様々な分野で活躍するドローンですが、
最近では「屋根点検」にドローンを導入する企業が増えています。
屋根の点検にドローンを使いたいけれど、
「ドローンでしっかり点検作業ができるのだろうか」
「そもそも、どうやって導入を進めればいいのだろう」
と、疑問に思っている方もいるかと思います。
そこで今回は、過去ドローンのソフトウエア開発企業に勤務し、屋根点検業界に造詣の深い方に、ドローンを使った屋根点検について色々とお話をお伺いする事ができました。
この記事を読めば、
・屋根点検にドローンが活躍している理由
・ドローン使用のメリット
・ドローン導入までの流れと、課題や解決策
・ドローン導入時におさえておきたいポイント
などが理解できると思います。
この記事とは別に、ドローン屋根点検についての具体的な情報をこちらの記事でもまとめています。ドローンの屋根点検を検討されている方は、ぜひあわせてご覧になってください。
目次
屋根点検にドローンが活用されている理由
導入が広がる背景
──それでは、屋根点検においてドローンが注目を集めている理由をお伺いします。
「はい。まずはじめに、屋根点検の現状をご説明します。
戸建て住宅の屋根点検は、屋根業者やリフォーム業者が、屋根工事の見積もりのために無料で点検することが多いです。その際に、いくつかの問題点が生じてしまいます。
人の手による屋根点検の問題点 |
■足場を組む場合、時間や手間がかかる 梯子をかけても届かない場所の点検には、足場を組む必要があり、足場の組立・解体には時間や手間、コストがかかる。 |
■傷んだ屋根に登ることで破損の恐れがある 劣化した屋根に乗ってしまい、屋根自体を壊してしまう可能性がある。 |
■屋根からの転落リスク 実際に屋根に登る必要があるため、常に転落の可能性を考えなければならない。 特に多いのが、傷んだ屋根材を踏み抜いて落下してしまうという事故。 踏み抜き事故は未然に防ぐことが難しいので、危険リスクが高い。 |
■家主から見えない場所での作業になるため、明瞭性が低い 点検作業は屋根の上で行われるため、依頼人がその様子を見るのは難しい。 中には不必要な修理をすすめたり、悪質なケースだと、わざと破損させ修理するといった業者も。 |
こういったの課題を解決するツールとして、ドローンによる簡易点検が広がっています」
屋根点検のドローン活用のメリット
──課題のある中で、屋根点検にドローンを使用するメリットを教えてください。
「点検にドローンを使うメリットとして、大きく6点あげられると思います。
屋根点検にドローンを使用するメリット6点
【1】安全性向上
まずは安全性の向上です。
これは、作業者が屋根に登ることによる転落の危険性を回避できるという業者側と、
踏み抜き事故などによる、屋根の破損を排除できるという依頼者側双方のメリットとなります。
【2】効率化
屋根の高さによって作らなければならない足場や梯子が必要なくなるので、時間やコストの削減ができます。
通常50分〜1時間程度程度と言われている点検時間が、ドローン使用だと15〜20分程度で完了します。
また、実際に登ってみて破損などがみられない場合、無料で点検するとコストだけがかかってしまうという事態に。ドローンなら、事前に破損の有無や屋根の状態確認ができます。
【3】業務標準化
屋根点検専用アプリなどの導入で、操縦技術がなくても、新人でもドローンの使用が可能となるので、業務の標準化ができます。
標準化が進むと、即戦力の確保による教育コストの減少や、人手不足の解消も見込めます。
さらに、新技術導入という時代に見合うテクノロジー活用イメージで、採用希望者の増加も期待できるかもしれません。
【4】他社差別化
ドローンを使用していない会社との差別化を図ることができます。
ドローンで撮影した画像・映像による客観的な劣化状況の評価が可能となり、精度の高い点検を自社の魅力にできます。また、撮影画像を用いるなどして、充実した点検報告書内が作成できます。
【5】受注率向上
ドローンを使うことで、無料点検や相談から、成約に結びつく確率の向上が見込めます。
実際の屋根の映像をリアルタイムで依頼主と確認できるので、説得力や信頼性が高まりますし、定期点検時なども、画像比較ができれば依頼主が屋根の変化に気付きやすく、屋根修繕の必要性を感じてくれるので、これも次の点検依頼に繋がります。
【6】売上向上
最後は利益の向上です。
ドローンを使用すれば、災害時の対応件数を増やすことができるので、案件数が増え、売上向上が期待できます。簡易点検で災害時の優先順位付けもできますし、破損による危険な屋根の点検も可能となります。
また、倉庫などの大型物件などの高所用作業車が必要となる案件も、ドローンで点検すれば時間もコストも抑えて行うことができます」
──多くのメリットが、ドローンを使うことによって生まれるんですね。
