【導入プロセス全解説】ドローンのビジネス活用の始め方を一から教えてもらいました!

ドローンの白黒写真

さまざまな産業分野での活用が進んでいるドローン。

「うちの会社でもドローンを導入してはどうかという話が出ている」と思い当たる人は少なくないのではないでしょうか?

ですが、ドローンがかなり一般的になってきているとはいっても、それはあくまで世間でよく見かけるというレベルの話。

自社ビジネスにおいて活用するとなると、そもそもどう動けばよいのかわからないというのが多くの企業の実情ではないかと思います。

そこで本記事では、産業用途ドローンの製造販売やソリューションの提供を行う企業でご活躍され、現在は自社サービスにおけるドローン活用に携わるなど、ドローンのビジネス活用に精通していらっしゃる方にインタビューを実施。

ドローン導入の進め方について詳しく伺いました。

オンラインインタビュー

  • まず何から手をつけ、
  • ドローンをどのように選び、
  • 実証実験をどう行い、
  • どこでドローンを購入し、
  • 操縦や運用をどう学ぶのか

といったことについて順を追って解説していますので、この記事を読めばドローン導入の一連の流れと各プロセスの要点をつかめます

また、有識者ならではの視点を踏まえた内容となっているため、ドローン導入の成功や失敗の本質的な理由・原因も理解できるはずです。

この記事が、貴社の事業に真に寄与するドローン導入のお役に立てば幸いです。

ドローン導入のフロー

ドローン導入のフロー

自社ビジネスで活用するためにドローンを導入する際の全体の流れは、上図のとおりです。

次章から、各ステップについて伺った詳しいお話をご紹介していきます。

STEP 1◆ 目的をはっきりさせる

PURPOSEと書いた黒板

──早速ですが、ドローンを導入するに当たり、最初にどういったアクションが必要なのかについて教えてください。

「何のために使うのか」という目的のところを考えることがはじめの一歩です。

どこの企業でも導入する目的について考えるかとは思うのですが、そこのプロセスをよりしっかりと。

「え?そこ?」と思われるかもしれませんが、ドローンで撮影したデータをどう後処理してどう活かすのかといったところまできちんと考えた上で導入しないと……失敗します。

極端な例ですが、ドローンの黎明期には「ドローンって面白そうだからとりあえず買ってみよう」とか「動画撮ったら何かに使えるんじゃない?」など、思いつきのような感じで導入する企業も多かったんです。

それで買ってみたもののうまく使えない、撮ったデータをどう分析すればいいかわからなくて、「ドローンって結局使えないじゃん」ってなるケースがよくありました。

──とりあえず飛ばしてみてから考えればいいやといった感じで導入してしまう例は、今もわりとありますか?

ドローンが目新しかった時期を過ぎた今では少なくなっているとは思います。

今はむしろ、目的がわかっているから買う人と、便利そうとは思うけどよくわからないから買わないという人に二極化しているのかなという気がしますね。

もし可能であれば他社事例を参考に

──便利そうだけどよくわからないという状況、理解できます。自分たちの目的にドローンがふさわしいのかどうかさえ見当がつかないということもありそうです。

目安としては、同じようなことをやっている他社の事例ですね

話せる人がいるなら、実際に使っている人に話を聞くっていうのが一番いいと思います。

──ドローンをまったく使ったことのない企業がゼロから考えるケースであれば特に、経験者から聞く話は貴重ですよね。

はい。

ただし、他の人たちがやっているのだから自分たちもできると即断するのは、少し安直かもしれません

同じ機体を使えば同じことができるはずという期待自体は間違っていないと思うんですけど、そこには操縦者の技術や使うソフトウェアのノウハウといった要素もあるためです。

そこまでちゃんと織り込んだ上での「できるはず」ならいいのですが、その部分を置いておいて、同じ機体を使えば同じことができると単純に考えて進めると、失敗する可能性大です。

ドローンは機械ですが、全自動ではなくて人によるところも多いですので。

そういったことを踏まえながら、参考にさせてもらうといった感じですかね。

ドローンスクールや販売代理店に相談するという手も

商談をするビジネスマン

──とはいえ、同じようなことをやっている人に話を聞ける環境って、正直そうそうないのではという気がします。他に相談できる先、頼れる先はあるのでしょうか?

