プラント点検では、設備の高経年化や人手不足、保安力の低下などが課題になっています。
それらの問題解決に向けて、プラント点検でのドローン活用が注目されていることはわかっていても、
「ドローンを導入した場合どのくらい効果があるのか」
「本当に需要はあるのか」
などの疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。
ドローンによるプラント点検は、
- 費用が安くなる
- 時間が短縮できる、効率化が図れる
- 人の安全に関わる作業に有効に活用できる
の3つの観点から、有効活用が期待されています。
しかし、どのプラントにも同じようなメリットがあるわけではなく、導入にあたってドローンを活用するメリットや課題点を理解し、ドローンを導入する目的を明確化することが大切です。
そこで今回は、前職で企業のドローン導入サポートに携わり、ドローンのプラント点検についても精通している原田さん(仮名)をお迎えし、
- ドローンによるプラント点検の価値・メリット
- ドローンによるプラント点検のビジネスモデル
- プラント点検におけるドローン導入を取り巻く現状
- プラント点検にドローンを導入するにあたっての課題
について詳しく説明していただきます。
※プライバシー保護の観点から、インタビュー者の顔を隠して表示しております。
また、
- ドローンによるプラント点検事業への参入を考えている人へのアドバイス
についてもお話しいただきました。
この記事を読めば、プラント点検にドローンを活用することで得られる効果やこれからの課題、ドローンを導入するにあたって準備すべきことについて理解を深めることができ、自身の事業においてドローンを有効活用するための方法がわかるでしょう。
目次
プラント点検の大まかな流れ
ーそもそもの質問で申し訳ないのですが、プラント点検というのは法律などによって義務付けられているものなのでしょうか?
はい。業種、貯蔵しているものや扱うものによってサイクルは違いますが、法定点検はあります。
点検内容も業種によって違いますが、主に人が見て異常を確認したり、人で言うところのレントゲン検査のようにX線を当てて内部の構造を見たり、打診や触診をするといった点検方法がとられます。
ープラント点検の大まかな流れというか、どのように行われるのかざっくり教えていただいてもいいでしょうか。
点検というのは、プラント点検に限らずですが、準備から補修するまでを「点検」と呼ぶんですね。
まず計画を立てて、それに沿って足場を組んで、実際に見たりセンサー類を当てて点検を行います。点検で異常箇所があれば補修を行って、点検データから報告書を作成して完了です。
ープラント点検にドローンを導入するということは、これまで人の目で点検していたところを一部ドローンに置き換えるというイメージですか?
その通りです。
一部では赤外線カメラなどでの点検も行われています。
プラント点検でドローンを活用する価値は3つ
ープラント点検にドローンを導入するメリットはどんなところにあるんでしょうか?
もちろんドローンですべての点検ができるわけではありません。プラント点検の中でドローンを活用する価値というのは、
- 費用が安くなるか
- 時間を短縮できるか
- 人の安全に関わるか
この3つのうち何かしらのメリットがあるところでドローンが使われています。
ーわかりやすいですね。確かにそのうちの一つでも効果があれば取り入れる価値はありそうです。原田さんが考える、プラントでのドローン点検の一番のメリットは何だと思いますか?
設備によって違うのでこれが一番!とは言えませんが、実際ドローンを導入した事業者さんから多く聞かれるのは、足場を組むお金がかからない可能性があるということでしょうか。
ー可能性があるとは?
