近年、様々なシーンでその活躍を目にするドローンですが、測量業界においても、ドローンの存在は注目を集めています。
国も測量現場において積極的なドローン活用を進めており、現場の課題解決や、作業効率の向上が期待されています。
そんなドローンの導入を考える中で、
「ドローンを使った測量ってどうやるの?」
「メリットやデメリットは?」
「導入費用はどれくらいかかるんだろう」
といった疑問を持つ方も多いと思います。
今回はそんな疑問を解決すべく、ドローンメーカーに勤務されていた経歴をお持ちで、ドローン測量にも精通し、新技術関連ビジネスの支援などにも携わられている方に「ドローン測量」について詳しくお話をお伺いしました。
この記事では、
- ドローン測量のメリット・デメリット
- ドローン測量の種類と選び方
- 導入費用の内訳
- ドローン測量の手順
- ドローン測量の資格とスクールについて
といったことを詳しく解説しています。
記事を読んでいただければ、自分がドローンを導入するべきかどうかの判断ができると思います。
また、導入を決めた際は、導入費用の詳しい内訳や、ドローンスクールは行くべきかどうかなど、実際にドローン測量を行う上で必要なことが理解できますよ。
目次
ドローン測量は「地上からの測量」と「飛行機による測量」の中間の役割を担うことができる
ドローン写真測量とは、ドローンに搭載されたカメラで撮影範囲を重複させた写真を複数枚撮り、つなぎ合わせて地形情報を調査する測量方法。
4章で詳しく解説しますが、レーザー装置を使ったドローンレーザー測量といった計測方法もあります。
従来の測量方法は、「地上で作業員が歩きながら行う測量」と「飛行機を使って上空から行う測量」この2つが主流となっていました。ですが、地上での測量は、作業の手間・時間が多くかかることや、複数の人員確保が必要であったりと課題も多くありました。
また、飛行機を使っての測量は、広い範囲を短時間で測量することはできますが、飛行機を飛ばす為には高額な費用が発生してしまいます。
ドローン測量は「地上からの測量」と「飛行機を使った測量」のちょうど中間の役割を担うことができ、従来の手法に比べて、作業効率の向上や、コスト・時間の削減が可能です。
ドローン測量のメリット
ドローンを使った測量の主なメリットは下記の3点です。
- 作業時間と人員の削減
- 測量費用が抑えられる
- 人の立ち入りが困難な場所でも計測が可能
一つずつ詳しく解説していきます。
作業時間と人員の削減
地上での測量と比較した場合、作業時間を大幅に短縮することが出来ます。
国土交通省/ICT土工事例集【測量業務編】を例にみてみると、
【作業時間の削減例】平成28年度 天竜川水系小渋川流域測量業務:低山地・原野及び森林(0.042km²)
- 実際の現場作業時間が、通常の地上測量では5日(40時間程)必要であったが、1日(1時間程)の飛行で完了できた。
- 内作業※が3日から0.5日になり、作業日数の削減ができた。
※ドローン測量における内作業とは?
