UAV測量(ドローン測量)は、さまざまな産業分野でのドローン活用が進む中でもとりわけ普及が進んでいる分野です。
測量会社はもちろん、土木工事を行う建設会社などからも注目されており、測量に関わる多くの人が気になっているのではないでしょうか。
この記事では、そんなUAV測量に挑戦するに当たりドローンスクールに通うことを検討している人に向け、次のような情報をお届けします。
- そもそもドローンスクールで学ぶ必要があるのか?
- どういったコースを受講すればよいのか?
- ドローンスクールではUAV測量に関する何を学べるのか?
- UAV測量を学ぶドローンスクールをどう探せばよいか?
お読みいただければ、ドローンスクールに通うべきか、通うならどういったスクールでどのような講習を受けるのがよいかといった疑問が解消します。
また、測量の知識や経験がなくてもドローンスクールでUAV測量を学べるのかについても触れており、測量未経験者の方にも役立つ内容となっていますので、ぜひお役立てください!
ドローン測量を検討されている方へ:関連記事のご紹介
ドローン測量のメリットデメリット、おすすめ活用ケース、始めるまでの流れなど「ドローン測量の全体像」については、別のこちらの記事で詳しく解説しています!
ドローン測量とは?メリットデメリットや始め方(料金・資格等)をインタビュー!
こちらの記事は、過去ドローンメーカーに勤務されドローン測量領域の案件実績も多く持つプロの方に、ドローン測量に関するインタビューを行った内容を記事にしたものです。
お読みいただければ、ドローン測量はどの様な案件に適しているのか、始める際はどの様な手順を踏めば良いのか(かかる料金や資格取得の必要性)、おすすめの測量用ドローンなど、ドローン測量に取り組む前に知っておくべき情報を知ることができますよ。
目次
UAV測量に挑戦するならドローンスクールに通うべき
既に測量業務に携わっている人であれば測量の知識やスキルは持っているはずですし、各種センサーを搭載して自律飛行さえするドローンを操縦するのはそれほど難しいものではなさそうです。
それでも、UAV測量を考えているならドローンスクールでしっかりと学んでおくのがおすすめ。
なぜなら、これからUAV測量を始めようと考えている人の多くは、測量に関する知識やスキルは経験は持っていても、ドローンを運用するために必要な知識やスキルは持ち合わせていないはずだからです。
ドローンを飛ばすには、遵守しなくてはならない複数の法律・条例に精通していなくてはなりませんし、国土交通省への許可申請が必要なケースもあるでしょう。
ドローンを飛ばした後のデータの解析や3次元化も欠かせません。
そういった幅広い知識や技術を独学で習得するのはかなり大変。スクールで効率よく学ぶのがなんといってもスムーズです。
ドローンスクールは「一般コース受講→測量コース受講」がおすすめ
多くのドローンスクールでは、ドローンを飛ばすための操縦技術や関連法規などをひと通り学べる一般的なコースと、特定分野でのドローン活用に求められる専門的な知識・スキルを学べる特化コースとを設定しています。
ただし、測量特化コースを受講する場合、一般的なコースを受講済みで全般的な知識や技術を習得していることが前提条件となっていることが多いです。
そのため、まずは一般的なコースを受講し、続けて測量特化コースを受講するというのがおすすめの進め方です。
(※初歩的な内容のコースについては、一般的なコース相当の内容が前半に組み込まれている場合もあります)
ドローンスクールの一般コースの概要
一般コースでは、ドローンに関する一般的な知識やルール全般を座学で、基本的な操縦技術を実技訓練で学びます。
一般コースを受講すれば、ドローンを安全かつ合法的に飛ばすために必要な基本的内容(原理、構造、制御方法、関連法規、操縦方法など)をひと通り学べます。
受講日数は2〜3日間程度が主流
一概にはいえませんが、基本的な内容をひと通り学ぶ一般コースの所要日数は2〜3日間ということが多い傾向です。
受講料の相場は10〜30万円
講習の内容や日数により変わってきますが、10〜30万円の幅に収まるケースが多いです。
一般コースについては「ドローンスクールとは?通う必要はある?メリットや国交省認定も解説」で詳しく解説していますので、ご参照ください。
ドローンスクールの測量コースで学べる主な内容
ドローンスクールの測量特化コースで学べる主な内容を確認しておきましょう。
おおまかな内容はどこのスクールもだいたい同じですが、やはりスクールごとにカリキュラムには多少の差がありますので、ここでご紹介するのはあくまで代表的な項目です。
