「豪雨災害の調査にドローン技術が活用されました」
報道やプレスリリースなどで、このような発表を目にすることが増えてきました。
しかし、災害の現場でドローンが具体的にどんな役割を果たしているのか、イメージできますか?
今回、編集部ではドローンを使用しての災害調査経験を豊富に有する専門家にインタビューすることができました。
災害現場におけるドローンの役割やメリット、解決すべき課題など、この記事を読めばドローンの災害調査について理解することができます。
インタビューの最後には、これからドローンでの災害調査に携わりたい人材へのアドバイスやその方法、読者へのメッセージもあります。
ぜひ最後までご覧ください。
まずは、インタビューに答えてくださった方をご紹介します。
元ドローンメーカー勤務
ドローンだけでなく、再生可能エネルギーなど新技術に携わる
ドローンを用いたビジネスのサポートや助言、新ビジネス立ち上げなど豊富な経験を有する
災害調査においては豪雨災害など複数の災害現場で実際に調査に関わっている
災害時のドローン活用については、こちらの記事でも具体的な活用事例・メリット・デメリットを詳しく解説していますので、是非併せてご覧下さい!
目次
災害調査におけるドローンの活用が進んでいる
ー本日はよろしくお願いします。早速ですが、災害調査現場におけるドローンの活用はかなり増えてきているのでしょうか。
よろしくお願いします。
そうですね、かなり増えていると思います。
大きな災害ではほぼ毎回活用されているんじゃないでしょうか。
最近では、2021年に起きた熱海の豪雨災害でドローンが活用されました。
この時には、「ドローンが活用されました」という内容がメディアでも多く取り上げられましたし、災害調査におけるドローンの活用は一般にも知られるようになってきたと思います。
災害調査とは、災害の規模や被害状況を調べる初期調査のこと
ーそうなんですね。
ところで、「災害調査」という言葉はあまり耳馴染みがない人も少なくないかと思うのですが、具体的にはどのようなことを行っているのですか。
「災害調査」と一言に言っても、その意味するところは色々あるとは思います。
最も一般的な意味では、災害が起きた時に、その現場の状況を確認する活動のことをいうことが多いと思います。
被害の状況であったり、二次被害の調査、復旧には何が必要でどれくらいの期間がかかりそうなのか、といった内容などですね。
あるいは孤立した人がいないかなど、救助のための調査なども含まれます。
ー二次被害の調査というのは、現状からどのような二次被害の危険性があるかを推測するための調査、というイメージで合っていますか。
はい、合っています。
現場の状況を確認することで、次にどのようなリスクがあるかを推測することができます。
「今このような崩れ方をしているから、次はあの部分が更に崩れてくる可能性がある」と言った予測を立てるわけです。
ー復旧に何が必要なのか、というのは、被害の規模によって機材や人手がどれくらい必要か想定する、というイメージですか?