内作業とは、ドローン測量で取得したデータを解析し、3Dデータを作成する業務を主にさします。
内作業時間の削減が可能な理由は、専用ソフトを使った自動解析が可能だからです。
従来の地上での測量は、取得したデータから必要な各種展開図の作成をして、さらに3Dデータへ編集するといった流れが一般的でした。
ドローンは地形情報を点群データ(位置情報を持つ点の集まり)として取得できるので、地上測量のように、2重業務の手間と時間をかけることなく、3Dデータを作成することが出来ます。
【人員の削減例】平成28年度 天竜川水系小渋川流域測量業務:低山地・原野及び森林(0.042km²)
- 通常の地上測量では外業15人、内業2人かかる作業を外業5人、内業1人(大半がPCによる自動編集)で完了することが出来た。
このように、ドローンは時間・人員削減において、大きな成果を出しています。
測量費用が抑えられる
コストについては、航空機測量と比較した際、大幅な費用の削減が可能です。
セスナ型の飛行機を使った測量は、計測毎に飛行機を飛ばす為、高額な費用(数十万〜100万円程度)がかかります。
ドローンは、導入時に費用70万円〜程はかかりますが、機体や付属品などを揃えてしまえば、計測の度に特別大きな費用は発生しないため、コストを抑えることが出来ます。
ドローンの導入費用については、5章で詳しく解説します。
人の立ち入りが困難な場所でも計測が可能
人が踏み入って作業するのが困難な場所であっても、上空から測量を行えるドローンならば、比較的容易に計測が可能です。
具体例としては、
- 山や崖、河川付近
- 傾斜の多い土地
- 土砂崩れや河川氾濫などにより、立ち入ることが危険な現場
などが挙げられます。
また、道幅が狭く車両や機材の搬入が難しい現場においても、作業にかかる手間や時間を大幅に減らして測量することができます。
ドローン測量のデメリット
続いては、ドローン測量のデメリットです。
デメリットとしては、下の2点があげられます。
1回の飛行時間が30分以内程度と短い
一つ目のデメリットは、最大飛行時間が短いということです。
測量用として利用されているドローンは、バッテリー持続時間が30分程の機体が多いです。
測量時間が長いほど、作業を中断し、バッテリー交換を何回も行わなければなりません。
ですが、最大飛行時間55分を誇るDJIのMATRICE 300 RTKのように、長時間フライトに対応できる機体も登場してきています。
飛行可能時間の長い機体を選んだり、バッテリー交換を含めた飛行計画を立てるなどして、長時間の測量には対応しましょう。
天候に左右されやすい
ドローンは雨と風に弱いという弱点があります。
【雨・霧について】
ドローンに利用されているリチウムポリマー電池は湿気に弱く、雨天や霧が出ている状況の使用は、故障の原因になりかねません。
防水仕様の機体を使用したり、悪天候の測量実施は見送るなどの対処が推奨されています。
DJIの機体で防水仕様のドローンとジンバルカメラは下記のみです。
◆機体
- Matrice 200 シリーズ V2
- Matrice 300 RTK
◆ジンバルカメラ
- Zenmuse XT2
- Zenmuse H20 シリーズ
【風について】
空中を飛ぶドローンは、風の影響を受けやすいです。
強風下での飛行は機体の安定性が劣ってしまうので、落下や衝突の危険が高まります。
ドローン測量を行う際は、メーカーが定める最大風圧抵抗数値を超えない範囲での飛行が望ましいです。
雨天時同様、風の強い日は測量日程の変更を検討しましょう。
ドローン測量が効果的な案件
続いて、上でご説明したメリット・デメリットを踏まえ、ドローンを効果的に生かせる測量案件を解説します。
中規模な範囲
地上測量では時間もかかり、作業員も多く必要となってしまう広さではあるけれど、飛行機を使うまでもない程度。ドローン測量が生かせるのは、こういった中規模の測量範囲です。
具体的にはヘクタール(100m×100m)以上からが、ドローン測量に最も適した広さとなります。
凹凸のある現場
起伏が激しい場所も、ドローン測量が適しています。
凹凸の多い現場を歩いて測量するのは困難ですし、飛行機を使った測量では、細かい地形データが取れないからです。
災害地測量
ドローンは多くの災害地で活躍しています。
実際に、2021年7月に発生した静岡県熱海市の土石流現場でも、ドローンを使った流木流出範囲の測量や土量の計測が、災害土砂撤去の計画などに活用されました。
人が踏み入ることができない危険地帯でも、ドローンなら迅速・安全に測量が可能です。
災害現場の測量は、ドローンの使用が大きなメリットになっています。
ドローン測量が効果的ではない案件
続いては、ドローン測量があまり効果的ではない案件・現場についてです。
広範囲・狭範囲の現場
公共測量案件で、市域全体の測量などといった広範囲の測量は、飛行機を使った方が効率的です。