「そうですね。そしてドローンを飛ばして点検を行っていると目立ちますので、近隣住民の方の口コミで新たな依頼を獲得したりと、広告塔としても活躍してくれることもあります」
──なるほど。メリットについてよく理解できました。
屋根点検へのドローン導入までの流れ
──それでは続いて、実際に屋根点検にドローンを導入しようと考えたときの、一連の流れを教えてください。
「ドローンを導入をするにあたって、最低限必要なものは以下の通りです。
【導入に最低限必要なもの】
・機体
・タブレット(ipad、スマホ)
・飛行許可(機体が200g以上の場合国交省に申請)
そして、導入には大きく分けて3パターンが考えられると思います。
そのメリット・デメリットについてご説明します。
【3つの導入パターン】それぞれのメリット・デメリット |
||
1.自社で全て行う |
メリット ・導入費用を抑えることができる デメリット ・本業をやりながら、ドローンの操作方法、技術、法律についての知 識を得ることは難しい |
|
2.スクールに通う |
メリット ・操縦の方法や法律などを一から教えてくれる デメリット ・費用がかかる(1人10万〜30万円、会社から複数人の受講となると割 高になる) |
|
3.サービス提供企業を活用する |
メリット ・導入後、操縦練習など必要なくすぐに始められる オールインワンパッケージ
・導入から利用サポートまでセットになっているので、事故対応や保 険の対応までまかせることができる デメリット ・費用がかかる(初期費用+月額…1年目100万円程度) |
──それぞれメリット・デメリットがあるんですね。そういったこともふまえ、導入を考えている人に勧めるとしたらどのパターンでしょうか?
「そうですね。私はサービス提携企業をおすすめします。
機体やタブレット、飛行許可申請の代行までセットで利用できますし、ドローンの操縦も画面をタップするだけで自動飛行するので、練習も必要ありません。
サービス提供企業を利用するだけで屋根点検がすぐできるというのは大きな魅力だと思います。
自社で始めても導入がうまく進まず、提供企業を利用される方は多いと感じます。
スクールは高額な費用がやはりネックですね。スクールへ行った社員が辞めてしまう可能性もあるので、割高感は否めません」
──自社で導入を進めようと始めてみても、サービス提携企業を利用する会社も多いとのことですが、その背景にはどのような課題があるのでしょうか?
「法規制の面で戸惑う方が多いです。スクールに通っても、点検の都度、飛ばしていい場所かどうか不安になってしまってドローンの出番が少なくなっていく。
それから、飛行許可を取るのも慣れていないと複雑で難しく感じてしまうので、断念してしまう人も少なくありません」
──サービス提供企業は、飛行許可申請も代行してくれる、というサポートもパッケージに含まれるんですね。
「そうですね。カスタマーサポート部隊がいるので、飛行申請の代行や、事故を起こしてしまった時なども、代行して保険の申請手配もしてくれます。不安なくドローンを活用できると思いますよ」
ドローンの屋根点検に特化したドローンスクール(資格取得)については、こちらの記事でもより詳しくまとめています。
課題と解決策
──それでは次に、ドローン導入までに生じた課題と、その解決策を教えてください。
「はい。それでは課題と解決策を以下にまとめてみました。
課題 |
解決策 |
1.法規制 ・確認項目が多く、改正などの変化を追うのも大変 |
・サービス提供企業を利用する |
2.飛行許可の取得 ・複雑で慣れないと難しく感じハードルが高い |
・サービス提供企業を利用する ・行政書士に依頼 |
3.ドローン購入 ・選定方法、基準がわからない |
・サービス提供企業を利用する ・DJI正規代理店であるセキドなどに相談した上で 購入 |
4.操縦技術の習得 ・練習場所、時間の確保が難しい |
・サービス提供企業を利用する ・まずはトイドローンで練習 ・ドローンフィールドで練習 |
5.事故対策 ・どういった安全対策をすればいいかわからない |
・サービス提供企業を利用する ・自社で保険会社に相談した上で加入 |
6.業務活用 ・実際の業務にうまくドローンを活用できない |
・サービス提供企業を利用する ・とにかく多く飛ばす機会を作る |
操縦技術の習得の解決策として、ドローンスクールの受講もあげられますが、個人的にはおすすめしていません。
ドローン操縦に免許は必要ありませんし、スクールの修了証は、現場での信頼性にあまり繋がらないことが多いです。
それよりも、点検作業中に「ドローンで屋根点検中」と書かれた立て看板を置いたり、ドローンを使用していることがわかるベストやタスキをかけて作業し、しっかり点検業務に取り組んでいる姿勢を見せる方が、家主やご近所の方も安心してくれますね」
──なるほど。操縦技術の習得について、スクールはおすすめではないとの事でしたが、どういった流れで技術の習得を進めるのが一番効率がいいと感じますか?