そうですね。あとは何を直す必要があるか、などです。
「あそこで橋が崩れているから、橋をかけ直さないといけないな」と言った判断の材料になる情報を集めます。
災害調査においてドローンの空撮技術が活用されている
ー災害調査の現場では、ドローンのどんな技術が生かされているのでしょうか。
一番は空撮技術ですね。
カメラからの映像を用いて災害の状況を把握したり、必要な活動内容を推測したりしています。
災害から時間が経って、具体的な復興や復旧に向けた工事のフェーズなどになってきた時には、もっと別の技術が生かせる場面もあります。
例えば、最近ではドローンを用いた測量や点検の技術が進んできていますよね。
このような技術を用いて、復旧工事の際にドローンで測量したり、工事箇所を点検したり…と言った活用方法も考えられます。
ただ、災害が起きたばかりのタイミング、いわゆる初期調査においては空撮がドローンに期待される重要な役割と言えるでしょう。
災害調査の主体は公共団体、ドローンは民間参画のパイオニア
ーそのようなドローンの空撮技術を用いての災害調査は、どのような人が担っているのでしょうか。
災害調査の主体は基本的には自治体や消防、警察など公共団体です。
これらの団体から要請を受ける形で、ドローンを保有している一般企業や個人と言った民間の人が協力して実施している形が多いと思います。
中には自治体が自分でドローンを保有しており、職員が操縦しているケースもあります。
ただ、大多数はドローンを保有している専門の業者などに依頼が来て実施しているケースでしょうね。
最近ではこういったドローン業者と、災害時における連携の取り決めをしている自治体も増えてきました。
ー災害調査の現場においては、官民が協働して調査にあたっているということですね。
ちなみに、ドローン以外でも災害時に民間企業などが調査に協力する事例はあったのでしょうか。
過去にはほとんどないと思います。
あったとすれば、調査のために民間のヘリコプターを飛ばすとか、メディアの映像を提供するとかそういった形が考えられるでしょうね。
ただ、数としてはそこまで多くはないと思います。
ードローンは災害調査分野における官民連携のパイオニア的存在と言えそうですね。
そうですね。
災害調査にドローンを用いるメリット
ー災害調査において、ドローンを活用するメリットとしてはどのようなものがありますか。
ドローンのメリットは大きく分けて2つあります。
- 人が入れない場所や危険な場所も調査することができる
- 地上にいながらにして、空から鳥瞰的に見渡すことができる。
特に、人が入るには危険が伴う場所を調査できることはドローンの大きな強みですね。
だからこそ、人が調査するよりも早く調査を始められるというメリットもあります。
超早期から調査を開始できる
ードローンであれば人よりも早く調査を始められるというのはどういうことですか。
人が調査をするということになると、ある程度状況が落ち着いてからしか開始することができないんです。
例えば天候が不安定な状態では、すぐには調査を開始することができません。
なぜなら、雨が降ってしまうとまた別のところが崩れてきて、調査担当者に危険が及ぶかもしれないからです。
一方でドローンであれば、そのような判断が難しい状況でも、人が入れるギリギリのところまで車で行って、その先にドローンを飛ばして撮影することができる。
実際、過去の災害では土砂で道が分断されている箇所の直前からドローンを飛ばしたことで、分断された先での被害状況をいち早く知ることができた事例もあります。
「こことここが崩れている」といった情報も得られましたし、1箇所と思われていたのが、実際には3箇所で被害が起きていたこともわかりました。
ーちなみに、早く調査が始められることでどのようなメリットが得られるのでしょう。
被害の状況をいち早く把握することができるので、その後の復旧や救助の計画が立てやすくなります。
また、被害の状況や規模によっては、その現場よりも別の場所に注力する・人手を割くといった判断ができることもある。
こういった決断が素早くできるということは、災害の現場では大きなメリットです。
人が入れない・危険な場所も調査できる
ーなるほど。
ちなみに、ドローンが活躍できる「人が入れない場所」や「危険な場所」とは例えばどんな場所が考えられますか?
先ほど言った「道路が分断された場所」などは人が入れない場所の代表ですね。
危険な場所としては、二次災害が想定される場所などが考えられると思います。
例えば土砂災害のことを考えた場合、場所によってはさらに崩れてくる可能性がある。そう言った場所は危険で人は入れません。
あるいは、崩れてきた土砂で足場が悪く、転倒などの危険も考えられます。
こう言った場所は人が入れるようになったとしても、その人の安全性やリスクのことを考えると、ドローンを飛ばす方がより安全に活動できるでしょう。
ー広域災害時のヘリコプター不足を補うことができる
また、災害時にヘリが足りない状況でもドローンがあれば活動できる、というのもメリットのひとつです。
実際、過去の豪雨災害では全国で同時多発的に被害が起こって、ヘリが足りなくなるということが起こりました。
その際にも、ドローンはあったので、いち早く災害調査を行うことができたんです。
このように、広い範囲で同時に災害が起こった時にはヘリが足りなくなりがちです。
そのような事態に備えて、それぞれの自治体が近隣のドローン事業者と連携を結んでおき、災害時にスムーズに連携が取れるような仕組みを整えておくことはとても大切ですね。
災害現場でドローンを飛行させる際の課題
ーありがとうございます。災害調査において、ドローンに多くのメリットがあることがわかりました。
逆に、ドローンを活用するにあたって難しかったこと、あるいは今後改善が必要と思われるようなことはありますか?