先でも述べた通り、ドローンのバッテリーは大体30〜50分程度しか保たない為、パワー切れで何度も離着陸する必要がありますし、作業時間も長くなってしまう為です。
また、狭すぎる範囲の測量も、ドローン使用が非効率になるケースがあります。
数十平方メートル程度の狭小地では、地上測量でも少人数で容易に行うことができるため、ドローンを使用すると逆に手間がかかってしまう場合も。
ドローン測量に向いている案件:ヘクタール(100m×100)単位以上の範囲
※市域全体ほど広範囲なものは航空測量、逆に数十平方メートル程度の狭範囲であれば地上測量の方が良い
測量は、その計測する広さにより適切な測量方法があります。
狭範囲は地上測量、中範囲にはドローン、広範囲には航空機というように、案件ごとに手法を使い分けることが、コストを抑えた効率的な測量に繋がります。
ドローン測量の種類(写真測量/レーザー測量)とその選び方
続いて、ドローンを使った測量の種類と、自分が取り扱いたい測量手法の選び方を解説します。
主なドローン測量は「写真測量」と「レーザー測量」の2種類
基本的な測量は、下記の2手法です。
- ドローン写真測量
- ドローンレーザー測量
それぞれどういった測量か、その違いをまとめました。
写真測量 |
レーザー測量 |
|
---|---|---|
測量概要 |
◆ドローン写真測量とは 地上に標定点(GCP)※を設置し、ドローンに搭載したカメラで撮影範囲を重複させた写真を複数枚撮り、つなぎ合わせて地形情報を調査する測量方法。 ※標定点とは? あらかじめ正確な座標(水平位置と標高)がわかっているポイント。事前に座標を計測しておき、写真に写し込ませ、データを抽出する際の基準点とする。 |
◆ドローンレーザー測量とは ドローンに搭載したレーザー測距装置から地上にレーザーを照射し、そのレーザーの反射によって距離情報を取得する。 |
現場 |
|
(例:写真測量では80点の標定点が必要な現場でも、レーザー測量は6点でOK) |
機体導入費用 |
レーザー装置が必要なレーザー測量に比べ、導入費用は抑えることができる。 費用相場:100万前後 |
レーザー装置が必要なため、導入費用も高額になる。 費用相場:約500万円〜1千万円以上 |
【写真・レーザー測量の取得データイメージ】
写真測量かレーザー測量かを選ぶ基準
自身がメインで取り扱いたいのは写真測量か、レーザー測量か迷われる方も多いかと思います。そんな方は、以下の基準で選ぶ様にしましょう。
こんな人は写真測量がおすすめ
- 導入費用を抑えたい
- 写真で測量できる現場だけの取り扱いでもOK
こんな人はレーザー測量がおすすめ
- 森林や伐採前の現場など、写真測量では難しい案件を取り扱いたい
- 標定点の設置数が多くなる広い土地の計測などを効率的に測量したい
導入費用や自分が取り扱いたい案件を考え、測量方法を選びましょう。
ドローン測量における公共測量と民間測量の違い
ドローン測量は手法の違いの他にも、案件の種類にも違いがあります。
測量に関わる方ならばご存知かと思いますが、測量案件には、
「国が発注する公共測量案件」と「民間企業が依頼主となる測量案件」があります。
ドローンにおける公共測量と民間測量の大きな違いとして、求められる精度や使用する機器に規定があるか・ないかといったことがあげられます。
公共の測量案件について
公共測量案件は、UAVを用いた公共測量マニュアル(案)に基づき、使用する機体やカメラの条件、求められる精度に規定が設けられています。
例えば以下の通り
【国が定める公共測量に使えるドローンの条件】
- 自律飛行機能及び異常時の自動帰還機能を装備している
- 航行能力は、利用が想定される飛行域の地表風に耐えることができる …など。
【搭載するカメラに求められる性能】
- 焦点距離、露光時間、絞り、ISO感度が手動で設定できる
- レンズの焦点の距離を調整したり、レンズのブレ等を補正したりする自動処理機能を解除できる …など
どんな機体が公共測量の条件を満たしている?
価格帯でいうと、2〜30万円以上の機体から、公共測量に対応できるものが多いです。
◯規定を満たしているDJI機体例:価格は20万円以上
- Phantomシリーズ
- Inspireシリーズ
- Matrice シリーズ
- Mavic 3E
✕規定を満たせていないDJI機体例:価格は20万円以下
- MavicMini
- Mini 2
- Air 2S
※詳しい機体については「この記事の11章」で紹介しています。
【ドローンの公共測量に求められる精度】
- 起工測量、岩線計測…測量精度誤差±10cm
- 出来高部分払い算出のための計測…測量精度誤差±20cm
- 出来形計測…測量精度誤差±5cm
【測量精度誤差とは】
実際に測量したい距離や高さ、土量などの数値と、ドローンで計測したデータ数値の差。その差が少なければ少ないほど誤差が少ないといえる。
※ドローン測量の精度については、こちらの記事で詳しく解説しています。
どんな機体が公共測量の精度を満たせる?