「初めからサービス提携企業を利用しようと思っている方は、操縦の技術は必要ないのでそのまま提供企業を利用するのがいいと思います。そして、そもそもドローンがどんなものかわからない方は、イメージを沸かせるために、飛行可能な私有地や自社の敷地内、ドローンフィールドでトイドローンを飛ばしてみるのもいいと思います」
──自分で操縦しようと考えている場合は、まずは小さく始める、ということですね。上記であげられた6点の課題を全て自社で行っている方はどれくらいいらっしゃるんでしょうか?
「実際全ての課題をクリアしてやっている方もいるにはいますが、本当に一握りだと感じます。また、自分では気づいていないだけで、実は法律的に飛ばしてはいけない方法で飛ばしてしまっているなど、課題をクリアしていない状態でドローンを飛行させているケースも見受けられます」
──それは例えば、どのようなケースがありますか?
「200g以下のトイドローンなら、どこでも飛ばせると思って練習をしている方は多いと思います。
確かに飛行許可申請は必要ないですが、地権者が同席していないといけなかったり、道路の上は飛ばしてはいけないなどのルールがトイドローンにもあります。公園も自治体の条例で多くの場合飛行不可の場所なので、そこでの練習も禁止です。
また、屋根点検時は土地の所有者の同席が必須ですが、住宅密集地だと、隣の家の土地に入ってしまうこともあるので、そういった場合はしっかりとした申請が必要となります。それらを知らずに申請なしで飛行させている方もいますね」
──厳しい規制があるんですね。全てを自社だけで確認するのはなかなか大変そうですね。
「そうですね。そういったことからも、サービス提携企業の利用をおすすめしています。他社がどのようにドローンを活用しているかもわかるので、うまく業務に導入することができると思います」
屋根点検におけるドローンの活用状況
──屋根点検にドローンを使われる人は、どのような会社・職種が多いのでしょうか?
「やはりリフォーム業者さんが多いです。それ以外だと工務店、瓦業社、少ないですが不動産、デザイン会社なども使うケースがあります。基本的には既存の家の点検や、リフォームの際などの点検にドローンを使用します」
──なるほど。そうして実際にドローンを使用した作業で、ドローンだけでは点検が不十分な部分が出てきてしまうのでしょうか?
「ドローンだけでは細かい見逃しが生じる可能性もあります。なので、一次点検をドローンで行い、見当をつけて実際屋根に登って二重で点検する会社も多いです」
──ドローンでの点検が大きく活かせるシチュエーションはどんな場面だと感じますか?
「災害時など、点検物が多い場合は優先順位をつけてドローンだけの点検は向いていると思います。災害時や緊急時は危険が伴うことも多いので、人が動くよりリスクを抑えられますしね。逆に、機体にもよりますが、定期点検はドローン+登って近接目視の二重点検が必要かなと感じます」
屋根点検にドローン活用を検討されている人へのアドバイスとおすすめの機体
導入時おさえるポイント
──屋根点検にドローン活用を検討されている方へ、最初はこれから始めたほうがいい、このような点には特に気をつけるべきなどのアドバイスをお願いします。
「はい。ドローン導入にあたって、まずは導入目的を明確にすることが大切です。
導入まで進んだのはいいけれど、実際に業務ではドローンを全く使っていない、使えていない企業は少なくないです。なのでしっかりと業務にどうやって活用していくか、ドローン導入の目的に応じたルール作りをしておく必要があると思います」
──なるほど。導入前に業務活用までしっかり見据えることが大切なんですね。そのルール作りについて詳しく教えていただけますか?
「はい。それでは以下の表に、ルール作りの例をまとめてみました」
ドローン導入の目的に応じたルール作り |
|
安全性向上 |
近接目視が必要なラインを決める ドローンで簡易点検をしたあと、実際に人が屋根に登るのはどんな場合なのか、しっかりと定めておく。 |
効率化 |
ドローンの管理方法 複数現場で同日使用しなければならなくなった場合など、ドローンの在庫不足が起こらないようにしっかり確認する |
業務標準化 |
専任か兼任かを決める 実際の点検をしっかりドローンの屋根点検について学んだチームが行うのか、営業部隊に兼務させるかを決めておく |
他社差別化 |
差別化の方法 ドローンを活用して、どう他社との差別化するかを考える。 |
受注率向上 |
営業の方法 ドローン用の営業のトークスクリプトなど、通常のものとは別に作る必要がある。 |
売り上げ向上 |
既存顧客へのアプローチ方法 定期点検プログラムを作るなど、既存顧客に向けたドローン使用点検の繋がりを強くする。 |
しっかりと業務活用できている企業のポイントは、
・とにかく現場で飛ばす回数を多くしようと意識的に取り組んでいる
・ドローン点検のリーダーががいる
現場で飛ばす回数が増えれば知識や知見もたまりますし、リーダーを置くことで他部署の調整もしやすく、ドローン専属を作るくらいの意気込みが必要だと思います」
──細かいルール作りがドローン活用のポイントですね。では、実際の現場での屋根点検は、どのように行うのがいいと思われますか?