そうですね。そんなに多くはないですが、例えば次のようなことが挙げられます。
- ドローンのプロは災害のプロではないので、「何が見たいのか」をしっかり把握することが難しいことがある
- ヘリコプターなど、他に空を飛んでいる機体との衝突回避
ドローンのプロは災害の素人、災害のプロはドローンの素人
過去に参加した災害調査の現場で、「何を見たいのかを把握する」ということの大切さを感じました。
ドローンの操縦にあたっている人は当然ドローンのプロですが、災害のプロではないですよね。
むしろ、災害の分野においては素人であることも少なくないと思います。
実際の災害現場において、「何を見たら良いのか」あるいは「どういった点をチェックする必要があるのか」というのは、災害のプロの視点なわけです。
一方、行政の担当者は災害のプロではあるでしょうが、ドローンに関してはあまり知識がない場合もある。
その場合、彼らは「ドローンで何ができるのか」がよくわかっていないんです。
ですから現場でまず大切なことは、災害のプロである担当者が「何を見たいのか」をドローンの操縦者がきちんと理解し、それがしっかり映るように撮影すること、ということになります。
あとは、担当者の人にも「ドローンでなんでもできるわけではない」ということを伝えた上で、できることを正しく理解してもらうことも大切でしょうね。
平時から災害時のドローン活用を想定したトレーニングが期待される
ー災害調査の現場においてドローンをもっと効果的に活用するためには、どうすれば良いと思われますか。
例えば、災害が起こる前…平時においても災害時のドローン活用を想定したトレーニングの機会があると良いですね。
災害の現場で、ドローンをどんなふうに活用すれば良いのかをイメージできるような内容が望ましいです。
そのような訓練を平時から行うことで、ドローンで何ができて何はできないのか、といったイメージも正しく持てるようになるでしょう。
そうすれば、より効果的にドローンが活用できると思います。
実際、防災訓練にドローンを導入している自治体の事例も聞こえてきます。
そう言った取り組みが増えてきて、またより実践的になっていくと良いですね。
平時のドローン業務…例えば測量などの場合、現場の下見ができるんです。
下見をした上で、「ここからこういう風に飛ばそう」と事前に考えておくことができる。
ですが、災害の場合は一発勝負ということがほとんどです。
できたとしても、被災前の航空写真をもとに計画を立てるくらい。
だからこそ、普段から災害時を想定して、少ない情報をもとにどのように計画を立てるか、あるいは現場でどんな情報をもとに判断すれば良いのかといった力を身につけておくことが大切になると思います。
ドローンオペレーターと行政担当者の関係性構築が鍵
災害が起きていない平時から行政担当者とドローン操縦者の関係性をしっかりと作っておくというのも大切ですね。
普段からドローンを活用して協働を重ねることで、担当者の方でもドローンはどんなことができて何はできない、ということがわかってくる。
また逆にドローン操縦者も、行政担当者はこういうところが見たいんだな、ということがわかっていくわけです。
ー平時における行政でのドローン活用としては、どんなことが挙げられますか?
