「ドローンのレベル4飛行とはどんなもの?」
「レベル4飛行が解禁されたと聞いたけれど、それで何がどう変わる?」
ドローンについて、そんな疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。
ドローンの「レベル4」とは、「有人地帯での目視外飛行」です。
つまり、人がいる場所で、操縦者がドローンを直接目視しなくても飛ばすことができるということで、これまでは許可されていませんでしたが、2022年12月に解禁になりました。
【ドローンの飛行レベル】
出典:国土交通省航空局「無人航空機のレベル4の実現のための新たな制度の方向性について」
レベル4の解禁により、人がいる市街地や住宅街の上空で、離れた場所からドローンを飛ばすことができるようになるため、ビジネスでの活用が大きく広がることが期待されています。
たとえば、物流分野で離島にドローンで物資を運んだり、スポーツの試合やイベントを上空から中継したり、災害救助や警備などでも活躍するはずです。
ただ、法整備や運行システムの開発、機体の技術開発などの進捗から、本格的な活用が始まるまではまだ数年かかると言われています。
そこでこの記事では、ドローンの「レベル4」についてくわしく説明していきます。
◎ドローンの「レベル4」とは
◎飛行レベル1〜4の定義
◎レベル4飛行実現に向けての政府のロードマップ
◎レベル4飛行でできること
◎レベル4飛行の課題
◎レベル4飛行を行うために必要なこと
◎レベル4飛行に取り組み企業の事例
最後まで読めば、レベル4についてよくわかるはずです。
この記事で、あなたがドローンを十分に活用できるよう願っています。
ドローンの「レベル4」とは?
2022年12月5日、ドローンの「レベル4」飛行が解禁されました。
これにより、ドローンを物流に利用できるようになるなど、その活用範囲が大きく広がることが期待されています。
では、そもそも「レベル4」とは何でしょうか?
これにより、いつ、何ができるようになるのでしょうか?
ドローンには4段階の飛行レベルがある
ドローンには、レベル1からレベル4までの4段階の飛行レベルがあります。
この「レベル」は、単に飛行方法や操縦の難易度を表すものではありません。
ドローンを社会の中で活用していくにあたって、無制限にその利用を解禁すると、事故やトラブルなどが多発することが予想されるでしょう。
そのようなことを避けるには、ドローンに関する法整備、機体の安全基準、免許や資格の創設などさまざまな準備が必要です。
そこで、国土交通省やその関連団体の主導で、ドローンの活用を段階的に進めていくことが決定されました。
その中で、ドローンの活用のしかたを4段階に区切ったものが、レベル1〜4までの飛行レベルなのです。
まずレベル1から始めてレベル2、レベル3と運用を拡大し、最終的な目標であったレベル4飛行が解禁されたのが2022年12月でした。
飛行レベル1〜4の定義
では、飛行レベル1〜4とはそれぞれどんな飛行を指すのでしょうか?