可能性があると言ったのは、補修が入る場合があるからです。
ドローン点検の段階では足場は必要なくても、補修が必要となった場合結局足場を組まなければなりませんよね。そうなるとあまりメリットが得られないということになります。
ただ、例えば何百メートルも足場を組まなければならない大規模な施設だと、その中で補修のために足場を組む箇所が仮に半分で済めば、大きなメリットになるわけです。
ーなるほど!プラントの設備や規模、どんな点検をするかによってドローンを活用するメリットは違ってくるということですね。つまり、ある企業ではあまりメリットを感じられなくても、別の企業にとっては大きなメリットになるということもあり得るということでしょうか。
そうですね。導入する事業者が、どのような目的でドローンを取り入れるかによります。
費用の面だけでなく、プラント点検では、人の命に関わる事故もゼロではありません。
安全面を考えた時に労災対策という意味でドローン点検に有効性を感じて導入を進めている企業もあります。
そういう場合は、たとえ費用面でメリットが少なくても、その企業にとってはドローンを導入するメリットがあるということになります。
プラントにおけるドローン点検の価値とメリット
プラント点検の中でドローンを活用する価値は、
- 費用が安くなる
- 時間が短縮できる、効率化が図れる
- 人の安全に関わる作業に有効に活用できる
の3つです。
ドローンを活用したプラント点検のメリットをこの3つの観点から整理すると、以下のようになります。
【費用が安くなる】
《点検従事者の代替》
プラント点検においては、熟練作業者の引退などによる人材不足が課題となっていますが、点検従事者の代替としてドローンを導入することで、この問題に対応することができます。
《作業のコスト削減や効率化》
特に足場を組む必要がある高所での点検には高額な費用がかかりますが(大規模な設備では足場を組んだ点検に数千万円かかる場合もある)、ドローンを導入することで点検時に足場が不要になり、コスト削減や効率化に繋げることができます。
【時間が短縮できる、効率化が図れる】
《AI などによる撮影画像・映像の解析での効率化》
ドローンを導入すれば、ドローン撮影でデータ化した画像・映像をAIなどによって解析し、点検作業の効率化を図ることができます。
《取得データの蓄積による経時変化の調査や管理が可能》
ドローンによる点検では、ドローンによって取得したデータをもとに経年変化の調査や管理がすることが可能になります。
さらに、このデータ化された情報をもとに高度なメンテナンス計画を作成できるため、結果としてプラント設備の信頼性と保全技術の向上に繫がります。
【人の安全に関わる作業に有効に活用できる】
《高所作業や危険物を保有する場合における危険回避》
ドローンを活用することにより、高所作業や危険物を保有する場合において危険を回避できるというメリットがあります。
ボイラーや煙突、人が近づくのが難しいフレアスタックの上部、蒸留塔、屋外大型貯槽タンクといった高所や狭所での作業や、危険物を保有する施設の点検には危険が伴いますが、ドローンでの点検であれば地上から操作できるため、危険にさらされることなく点検することが可能です。
《日常点検頻度の向上による事故の未然防止》
ドローンの活用で日常点検頻度を高めることによって、事故を未然に防ぐことができます。
《災害時の迅速な現場確認》
飛行型のドローンは、災害時に迅速に必要箇所を点検できるというメリットもあります。
プラント点検でのドローン導入例
プラントのドローン点検への取り組みはすでに数年前から始まっており、ドローンメーカーやサービサーが実証実験を行っています。
実際の事例を2つご紹介します。
①ドローン活用で埋設配管の点検
(ブルーイノベーションHPより)
ブルーイノベーション株式会社は、出光興産株式会社徳山事業所にて、プラント設備冷却用(海水)の埋設配管の内部点検作業に球体ドローン「ELIOS2」の適用検証を実施。
これまで目視点検で5日間かかっていた工数をわずか2時間で完了し、定期補修工事の工期内完工を可能にしました。
検査箇所のひとつである海水の埋設配管の入管検査では、管内部に滞留した海洋生物等の死滅・腐敗により有毒ガスが発生している可能性があるため、従来は専門作業員による約5日間の清掃と換気の後、目視検査を行っていました。
そこで、ドローンによる配管内部の清掃前検査を行い、配管の内面コーティングや防食板の状態などを前もって確認することで、限られた期間内での補修の優先順位の最適化が可能になったということです。
この事例では、ドローン導入によって工数削減と危険回避を実現し、プラントの保全技術向上に繋げています。
②石油タンク及び配管の自動点検の実証実験
(センシンロボティクイスHPより)
センシンロボティクスは、ENEOS株式会社川崎製油所が行う石油プラントにおける保守点検業務の安全性向上・効率化に向け、ドローンソリューションを活用した石油タンク及び配管の自動点検の実証実験を実施しました。
川崎製油所では、浮き屋根式石油タンクの定期点検業務において毎日対象のタンクに人が登り点検を行っていましたが、ドローンで行った場合、上空から1基あたり5分程度の作業で対応することができ、目視による異常有無確認の代替手段として活用できることが分かりました。
さらに配管点検業務では、複数段かつ横に10列程度並んだ配管の奥までサポート部の劣化状況が確認することができ、機体のカメラをサーマルカメラに切り替えることで配管の劣化箇所も特定することができました。
この事例では、作業時間短縮や工数削減、画像解析による効率化など、幅広い工程でドローンが有効に活用されていることがわかります。
プラントにおけるドローンの活用事例は、こちらから見ることができます。
プラントにおけるドローン点検の2つのビジネスモデル
ー現状プラント点検というのは、メンテナンス事業者などに委託して行っているんでしょうか?
