2021年12月現在、国土交通省が認定する、ドローン関連の資格の管理団体は75団体あります。
「管理団体って何が違うの?」
「結局のところどの管理団体が良いの?」
と疑問に思ってしまうのではないでしょうか。
産業分野におけるドローンの活用をリードする団体として、一般社団法人日本UAV利用促進協議会(JUAVAC)があります。
今回の記事では、JUAVACの概要や事業のほか、JUAVACの認定する資格やコースの種類や特徴、JUAVACスクールが向いている人などの情報を紹介します。
こちらの記事を読めば、JUAVACやその認定スクール・資格について理解できる内容になっています。ぜひ最後までお読みください。
その他、知名度のあるドローン管理団体それぞれの団体概要や、資格(講習)の特徴については、こちらの記事で詳しく解説しています。
JUIDAとは?ドローン資格認定団体の団体概要・資格の特徴など
DPAとは?ドローンライセンス認定団体の団体概要・資格の特徴など
JUAVACとは
一般社団法人日本UAV利用促進協議会は、JUAVACという通称で知られています。
「ドローンを一過性のブームではなく社会インフラに育てていく」ことを目標に活動している団体で、日本全国に認定スクールを展開するなど、ドローン業界においては存在感のある団体のひとつです。
JUAVACのメインとなる事業として、スクール事業である「JUAVACドローンエキスパートアカデミー」とドローンの活用促進を目指す「JUAVACコンソーシアム」の2つがあります。
JUAVACドローンエキスパートアカデミー
JUAVACドローンエキスパートアカデミーは、ドローンの基本的な操縦から、点検や測量といった産業分野におけるドローン活用のための高い技術まで幅広く学ぶことのできるスクールです。
全国で統一のカリキュラムを使用しており、均一なレベルでドローンに関する知識と技術をバランスよく身につけることができます。
JUAVACは国土交通省認定団体であるため、JUAVACドローンエキスパートアカデミーでのコースを修了し所定の認定証を取得することで、ドローンの飛行制限解除などの手続きを簡略化することができます。
JUAVACコンソーシアム
JUAVACコンソーシアムは、「ドローンを使った社会貢献」を理念として掲げ、活動しています。
コンソーシアムはJUAVACをはじめとした複数の団体や企業で構成されており、ロボット工学やビックデータなど、幅広い分野からのアプローチを統合し、ドローンの可能性を広げるために活動しています。
JUAVACコンソーシアムでは、主に次の4つの分野におけるドローンの活用促進を目指して様々な技術の研究開発やビジネスモデルの構築を進めています。
- 密漁監視抑止・スマート港湾管理システム
- 物資輸送とオンライン診療の実証実験
- スマート農業支援事業
- ソーラーパネル点検
測量や点検など、より実践的な技術を身につけたい人にはJUAVACの資格・スクールがおすすめ
JUAVACドローンエキスパートアカデミーのコースは全国共通の内容・カリキュラムです。
特に、次のような特徴があります。
産業分野における実践的な技術・知識を身につけることができる
ドローンの操縦技術や知識を身につけることできるスクールは数多く存在していますが、中でもJUAVACドローンエキスパートアカデミーは産業分野における実践的なドローン操縦技術を身につけることができる点が特徴です。
JUAVACドローンエキスパートアカデミーでは、ドローンの基本的な操縦や基礎知識を身につける「フライト基礎技術コース」の他、専門的な技術を身につける次の3つのコースを実施しています。
- 測量基本技術コース
- 非破壊検査基本技術コース
- 空中散布コース
ドローンの基本的な操縦技術や空撮技術を学ぶことができるスクールは数多くありますが、産業分野に特化したコース設定はJUAVACドローンエキスパートアカデミーの大きな特徴のひとつです。
このような分野でのドローン活用を考えている方や、業務上、産業ドローンの操縦技術を身につける必要がある方にはおすすめのスクールといえます。
国土交通省認定資格である「JUAVAC認定UAVフライト技術証明書」の取得も可能
所定のコースを修了することで、「JUAVAC認定UAVフライト技術証明書」を取得することができます。
この資格は国土交通省認定資格ですので、取得していることでドローンの飛行制限解除申請の際に手続きを簡略化させることができるというメリットがあります。