具体的には以下のように定義されています。
レベル1:目視内での操縦飛行(第三者の上は飛ばせない)
レベル2:目視内での自律飛行(第三者の上は飛ばせない)
レベル3:無人地帯での目視外飛行
レベル4:有人地帯での目視外飛行
※目視内飛行:ドローン本体とその周辺を、操縦者自身が肉眼で常時監視しながら飛行する
→モニターを見るために目を逸らしたり、操縦者以外の者が監視したりするのは目視内ではない
※操縦飛行:操縦者が手動でドローンを操縦する
※自律飛行:あらかじめ設定した飛行ルートに沿って、ドローンが自動的に飛行する
【ドローンの飛行レベル】
出典:国土交通省航空局「無人航空機のレベル4の実現のための新たな制度の方向性について」
【レベル4解禁のポイント】
◎レベル4ではじめて「有人地帯(=第三者の上空)」、つまり市街地などドローンの下に人が入る可能性がある場所でも飛ばすことができるようになりました。
→上の図を見ると、レベル1〜2でも有人地帯を飛ばせそうですが、航空法で禁じられているため飛ばせません。
◎また、レベル4では「目視外で」人の上を飛ばせるのが大きなメリットです。
この「目視外」というのがドローンの活用シーンを広げるもので、たとえば以下のようなことが可能になります。
- 遠い場所に物資輸送する(操縦者が拠点にいるまま、目視できない遠方へも飛ばせる)
- 広い山林を空から測量する(木や山の陰にドローンが隠れてもOK)
- ビルの裏側を点検する(裏側に回ったドローンが見えなくてもOK) など
さらにくわしくは「レベル4飛行でできること」で解説します。
飛行レベルに関する用語の定義
まず、上図に出てくる言葉がわかりづらいので、意味を説明すると以下の通りです。
目視内 |
操縦者がドローンをつねに直接目で見て監視できる状態 |
---|---|
目視外 |
操縦者がドローンを直接目で見ることができない状態 |
補助者 |
ドローンを飛ばす際に、操縦者を補助して、機体や周囲の監視などをする者 →中でも特に重要なのは「第三者の立入管理」(ドローンの下や周辺に第三者が立ち入らないよう注意すること) →レベル4飛行では立入管理は不要 |
無人地帯 |
ドローンが飛ぶルートの下やその周辺に人がいない場所 |
有人地帯 |
ドローンが飛ぶルートの下やその周辺に人が入り得る場所 |
では、これを踏まえてそれぞれのレベルについて考えてみましょう。
レベル1の飛行
上図を見ると、レベル1飛行の条件は以下です。
- 操縦
- 目視内
- 無人地帯+有人地帯
つまり、「人がコントローラーで操縦し、操縦者本人がつねにドローンを直接目で見ていられる範囲内で飛ばす」ことができます。
飛ばすエリアは「無人地帯」「有人地帯」どちらでもOKです。
ただし、レベル1・2で「有人地帯」を飛ばす際には、ドローンの下に人や周辺に第三者が立ち入らないように、補助者が「立入管理措置」を講じる必要があると定められています。
つまり、「有人地帯」であっても「第三者の上空」を飛ばすことはできないのです。
そのため、実質的には市街地など不特定多数の人がいる場所の上空を飛ばすことはできません。
上図の「橋梁点検」などのように、ドローンが飛ぶことを知っている人だけがいる場所で、飛ばす際にはその下に人が入らないよう管理できる状態でのみ「有人地帯」での飛行が可能になります。
レベル2の飛行
レベル2の飛行の条件は以下です。
- 自動・自律
- 目視内
- 無人地帯+有人地帯
言い換えると、「人がコントローラーで操縦しない自動飛行で、操縦者本人がつねにドローンを直接目で見ていられる範囲内で飛ばす」ことができ、飛ばすエリアは「無人地帯」「有人地帯」どちらでもOKです。
が、この場合も「有人地帯」の飛行はレベル1と同様「立入管理措置」が必要なので、第三者がいる場所の上空では事実上飛ばせません。
レベル3の飛行
レベル3の飛行の条件は以下の通りです。
- 自動・自律
- 目視外(補助者なし)
- 無人地帯
これは、「人がコントローラーで操縦しない自動飛行で、操縦者本人からはドローンを直接目で見ていられない場所も飛ばすことができるが、ただしそのルートや周辺には人がいない場所に限る」ということです。
「目視外」で飛ばせるということは、遠距離の飛行もできるようになるわけですが、ただしそのルートはすべて無人地帯を通らなければなりません。
となると、たとえば物資輸送などで利用しようとしても、ルートの選定が難しく、実用化のハードルは高いでしょう。
レベル4の飛行
そこで、新たに解禁されたレベル4の飛行ですが、その条件は以下です。
- 自動・自律
- 目視外(補助者なし)
- 有人地帯