ドローンスクールや販売代理店に頼ることが多いと思いますね。いろんなお客さんを見ていて経験も豊富ですから。

スクールや代理店を単体でやっているところだとノウハウが少なかったりするので、同じ業界で事業をやっているところだとなおいいですね。まあ、そういったところは競合相手にもなり得るんですけど……。

規模が大きくなりますし一般向けにやるのかはわかりませんが、たとえば建設系だとコマツさんとか、電力系だと関西電力さんとかでも、ドローンスクールをやりますっていう話が出ていたりします。

そういった形でどこかの企業の色がついたようなところは、豊富なノウハウを持っているだろうなと思いますね。

そんな風に、撮影系だったらたとえばテレビ会社の関連がいいといったように、建設系や測量系といった業界ごとにある程度照準を合わせるという選び方はあるかと思います。

──そうやって話を聞いたり相談したりしつつ、自分たちの事業のどの部分にどのようにドローンを活用するのかをできる限り具体的にイメージしておくことが大切なファーストステップなんですね。

はい。

自分たちがやっている事業の中でドローンを使えば本当に便利なのか、事業との融合性の問題もありますし、完全に新規にビジネスを立ち上げるのであればちゃんと成り立つのかという点もあります。

逆に言えば、できない可能性も知っておくのも大事です。

《補足》ドローン導入で一番大事なのはやはり導入目的の明確化

今回お話を伺った方のほかにもうお一人、別の有識者の方にもお話を伺いましたが、ドローンを導入する際に何よりも大事なのは目的の明確化だと同じように強調されました。

「ドローンは所詮は道具、いうなれば『飛ぶカメラ』のようなものです。しかも万能ではありません。

やろうとしていることに対してドローンが本当に最適解なのかどうか、自社の課題解決につながるのかをまずはよく考える必要があります」

同時に、新しいものへの期待値だけで導入するのは危険としながらも、明確な目的意識を持って適切に活用するのであれば一定の投資対効果を見込める場合が多いことにも触れていらっしゃいました。

「ドローンの価格は青天井的なところがありますが、それでも億単位のジェット機などとは違い、数百万円から1千万円くらいということが多いのではないでしょうか。

それで1人工減らせるなら安いものという考え方はあるはずです。

また、たとえば農薬散布ドローンは200万円から300万円ほどしますが、年に数回しか使わないコンバイン1台はもっと高いことを思えば、極端な高額投資とはいえないでしょう」

STEP 2◆機体とアプリケーションを選ぶ

ドローンを選ぶ男性

──目的や活用方法がはっきりと見えたら、次のステップは何ですか?

どの機体を使うのかを検討することになりますね。それと併行してアプリケーション選びです。

──では、まず機体についてお伺いします。

値段は概ね性能に比例すると言ってよいかと思うのですが、どの価格帯のドローンを購入すべきか(言い換えるとどのくらいの性能のドローンを選ぶべきか)の目安はありますか?