・安定して誤差±5cm以内(公共測量が求める精度)を確保をしたい人
Inspire 2やPhantom 4 RTKといった中価格帯(70万〜)以上の機体を選択するのがおすすめです。
・誤差±5cm程の高精度が必要ない人
PHANTOM4 PRO v2などの低価格帯(20万〜)の機体でも十分基本的測量を行うことができます。
民間の測量案件について
民間企業案件は、基本的に事業主の基準次第です。
公共測量よりも機体の条件や求められる精度は緩い傾向にありますが、公共測量の規定に準じる企業も多いです。ですので、民間の測量案件を行う場合も、上で紹介したように、2〜30万円以上の価格帯の機体を使用するのが無難です。
ドローン測量の精度は、機体種類を含む4つの要素によって大きな影響を受けます。詳しくはこちらの記事で解説していますので、是非併せてご覧ください。
ドローン測量の導入費用
この章では、ドローン測量の導入費用について詳しく解説します。
導入費用の相場
ドローンの導入費用例は、下の表の通りです。
※Mavic 3Eは機体+DJI Care Enterprise(保証サービス)+DJI Terra Electricity Overseas 1 year /1device(ソフトウエア )の参考価格です
導入費用の相場を項目ごとに解説します。
■ドローン本体
価格相場:20万〜200万円前後
測量用ドローンとして利用できる機体は、最低でも20万円以上のものが性能的にも望ましいです。
RTK(より高精度な測量が可能なシステム)を搭載したドローンは100万前後と高額になります。
また、レーザー測量用の機体は、レーザー装置を搭載しなければならないので、その重量に耐えうる大型の機体が必要となり、こちらも高額ドローンとなる場合が多いです。
この記事の11章で「RTK」についてと、「おすすめの機体」を紹介しています。
■データ解析ソフト
価格相場:年間ライセンスで20万〜50万円程度。買い切り(永続)ライセンスの場合、40万円〜
データ解析ソフトは、年間・永続ライセンス利用かを選択できるものもあります。
また、デスクトップ型かクラウド型によってもその価格が変わるので、自分がどのような成果物を求めるのかによってソフトを選びましょう。
■デスクトップ型
パソコンにソフトをインストールして使う。
ネットに繋がらない環境でも使用可能で高精度なデータを得られるが、価格が高く、ある程度の高性能パソコンが必要になる。
■クラウド型
ネットのクラウド上で使用する。
どのデバイスからもアクセス可能で、パソコンスペックに左右されにくい為、そこまでの高性能パソコンは必要ない。
デスクトップ型に比べると得られる精度は劣る。また、ネットが繋がらない・不安定な環境などでは使えないこともある。
ドローン測量のソフトについてはこちらの記事でより詳しく解説しています。
■タブレット
価格相場:大体4万円前後
コントローラーにモニターが付いていない物は、フライト中に飛行内容を確認するモニター代わりになるスマートフォンやipadなどのタブレットが必要です。
■標定点測定器
価格相場:100万円〜
標定点の座標を測定する為の機器です。
ドローン測量にかかわらず、地上測量でも使用するツールですが、水平位置と標高を同時に得られるVRS-GNSSや、トータルステーションなどがあり、100万円以上と高額です。
レンタルを利用する方法もあります。(レンタル料金:約10万円/月)
■ドローン保険
価格相場:賠償責任保険/数千円〜2万円前後、機体保険/数万円〜
ドローン保険の加入は任意となっていますが、業務でドローンを取り扱うならば、信用やリスクの観点からも加入は必須といえます。
ドローンの保険には、
- 人や所有物・公共物に被害を与えてしまった場合に発生する損害を補償してくれる賠償責任保険
- ドローンの機体本体を破損した際などにかかった損害を補償してくれる機体保険
の2種類があります。
ドローンの機体はけして安くはありません。賠償責任保険と機体保険の両方に加入しておくと安心です。
ドローン測量にかかる費用のより具体的な内訳については、こちらの記事でより詳しく解説しています。
外注費用について
続いては、自身では測量を行わず、業者に依頼し、測量から成果物完成までを委託する、いわゆる「外注」の費用をご紹介します。