なお、スクールによっては初級・中級・上級といったようにレベル分けし、下記項目を複数のコースに分割している例も多く見られます。
なお、上の表の最下段に当たる「測量データを3次元へ落とし込むプロセス」を集中的に学ぶコースを設けているスクールもあります。
また、UAV測量には写真測量とレーザー測量とがありますが、ドローンスクールの測量特化コースで扱うのは写真測量が主流です。(上記カリキュラム例も写真測量のケース)
《数は少ないがレーザー測量を学べるスクールもある》
スクールで主に写真測量が扱われる理由としては、レーザー測量に必要な機材が大変高額であるため導入に動こうとする事業者が限られ、スクール側としても訓練用機材の確保が難しいという事情が影響していることが考えられます。
ですが、決して多くはありませんが、レーザー測量を学べるスクールも探せばあります。
たとえば愛知県にある名鉄ドローンアカデミーでは、UAVレーザー測量を学べる「プロフェッショナルコース」が開催されています。
受講日数の平均は2〜5日間程度
UAV測量の知識・スキルを漏れなく学べるようなフルコース的な講習もあれば、初歩的な内容を中心にした講習、上級者向けの講習などさまざまあり、受講日数も一概にはいえませんが、2〜5日間程度ということが多いようです。
しかし、たとえば3Dモデル作成方法にフォーカスした半日講座など、短時間・短期間のコースもあります。
受講料の相場は30万円前後
受講料は講習内容や受講日数によっても変わってきますが、3日間程度の講習であれば30万円前後というケースが多い傾向です。
難しければ「一般的なコースだけ受講」でもメリットはある
前述のとおり、測量特化コースを受講するには、前もって一般的なコースを修了しておくことが必要な場合が多いですが、2コースも受講するのは難しいという場合もあるかもしれません。
そうした場合には、とりあえず一般的なコースだけでも受講しておきましょう。
一般的なコースだけ受講するとしても次のようなメリットがありますので、まったく受講しないよりはずっと望ましいといえるからです。
10時間以上の飛行経験を楽に積める
スクールで一般的なコースを受講すれば、特定のケースで必要となる国土交通省への許可申請時の必要条件である「10時間以上の飛行経験」を無理なく達成できます。(例外的なコースもあるため要確認)
許可不要でドローンを飛ばせる場所を探し、バッテリーの平均持続時間が30分前後であることを考えると単純計算で20回は飛ばす──10時間以上の飛行経験という要件を自身でクリアするのはかなり大変です。
ドローンスクールの講習でなら飛行訓練を集中して行えるため、自力で行うよりもはるかに楽に10時間以上の飛行経験を積める場合がほとんどでしょう。
関連法規を効率よく学べる
測量用途であるかどうかは関係なく、ただドローンを飛ばすだけでも関係してくる法律や条例は数多くあり、独学で網羅するのは決して容易ではありません。
「知らないうちに法律違反をしてしまっていた」では会社の信用にもかかわりますから、一般的なコースを受講して関連法規に関する知識を効率的に抜け漏れなく習得しておきたいところです。
「やっぱり測量コースを受講したい!」となったときにすぐに受講できる
多くの場合、一般的なコースの修了が条件となっている測量特化コース。
一般的なコースを受講しておけば、その後「やっぱり測量コースも受講しておいたほうがよさそうだ」となったときにもスムーズです。
《測量の知識や実務経験がなくても受講可能なコースも》
測量に特化したコースの受講者には、測量の実務経験あるいは少なくとも測量に関する最低限の知識を持ち合わせていることが求められることが多いです。
しかし、まず測量の基礎知識から教えてもらえる講習も見受けられますので、UAV測量以前に測量自体が未経験という人はそうしたコースを探すとよいでしょう。
ただし、そのようなコースのカリキュラムはごく基礎的な内容に留まる傾向ですから、実際に現場で運用するのであれば、より本格的かつ実践的な内容の講習をさらに受講するのがおすすめです。
測量に強いドローンスクールの探し方
UAV測量に特化した内容を学ぶなら、測量に強いドローンスクールで学びたいですよね。
まずは測量に特化したコースが設定されていることが前提となりますが、その上でさらにこだわりたい場合の条件には次のようなものが挙げられます。
実際にUAV測量を現場で行っている企業の関係するドローンスクール
測量会社や大手ゼネコンなど、実際に現場でドローンを使って測量を行っている企業やその系列企業が運営している、またはカリキュラムを監修しているドローンスクールであれば、現場で培われた豊富なノウハウを期待できるはずです。