飛行制限には次の9項目があり 、それぞれの資格ごとに解除申請に利用できる項目が異なります。
- 人又は家屋の密集している地域の上空
- 人又は物件と30mの距離が確保できない飛行
- 進入表面等の上空の空域
- 地表又は水面から150m以上の高さの空域
- 夜間飛行
- 目視外飛行
- 催し場所上空の飛行
- 危険物の輸送
- 物件投下
JUAVACの認定する資格では、9項目全てで手続きの簡略化が可能となります。
なお後ほど詳しく紹介しますが、「危険物の輸送」と「物件投下」の認証についてはフライト基本技術コースでは取得できず、空中散布コースを修了することで取得できます。
国土交通省の進めるi-Construction準拠のカリキュラム
後の章で詳しく紹介しますが、JUAVACドローンエキスパートアカデミーの「測量基本技術コース(中級)」では、ドローンを利用した測量の技術を学ぶことができます。
現在、国土交通省では「i-Construction」として、建築現場や土木現場における人材不足解消のための取り組みを行っています。その中のひとつに、ドローンによる測量の実施も含まれています。
JUAVACドローンエキスパートアカデミーの「測量基本技術コース(中級)」では、測量分野における多くの実績と高い信頼性を持つ株式会社パスコと協働で作成したカリキュラムに即して学びます。
このコースを修了することで、ドローン測量業務に必要な技術や知識を学び、i-Constructionに準拠したスキルを身につけることができます。
JUAVAC認定UAVフライト技術証明書には有効期限がない
JUAVACドローンエキスパートアカデミーで取得できる資格、JUAVAC認定UAVフライト技術証明書には所定の有効期限はありません。(2022年1月現在)
ドローン操縦に関する資格は有効期限が2年前後で設定されていることも多く、その場合は2年ごとに更新が必要となります。
その点、JUAVACの資格は一度取得すれば更新の必要がない点も特徴といえます。
なお、スクールによっては実施していないコースがあることもありますので、受講にあたっては各スクールに詳細を問い合わせてみることをお勧めします。
JUAVACドローンエキスパートアカデミーのコースの種類と特徴
JUAVACドローンエキスパートアカデミーで受講することのできるコースには、次の4つがあります。
- フライト基本技術コース
- 測量基本技術コース(初級・中級)
- 非破壊検査基本技術コース(初級・中級)
- 空中散布コース
なお、フライト基本技術コース以外の全てのコースは、フライト基本技術コースの受講が前提となっています。
フライト基本技術コースを修了していない人は基本的に受講することができません。
(他団体において同等の資格を有している場合は、習得内容を確認の上受講可能なケースもあるということです)
基本的に、フライト基本技術コースでドローン操縦の基礎をしっかりと身につけてから、専門的な技術について学びを深めていくという流れになっています。
フライト基本技術コース
フライト基本技術コースは、ドローンの操縦に必要な知識や基本的な操縦技術を身につけることを目的としたコースです。
全てのコースの基礎となるコースでもあり、ドローンに全く触れたことのない初心者でも安心して通うことができるカリキュラムとなっています。
フライト基本技術コースのカリキュラム
フライト基本技術コースでは、学科と実習に分けて、ドローンの操縦・運行に必要な知識を身につけます。
カリキュラム・スケジュールは次の通りです。
フライト基礎技術コースは基本的に4日間のコースで、学科と実技に分かれています。
<学科>
学科ではドローンについてや安全に関する基礎知識として、ドローンの仕組みや機体の構造、飛行時の注意点、安全対策、関連法規などの知識を学びます。
また、気象・電波といったドローンの飛行にとって大きな影響を与える要因についてもしっかりと学びます。
特に気象については、気象予報士や気象予報会社の協力の元、専門的でありながらわかりやすいカリキュラムを作成し、実施しているということです。
<実技>
実技では実際のドローン操縦技術などを学びます。
GPSを用いた自動制御による操縦だけでなく、ATTIモードと呼ばれる手動制御モードでの操縦についても学びます。ATTIモードではドローンが自動的に制御してくれる機能がオフになっているため、高さや角度など、細かな操作も手動で行う必要があります。