ということは、「人がコントローラーで操縦しない自動飛行で、操縦者本人からはドローンを直接目で見ていられない場所も飛ばすことができ、そのルートや周辺に第三者がいてもいい。補助者も必要ない=第三者の立入管理措置も取らなくていい」わけです。
つまり、レベル4飛行であれば、大勢の人がいる場所でもドローンを飛ばせるのです。
これにより、市街地で荷物を配送したり、スタジアムでのスポーツの試合やイベントを空撮したり、人が集まっている場所を上空から警備したりといったさまざまなドローン活用の道がひらけたというわけです。
レベル4飛行が解禁になったが、実用化はこれから
ただ、2022年12月にレベル4飛行が解禁になったとはいえ、今すぐに実用化されるわけではありません。
というのも、実際にレベル4飛行を行うには、操縦者は新たに創設された「無人航空機操縦者技能証明」という国家資格の「一等無人航空機操縦士(=一等資格)」を取得しなければならないのですが、この資格試験の第1回はこれから実施予定です。(2023年1月中に受付開始予定)
つまり、レベル4飛行を行える操縦者が、2022年12月時点ではまだいないのです。
また、運行管理などの制度面を整える必要もありますし、ドローンの機体自体の技術開発もさらに進めなければならないため、実際にレベル4飛行が実用化されるのはまだあと数年はかかるとも見られています。
参考記事:日本経済新聞「ドローン「レベル4飛行」解禁 暮らしはどう変わる?」
レベル4飛行実現に向けての政府のロードマップ
そのようなさまざまな状況、背景を踏まえて、レベル4飛行を実用化し、物流をはじめとしたさまざまな分野でイノベーションを起こすために、政府はロードマップを作成しています。
以下は、「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」(官民協議会)が2022年8月に作成した「空の産業革命に向けたロードマップ2022」です。
出典:小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会「空の産業革命に向けたロードマップ2022」
これによると、レベル4飛行が解禁された2022年12月以降、以下のようなことが予定されています。
- 運行管理について:UTMS(新交通管理システム)の利用を推奨
ドローン同士の近接した飛行や、航空機なども含めた高密度運行を可能にする - 機体の認証:機体の認証取得促進、整備・検査人材の育成、認証機の継続的な安全確保など
- 操縦ライセンス:操縦ライセンスの取得促進、操縦者の育成・技量確保
登録講習機関の登録促進と適切な監督、講習内容の充実、講師の育成支援 - 申請システム(DIPS):システムを改善、利用を促進する
- 機体などの開発:国内企業の開発を促進 など
以上のようなさまざまな面から、2023年以降、レベル4飛行を段階的に人口密度の高いエリアへ拡大していく計画です。
レベル4飛行でできること
では、レベル4飛行が本格的に実現すると、具体的にはどのようなことが可能になるのでしょうか?
レベル4なら「人が大勢いる場所で」「ドローンが見えなくても」飛ばせる
前述したように、レベル4飛行がこれまでと異なるのは、「第三者の立入管理措置をせずに、目視外で、人がいる上空を飛行できる」点です。
【ドローンの飛行レベル】
出典:国土交通省航空局「無人航空機のレベル4の実現のための新たな制度の方向性について」
これまで規定上では、「操縦者がドローンから絶対に目を離さない状態(=目視内)」でなら、人がいる場所も飛ばすことができると定められていました(レベル1〜2)。
(ただ、「レベル1の飛行」で解説したように、レベル1〜2では第三者がドローンの下や周辺に立ち入らないように「立入管理措置」をとらなければならないという規定もあるので、第三者がいる場所の上空では飛ばせません。)
また、「操縦者が補助者なし(=立入管理措置なし)でドローンから目を離す(=目視外)場合」は、「無人地帯」しか飛ばせないと決められています(レベル3)。
つまり、ドローンが操縦者から見えなくなるくらい遠くに飛ばす場合や、山や建物などの陰に入って目に見えなくなる瞬間がある場合、あるいはモニターを見ながら操縦する(=ドローンから目を離す瞬間がある)場合などは、無人地帯でしか飛ばせなかったのです。
それがレベル4では、「操縦者からドローンが見えない状態」でも「人が大勢いる場所」を飛ばすことができるようになりました。
これにより、1箇所の拠点からほぼ日本中どこへでもドローンを飛ばせるようになったわけで、ドローンをビジネスで活用できるシーンが格段に広がったと言えるでしょう。
レベル4飛行の想定される活用例
では、レベル4で「目視外・有人地帯」の飛行が可能になると、具体的には何ができるようになるでしょうか?