どの程度の精度が現場で求められるかによります

ですので、この業種のこの用途にはこのくらいのをといったことは一概には言えません。

実は、100万円以下の汎用的な機体でも、ほぼすべての分野でやりたいことはできるというのが私の考えです。

高額なイメージのある業務用ドローンでも、安いものなら20万円くらいからあるんです。

その20万円くらいのドローンで得られる成果物で十分と判断して、実際にビジネスに活用している方もいらっしゃいます。

機体選びの基準は「やりたいことができるか?」

その一方で数百万円を投じた機体で同じことをしようとしている会社もあるのは、それだけ投資しないと実現できないデータの使い方があるからです。

たとえば、かなり離れた場所からしか撮影できない現場であれば、高精細な画像がマストとなるでしょうから上位機種を検討せざるを得ないわけです。

──「どのくらいの機体を使ったらやりたいことができるのか?」という視点で選ぶわけですね。

はい、そのとおりです。

機体のスペックによってできることがある程度まで決まってくる面もあるので、やりたいことが決まっていれば、機体選びはそこまで複雑なものではないと思います。

ドローンの機体の選び方

自社だけで判断するのが難しければ、販売代理店に相談してデモをしてもらうという方法もあります。

また、具体的な候補機種でPOC(実証実験)を行ってから購入するということも多くの場合可能です。

アプリケーションについても、やりたいことに応じて選ぶという点は基本的に同じです。

アプリケーション選びはデータの用途を基準に

──基本的な質問になってしまうのですが、アプリケーションとは何ですか?

たとえば測量であれば、パノラマ写真のように写真をいくつもつなげて一つの大きな地図みたいにするためのソフトウェアが必要になります。

点検であれば、AIを使って異状を見つけるためのアプリやクラウドサービス辺りが必要となるでしょう。

大量の撮影画像を管理するソフトウェアやクラウドサービスなどもあります。

そういったものを「アプリケーション」と統一して呼んでます。

──つまり、アプリケーション選びというのは、ドローンを飛ばしたその後の工程のためのツール探しということですね?

そうですね。飛ばすためのアプリケーションもありますが、ここで言っているのは主に後処理用のアプリケーションです。

それこそ報告書にまとめる作業だけでも、画像に何かしらマーキングを入れるなどの処理がありますよね。

そういうことがやりやすいアプリを使うのか、それともエクセルなどに自分で貼り付けてマークしていくのか……。

──そういったところまで考えて選ばないといけないわけですね。最適なアプリケーションを見つけるには、何を基準にすればよいのでしょうか?

用途を基準にします。

撮影の伴うドローン飛行であれば、撮った写真を何に使うのかをベースに検討することになります。

測量に使うのか、設備点検に使うのか、それとも純粋に空撮エンターテイメント的に使うのかによって最適なアプリケーションは変わってきますので

より手間がかかるのは機体選びよりもアプリケーション選び

──ほぼ同時進行の機体選びとアプリケーション選びですが、機体を選ぶのとアプリを選ぶのとでは、どちらがより迷ったり苦労したりするものでしょうか?

多分アプリケーションのほうが悩むことは多いと思います。性能評価がしにくいですから。

機体の場合は、写真や動画の品質については一般的なカメラとの比較もできますし、飛行性能については一定の基準以上のものを選んでおけば大丈夫でしょう。

こういう目的で使いたいと言えば、購入先などからアドバイスも受けられます。

つまり、やりたいことが決まっているなら、ある程度までは自ずから候補が絞られるはずなんです。

他方、アプリケーションの場合は、同じようなことができる製品がいろいろあるんですよね。やりたいことに対して答えが一つではない。

購入先からのアドバイスは受けられるでしょうが、「その目的ならこれですね!」とすぐには決まりません。

PCのソフトウェアに喩えると、Microsoft OfficeもあればGoogleもある、ほかにもたくさんのフリーソフトなどもあって、どれも似たようなことができますよね。

それで結局、各作業での使い勝手によって使い分けたりといったことをしていると思います。

ドローンのアプリケーションでも同じようなことが起きます。

ですから、自社にとってベストなアプリケーションを見つけるプロセスには、機体選びよりも時間と手間、そしておそらくお金もかかります。

目的や用途に適した機体とアプリケーションを見極める

──なるほど。機体の選び方はわりとシンプルだけど、アプリケーションの選び方はもう少し複雑になってくるわけですね。

はい。ですが、繰り返しになってしまいますが、どちらも「目的や用途に適しているか?」という点をきちんと評価するというところに行き着くのは同じです。

言ってしまえば、高いものを買えばだいたいできるっていうのはあるんですけど、オーバースペックだったりするじゃないですか。

自社が本当にやりたいことは何か、どこまでできればOKなのか、どんな風にできれば合格なのかっていうのを見極めるべきということですね。

そして、それを使えばやりたいことができるのかを確かめるためには、必要に応じてPOC(実証実験)を行うことになります。

STEP 3◆POCを実施する

ドローンを操縦する男性

──機体とアプリケーションを用意しないとPOCはできないですよね?買ってみてPOCしてみたらダメでしたとなるリスクを考えると……。

POCは購入する前の段階で可能ですよ!