そうですね。例えば山岳調査の分野などは多くの自治体で活用が進んでいるようです。
地図のデジタル化の流れもありますし。
あるいは、PR動画の撮影なども考えられますね。
これまではヘリコプターなどを活用して行われていた分野ですが、ドローンを活用することでより手軽に行うことができます。
ヘリコプターとの衝突を避ける仕組みが必要
ー災害調査現場でドローンをよりよく活用していくために、解決すべき課題はありますか。
ヘリコプターとの衝突を避ける、という点が最も重要な課題だと思います。
飛行しているドローンとヘリコプターが空中で接触することは大変危険です。最悪の場合、ヘリが墜落するリスクもある。
災害現場の上空にどんな機体がどれくらい飛行している、というのがわからないとヘリコプターを飛ばせない、ということも起こり得るんです。
ですから、災害現場において、どこにどんな機体がどれくらい飛んでいる、というのが全体把握できるような仕組みが必要だと考えています。
現行では、上空の飛行体全ての情報を一元管理している担当者は決まっていないんです。
ー現状では、上空にどんな機体が飛行しているかどのように確認しているんですか。
基本的には、災害現場を管轄する自治体に問い合わせます。
あとは消防や警察なども必要があれば問い合わせを行うことになります。
災害調査は自治体からの依頼で行うことが基本ですので、依頼元の担当者にお願いして、災害対策本部へ問い合わせてもらう、という流れが一般的ですね。
現行では、一応一番多くの情報を把握しているのが災害対策本部ということが多いので。
過去には正体不明のドローンが原因で消火活動が中止になった事例も…
また、ドローンが手軽に購入できるようになったことで、一般の方がどこでも自由に飛ばすことが可能になった点も問題を複雑にしています。
過去には一般の方のドローンが原因でヘリが飛べなかった事例もあります。
2021年の栃木県での山火事の事例を覚えていらっしゃいますか。
あの時、火事が起こっているエリアの上空に操縦者不明のドローンが飛んでいて、ヘリが飛ばせず、消火活動が一時中断するということが起こりました。
誰でも手軽にドローンを飛ばせるということは、こういうことが起こるんですね。
この事例を受けて法律が改正され、災害現場の上空ではドローンを自由に飛ばせませんよ、と政府が宣言することができるようになりました。
(参考:産経ニュース「消防空域はドローン禁止 国交省、山林火災の消火中断受け」)
とはいえ、趣味でやっている人はなかなかそこまで情報をチェックしていなかったりして知らない、というのが現状だと思います。
そのため、不法行為であったとしても、それを知らずにやってしまう人はいるかも知れず、どこまで抑止力になるのか、というのはちょっとまだわからない段階ですね。
ーこの点については、政府やメディアによる今後の周知が重要である、ということですね。
ドローンパイロットのモラル向上がポイント
そうですね。
SNSに載せたい、などの理由でドローンを飛ばす人も増えてきています。
こう言った人が、悪意なく危険な行為をしてしまう可能性というのは大きくなっているんです。
ーなるほど。このような悪意ない危険行為に対する取り組みとしては、法律による部分しかないのでしょうか…
法改正でどこまで効果が出るのかは難しいところですね。
先ほどお伝えした周知の問題もあります。
こういった点についてはむしろ、操縦する側のモラルの問題になってくると思います。
ーそうですね。ドローン操縦者のモラルを向上させるための取り組みとしては、何か思いつくものはありますか。
ひとつ挙げるとすれば、ドローンの機体登録制度があります。
車のナンバープレートのように、ドローンの機体を事前に登録しなければいけない制度ですね。
事前登録制度はすでに始まっていて、来年(2022年)夏頃から本登録制度が開始します。
この制度が始まることにより、ドローンを飛ばすために登録費用がかかるようになります。
多少なりともお金がかかることで、本当に飛ばしたい人だけが飛ばすようになる、ということは期待できますね。
【業者向け】ドローンによる災害調査を請け負うには?