「実際の現場では、“ドローンで屋根点検中”とわかるようなベストを着用したり、点検する住宅の周りには、チラシを入れたり直接声かけをしたりといったことは必須です。
依頼主や近隣住民に今何をしているか、作業内容を知ってもらうことが安心感にも繋がりますし、ドローンを利用していることのアピールにもなります。
また、点検する地域の警察署に事前連絡、飛行許可も取った方がいいですね。
警察でもドローンの法律には詳しくなかったりしますので、飛行許可をしっかり印刷して、紙で手元に持っておくのをおすすめします。
このあたりを守っていれば、作業中にほぼトラブルはないかなと思います」
屋根点検におすすめの機体
──それでは最後に、屋根点検に向いている機体と、その選び方を教えてください。
「DJIの機体がコスパ・機能共に優れているので、まずDJ Iのものを選ぶことをおすすめしています。
選ぶ基準としては、ズーム機能が付いているもの。
ズーム機能が付いていて価格も手頃に購入できるという点で、※DJIのマビック2ズームがおすすめですよ」
※取材時の情報。生産状況など変更の可能性もあります。
──わかりました。今回は貴重なお話をありがとうございました。
まとめ
ドローンの屋根点検インタビュー記事を簡単にまとめました。
◆人の手による屋根点検の問題点
・足場を組む場合、時間や手間がかかる
・傷んだ屋根に登ることで破損の恐れがある
・屋根からの転落リスク
・家主から見えない場所での作業になるため、明瞭性が低い
課題を解決するツールとして、ドローンによる簡易点検が広がっている。
◆ドローン活用のメリット6点
【1】安全性向上
・作業者が屋根に登ることによる転落の危険性を回避
・踏み抜き事故などによる、屋根の破損を排除
【2】効率化
・点検時間短縮(通常:50分〜1時間程度→ドローン使用:15〜20分程度)
・コストの削減
・事前に破損の有無や屋根の状態確認ができる
【3】業務標準化
・屋根点検専用アプリなどを使用すれば、操縦技術がなくてもドローンの使用が可能
・即戦力の確保による教育コストの減少
・人手不足の解消
・新技術導入という時代に見合うテクノロジー活用イメージで、採用希望者の増加
【4】他社差別化
・ドローンで撮影した画像・映像による客観的な劣化状況の評価が可能
・精度の高い点検を自社の魅力にできる
・撮影画像を用いるなどして、充実した点検報告書内が作成できる
【5】受注率向上
・無料点検や相談から、成約に結びつく確率の向上が見込める
・実際の屋根の映像をリアルタイムで依頼主と確認できる
・説得力や信頼性が高まる
【6】売上向上
・災害時の対応件数を増やすことができる
・簡易点検で災害時の優先順位付けができる&破損による危険な屋根の点検も可能なので獲得案件が増える
・倉庫などの大型物件などの高所用作業車が必要となる案件も、時間とコストを抑えて行うことができる
・広告塔としても活躍してくれることもある
◆ドローン導入おすすめ方法
■サービス提携企業がおすすめ
【その理由】
・機体やタブレット、飛行許可申請の代行までセットで利用できる。
・ドローンの操縦も画面をタップするだけで自動飛行するので、練習の必要がない。
・カスタマーサポート部隊がいるので、事故を起こしてしまった時なども、代行して保険の申請手配もしてく れる。
・サービス提供企業を利用するだけで屋根点検がすぐできる。
◆実際の現場での屋根点検、おすすめのやり方
・ドローンで屋根点検中とわかるようなベストを着用
・点検する住宅の周りには、チラシを入れたり直接声かけをする
・点検する地域の警察署に事前連絡、飛行許可も取る
・飛行許可を印刷して、紙で手元に持っておく
この記事を読んで、ドローンを使った屋根点検のことが理解できたかと思います。
点検分野の中でも、特に注目されている屋根点検。
ぜひドローン活用の参考にしてみてください。