アプリケーションには1週間とか2週間とか無償で評価できる期間がだいたいあります。

機体については販売代理店で試させてもらえるでしょう。

そういった機会を利用してPOCを実施する手間を厭わない、面倒くさがらずにちゃんとやるということが大事かなと。

POCはアプリケーション提供側に依頼がおすすめ

一番効率的なのは、アプリケーションを提供する会社に丸投げする方法ですね。

アプリケーションを提供する会社は、自分たちで検証するために必ず機体を持っています。ですからそういった会社に「このアプリとこの機体の組み合わせで試したいんだけど……」とお願いしてみるんです。

自分たちがやりたいことをやりたい場所で本当にできるかどうかを見せてもらうということですね。

──アプリケーションを制作している会社の多くがそういった依頼に対応してくれるんでしょうか?

会社によりますが、どちらかというとアプリケーションを制作している会社というよりは販売代理店でしょうか。

アプリケーション制作会社にはだいたい販売代理店がついているので、そうした販売代理店が商品を売りたいがために有償で請け負ったりすることはよくあります。

──イメージとしては車の試乗みたいな感じですか?

そうですね、それに近い感じかと思います。

販売代理店さんとかソフトウェアを売ってる会社とかになるべく多くデモをしてもらうのが大事です、有償であれ無償であれ。

POCの必要性と要確認事項

──必要に応じてPOCを行うという先ほどのお話でしたが、特に必要ないケースもあるということですか?

デモ動画とかは一般的に流れてますし、使い方もYouTubeなどで観られますから、そういったのを観て調べられるようなケースであればPOCは特に必要ないかなと思います。

反対にPOCを必ずしておきたいのは、実現性に不安がある場合とか、新規開発が必要な場合とかですね。

──実際、ドローンを導入するに当たってPOCのフローを組む会社もあれば組まない会社もあると思うのですが、「こういう会社はPOCを行うことが多い」といったような傾向はありますか?

どちらかというと規模が大きい会社、初期投資が大きい会社ほどPOCをきっちりやるという傾向はあると思います。

投資金額がたいしたことないと、POCを行わずにいきなり導入するケースもやっぱりありますね。

ただ、POCでは自分たちがやろうとしていることの難易度も確認しておきたいという側面もあるので、行うほうがいいのは確かです。

──なぜ難易度を確認しておきたいのでしょうか?

難易度が高いようなら、外部委託という選択肢も出てくるからです。

専門の人のほうが知識も経験も豊富なので、撮影が難しい場所や複雑な環境では専門業者に任せることも検討すべきだろうと思います。

難易度の確認

──ドローンを使えば実現可能というのと、自社でドローンを使って運用できるというのとは別ということですね。

そのとおりです。

事実、エンタメ系は操縦技術がモノを言う世界なので、空撮になると外部事業者に任せるというところがほとんどですね。

理想的なPOCとその意義

──POCにはやりたいことをすべて盛り込んでしまって構わないんでしょうか?

はい。構わないどころか、やりたいことをすべて盛り込むのが理想ですね。

POCを行うための予算があると思うので、パターンをなるべく絞ったり、どこかで妥協したりする必要も出てくるかもしれませんが……。

そこはもう企業の考え方、ボーダーラインの決め方の問題になってくるでしょう。

ですが、できるのであれば一番上のところも含め見ていくべきだと思います。

──どの程度の機体を使えばやりたいことを実現できるかを知るという観点からは、むしろ一番下から始めて、徐々にグレードを上げて試していくという方法もありそうですが……?