ドローン測量の外注費用の相場は、ばらつきはありますが、
■写真測量:平地4ha(データ解析含む)50万円程度
■レーザー測量:平地1ha(データ解析含む)50万程度
大体はこの辺りが目安となるようです。
測量範囲が広くなると、面積当たりの単価は安くなる傾向があります。
外注のメリットとして、ドローンの導入費用と維持費がかからない点があげられますが、外注は依頼ごとに費用が発生します。自身で取り扱うドローン測量の内容や頻度などを照らし合わせ、外注・導入のどちらがトータルコストを抑えられるか判断しましょう。
ドローン測量の手順
この章では、実際のドローンを使った測量はどう進めていくのかを解説しています。
ドローン測量の手順は下記の通りです。
1.現地調査(踏査)
踏査と呼ばれる、測量を行う現場調査を事前に行います。
調査内容は、
- 飛行エリアの確認
- 飛行方法の確認
- 物理的障害物の有無の確認
- 通信状況の確認
- 付近の環境確認 など。
現地の状況確認を行い、飛行許可申請や、場合によっては障害物となる木々の伐採などをする必要があります。
2.自動操縦飛行内容の設定
自動操縦アプリに、ドローンの飛行内容を設定・登録します。
※自動操縦アプリとは
マニュアル操作ではなく、オートマ操作によってドローンを飛行させるソフトです。
飛行コース等を設定すれば、その通りのコースを、設定した高度や速度でドローンが自動で飛行してくれます。
多くの場合、機体を購入すると対応ソフトを無料で提供されます。
3.GCP(標定点)と検証点の測定、対空標識の設置
標定点と検証点(※)の設置場所を決め、目印となる対空標識を置きます。
※検証点とは
検証点は 3 次元データに付与した座標の精度を確認するために用いる点。
必要な精度確保の為には設置は必須。
標定点と検証点の配置は、公共測量マニュアルで定められています。
ドローン測量の標定点の仕組みや具体的な設置方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
4.ドローン撮影
ドローンを飛ばし、測量を行います。
5.撮影データ解析・作成
ドローンで撮影した画像・データを、専用ソフトで解析し三次元点群モデルを作成します。
所要時間は測量範囲次第。400m×200mで約2〜3時間程。
【データ解析・作成内容】
・撮影写真を繋ぎ合わせる
・点群データ作成
点群データとは?
物体や地形を「点の集合体」で表現したデータのこと。
・オルソ画像作成
オルソ画像とは?
空中写真は、建物や高い木々、また写真の中心から外側にいくに伴い「ひずみ」が大きくなる。このような状態では、ひずみの影響で写真同士の接合部分にズレが生じてしまう。
このゆがみを修正した空中写真のことをオルソ画像と呼ぶ。
・距離、面積、体積、角度、断面等各種解析などの計測
・3Dデータ作成 など
6.精度検証
ドローン撮影時の水平位置・標高といった座標値と、作成した3Dデータの精度確認作業を行います。
7.成果物の作成
地形・測量数値・ドローン飛行データ・作成した図面などを、クライアントの希望に沿った形にまとめます。
8.納品
成果物を納品します。
以上が一般的なドローン写真測量の手順となります。
ドローン測量手順の各ステップのより具体的な内容は、こちらの記事で詳しく解説しています。
ドローン測量の資格について
続いては、ドローン測量の資格についてのお話ですが、結論からいうと、ドローン測量に必須な操縦資格はありません。もちろん測量士や測量士補の国家資格は必要ですが、技術と知識があればドローンの資格がなくても、測量にドローンを使うことができます。
必須資格はありませんが、所有していると有利な資格がいくつかあります。
その資格を3つご紹介します。
■ドローン測量を行う上で所有していると有利な資格
・普通自動車免許
測量という仕事の性質上、現場までの移動やドローン運搬時など、車の運転をする場面が多いためです。
・第三級陸上特殊無線技士(5.7GHz周波数帯を使う場合は必須)
測量の際、産業用や大型のドローンで5.7GHzという周波数帯の電波を使用する場合、第三級陸上特殊無線技士という資格が必要となるためです。
・ドローン操縦の資格(原則取得しておくべき)