そうですね、日常的な点検は自社で行い、定期点検のような大がかりな点検は委託する場合が多いと思います。
大きな企業だと、子会社のエンジニアリング企業に依頼するケースが多いようです。
ーでは、これからプラント点検にドローンを導入しようという場合は、どういったビジネスモデルが考えられますか?
もともとプラントのメンテナンス事業者が、ドローンを買って今やっている点検に利用する、もしくはドローンを飛ばすところをドローンの専門業者に依頼するといった形になるかと思います。
専門性の高い分野なので、全くのゼロからの参入は考えにくいでしょう。
ーメンテナンス事業者とドローン専門業者が共同で行うイメージですか?
そういう場合もあると思いますが、どちらかと言えば導入の部分をドローン業者がサポートして、ゆくゆくはメンテナンス事業者がドローン操縦まで行うケースが増えるんじゃないでしょうか。
あとは、データ管理や画像解析などが行えるソフトウエアと、データを収集するドローンなどのデバイスを組み合わせて企業に向けてサービスとして提供するスタイルもあります。
ドローンそのものの飛行はパイロット一人でも可能ですが、プラント点検においては安全管理者、運航管理者といったチームで行うことが求められます。
そういう意味でも、安全管理やデータ解析まで含めたサービスとして導入する方がわかりやすいと考える企業もあるでしょう。
【プラントにおけるドローン点検のビジネスモデルイメージ】
- プラントにおけるドローン点検のビジネスモデルは主に以下の2つ。
- メンテナンス事業者が既存の点検業務にドローンを導入する、またはドローンの操縦部 分をドローン専門業者に委託する。
- ドローンとデータ解析ソフトなどを組み合わせたサービスを提供する事業者が、プラントを所有する企業にサービスとして提供する
プラント点検におけるドローン導入を取り巻く現状
ードローンを導入したいというニーズは、プラントを所有している事業者とメンテナンス事業者とではどちらが多いと感じますか?
どちらが多いというのはちょっとわかりませんが、プラントを所有している事業者とメンテナンス事業者とではドローンを導入したいという理由が違うと思います。
プラントを所有している事業者は、労働人口の減少によってメンテナンスをしてくれる人材がいなくなるのではないかという危機感からドローン導入を考えるケースが多いです。
ドローンをはじめとしたDX(※)を進めることで、少ない工数で同じ作業ができれば、導入する価値は十分ありますよね。
一方メンテナンス事業者の場合は、例えば人の命に関わる点検をドローンに置き換えることができるとかコスト削減できるなどのメリットがあれば、導入を考えると思います。
※DX…デジタルトランスフォーメーション。企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して製品やサービス、ビジネスモデル、さらに業務そのものや組織、プロセスを変革すること。
【ドローンは予知保全に有効に活用できる】
経済産業省の「平成29年工業統計調査」によると、日本には化学工業のプラントが918、石油・石炭製造業のプラントが182存在し、その多くが高度経済成長に作られ、高経年化した設備が使い続けられています。
老朽化した設備を安全かつ安定的に操業するためには保全が欠かせませんが、点検従事者の人材不足や費用の高騰、さらに長期間の点検による設備の不稼働損といった課題を抱えているのが現状です。
これまでの保全行為は、設備が故障した際に修理や部品交換を行う「事後保全」と、あらかじめ設定した定期点検などのスケジュールに沿って部品交換などのメンテナンスを行う「予防保全」が主流でした。
しかし、事後保全は「機器や設備が壊れてから対処するので生産稼働率に大きな影響がある」というデメリットが、予防保全には「まだ使える部品を交換(オーバーメンテナンス)してしまう」というデメリットがあります。