「どこまでお金を出せば理想が叶うか」を知るのが大切なのはそのとおりです。

ですが、一番上でも理想に届かないという現実もあり得ると思うので、それを知るためにも一番上を最初のうちに見ておくべきかなと。

期待値が高すぎるケースが往々にしてあるんですよね。ドローンが何でもできるって思ってしまうと、やっぱり失敗しやすい。

現時点でドローンでできることの認識合わせができた上で導入の是非を判断すべきと思います。

また、理想が叶わないなら叶わないで、「今使おうとしている機体だと理想とする高精細な画像は撮れないけれど、3倍くらいの粗さでなら撮れる。それを許容できるか?」といった許容範囲の確認の機会ともなります。

STEP 4◆機体とアプリケーションを購入する

2つのドローンの内部

──POCを行って、どの機体とアプリケーションを買えばいいかがわかって「いざ購入!」となったときに、どこで購入すればよいものでしょうか?おすすめの購入先があれば教えてください。

具体的には販売代理店や、受講生に対し販売もしているドローンスクールですね。

でも、どういった種類の事業者かというよりは、結局アフターサポートがしっかりしてるところが一番いいと思います。

ネットショップではなくお店で買うことのメリットは、何かトラブルがあったときに頼れる、壊れたときにも保証があるといったこと。家電を買うときと同じです。

見極めるのは難しいですが、なるべく紹介や口コミを参考にして、信頼できる事業者さんを探すのが大事かなと思います。

ググるよりも紹介や口コミが理想的

──探すとなると、まずはグーグルで検索というのが思い浮かぶのですが……。紹介や口コミってやっぱり重要でしょうか?

はい、特に紹介ですかね。

ドローンを導入した知り合いから評判を聞いて、あそこから買ったらよかったよということであれば紹介してもらって買ってくるというのが一番望ましいのではないかと思います。

代理店とかの評判っていうのはなかなか集まらないので、インターネットだけではなかなか調べづらいところがあります。

地元の事業者を探しても

──知り合いにドローンを導入した人なんていないという場合には、他にどういった探し方があるでしょうか?

良いか悪いかは別にして、よくあるのは地元でやってる企業、特に中小企業を探してくるっていうのですね。

地方で、たとえば町の廃校を借りてドローンスクールをやってますといったような企業です。

地域密着型でやってる分だけ、何かあったら相談しやすいですよね。

ドローンに精通しているというところもあれば、そうでもないところもあってレベルはまちまちですが、地域に根づいた事業者を探してきて、トレーニングを依頼したりそこで機体を買ったりという話は多く聞きますね。

──中小企業ではなく、手広くやっている大手販売代理店という選択肢もありますよね?

そうですね。大手の販売代理店であれば、知識がかなり集まっていてノウハウが社内に蓄積されているはずなので、それはメリットだと思います。

ただ、個人相手にどれくらい親身になってやってもらえるかが正直わかりません。

大手だけに省庁などが主な取引先になっていると、個人や小規模な会社はないがしろにされてしまうリスクがあるのではないかと思います。

ドローンの販売代理店は意外と多数

──確かに大手にはそういう側面はありそうですね。ですが、ドローンの販売代理店って地元ですぐに見つかるものですか?

探せば意外とたくさんありますよ。

販売権は持っているけど積極的な販売活動はしていないという代理店も中にはありますが。

──販売できるのに売っていないなんていう代理店があるんですか?

