専門家にインタビュー!測量で活躍するドローンについて詳しく解説 インタビューしてわかった「これからの測量」にマストなドローン!

近年、点検分野においてドローンの活躍に注目が集まっています。

その中でも、ドローン導入の進む「測量」について今回は解説します。

「どういったものの測量にドローンが使われているのか」
「ドローンを使用するメリットはあるのか」

など、気になっている方もいるかと思います。

実際に自社でドローンで測量を行っている事業主の方に、詳しいお話をお伺いすることができました。

この記事を読めば、

・どのような測量でドローンは活躍しているのか
・ドローンを使用するメリット
・業界内において、ドローンの現状と今後について
・ドローン導入の進め方

などがわかりますよ。

 

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ドローン測量のメリットデメリット、おすすめ活用ケース、始めるまでの流れなど「ドローン測量の全体像」については、別のこちらの記事でも詳しく解説しています!

ドローン測量とは?メリットデメリットや始め方(料金・資格等)をインタビュー!

こちらの記事は、過去ドローンメーカーに勤務されドローン測量領域の案件実績も多く持つプロの方に、ドローン測量に関するインタビューを行った内容を記事にしたものです。

お読みいただければ、ドローン測量はどの様な案件に適しているのか、始める際はどの様な手順を踏めば良いのか(かかる料金や資格取得の必要性)、おすすめの測量用ドローンなど、ドローン測量に取り組む前に知っておくべき情報を知ることができます。是非併せてご覧ください!

ドローンが活躍する測量の場面と必要性

測量場面

──それではまずはじめに、どんな測量にドローンは使われるのか教えてください。

「はい。ドローン測量は主に、

・施工前の地形把握
・施工後の出来形管理(土木構造物が発注者の意図する規格基準に達しているかどうか管理すること)

のために行われます。施工(計画された工事を実施すること)のビフォアー、アフターに測量の必要があるということです。

どういった現場があるか、その案件例をまとめました。

河川

・洪水などによる災害防止のための調査

・河川の適正利用、流水の正常な機能管理

堤防

・氾濫を防ぐために堤防を高くする際、周辺の地形把握

・将来計画設計のための図面作成に必要な現状の把握

道路

・どのようなルートを通すのか、橋や土はどのくらい必要かの設計計画

新開発地

・リゾート開発地、廃棄物処理場予定地など、新たに建設する際の形状測量

立ち入ることが難しい場所

・山間部の複雑な地形など、人が測量するのが難しい(車両が乗り入れられない、 コストがかかるなど)場所の形状測量

災害地

・土砂崩れなどで、どのように地形が崩れてしまったのか把握

・道路が寸断された時、どう繋げ直すか地形把握

──なるほど。様々な場面で使用されているんですね。実際の案件を受けるまでの流れというのはどのようになっているのでしょうか?

「案件を受ける流れは、依頼人によって変わります。

依頼人が、観光庁や自治体の場合

案件依頼の流れ

依頼元の観光庁や自治体は、まず建設コンサルティング業界に案件依頼をします。

そしてコンサルタントで設計計画を立て、施工を行うゼネコン(総合土建業者)に案件を下ろします。

ゼネコンは地形把握のため、測量会社に測量を依頼する、という流れです。

依頼人が経営者や地主、士業の人の場合

依頼人が、

・土地や建物を持っている経営者や地主
・相続税申告用の現状図面や、自社の業務に使う測量データが必要な士業の

などの場合は、そのまま測量会社に依頼が来ます」

──ゼネコン案件と、直接の自社受注案件があるんですね。その依頼元による案件内容の違いなどはありますか?

「はい。ありますね。まず、ゼネコンからの依頼の場合、できる限りICTでやりなさいという指示が付いてきます。

ICTとは、情報通信技術のこと。測量でいうICTとは、現在は主に3Dスキャナかドローンを用いた測量、ということになります。

測量方法の2パターン

依頼元がゼネコンの場合、基本的に地上からの3Dスキャナか上空からのドローンか、どちらが案件の測量に適しているか判断して使用します。

自社受注案件の場合は、自社でマンパワーで測量するか、ICT(3Dスキャナかドローン)を使うかを判断します」

ドローンの必要性

──国がICTを推進しているんですね。そんな中での測量業界において、ドローンの必要性とはどの程度のものなのでしょうか?