そこで、IoTの概念の浸透と共に、製造ラインの稼働率をより高く維持することができる「予知保全」に注目が集まっています。
※IoT…様々なモノがネットワークを通じてサーバーやクラウドサービスに接続され、相互に情報交換をする仕組みのこと。
予防保全と予知保全の違いは、保全行為を行うタイミング。予防保全は時間を基準に保全を行うのに対し、予知保全は不具合の予兆を察知した時点で保全行為を行います。
ドローンを導入することで、ドローンで得られたデータをもとにトラブル発生の予知することができれば、無駄なく効率的に保全行為を行うことが可能になります。
ー実際プラント点検にドローンを導入している企業というのはどのくらいいるんでしょうか。
まだまだ、全体の中のごく僅かです。
ープラントのドローン点検は、今は実証実験段階ですか?それとももう実用化されていますか?
一部では実用化されています。
プラントごとにニーズが異なるので、ドローンメーカーやサービサーと共同で実証実験を行ったり、一部実験・一部実用といった形で運用しているところもあります。
ードローンを使用した点検は、主に目視点検をドローンに置き換えるのがメインですか?足場が必要な高所などを撮影するというような。
そうですね、現状では可視光カメラでの撮影がメインだと思いますが、プラントによってはサーマルカメラを使って設備の劣化箇所を特定するようなことも行われています。
プラントにおけるドローン点検の課題は搭載機器、防爆・安全装備の開発
ーこれからの課題はどんなことだと思いますか?
課題はたくさんありますが、プラント点検に限らずドローンの一番の課題は飛行時間が短いことです。
例えば狭い所を飛ばすことができる小型のドローンは、搭載できるバッテリーも小さくなるので、現状10分も飛ばすことができれば長い方でしょう。
ダクト内などの狭い場所にドローン点検を取り入れようとしている事業者がメーカーと一緒に試行錯誤している状態ですね。
プラント点検では、現状は主に屋外を飛ばすことに使っている事例が多いですが、屋内での点検に使用するケースも出始めてきています。
ドローンはどうしてもGPSが入らないと不安定になるので衝突事故起こりやすいんですが、赤外線センサーを使って壁との距離を測りながら飛ばせるドローンを使って、煙突の中を飛ばす実証実験も行われています。
あとは可燃性ガスを扱う事業者さんなんかは、点検に防爆のドローンを使いたいと考えているところも多いようです。
プラントの種類によっては、防爆対応されたものしか持ち込めないエリアもあるんですが、防爆対応のドローンはまだ開発段階です。
ードローンを飛ばしてはいけないエリアはどのように決めるんですか?
プラントでは扱っている材料に応じて高圧ガス保安法や労働安全衛生法、消防法などが関わってきます。
プラントにおけるドローンの運用方法をまとめたガイドラインがあるので、それを参考にエリアを決定します。
【プラントにおけるドローン点検の課題】
プラント点検におけるドローン導入の課題をまとめると、以下のようになります。
プラント分野におけるドローンの活用は国としても後押ししていて、2019年から経済産業省、厚生労働省、総務省消防庁という座組みの「石油コンビナート等災害防止3省連絡会議」が、「プラントにおけるドローン活用に関する安全性調査研究会」を開催しています。
2020年1月には設備内部におけるドローン点検の実証実験を行っており、こうした実証実験を踏まえ、「プラントにおけるドローンの安全な運用方法に関するガイドライン」を作成しました。
こうしたドローン点検の基準ができたこともあり、技術的な開発が進めば、今後ドローンによるプラント点検はますます普及が進むことが予想されます。
プラントにおけるドローン点検市場はこれから拡大していく
ープラント点検でのドローン活用はこれからどんどん進んでいくと思われますか?