ありますよ。

代理店と名乗れれば格が上がるだろうからという動機で、代理店の看板を出しているというケースです。

実際には自分たちで使うのがメインで、注文が入れば売るけれど営業活動はしていないっていう。

ドローンスクールでの購入も合理的

──売るのがメインではないという点でいえばドローンスクールもそうですよね。

確かにドローンスクールは基本的に教える場所であって販売する場所ではありませんが、スクールでの購入にはそれなりのメリットがあります。

講習に入るときに機体も購入しておけば、実際に使うことになる機体で教えてもらえるので実践的です。

また、受講後に無償でフォローアップ講習を受けられたり、練習場所を貸してもらえたりといったサービスが提供されるスクールも多いです。

そういったアフターサービス面を考えると、受講と機体購入をセットで考えるのは合理的と思います。

もちろん、スクールやそこで教える講師のレベルまで見極めるのは難しいところがありますけどね。

ドローンのおすすめの購入先

STEP 5◆講習を受ける

高地草原で行うドローン訓練講習の風景

──ドローンスクールの話が出ましたが、ドローンを導入するに際して何らかの講習は受けておいたほうがいいですよね?やはりスクールでの受講が基本なのでしょうか?

必須ではありませんが、講習は受けておいたほうがいいと思います

基本的には、ドローンの操縦は機体を購入する販売代理店に、アプリケーションの使い方はアプリケーションを購入する販売代理店に教えてもらうことになるでしょう。

そういった意味でも、購入先はできれば業界が似ているところ、アフターサービスの内容がしっかりしているところを選ぶとよいと思います。

──えっ?スクールではなく販売代理店で習うのですか?

スクールでの受講ももちろんいいですよ。

先ほどお話ししたように、「スクール=販売代理店」というケースも少なくないですし、スクールで受講すればいろいろと効率がよいのも確かです。

ドローンを特定の場所や方法で飛ばす際には許可申請が法律上必要となるのですが、法的に制限のかからない場所で10時間以上練習したことのある人でないと許可を出しませんよというルールがあります。

許可・承認の申請が必要となる特定の飛行形態

車の仮免に近いですけれど、そのルールに則って練習するための時間と場所を確保するのは個人では大変ですよね。

スクールに行けば楽にクリアできますので、そのためにスクールで講習を受けるという人も多いです。

アプリケーションの講習の受け方は使い手次第

アプリケーションの講習

──アプリケーションの講習はアプリケーションの販売代理店で受けるわけですよね。それって有償ですか?それとも無償ですか?

有償講習、無償講習のどちらもあります。

また、購入時にプラスアルファの料金を払ってお願いすることもあれば、購入金額に含まれていることもあります。

──有償のほうが手厚くて内容も濃そうと思うんですが、無償の講習だけだと心細いから有償の講習を受けておいたほうがよいとかありますか?

使い手がどれくらい詳しいか次第だと思います。

実際に使いながら自分でどんどん調べられる人は、無償で受けられる基本的な使い方の講習だけでいいと思います。

一方、まったくわからないし独学の自信もないという場合は、最初から有償の講習を受けるとか、あるいは無償のを受けてから有償のを受けるとか工夫されたらいいんじゃないかなと。

STEP 6◆ドローン運用を軌道に乗せる

屋根点検をするドローン

──ドローンを購入して、講習も受けて、実際にビジネスで活用することになるわけですが、ドローンを導入してから軌道に乗せるまでにだいたいどのくらいの年数がかかるものでしょうか?

事業内容にもよりますけど、簡単な設備点検のようなケースなら1ヶ月か2ヶ月、物流とかになると数年でしょうか。

──運用開始から軌道に乗せるまでで一番時間がかかる部分は何ですか?

お客さんをつかまえるといった話を別にすればおそらく操縦者の訓練に一番時間がかかると思います

とはいっても、習熟度の点だけでいえば、長くても数ヶ月だと思いますね。

1ヶ月で達成できるか数ヶ月かかるかは、操縦する人もしくは後処理をするソフトウェアを使いこなす人を育てるのにどれくらいの時間を費やすことができるか、短期集中でやるか長期間かけてやるかの差になってくるでしょう。

数年かかりそうという物流の話はいわば特殊な例で、運用フローやシステムの整備、法制度や技術面の話まですべてひっくるめてになってくるので数年レベルになるということです。