DPAドローン操縦士回転翼3級、JUIDA操縦技能証明など、スクールを運営する団体で名称は変わりますが、ドローンスクールの基本コース受講で得られる民間資格です。
知識・技術取得ができるということに加え、飛行申請時のメリットも大きいので、原則取得しておくことをおすすめします。
■飛行申請時のメリット
上で紹介したDPAやJUIDAといったスクール受講で得られる操縦資格を所有していれば、下記のようなメリットがあります。
- 飛行申請を承認されるために提出しなければならない書類の一部、「(様式3)無人航空機を飛行させる者に関する飛行経歴・知識・能力確認書」などの省略が可能。
(国土交通省 航空局 「無人航空機の飛行に関する許 可・承認の審査要領」44ページ目)
- 飛行許可申請をする際に必要となる「10時間以上の飛行証明」が得られます。
【10時間以上の飛行証明とは】
国土交通省に飛行許可申請をする際は、その飛行技術の証明として、10時間以上の飛行経歴が必要と定められています。
4ー2
無人航空機を飛行させる者の飛行経歴、知識及び能力について、次に掲げる基準に適合すること。
(1)飛行を予定している無人航空機の種類(飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船のいずれか)別に、10 時間以上の飛行経歴を有すること。
ドローンを10時間以上飛行させるのは、思った以上に難しいです。
その大きな理由として、「飛行場所の確保が難しい」ということがあげられます。
近所の公園なども、条例でドローンの飛行が禁止されている場合が多く、ドローンを思ったように飛ばす事は困難です。
飛行申請書類と同じく、10時間以上の飛行証明も難しいのが現状となっています。
飛行申請は規定の変更も多かったり、やり方が複雑だったりと、個人で行うのは難しいといった声をよく聞きます。
スクールで資格を取っておくと、手続きの簡略化や、スクールによってはサポートを受けることも可能なので、ドローン操縦資格の取得が推奨されています。
ドローン測量における資格の必要性の詳細は、こちらの記事でより詳しく解説しています。
ドローン測量におけるドローンスクールについて
上で述べたように、ドローンの操縦資格は申請時大いに役立つため、ぜひ取得しておきたい資格です。
そのためには、ドローンスクールに通う必要があります。
ドローンスクールで学べる内容は、大きく分けると、
■一般的なドローンの知識・操縦技術を学ぶ基本コース:受講料2〜30万円程
■専門性に特化した分野を本格的に学べる特化コース:受講料2〜30万円程
この2種類があります。
基本コースは、
- 基礎的なドローン座学(法規、気象、電波、ドローン概論など)
- 基本的な操縦の実技
といった講習内容で、ドローン初心者向けのコースです。
ドローン測量特化コースは、
ドローンで測量を行う際に必要となる、座学・実技が学べます。
測量専門特化コースのカリキュラムの一例です。
【測量コースカリキュラム例】
1日目 |
9:00~15:00 |
座学
実技
|
---|---|---|
2日目 |
9:00~15:00 |
|
3日目 |
9:00~15:00 |
|
4日目 |
9:00~15:00 |
|
5日目 |
9:00~15:00 |
※コマツ認定ドローン測量実践コースカリキュラム一例
ドローン測量を学びたい方は、特化コースの受講をおすすめします。
ですが、特化コースは、基本的にドローンの基礎知識や操縦技術を既に習得していることが前提となっているので、基本コースを受講して、特化コースへ進むという流れが一般的です。
スクールによって特化コース受講資格は異なりますので、事前の確認が必要です。
スクール受講は、ドローンやドローン測量の技能を学べるだけでなく、複雑で難しい申請を簡略化する操縦資格を得ることも出来ます。ドローン導入を効率的に進めるためには、スクール受講は非常に有効な方法の一つです。
ドローンスクールの測量向けコースのより具体的な講習内容や、測量に強いドローンスクールの選び方などについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
おすすめの測量用ドローン