ビジネスの分野ごとに、予想される活用例を挙げてみましょう。
物流
レベル4飛行でもっとも大きなイノベーションが期待されているのが「物流」です。
- ドローンによって宅配業務を自動化
- 山間部や離島などの配達困難地域への物資共有ルートを確立
といったことが可能になるとされています。
というのも、物流は倉庫に集められた物資を全国に配達する仕事ですが、レベル3までの飛行では、1箇所の拠点から市街地を通って遠隔地にドローンを飛ばすことができませんでした。
それが、レベル4で可能になるわけです。
拠点にいる操縦者が、多くのドローンを自動運転で全国に飛ばすこともできますし、住宅街や繁華街に入り込んで個々の玄関先まで荷物を届けることも可能になります。
これが実現すれば、配送業者の人手不足の解消、ガソリンなど輸送コストの削減、配送者による交通渋滞の解消、それによる遅配の減少なども期待できるでしょう。
また、僻地で問題化している高齢者の「買い物難民」へも、市街地の商店から直接ドローンで食料品や日用品を届けることができるようになるはずです。
測量
ドローンは、測量にも活用できます。
カメラやセンサーを搭載すれば、上空から土地や建物を3D測量するのです。
この分野でも、レベル4飛行によって可能になることがあります。
たとえば市街地のビル建設現場で、人が大勢いる場所の上空での測量などです。
これも、「人がいる場所を通らなければいけない」「ドローンを目で追えなくなる瞬間がある」状況が許されることによって実現します。
ドローンで測量ができれば、人が行うよりはるかに安全で効率的、低コストというメリットが得られるでしょう。
インフラ点検
橋やダム、港湾などのインフラ施設や工場などの点検に関しても、すでにドローンが利用されています。
ただ、これまでは人がいる場所の上空は飛ばせなかったので、やはり利用できる状況に制限がありました。
それが、レベル4飛行の解禁により、人がいる上空を通っての点検が可能になります。
市街地にあるインフラ設備、工場、ビルなども、ドローンによって詳細に保守点検できるようになるでしょう。
警備
レベル4飛行は警備にも有用です。
上空から広い範囲を監視することができるため、人が大勢集まっている場所でも効率的に警備できます。
前掲のロードマップでは、2024年以降に市街地など広域・有⼈地帯の侵⼊監視・巡回監視を目指しています。
画像解析技術を高度化することで、上空からでも異常を検知したり、人の顔を識別したりすることが可能になるでしょう。
また、海難事故の際には、上空から広い範囲を捜索できるので、より短時間で事故現場や遭難者を発見できる可能性が高まります。
災害対策
災害時の対応でも、ドローンはすでに利用されていますが、レベル4によってさらにその活躍の場が広がります。
たとえば以下のような活用法がありますが、市街地でも飛行できるようになれば、無人地帯を探して迂回することなく直線距離で災害現場に向かうことができるでしょう。
また、住宅街での災害の場合も、離れた場所からドローンを飛ばす目視外飛行ができるので、人が立ち入れない危険な現場を安全な場所から調査することも可能です。
- 被災状況の把握:人が立ち入れない場所でも、空から現場を撮影して即時に状況を把握できる
- 被災者の発見:人の体温を検知する赤外線カメラなどを搭載して、逃げ遅れた人を見つけ出す
- 救助活動:火災現場に消火剤を散布したり、海難救助に浮き輪を投下したりする
- 救助活動の支援:被災者の救助に必要な物資を輸送したり、食料など救援物資を輸送したりする
- ハザードマップの作成:上空からの写真撮影、測量でハザードマップ作成に貢献する など
医療
医療分野は現在、緊急時に医薬品や血液などをドローンで搬送する実証実験の段階です。
今後はレベル4飛行によって、どんな僻地にも最短距離で物資輸送が可能になるでしょう。