難易度は高くなりますが、ATTIモードでの操縦を獲得することでより安全に思い通りの操縦が可能となります。
また、学科・実習ともに「わかるまで」「できるようになるまで」のサポートを心がけているのもJUAVACドローンエキスパートアカデミーの特徴のひとつです。
試験前には復習や補習もあります。
初めてドローンに触れる人でも、安心してコースを受講することができます。
フライト基本技術コースのコース費用相場
フライト基本技術コースのコース料金は税込27,5000円です。
認定証の発行手数料もコース料金に含まれています。
ドローンの操縦資格の多くは25万円前後のコース料金が相場ですので、JUAVACドローンエキスパートアカデミーのコース費用も一般的な水準であるといえます。
測量基本技術コース
JUAVACドローンエキスパートアカデミーでは、フライト基本技術コースを修了した受講生を対象により専門的な業務に関する技術・知識を身につけるためのコースを実施しています。
測量基本技術コースでは、ドローンを用いた上空からの測量業務に関する知識や技術を身につけることができます。
測量基本技術コースには初級と中級の設定があります。
測量基本技術コース初級とフライト基本技術コースの内容を合わせて受講することも可能です。
また、測量技術コース中級を修了した受講生は、一般社団法人ドローン測量教育研究機構(DSERO)の認定するDSRO認定資格「ドローン測量管理士」と「ドローン測量技能士」を受験することができます。
JUAVACドローンエキスパートアカデミーの測量技術コースで学ぶカリキュラムは、JUAVACだけでなく、測量・計測のリーディングカンパニーである株式会社パスコが監修として参加しています。
そのため、より実践的かつ専門的な内容を学ぶことができるコースとなっています。
測量基本技術コース(初級)のカリキュラム・費用
測量基本技術コース(初級)のカリキュラムは基本的にフライト基本技術コースと合わせての内容となっています。
内容・スケジュールは次の通りです。
フライト基本技術コースの内容終了後、ドローンを用いた測量についてより実践的な内容を学びます。
学科では測量の基礎知識や空中写真測量の基礎知識など、基本的な内容から学ぶことができるため、測量に関する業務経験がない人でも受講可能です。
また、効率的な測量に不可欠であるフライトプランについても学科でしっかりと学びます。
実技では、フライト基本技術コースの内容に加えて、あらかじめ航行コースをプログラムしておきドローンを自動で飛行させる自動航行撮影に関する技術や、ドローンの映像を活用した三次元解析の技術など、実務に即した内容を学びます。
測量基本技術コース(初級)の費用は税込29,7000円です。
なお、この費用にはフライト基本技術コースの受講料や資格認定料なども含まれています。
測量基本技術コース(中級)のカリキュラム・費用
測量基本技能コース(中級)は基本的に測量基本技術コース(初級)を修了した受講生を対象に行われています。
DSEROの認定資格取得を目指すコースで、受講内容は「ドローン測量管理士」「ドローン測量技術士」のどちらを目指すかによって異なります。
ドローン測量管理士はドローンを用いた測量に関する知識を有することを、ドローン測量技術士はドローンを用いた測量技術や操縦技能を有することを証明する資格です。
<管理士>
「ドローン測量管理士」を目指す場合、次の内容を2日間かけて座学で学びます。
- 測量基礎知識(基準点・写真測量・作業規定準則等)
- 「UAVを用いた公共測量マニュアル(案)」・「空中写真測量(無人航空機)を用いた出来形管理要領(土工編)(案)」・「公共測量におけるUAVの使用に関する安全基準」準拠の精度管理知識
より実践的な内容を含む学習内容となりますので、初級コースの内容をしっかりと理解した上で受講することをお勧めします。
こちらのコースの受講料は税込154,000円です。
<技術士>
「ドローン測量技能士」を目指す場合、次の内容を3日間かけて実技で学びます。
- 撮影計画
- 対標設置観測
- 自動航行撮影
- Sfm処理
- フィルタリング
- 出来形管理
こちらのコースの受講料は税込297,000円です。
非破壊検査基本技術コース
非破壊検査基本技術コースとは、ドローンを用いて建造物などの点検を行うための技術や知識を身につけることを目的としたコースです。