ーここからは、これから災害調査にドローンを活用していきたいという方に向けたお話を伺いたいと思います。
まず、今から新しくドローンによる災害調査業務の請け負いを始めたい場合、どのように始めると良いでしょうか。
災害調査だけを事業の核にするのは難しい
前提として、災害調査だけを事業内容にする、あるいはメイン業務にするというのは難しいと思います。
災害というのは本来「起きない方が良い」ものですよね。
このような起きるか起きないかわからないようなものをメインのビジネスに置いてしまうのはお勧めできません。
というのも、災害調査だけが収益源の場合、災害が起こっていない時に収入がない、ということになってしまいますからね。
ですから、普段はドローンを用いた別の事業をメインにやっていて、災害が起こった時には災害調査もできる、という状態が理想ですね。
それにより、自治体や企業との繋がり作りのきっかけにして、何か別の事業を展開していく、という形が良いと思います。
空撮スキルをしっかりと磨き、有事に備えるのが大切
ーいざという時に災害調査を行うことを前提とした場合、普段のメイン業務としてはどのような事業が親和性が高いのでしょうか。
空撮に関連する事業が良いでしょう。
空撮って単純に見えて、「狙ったところを狙った通りに撮影する」のって難しいんです。
同じ場所で同じように撮影する瞬間は二度とありませんし。
そういう意味では、普段から空撮に関連する業務を行っている人の方が、何かあった時にもすぐに活躍できるのではないかなと思います。
ー空撮事業というと例えば個人に向けたレジャー撮影のようなものから企業が行う調査に近いものまで色々あると思うのですが、その辺りは親和性の違いはあまり感じられないですか。
そうですね。基本的な空撮技術を身につけていることの方が大切で、それがあればどのような被写体を撮影しているかはそんなに変わらないと思います。
極論、ドローンと自家用車さえあればビジネスは始められる!
ーサブビジネスとして考えた際に、ドローンによる災害調査の分野は新規業者にとっても参入障壁はそこまで高くないのでしょうか。
そうですね。
極端な話、ドローンと自家用車さえあれば現場に行ける、という意味では参入障壁はあまり高くはないです。
既にドローンで仕事をしている人であれば追加投資は必要ありませんし、全く初めての方でもドローンと車を買うくらいですね。
あとは、災害調査の現場はどうしてもある程度危険を伴います。
そういう意味では、これまで安全な業務だけしていた人が、事故や災害に遭うリスクが増える、という面はあるかも知れませんが。
災害に特化したスクールやアプリケーションを経験しておくのもおすすめ
ーこれまでドローンビジネスに携わってこなかった方が災害調査を始めたいと思った場合、空撮技術の他に身につけておくあるいは学んでおくと良いことはありますか。
災害に特化したドローンスクールやアプリケーションなどもあるので、そのようなものを経験しておくのも良いでしょう。
ー災害に特化したスクールやアプリケーションというと、一般のものとはどのような点が異なるのですか。
アプリケーションの場合、例えば地上での調査とドローンによる調査の連携を目的とした、「ヘックアイ」という製品などがあります。
インターネットを利用して、マップ上に情報を集約し、どこでどのような調査が行われているかが一目でわかるようにすることができるアプリケーションです。
マップを見れば誰がどこにいて、どのあたりをドローンが飛んでいる、といったことがすぐにわかります。
また、場所ごとにドローンからの映像や撮影画像をリンクさせることができます。
ーこれは便利そうですね。
災害特化のスクールではどのようなことを学ぶのでしょうか。
一部のドローンスクールでは災害特化型のコースを行っていると聞いています。
一般のスクールで学ぶような基本的なドローン操縦に関する座学と実技はしっかりと行った上で、プラスアルファとして災害時対応についても学ぶ、という内容ですね。
座学で災害について学ぶことはもちろんですが、災害時に活用できるような実技内容も行われているということです。
例えば山の中に何かをあらかじめ隠しておいて、それをドローンで探す…といった訓練が行われているという話は聞いたことがあります。
それにより、どこにあるかわからないものをどのように探すのか、どういった情報が手がかりになり得るのか、といったことを考える方法を学ぶことができます。
また、「こういう災害が起こりました」という前提のもと、何を準備すれば良いか、といった事前準備について考えるような座学が実施されているという話も聞いています。
こういった特色のあるカリキュラムは、例えば自治体や消防の方などにも選ばれるポイントになるでしょうね。
【自治体向け】ドローン業者との協定と、職員の育成はどちらが良いの?