そのため、ドクターヘリと連携して、ドローンが迅速に医薬品や医療資材を搬送し、医療支援に貢献する計画が描かれています。
エンターテインメント
エンターテインメント分野では、すでに空撮などでドローンを利用していますが、レベル4飛行によってその活用範囲がさらに拡大します。
これまでは航空法の定めにより、屋外で多くの人が集まったイベントやお祭りなどの撮影は原則禁止されていて、許可を得れば飛ばすことはできますが、その場合でも、人の真上では飛ばすことができませんでした。
人のいる場所で飛ばす場合は、ドローンの飛行高度に合わせて以下の範囲は第三者の立ち入りを禁止しなければならないと決められているからです。
飛行の高度 |
立入禁止区画 |
---|---|
20m未満 |
飛行範囲の外周から30m以内の範囲 |
20m以上50m未満 |
飛行範囲の外周から40m以内の範囲 |
50m以上100m未満 |
飛行範囲の外周から60m以内の範囲 |
100m以上150m未満 |
飛行範囲の外周から70m以内の範囲 |
が、レベル4では不特定多数の第三者の上でも飛ばすことができるようになります。
たとえばスタジアムでのスポーツの試合や、野外フェスなどでも、選手や観客の真上から空撮が可能です。
今までになかった俯瞰からの撮影で、新しい映像表現が見られるようになるでしょう。
レベル4飛行の課題
このように、さまざまな活用が期待されるレベル4飛行ですが、一方でいまだ解決できていない課題もあります。
たとえば以下のような点です。
- 安全性が十分に確保できていない
- 採算性が低い分野がある
- レベル4飛行に対応できる人材が少ない
- 長時間飛行が難しい
- 管制システムが未構築
順番に説明していきましょう。
安全性が十分に確保できていない
第一の課題は、現状ではレベル4飛行を一般化するのに十分な安全性が確保されていないということです。
2021年度に国土交通省に報告があったドローンの事故・トラブルは139件でした。
出典:国土交通省「無人航空機による事故等の情報提供」
過去の事故情報等の一覧(随時更新)より作成
強風に煽られて墜落したり、通信ができなくなり機体が行方不明になったり、電線に接触したり、さまざまな事故が生じています。
中には民家に接触して損傷させたり、負傷者が出たケースもありました。
レベル4飛行が普及すると、市街地の上空をドローンが飛び交うことになり、墜落事故やドローン同士の接触事故も懸念されます。
そのようなリスクを低下させるため、ドローン機体の安全性をより高める技術開発が求められます。
採算性が低い分野がある
また、ドローンの運用は、分野によっては採算性が低いのも問題です。
「物流」で説明したように、レベル4飛行は物流分野での活用が期待されています。
が、現状の実証実験では、1台のドローンを飛ばすのにスタッフ2人以上が必要になるケースが多いそうです。
これではむしろ人件費が増えてしまうでしょう。
物流業界の課題のひとつである人手不足を解消するためには、ひとりの操縦者が2台以上のドローンを飛ばせるようにならなければ意味がありません。
ひとりで複数台のドローンを操縦できるような技術の開発、運行管理の整備が求められます。
レベル4飛行に対応できる人材が少ない
レベル4飛行を行う操縦者には、高い技術と経験値が求められます。
また、企業がビジネスに活用するのであれば、社内にドローン専門のエンジニアも必要でしょう。
が、実際にはそれらの人材はまだ不足しています。
「レベル4飛行が解禁になったが、実用化はこれから」で説明したように、レベル4飛行を行うために必要な一等資格の試験はまだ始まっていません。
レベル4でも安全に操縦できる技能の高い人材は、これから育成する必要があるでしょう。
また、日本では長年にわたってエンジニア不足が叫ばれてきましたが、ドローンエンジニアもその例に漏れません。
ドローンを事業化したい企業は、ドローンエンジニアの確保に苦戦すると思われます。