「そうですね。3Dスキャナも方法としてはあるので、ドローンで測量ができないからといって業界から取り残されるといったことはないですが、所持していないと、確実に依頼案件数は減ってしまうと思います。

それは、災害時・緊急時に対応できるということが、測量会社にとって重要なポイントだからです。

“人の手による測量が難しい場所や災害地でも、ドローンを使って測量ができる会社”というのが、継続して付き合っていく会社を選ぶ際、依頼する側の必須条件になっていると感じます」

──なるほど。災害時や緊急時にドローンを使用できるというのが、今後の測量において重要ポイントの一つになるということですね。

測量にドローンを使用するメリット

──それでは次に、ドローンで測量するメリットを教えてください。

「詳しいメリットを下の表にまとめました」

ドローンで測量するメリット

精度の向上

■視覚的に見やすい測量図が作成できる。
■動画撮影をして3Dの地形を作れるので、パソコンなどの画面上で角度を変えて、多方面から地形把握 ができる。

測量可能場所が増える

■土砂崩れや洪水など、危険が伴う災害現場の地形把握も、ドローンなら可能
■高低差のある場所など、人が立ち入ることが難しい場所の作業もドローンなら可能

効率化

■同じ上空からの測量でも、航空機を使った場合とドローンを使用する場合、かかるコストを大幅に削減 できる。
■測量範囲が広いほど、従来の方法よりも短い時間で作業を終わらせることができる。短い時間で作業が 終われば、

・その分の人件費も削減できる。
・災害時などの緊急性のある場合、大きくそのメリット活かせる

【コスト削減例】

セスナを使った測量:100万円程度ドローン使用:10〜50万円

【時間短縮例】

・人が行う測量(大規模案件):7〜10日ドローン使用:30分(実際の飛行時間)

※規模や測量内容によって変わってくる

■現場作業の時短だけでなく、その後の測量結果解析も、

 ドローン撮影データなら専用のソフトを使用すれば自動で作成できるので、

・同時に違う作業を進めることができる
・従来測量士でないと持ち得ない高度なスキルが必要なく、業務の標準化ができる

他社との差別化

■ドローンを使用した測量画像をHPに掲載したり、会社のアピールポイントとして、また、販促ツール としても活用できる。

測量へのドローン導入の進め方

──それでは次に、ドローンの導入をどうやって進めたか教えてください。

「私の会社は、まず使いたい3Dモデルを解析するソフトがあって、それを使うためにドローンが必要だったんです。なので一般的な流れとは少し違うと思います。

業界内の一般的な導入の流れは、

①将来的にドローンが必要になるという流れがあり、導入を決める
②スクールで技術を学んで※10時間以上の飛行証明を取得する

このような形で進める人が多いと思います」

※10時間以上の飛行証明とは

国土交通省に飛行許可申請をする際は10時間以上の飛行経歴が必要(国土交通省「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」)と定められています。

飛行経歴の取得方法に決まりはなく、

・自分で練習した時間の飛行記録を取る
・業務内の飛行時間を経歴にする
・スクールへ行き証明取得をする

などの方法があります。

──実際の導入にあたって、どのようなことをしましたか?

「まずは実務で使うための機体を購入しました。そして、200g以下の機体も合わせて購入して、それで飛行練習をしました。それと並行して案件を探しました。知り合いなどに声をかけ、単価が安くてもいいからドローンを使わせて欲しいと頼んだりして、実績作りと経験値を上げていきました」

──スクールへは通われなかったんですか?

「はい。私はスクールに行かず、10時間以上の飛行証明も実務での飛行記録で取得しましたが、ほとんどの同業者はスクールに行っていますよ。その方が効率はいいと思いますしね」

ドローンを使った測量のやり方

──続いて、実際のドローン測量の流れを教えてください。

「はい。簡単に説明すると、

①飛行ルートを計画する
②GCP(地上の基準点)を測量する範囲に合わせて設置
③撮影(一定間隔で写真を撮影)
④デジタル解析
⑤3Dモデル作成

大まかに、このような流れで行います。上空から地表の見えづらい森林地帯は写真測量では難しく、ドローン搭載のスキャナから光を射出するレーザー測量という方法を用います」

──実際に、現場でドローンを使った測量をする際、生じた課題などはありましたか?