最後に、ドローン測量で活躍する、おすすめのドローンをご紹介。
5章で解説したように、求められる精度や機体の条件は、基本的に公共測量の規定に準じる企業が多いです。
なので、その規定をある程度満たすことのできるレベル(価格帯でいうと20万円以上)の機体からご紹介します。
【おすすめ測量用ドローン比較表】
機体 |
Inspire 2 |
|||
---|---|---|---|---|
価格 |
約20万 |
約40万〜 |
70〜80万 |
約80万+カメラ要問い合わせ |
センサー |
1インチCMOS |
23.5×15.7mm |
1インチCMOS |
35.9×24mm |
こんなケースにおすすめ |
(公共測量の出来形計測で求められる誤差±5cmを満たせない場合がある) |
|
|
|
画素数 |
2,000万画素 |
2,400万画素 |
2,000万画素 |
4,500万画素 |
レンズ |
視野角84° 8.8mm/24mm (35 mm判換算) |
視野角83° |
視野角84° |
視野角84° |
最大飛行時間 |
30分 |
27分 |
30分 |
30分 |
カメラ交換 |
✕ |
◯ |
✕ |
◯ |
RTK |
✕ |
✕ |
◯ |
◯ |
PPK |
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
精度 |
△ |
◯ |
◎ |
◎ |
△適切な標定点設置でも誤差±5cm以内の精度確保が難しいケースもある ※ドローン測量の精度については、こちらの記事で詳しく解説しています。 |
機体を選ぶ際は、自分が取り扱いたい案件に適した性能が備わっているかをしっかり考えましょう。
- 価格を抑えたい…例:20万円程度のPhantom 4 Pro V2.0
- 多用途に利用したい…例:カメラ交換が可能なInspire 2
- 公共測量案件も取り扱いたい…例:RTK搭載で高精度を確保できるPhantom 4 RTK、Matrice300RTK
- レーザー測量を行いたい…例:レーザー装置も搭載できるMatrice300RTK
測量用ドローンの選び方やおすすめ機体についてはこちらの記事でより詳しく解説しています。
ドローン測量について、理解が深まったのではないでしょうか。
これからの測量業界において、ドローンの存在は必要不可欠なものになると思われます。
ぜひ測量にドローンを利用する際の参考にしてみてください。
まとめ
最後に、この記事のポイントをまとめました。
◆ドローン測量とは
ドローン測量は「地上からの測量」と「飛行機を使った測量」のちょうど中間の役割を担うことができる測量方法。従来の手法に比べて、作業効率の向上や、コスト・時間の削減が可能です。
◆ドローン測量メリット・デメリット
【メリット】
- 作業時間と人員の削減
- 測量費用が抑えられる
- 人の立ち入りが困難な場所でも計測が可能
【デメリット】
- 1回の飛行時間が30分以内程度と短い
- 天候に左右されやすい
◆ドローン測量が効果的な案件
- 中規模な範囲
- 凹凸のある現場
- 災害地測量
◆ドローン測量が効果的でない案件
- 広範囲・狭範囲の現場
測量は、その計測する広さにより適切な測量方法があります。
狭範囲は地上測量、中範囲にはドローン、広範囲には航空機というように、案件ごとに手法を使い分けることが、コストを抑えた効率的な測量に繋がります。
◆写真測量かレーザー測量かを選ぶ基準
【こんな人は写真測量がおすすめ】
- 導入費用を抑えたい
- 写真で測量できる現場だけの取り扱いでもOK
【こんな人はレーザー測量がおすすめ】
- 森林や伐採前の現場など、写真測量では難しい案件を取り扱いたい
- 標定点の設置数が多くなる広い土地の計測などを効率的に測量したい
◆ドローン測量を行う上で所有していると有利な資格
- 普通自動車免許
- 第三級陸上特殊無線技士(5.7GHz周波数帯を使う場合は必須)
- ドローン操縦の資格(原則取得しておくべき)
◆ドローンスクールについて
スクール受講は、ドローンやドローン測量の技能を学べるだけでなく、複雑で難しい申請を簡略化する操縦資格を得ることも出来ます。ドローン導入を効率的に進めるためには、スクール受講は非常に有効な方法の一つです。