長時間飛行が難しい
もうひとつ、技術的な問題として、今のドローンの連続飛行時間は30〜40分程度に限られることも挙げられます。
しかもこれはドローンのみで飛行した場合で、荷物を積載すればその分電池の消耗が早くなります。
長時間飛行が難しいため、このままでは長距離の輸送や時間のかかる検査・調査、測量などには向きません。
そのため現在、エンジンで発電できるシステムや長寿命のバッテリーなどの開発が行われています。
実用化できるようになれば、長時間飛行も可能になるでしょう。
管制システムが未構築
もうひとつ問題なのは、管制システムです。
レベル4飛行が実現すると、市街地で多くのドローンが飛び交うことが想定されます。
となると、ドローン同士の飛行ルートを管理し、接触や衝突といった事故を防ぐ仕組みを事前に整えておかなければなりません。
そのため、国は前掲のロードマップでも「運航管理システム(UTMS)」の整備と高度化を進めています。
現状のロードマップでは、「複数の運航者による近接した運航を可能とする」時期を2025年頃目標としていますので、本格的なレベル4飛行が始まるのはそれを待つことになりそうです。
出典:内閣官房 小型無人機等対策推進室「レベル4飛行の実現、さらにその先へ」
レベル4飛行を行うために必要なこと
ここまでで、レベル4飛行の現状についてはよくわかったかと思います。
では、今後レベル4飛行が一般化された際に、実際にドローンを有人地帯で飛ばすためにはどうすればいいのでしょうか?
資格や許可などは必要でしょうか?
レベル4飛行を行うために必要なのは、以下の3点です。
- 国家資格の取得
- 機体認証
- 飛行許可・承認の申請
それぞれ説明します。
国家資格の取得
前述したように、レベル4飛行を行うには、まず操縦者が国家資格である「無人航空機操縦者技能証明」の「一等無人航空機操縦士(=一等資格)」を取得していなければなりません。
前述のように、この資格の試験はレベル4解禁の2022年12月時点ではまだ開始されておらず、2023年1月中に受付開始が予定されています。
この国家資格を取得するには、「登録講習機関」に認定されたスクールで学んで受験する方法と、独学で学んで直接試験を受ける方法があります。
前者の場合は、学んだ講習内容によって実地試験が免除されます。
出典:国土交通省「レベル4飛行実現に向けた新たな制度整備」から資料内画像を加工
取得の詳細については、別記事「【2022年12月最新】ドローンの国家資格(免許)制度!費用・いつから・取り方・免除についてなど全まとめ」を参照してください。
機体認証
レベル4飛行では、前項のように操縦者の国家資格とあわせて、ドローンの機体にも「第一種機体認証」(または「第一種型式認証」)が求められます。
このふたつが揃わなければ、レベル4飛行はできません。
「機体認証(型式認証)」とは、特定飛行を行うドローンに対して、強度や構造、性能が安全基準に適合するかを検査し、安全性を確保するための認証制度です。
ドローンの所有者や利用者が国土交通省(または登録検査機関)に申請し、検査を受けた上で、安全性が認められれば機体認証書が交付されます。
(型式認証の場合は、ドローンのメーカーが国土交通省に申請し、認証されれば「認証書」が交付されます。)
この機体認証は、ドローン1機ごとに受ける必要があるため、レベル4飛行に利用する機体すべてについて申請を出すよう注意してください。
【機体認証の手続きの仕組み】
出典:国土交通省 無人航空機レベル4飛行ポータルサイト「機体認証」ページ
飛行許可・承認の申請
さらに、実際にドローンを飛ばす前には、国土交通省に飛行の許可や承認を申請しなければなりません。
原則的に飛行が禁止されている以下の空域を飛ばす場合は「許可」を、同じく原則的に禁止されている飛行方法で飛ばす場合は「承認」を申請します。