「ドローン操縦は、自動飛行が可能なので特に問題はなかったです。飛行テクニックではない部分、

例えば、

・どういったルート、高度で飛ばしたらうまく写真が撮れるのか
・どれくらいのラップ率(写真を重ねる率)で写真を撮ればいいのか
・GCPの設置頻度(割合)

など、経験がないとわからない部分が難しかったです。

こういった専門的部分やデジタル処理の方法などは、一般のドローンスクールでは教えてくれないので、スクールへいった同業者も苦労したと聞きました」

こういった課題をクリアする方法として、サービス提供企業を活用するという方法もあります。

KUMIKIなどの月額制ドローン測量データ生成サービスを利用すれば、

ドローンの画像をWebにアップするだけで、

・測量データ(点群・オルソ画像・高低差マップ)を自動で生成
・距離、面積、体積、角度、断面等各種解析、計測

が可能です。

 【約契内容一例】

基本契約  ¥36,000/ 年

・月間処理枚数100枚
・1処理最大枚数100枚
・ストレージ50GB
・1アカウント

【付属機能】

・地形データ生成機能
・計測機能
・地図重畳表示機能
・プロジェクト管理機能
・データダウンロード機能

※KUMIKI基本契約内容の一例。

測量におけるドローン導入の現状と今後について

導入の現状

──多くのメリットがあるドローンですが、測量業界ではどれくらい導入が進んでいますか?

「中小規模(10人以上)の会社は、6〜7割ほど、自社でドローンを所有しているんじゃないでしょうか。しかし、実際に活用できているのは1〜2割が現状だと思います」

導入が進まない原因

──ドローンの活用がうまくできていない要因はなんだと思われますか?

「大きな要因としては3つ、あげられると思います。

【1】ドローンが使えない・向いていない場所が多い

ドローン飛行が禁止された地域では、測量の為であってもドローンを飛ばすことができません。

人口密集地である街中や線路付近、鉄塔付近、自治体の条例で禁止されている場所などは、飛行許可を申請しなければドローンを飛ばすことはできません。

また、木の生い茂る森林地帯もドローン使用に向いていません。上空から地表がしっかり見えていないと正確な測量ができないからです。

【2】事業者、発注者がドローン使用に消極的

次に、測量会社の事業者と発注者がドローンを使うことに積極的でないというのも要因の一つだと思います。

まず事業者側が消極的な原因として、

・ドローン操作の経験がなく、うまく飛ばせる自信がないから使用を控えてしまう
・飛行禁止地域の把握や、飛行許可の申請を難しく感じてしまう

ということがあると思います。

ドローン使用に消極的な為、ドローン経験がない・少ないという理由で依頼側からドローン案件を受けられない。

依頼が受けられないから経験値が増えず、ますますドローンを使用する機会が減ってしまう、といったような悪循環が生まれてしまいます。

また、発注者が消極的な原因として、発注側もドローンの知識が薄く、メリットよりも墜落や落下によるリスクを恐れて、ドローンの使用許可を出さないケースもあります。

【3】細かいドローン使用の規定が定められていない

3つめは、マニュアルの部分です。

ドローン使用において、国が定めた作業規定に、ドローン使用の測量ルールがまだ細かく記載されていないのが現状です。公共測量としての作業方法が確立・マニュアル化されていないことが、事業者と発注者がドローン利用に消極的になる要因の一つになっていると思います」

──なるほど。さらに導入を進めるためには、それらの課題解決が必要ということですね。それでは、測量界において、ドローンは現在どういった立ち位置にある存在でしょうか。

「今現在、ドローンがなくては仕事ができないということではないですね。これからの技術であるのは間違いないです。新技術となると3Dスキャナかドローンが業界内では主ですが、ドローンについて知識がないから二の足を踏んでいるというのが現状。ですが、以前はクライアントにこちらからドローン使用の提案をしなければ話にも出なかったんですが、ここ半年くらいは相手側から「ドローン使える?」と聞かれる頻度がかなり増えました。少しづつですが、ドローンの存在が浸透しているのを感じています

測量におけるドローンの今後

──今後、測量業界においてドローンはどのようになっていくと思いますか?