ー自治体の方の場合、職員がスクールなどで学んで実施するケースと、民間事業者へ依頼して実施してもらうケースがあると思います。
実際、どちらの方が多いのでしょうか。
業者へ依頼するケースの方が多いと思います。
自治体の方が自分で実施する、というケースはかなり少ないですね。
消防や警察の場合、自分たちでドローンを所有して、職員が操縦するというケースも増えてきています。
職員が実施するメリット
ーそれぞれのメリット・デメリットについて教えてください。
職員が自分で実施するメリットとしては、2点あると思います。
まずは、災害や地元に関して詳しい人が実施できるということ。
もうひとつは、組織内にノウハウを蓄積できるという点ですね。
災害やその町に関する知識を有した職員が調査を実行できる
先ほどもお伝えした通り、災害調査の現場において「何を見たいか」という点を操縦者と担当者で共有することはとても大切です。
その点においては、自治体担当者の方は地元のこと、その町のことについて誰よりも詳しい人のひとりですよね。
災害が起きやすい場所や、二次災害リスクの高い場所、物陰に隠れた場所など、見るべき場所をきちんとわかっている人が飛ばせる、というメリットはあると思います。
組織内にノウハウを蓄積していくことができる
もうひとつのメリットとして、組織内にノウハウを蓄積していくことができるという点もあります。
自治体自身がドローンを保有して操縦することで、災害時におけるドローン活用についてノウハウを自組織内にためていくことができます。
そういった点においては、自治体自身がドローンを保有するということもメリットがあるでしょう。
業者へ委託するメリット
一方で、ドローン関連業者に依頼をするという方法のメリットもあります。
実際、自分たちではドローンはもたず、いざという時には業者に依頼をする、という自治体も多いです。
ドローンの扱いに慣れたプロが調査を実行できる
業者であれば、ドローンの扱いに慣れた人が操縦に当たることになります。
ドローンの操縦や撮影に慣れた人が行った方が、スムーズに調査ができるということもあるでしょう。
普段からドローン業者との連携を進めておくことで、災害が起きた際にはドローンのプロが駆けつけて災害調査を行うことができます。
機材の購入や職員の育成などのコストが不要
業者との連携を結んでおけば、自治体側では職員を育成したり、機体を購入したりといったコストが不要であるというメリットもあります。
いつ使うかわからないドローンを購入して保有しておく、というのはコストですよね。
その点業者への依頼が前提であれば、災害が起きていない時は自治体側ではコストは不要です。
また、せっかくコストをかけて職員を育成したにもかかわらず、人事異動で担当者が異動になってしまう、ということも考えられます。
そうなった場合に、災害が起きた時だけ担当者を呼び戻すのか、そんなことが可能なのか…という問題が残りますよね。
災害時だけでなく、平時にどのような活用をしたいかがポイント
ー個人的には、事業者との連携か、自組織内での職員育成かといわれたらどちらをおすすめされますか?