さらに、私有地で飛ばしたい場合は土地の所有者に、公園や河川ならその管理者に確認、許可を得る必要があるなど、場所によって許可申請が必要なケースが多々あります。
これについては、別記事「【2023年版】ドローン規制の全体像|全5大規制をわかりやすく解説」にくわしく解説していますので、そちらもぜひ読んでください。
レベル4飛行に取り組む企業の事例
さて、日本での本格的な運用はこれから始まるレベル4飛行ですが、海外ではひと足先に実用に移行しそうです。
アメリカのAmazon.comでは、これまでドローン配送サービス「Prime Air」の実証実験を重ねてきましたが、ついに2022年末までに一部地域で本サービスとして提供を始めると発表しました。
注文から1時間以内の配達を目指していて、今後は順次エリアを拡大、10年以内に年間5億個の荷物を空輸する計画です。
一方日本でも、実証実験はさまざまな分野で進んでいます。
まず物流分野では、2021年度だけでも以下のような企業、団体が公募により実証事業に参加しました。
出典:内閣官房 小型無人機等対策推進室「レベル4飛行の実現、さらにその先へ」
また、以下のような事例もあります。
◎都内におけるフードデリバリーの実証事例:JR東日本(株)・KDDI(株)
実施場所
①Waters Takeshiba⇒浜離宮船着場(700m程度)
②Waters Takeshiba内、飲食店テラス⇒施設内広場(50m程度)
出典:内閣官房、国土交通省
「ドローンを活用した荷物等配送に関するガイドライン Ver.3.0」より加工編集
◎静岡県浜松市(物流網の維持・医薬品)の事例:(株)ハマキョウレックス・静岡県浜松市
浜松市北部の天竜区は、高齢化が急速に進む過疎地域で、住民の買い物や通院も困難
→市内の店舗から商品をドローンで配送する試み
出典:内閣官房、国土交通省
「ドローンを活用した荷物等配送に関するガイドライン Ver.3.0」より加工編集
このように、さまざまな形でレベル4飛行を活用する実証実験を行うことで、事業ごとに新たな課題も浮き彫りになっています。
それらに対策することで、レベル4飛行の実用化が一歩ずつ近づいてくることでしょう。
まとめ
いかがでしたか?
ドローンのレベル4について、知りたいことがよくわかったかと思います。
ではあらためて、記事の内容をまとめましょう。
◎ドローンの「レベル4」とは、「有人地帯での目視外飛行」
レベル1:目視内での操縦飛行
レベル2:目視内での自律飛行
レベル3:無人地帯での目視外飛行
レベル4:有人地帯での目視外飛行
※目視内飛行:ドローン本体とその周辺を、操縦者自身が肉眼で常時監視しながら飛行する
→モニターを見るために目を逸らしたり、操縦者以外の者が監視したりするのは目視内ではない
※操縦飛行:操縦者が手動でドローンを操縦する
※自律飛行:あらかじめ設定した飛行ルートに沿って、ドローンが自動的に飛行する
◎レベル4飛行でできることは、
- 物流:市街地での宅配業務を自動化、山間部や離島などの配達困難地域への物資輸送など
- 測量:市街地のビル建設現場などでの測量、人がいる地域を通っての森林調査
- インフラ点検:市街地にあるインフラ設備、工場、ビルなどの保守点検
- 警備:市街地など広域・有⼈地帯の侵⼊監視・巡回監視
- 災害対策:市街地を通って災害現場での被災状況・被災者の確認など
- 医療:僻地への迅速な医薬品、医療資材、血液などの輸送
- エンターテインメント:スタジアムでのスポーツの試合やイベントの真上からの空撮
◎レベル4飛行の課題は、
- 安全性が十分に確保できていない
- 採算性が低い分野がある
- レベル4飛行に対応できる人材が少ない
- 長時間飛行が難しい
- 管制システムが未構築
◎レベル4飛行を行うために必要なことは、
- 国家資格の取得
- 機体認証
- 飛行許可・承認の申請
これを踏まえて、あなたがドローンのレベル4飛行を十分に活用できるよう願っています。