たとえば、Future Dimension Drone Academyでは、大手ゼネコンであるコマツと連携した「コマツ認定ドローン測量実践コース」を開講しています。
[参考記事]
判断基準はこれ!ドローンスクールの選び方を目的・用途別に紹介
UAV測量関連の民間資格を付与する機関の認定校となっているスクール
UAV測量関連の民間資格の例として、DSERO(一般社団法人ドローン測量教育研究機構)が認定する「ドローン測量管理士」や「ドローン測量技能士」があります。
DSERO認定校のカリキュラムには、同資格の取得に必要な内容が盛り込まれていますので、UAV測量に求められる知識やスキルを確実に習得できるでしょう。
[参照]
DSERO認定資格(管理士・技能士)
国際航業株式会社ドローンスクール
JUAVACドローンエキスパートアカデミー兵庫校
JUAVACドローンエキスパートアカデミー大宮校
UAV測量のためにスクールでの受講とは別に必要となる資格
ドローンを用いた測量を行う上で必要となってくる資格について確認しておきましょう。
測量部分で必要な「測量士」「測量士補」の資格
測量にドローンを用いることにもドローンを飛ばすこと自体にも、現時点では資格は不要です。
しかし、基本測量または公共測量を行うには国家資格である「測量士」や「測量士補」の取得が必要であり、これはドローンに関することとはまた別の話です。
つまり、UAV測量はドローンを使うかどうか以前に「測量」であるため、「測量士」や「測量士補」の資格が必要となってくるのです。
「測量士」や「測量士補」の資格を取得するための勉強や実務経験は、ドローンスクールでの講習や受講後に取得できる認定資格とは無関係。別途対応が必要な点に注意しましょう。
ドローン部分で必要となるケースがある「第三級陸上特殊無線技士」の資格
ドローンを飛ばすための必須資格はありませんが、
次の条件に該当する一部の産業用モデルを飛ばすには第三級陸上特殊無線技士資格を有していなくてはなりません。
- 5.7GHz帯を使用するドローン
- 2.4GHz帯を使用かつ出力が10mW/MHzを超えるドローン
日本国内で販売されるドローンのほとんどは2.4GHz帯使用かつ出力10mW/MHzで非該当。上記条件に当てはまるドローンは、主に空撮ビジネスなどで高画質な画像の長距離伝送が必要なケースに用いられるような機種に限られます。
しかし、もしも利用するドローンが該当するのであれば、同資格取得に向け別途対応することになります。
なお、実際に業務で運用するに当たっては、同資格を取得するだけではなく無線局の開設も併せて必要な点に注意しましょう。
[参照]
「ドローン等に用いられる無線設備について」(総務省電波利用ホームページ)
第三級陸上特殊無線技士資格を含む、ドローンに関する無線免許(資格)については、こちらの記事で詳しく解説しています。
ドローンに無線資格は必要?周波数帯や取得方法、開局申請までご紹介
《DSERO認定資格》
前章で触れた「ドローン測量管理士」や「ドローン測量技能士」は、DSERO(一般社団法人ドローン測量教育研究機構)が実施する検定に合格すると取得できる資格ですが、あくまで任意取得の民間資格です。
しかし、対外的にUAV測量スキルを示す必要がある場合には、同資格の取得も検討してみるとよいかもしれませんね。
[参照]
DSERO認定資格(管理士・技能士)
まとめ
▶UAV測量(ドローン測量)を始めるなら、ドローンスクールでの受講をおすすめします。
- 測量に特化したコースの受講が望ましい
- 測量に特化したコースを受講する前に一般的なコースを修了しておく必要がある場合が多いので、一般コース→測量特化コースと続けて受講するのがおすすめ
- 測量特化コースの受講が難しければ、一般的なコースだけを受講するケースにも一定のメリットがある
▶測量に特化したコースで学べる主な内容は、おおまかに3種類に分けられます。
- UAV測量の基礎知識
- UAV測量の実施方法
- データ解析・3Dモデル作成などの後処理工程
▶測量に特化したコースの平均的な受講日数は2〜5日間、受講料の相場は30万円前後です。
▶測量に強いドローンスクールとしては、次のようなスクールが考えられます。
- 実際にUAV測量を現場で行っている企業の関係するスクール
- 民間資格を付与する機関の認定校となっているスクール
▶ドローンを使うかどうかにかかわらず、測量という行為を行うに当たっては国家資格である「測量士」や「測量士補」が必要です。
▶測量のためにドローンを飛ばすこと自体には資格は不要ですが、5.7GHz帯を使用する(または2.4GHz帯を使用かつ出力10mW/MHzを超える)一部の産業用ドローンを飛ばす場合には、第三級陸上特殊無線技士資格が必要です。