はい、そう思います。
一番のポイントは、プラントを持っている事業者さんがドローンなどの新しい技術に対する知識だったり、許容範囲がどのくらいあるかだと思っています。
つい4年ほど前は、「プラントの中でドローンを飛ばすなんてけしからん!」と言われるような時代でしたが、今はドローンの安全性や便利さについて理解が進んで業界全体で考え方が徐々に変わってきているので、かなり導入しやすい状況になったと言えるんじゃないでしょうか。
プラント点検にドローンを導入する際のポイント
ーこれからドローンを導入するにあたって、プラント点検ならではの注意事項や何か知っておいた方がいいことなどはありますか?
プラント点検における法律や運用ルールをきちんと把握しておくことが大切だと思います。
そもそもそのお客さんの設備がドローンを使える環境なのかどうか、メンテナンス事業者が知っていなければ運用することはできません。
法律については、今メンテナンスを行っている事業者はすでに知っているはずですが、それぞれ扱っている材料に応じて高圧ガス保安法や労働安全衛生法、消防法などが関わってきます。
ーそれぞれのプラントに合わせた点検をするためには専門の知識が必要ということですね。撮った画像の扱い方などについてはどうでしょうか?
ドローンは空飛ぶカメラ、デジカメと一緒です。
これはプラント点検に限らずですが、ただ写真や映像を撮っただけでは意味がなく、その撮った画像をどう扱うかが重要なんです。
大量の画像を、いつどこで撮った画像かわかるようにクラウドサービスを使って管理すれば、同じ場所で撮ったものを並べて比較するなど経年で管理することができますよね。
あとはAIで錆を検知して異常度合いを解析するなど、データ化された情報をもとにどのように活用していくかが一番のポイントになります。
ードローンを使って撮影することよりも、その先の方が重要ということですね。他には何かありますか?
ドローンが落下する可能性はゼロではないので、リスクアセスメントを行うことも大切です。
【プラント点検分野へのドローン導入のポイント】
- プラント点検における法律や運用ルールを把握しておく(高圧ガス保安法・労働安全衛生法・消防法など)。
- ドローンで得たデータをどう活用するかが重要なので、クラウドソフトやアプリケーションの勉強をしたり、ソフトを販売している事業者とコミュニケーションを取る。
- ドローンが落下する可能性も考え、リスクアセスメントを行う。
【プラントにおけるドローン点検のリスク対策の例】
- 飛行前、飛行当日におけるプラント入構者への、ドローン飛行の実施及び飛行ルートに関する周知の徹底
- 悪天候時、一定の風速を超えた場合の作業中止
- GPS等の電波を受信できない場合には、機能が復帰するまで空中で保持する機能、安全な場所に自動着陸する機能の設定
- 風況、飛行高度等に応じた危険なエリアとの離隔の想定
- 防火・消火体制の確保
プラントにおけるドローン点検のリスク対策については、「プラントにおけるドローンの安全な運用方法に関するガイドライン」にも詳しく記載されています。
プラント点検分野へのドローン導入にあたってスクールは必要か
ードローンを導入するにあたって、具体的にはどのような準備をすればいいんでしょうか。例えばプラント点検に特化したスクールに通うなどの方法ですか?