一概にどちらかが優れている、というものではないですね。
むしろ、ドローンを使って何をしたいか、という点が大切になってくると思います。
ドローンを災害調査にしか使用しないということであれば、いつ起こるかわからないものに対してドローンを購入するのはコストになります。
一方で、災害時以外にも普段から頻繁にドローンを活用したいということであれば、組織内で実施するメリットも大きいでしょう。
そういった点を加味して、どちらの運用が自身の自治体には向いているのか、といったことを検討すると良いと思います。
ドローンを用いた災害調査の今後
ー最後に、ドローンを用いた災害調査は今後どのようになっていくと思われるのか、お考えをお聞かせください。
ドローンでできること、対応できる災害の種類は広がっている
まず、ドローンを用いた災害調査の幅は今後さらに広がっていくと思います。
今、災害って増えていると思うんです。
特に悪天候による災害が増えてきている印象ですね。
そういう意味では、災害調査の場面も増えていくと思います。
島国であり、山岳地帯に住んでいる私たち日本人にとっては、災害はどうしても起こるものと認識するべきだと思います。
その上で、起こってしまうものなのであれば、どう向き合っていくか、を考えることが大切だと考えています。
「災害が起きた時にどうするか」という視点を持って、ドローンの活用も想定しておくことがとても大切です。
「災害現場でドローンができること」がもっと知られると活躍の場が広がる
また、ドローンでできる災害調査の種類も増えてきています。
例えば火山災害における火口付近の調査なども、人ができなくてドローンができるという性質のものですよね。
今使われている場面だけでなく、もっと多くの場面でドローンによる災害調査の幅は広がっていくでしょう。
また、自治体の方が「ドローンで何ができるのか」といった知識を持っておくことも大切ですね。
災害現場で信頼されるドローンオペレーターになろう!
最後に、災害現場における活動というのは強い信頼が必要とされる業務です。
危険性が高い場所だからこそ、信頼できる業者でなければ依頼はもらえないですよね。
そういう意味では、災害調査の依頼が来るということは、それだけ信頼されているということだと思います。
それをきちんと認識することが大切ですね。
また、そう言った依頼が来るように、平時から信頼される仕事内容を心がけておく、ということも意識してほしいポイントです。
ー災害調査におけるドローンの活用を本当の意味で進めていくためには、むしろ平時における活用についてしっかりと考えておく必要があるということですね。
大変参考になるお話をありがとうございました。
ありがとうございました。
まとめ
操縦者は地上に居ながらにして、上空から鳥瞰的に現場を把握することができる点がドローンの強みのひとつです。
無人航空機であるというメリットを最大限に生かしながら、安全で効率的な災害調査が行われているということがわかりました。
それでは最後に、この記事の内容をもう一度まとめます。
◎災害調査におけるドローンの活用が進んでいる
- 災害調査とは、災害の規模や被害状況を調べる初期調査のこと
- 災害調査においてドローンの空撮技術が活用されている
- 災害調査の主体は公共団体、ドローンは民間参画のパイオニア
◎災害調査にドローンを用いるメリット
- 超早期から調査を開始できる
- 人が入れない・危険な場所も調査できる
- 広域災害時のヘリコプター不足を補うことができる
◎災害現場でドローンを飛行させる際の課題
- ドローンのプロは災害の素人、災害のプロはドローンの素人
- ヘリコプターとの衝突を避ける仕組みが必要
◎【業者向け】ドローンによる災害調査を請け負うには?
- 災害調査だけを事業の核にするのは難しい
- 空撮スキルをしっかりと磨き、有事に備えるのが大切
- 極論、ドローンと自家用車さえあればビジネスは始められる!
- 災害に特化したスクールやアプリケーション、機体を学ぶのもおすすめ
◎【自治体向け】ドローン業者との協定と、職員の育成はどちらが良いの?
- 職員が実施するメリット
- 業者へ委託するメリット
- 災害時だけでなく、平時にどのような活用をしたいかがポイント
◎ドローンを用いた災害調査の今後
- ドローンでできること、対応できる災害の種類は広がっている
- 「災害現場でドローンができること」がもっと知られると活躍の場が広がる
- 災害現場で信頼されるドローンオペレーターになろう!
ドローンは以前に比べるとずっと身近な存在になってきており、様々な場面で活用されています。
だからこそ、安全性にしっかりと留意して、信頼あるオペレーションを行うことがとても大切であるということがわかりました。
災害大国と呼ばれる島国・日本において、ドローンが災害現場における大きな武器のひとつとなる未来が見えてきそうです。