──なるほど。事業内容にもよるけれど、どれだけリソースを充てられるかということが影響してくるということですね。

社内環境も軌道に乗るまでの期間に影響

そのほかに影響してくるのは社内環境ですね。

やりたいことを実験できる環境を自社で持っていれば、何回も繰りかえし練習ができるので、やはり軌道に乗るまでが早いと思います。

実験できる場所、サービス提供できる場所がお客さんのところにしかないとなると、そこへお願いしてちょっとテストさせてくださいってやらないといけないので、どうしても時間がかかります。

なので、ドローンを実際に使える環境を自社で用意できるところほどスムーズに導入が進むだろうなと思います。

──​​実験できる環境を自社で用意できる業種というと何がありますか?

たとえばですけど、屋根点検の点検対象はお客さんの家の屋根ですが、飛ばして写真撮影するだけであれば必ずしも屋根じゃなくてもいい。

どこかの雑木林とかで樹木を家に見立てて、屋根の高さをイメージしながら飛ばすとかすれば練習にはなるじゃないですか。

あるいは、これは営業的な話になるかと思うんですけど、何か作業する際についでに無料でドローンを飛ばさせてもらえれば写真は提供しますよとか。

実験でありながら営業にもなるから、ビジネスにもつながるでしょうし。

工場設備の点検などになってくると話が全然違ってくるので、数ヶ月〜半年はかかると思います。

ドローン導入で必ず押さえておきたいポイント

ビジネス・教育イメージ―ポイント

──では最後に、中でも「ここだけは絶対に!」というポイントを教えてください。

何をおいても押さえておきたいのは導入目的、ドローンをどのように活用してどのように自社ビジネスに役立てるのかを明確にイメージできるようになるまで踏み込んで考えることです。

その次に来るのが、アフターサポートのしっかりした、信頼できるパートナーとなってもらえるような(機体もしくはアプリケーションの)販売代理店やドローンスクールを見つけることでしょうか。

特にひとつ目の目的のところは、導入云々以前の話のように思われるかもしれませんが、ドローン導入の成否を分けるポイントだと思います。

──今日はたくさんお話いただき、ドローン導入の流れや各プロセスの理解が深まりました。ありがとうございました!

まとめ

今回は、ドローンの有識者に、ドローンを自社ビジネスで活用するために導入する際の流れとそのポイントを伺いました。

  1. ドローンの導入目的をはっきりさせる
    (どのように活用するのかまで考える)
  2. 機体とアプリケーションを選定する
    (基準は「やりたいことができるか?」)
  3. 選定した機体・アプリケーションのPOCを行う
    (販売代理店に依頼するのがよさそう)
  4. 機体やアプリケーションを購入する
    (地元の販売代理店やスクールから購入。口コミや紹介は大事!)
  5. ドローン操縦やアプリケーション運用の講習を受ける
    (購入先かスクールで)
  6. 操縦者や後処理工程担当者のスキルアップに努める
    (実地訓練の環境があれば軌道に乗るのが早い傾向)

上記のうちでドローン導入の成否に一番大きく影響すると考えられるのが最初の1のプロセスです。

ここができていないと、成果が伴い満足できるドローン導入とはならないでしょう。

まだまだ新しく画期的なイメージのあるドローンの可能性にだけ注目するのではなく、あくまで一つのツールとしての有用性の冷静な判断が欠かせません。

どの機体にするかといったことに目が向いてしまい、サラッと済ませてしまいがちなその熟考プロセスこそが最重要であるというのが、有識者の共通した認識のようです。

はじめの一歩からつまずいてしまう恐れが少なからずあるということですね。

しかし逆に、導入目的や具体的な活用方法をしっかりと見据えた上で動き出すのであれば、ドローン導入の滑り出しは上々ということ。

何事も最初が肝心とは言いますが、ことドローンのビジネス活用においてはまさしくそのとおりなのだと実感したインタビューでした。