は人為的なミスによるものも多く、操縦者が墜落の原因を理解していれば、ドローンが墜落する可能性を最大限低くすることができる。
- ドローンの事故原因で多いものは以下の通り
第1位:操縦者のスキル不足
第2位:機体のメンテナンス不足
第3位:天候の変化
第4位:電波障害
- 最新の事故事例はDIPSから確認できる。
- ドローン墜落の原因と対策を理解する他に、以下の事故防止策を講じる
- スクールに通うなどしてスキルアップを図る
- アシスタントを配置する
- 飛行前チェックリストで確認を行う
- ドローン保険への加入は必要
墜落への対策を十分に行ったら、あとは落ち着いて操縦することも大切です。焦りからの操縦ミスは、一番危険。
また、「バッテリーが少なくなってきたけれどまだ大丈夫」「少し風が強いけれど何とかなりそう」といった油断が、大きな事故を引き起こす原因にもなります。
しっかりとした事前準備と確かな操縦技術、正確な判断力があれば、大きな事故は防ぐことができるのです。
本記事で得られた知識を参考に、安全な操縦でドローンが有効に活用されることを願っています。