人が入れないような場所をドローンで撮影して点検するなど、対象となる建造物を破壊することなく点検する技術を取得することができます。
例えば、ダムやビル外壁、橋などの建造物や、風力発電・太陽光発電設備、通信施設など、人が登って点検することが難しい現場での活用が想定されています。
非破壊検査基本技術コースには初級と中級のコース設定があります。
非破壊検査基本技術コース(初級)のカリキュラム・費用
非破壊検査基本技術コース(初級)は基本的にフライト基本技術コースと合わせて、次のスケジュールで実施されます。
フライト基本技術コースで学ぶ内容に加え、ドローンを用いた点検についての基本的な技術を実技で学びます。学科内容の追加はありません。
実際に点検業務に従事する人だけでなく、技術向上を目的とした受講も想定されているということです。
こちらのコースの受講費用は税込29,7000円です。
なお、この受講費用にはフライト基本技術コースの受講費用も含まれています。
非破壊検査基本技術コース(中級)のカリキュラム・費用
非破壊検査基本技術コース(中級)では、実際に構造物を使用して点検飛行を行うなど、より実践的な学習内容を通し、現場で実施できる技術の習得を目指します。
学科では、ドローンを用いた点検について実務に必要な知識を学びます。
コースの中心は実技となっており、実際の構造物を使用して、より実践的な実技を学びます。
コースの中では2名体制・3名体制を組み、操縦者だけでなく撮影や指示を行う役割も想定してより現場に近い業務を行う時間もあります。
非破壊検査基本技術コース(中級)のコース費用は税込330,000円です。
空中散布コース
空中散布コースでは、ドローンを使用して空中から液体を散布する技術を学びます。
例えば、農業における農薬散布や肥料散布などの業務を想定した内容です。
このコースを修了することで、国土交通省の定める「危険物の輸送」と「物件投下」の技術認証を取得することができます。
空中散布コースのカリキュラム・費用
空中散布コースは基本的にフライト基本技術コースと合わせて受講する設定になっています。
カリキュラムは次の通りです。
フライト基本技術コースの内容修了後、空中散布に特化した内容を座学で学びます。
また、実技では水を使用して実際にドローンからの散布を行います。
空中散布コースの費用はスクールによって異なります。
例えばJUAVACドローンエキスパートアカデミー北海道校では330,000円(税込)、フライト基本技術コース修了者は55,000円(税込)です。一方、青森校では100,000円(税抜)です。
また、全国のスクールの中でも空中散布コースを実施しているスクールは限られるため、受講にあたっては希望のスクールで開講しているか確認が必要です。
まとめ
一般社団法人日本UAV利用促進協議会(JUAVAC)について紹介しました。
JUAVACは、数あるドローンスクール認定団体の中でも特にドローンの産業利用に特化した専門的な内容を学ぶことができるカリキュラムが特徴的な団体です。
業務でのドローン活用を検討している場合には、一考に値するといえます。
それでは最後にもう一度、この記事の内容をまとめます。
◎JUAVACとは
- JUAVACドローンエキスパートアカデミー
- JUAVACコンソーシアム
◎測量や点検など、より実践的な技術を身につけたい人にはJUAVACの資格・スクールがおすすめ
◎JUAVACの実施するコースの種類と特徴
- フライト基本技術コース
- 測量基本技術コース
- 非破壊検査基本技術コース
- 空中散布コース
現在、ドローン産業の成長に伴ってドローン関連の団体の数もどんどん増えています。資格の取得などを考えた場合、どの団体を選んで良いかわからなくなりますよね。
今回の記事が、JUAVACに対する理解を深め、自分に合った資格選びの参考になれば嬉しいです。
また、その他の団体についても同様にまとめた記事を公開しています。
ぜひ合わせてご覧ください。
- 一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)
- 一般社団法人 ドローン操縦士協会(DPA)
- DJI CAMP(UTC:Unmanned Aerial System Training Center)
- 一般社団法人JDC日本ドローンコンソーシアム
- ドローン教習所(ドローン検定協会株式会社)
- 一般社団法人ドローン撮影クリエーターズ協会(DPCA)
- 一般社団法人農林水産航空協会