ICT推奨の動きからも、ドローン導入は加速していくと思います。特にメリットが多くある災害時や緊急時のドローン使用はもっと広がっていくでしょう」

──実際の災害現場での使用は、現在も案件数としては多いのでしょうか?

「ニュースにならない小さな災害はかなり多いので、依頼は多く受けます。効率、リスク軽減、対処スピードなどの面から考えても、災害時・緊急時はドローンの活躍が大きく期待されているところだと思います」

──災害時はドローンの活躍が望めそうですが、その他の測量においてもドローンの導入はさらに進むと思われますか?

「そうですね。様々な分野の課題として、技術者の高年齢化があげられてます。施工業界内でも特殊車両運転手の高齢化が進み、人手不足問題が深刻になっています。

そういった背景もあり、ゼネコンは、将来的に無人化施工を計画していて、3Dデータを入れておけば自動で重機が動くシステムを開発中です。

そうなると3Dでの地形把握は必須となる為、測量方法は3Dスキャナかドローンとなってきます。

今後は人手不足といった理由からも、国を挙げてICTを推進していく動きなので、測量におけるドローン市場は広がっていくと思いますよ

測量にドローンを導入したいと考えてる人にアドバイス

──それでは最後に、測量にドローンを導入したいと考えている人へ、アドバイスなどがあればお願いします。

「現場で使える知識や経験が重要なので、1人で始めるのは難しいかなと感じます。コミュニティや講習会に参加するなどして、情報や技術を共有できる仲間を作れるといいと思います。測量界において、ドローンは業界内で導入を進めるべき新しい技術の一つなので、市場は広がると思いますよ」

──なるほど。ドローン測量について色々と理解が深まりました。今回は貴重なお話ありがとうございました。

まとめ

この記事をまとめました。

ドローンが活躍する測量場面

・河川
・堤防
・道路
・新開発地
・人が立ち入ることが難しい場所
・災害地
・出来高管理

案件を受けるまでの流れ

【依頼元】観光庁や自治体

     →建設コンサルティング業界に案件依頼。

      コンサルタントで設計計画を立てる。

     →施工を行うゼネコン(総合土建業者)に案件をおろす。

      ゼネコンは地形把握のため、

     →測量会社に測量を依頼。

【依頼元】経営者や地主、士業の人

     →そのまま測量会社に依頼。

ゼネコンからの依頼の場合、できる限りICT使用という指示がある。

ドローンの必要性

・ドローンで測量ができないからといって業界から取り残されるといったことはないが、所持していないと、 依頼案件数は減ってしまう。

災害時・緊急時に対応できるということが、クライアント側から求められている。

ドローンを使用するメリット

・精度の向上
・測量可能場所が増える
・効率化
・コスト削減例
・時間短縮例
・他社との差別化

◆​​ドローン導入の進め方

①将来的にドローンが必要になるという流れがあり、導入を決める

②スクールで技術を学んで10時間以上の飛行証明を取得する

【実際の導入にあたって行ったこと】

・実務で使うための機体を購入
・練習用の200g以下の機体も購入、飛行練習
・案件を探し(実績作りと経験値を上げる)
・10時間以上の飛行証明も実務での飛行記録で取得

◆測量におけるドローンの今後予想

・技術者や特殊車両運転手の人手不足問題が深刻化
・施工業界で無人化施工(3Dデータ)開発が進んでいる
・そういった流れの中で、測量も3Dデータが必須になってくる
・国もICT推奨している為、ドローン市場広がると予想

いかがでしたか。測量においてのドローンの現状やメリットなどが理解できたかと思います。

国の推奨や新技術の開発が進む中、今後ますますドローンの活躍が期待できそうですね。