導入するのがメンテナンス事業者であれば、基礎的なことを学べるスクールに通うのもいいかもしれませんが、プラント点検においてこういう所に使ったら役に立つはずだという道筋がきちんとできてからトレーニングをしても遅くはないと思います。
飛ばすことが先ではなく、何のために使うかをはっきりさせることが先ですね。
どちらかと言えば、ドローンを上手く操縦できるかよりもドローンで得たデータを上手くレポートにする方が重要なので、クラウドソフトやアプリケーションの勉強をした方がいいと思いますよ。
例えばそういうソフトを販売している事業者とコミュニケーションを取るというのも準備として必要だと思います。
【プラント点検特化のドローンスクール】
ドローンスクールの中には、プラント点検に特化したコースを設けているところもあり、座学・実技講習を受けることでプラント点検業務に必要な技能、知識を習得することができます。
スクールは知識や技術を効率的に習得する有効な手段ですが、ドローン導入の目的や用途を明確化させてからでも遅くはありません。
ーでは、これから参入を考えている人に向けて何かアドバイスがあればお願いします。
便利そうだからとりあえずドローンを取り入れるという発想でなく、ドローンを何のために導入するのかを明確にしてからビジネスに取り入れることが重要です。
安全に関わる課題を解決するためなのか、コストダウンが目的なのか、それとも労働人口減少の対策としてのDXの一環なのか、まず目的をはっきりさせることがポイントになります。
それから、ドローンは一つの手段であって、ドローンがすべてを叶えてくれると思わないことです。
ドローンは目的を叶えるための全体のうちの一つ。いくつもシステムがあって全部がないと目的は達成できないということを理解した上で導入しないと失敗します。
ーなるほど。導入することが目的ではなく、目的を達成するための手段の一つとしてドローンを活用していくということですね。
そうですね。そして何度も言うように、ドローンで得たデータをどう活用して目的達成に繋げるかが大事です。
ーわかりました。本日は貴重なお話をありがとうございました!
まとめ
プラント点検事業へのドローン導入について、有効性やビジネスモデル、これからの課題や導入するにあたってのポイントなど幅広く理解していただけたかと思います。
では最後にもう一度要点を確認しておきましょう。
- プラント点検の中でドローンを活用する価値は、以下の3つ。
☑費用が安くなる
☑時間が短縮できる、効率化が図れる
☑人の安全に関わる作業に有効に活用できる
- 3つの価値プラント点検にドローンを導入するメリットは主に以下の7つ。
☑点検従事者の代替
☑作業のコスト削減や効率化
☑AI などによる撮影画像・映像の解析での効率化
☑取得データの蓄積による経時変化の調査や管理が可能
☑高所作業や危険物を保有する場合における危険回避
☑日常点検頻度の向上による事故の未然防止
☑災害時の迅速な現場確認
- プラントにおけるドローン点検のビジネスモデルは主に以下の2つ。
- メンテナンス事業者が既存の点検業務にドローンを導入する、またはドローンの操縦部 分をドローン専門業者に委託する。
- ドローンとデータ解析ソフトなどを組み合わせたサービスを提供する事業者が、プラントを所有する企業にサービスとして提供する。
- 近年では、IoTを活用することにより製造ラインの稼働率をより高く維持することができる「予知保全」に注目が集まっている。
- プラントにおけるドローン点検の課題は、飛行時間の長さや防爆対策、GPSに頼らずに飛行できる機能など、技術的な課題が多い。
- プラント点検分野へのドローン導入のポイント
☑プラント点検における法律や運用ルールを把握しておく(高圧ガス保安法・労働安全衛生法・消防法など)。
☑ドローンで得たデータをどう活用するかが重要なので、クラウドソフトやアプリケーションの勉強をしたり、ソフトを販売している事業者とコミュニケーションを取る。
☑スクールは技術や知識習得のための有効な手段。プラント点検に特化したコースを設けているスクールもある。
☑ただしドローンの操縦技術取得(スクールなど)は、ドローン導入の目的や用途を明確化させてからでも遅くはない。
☑ドローンが落下する可能性も考え、リスクアセスメントを行う。
☑何のためにドローンを導入するのかを明確にしてからビジネスに取り入れる。
☑ドローンは目的を達成するための一つの手段であることを認識する。
プラント点検分野はそれぞれの設備ごとにニーズが異なり、プラントを所有する事業者がどのようなことを求めているかによって求められるサービスも変わります。
まずはプラント点検でドローンを活用するメリットや課題点を理解し、ドローンを導入する目的を明確化することが大切。
目的がはっきりすれば、必要なドローンの機体や搭載機器が明確になり、スムーズに運用することができるでしょう。
併せて、取得したデータの解析や活用のため、クラウドサービスやアプリケーションなどについてもしっかり準備することが必要になります。
本記事で得られた知識をもとに、あなたの事業においてもドローンが有効に活用されることを願っています。