「ドローンで投げ釣り」は違法ケースあり!その理由と合法的な楽しみ方をご紹介

海とドローン

ドローンを使ったダイナミックな投げ釣りに興味津々!

でも……「本当に釣れるの?」「ドローンをそういう風に使っても法律違反にはならないの?」といった疑問から、実際に試してみるまでには至っていないという人は少なくないのではないでしょうか?

事実、ドローンを使った投げ釣りは法律違反となってしまう可能性があります。なぜなら、上空を飛行するドローンは航空法という法律により規制されるから。

ですが、法律に違反することなくドローンを使って釣りを楽しむ方法はちゃんとあるんです!

この記事では、ドローンを使った投げ釣りが違法となる場合があり得る明確な理由を解説するとともに、ドローンを活用した釣りの法的に問題とならない楽しみ方や、実際に楽しむ際に気をつけるべき点についてもご紹介しています。

お読みいただければ、ドローンを使った釣りにトライする際にどういった点に注意すればよいか、具体的にどのように楽しめばよいかがわかります。

ドローン・フィッシングにご興味をお持ちならきっと役立つ内容となっていますので、ぜひご参考になさってください。

「200g以上のドローンから餌やルアーを投下」する投げ釣りは法律違反になる

釣りをする男性

「ドローンを使えばダイナミックな投げ釣りが楽しめる……!」

そう思ってこの記事を読んでくださっている皆さんのワクワク感に水を差すようで大変申し訳ないのですが、いきなり注意事項をお伝えしなくてはなりません。

ドローンを使った投げ釣りは、違法となってしまう場合があります。

その根拠は以下のとおりです。

無許可でドローンから物を投下することは航空法で禁じられている

バツを出す

ドローンのうち機体重量が200g以上のものは航空法において「無人航空機」に当たると規定されており、航空法の定めが適用されます。

2023年2月追記:2022年6月に航空法が改正され、航空法が適用されるドローンの重量が200g以上⇨100g以上に拡がりました。

そして、航空法では航空機から物を投下することが原則禁止されています。

何人も、航空機から物件を投下してはならない。
         (航空法 第八十九条より抜粋)

ここでいう「物件」とは建物のことではなく、物品全般を指します。物を上空から落とすことには高いリスクが伴うため原則禁止。

つまり、200g未満の小型軽量タイプを除くドローンで餌やルアーを沖まで運び、魚を見つけたポイントでそれをポトンと落とすことは、許可を得ていない限り航空法違反となってしまうのです。

国交省から投下の許可を得ること自体も難しい

悩んでいる30代の男性

ドローンからの物件投下は、許可を得ていない限り航空法違となります。逆にいうと、事前に許可を得ればドローンから物を投下しても航空法違反とはなりません。そういうことなら、国交省の許可を得た上で投げ釣りにドローンを使えばいいのでしょうか?

事実、たとえばドローンで農薬散布を行っている事例が実際にありますよね。農薬のような液体も「物件」に含まれますが、事前に届け出を行っているから問題とはならないわけです。

ですが、残念ながら許可申請が認められる可能性は低いと考えたほうがよさそうです。

なぜなら、危険を伴う物件投下が認められるかどうかで重要なポイントとなってくるのは「投下の必要性」。
生業として行っている農業でのドローン活用と、趣味の投げ釣りにドローンを使いたいという話とでは、その必要性の点においてまったく異なってくるからです。

《実はそもそもドローンから「吊り下げる」時点でアウト》

許可されるかどうかはともかく、投げ釣りでのドローン活用の許可を申請してみるとしましょう。しかし実はそうした場合、餌やルアーを上空から海上に落とす以前に、餌やルアーを吊り下げた状態でドローンを飛行させること自体に問題があります。

許可申請する際には、安全な飛行のために守るべき事項を取りまとめた「航空局標準マニュアル」に従わなくてはなりませんが、同マニュアル中に吊り下げを禁じる項があるためです。(ただし、インフラ点検では制限付きで吊り下げが認められています)

物件のつり下げ又は曳航は行わない。
         (航空局標準マニュアルより引用)

物を吊り下げると風にあおられやすくなり、プロペラへの巻き込みも懸念されるなど高いリスクが伴うため、このように禁止されています。

もっとも、こちらも解決策がないわけではありません。国交省から公開されているこの「航空局標準マニュアル」ではなく、吊り下げ飛行を可能にするような独自の飛行マニュアルを作成すれば理論上は問題なし。

実際に、海難事故での要救助者に届ける浮き輪や救命胴衣を吊り下げての飛行の承認例もあります。

とはいえ、この承認例は、飛行マニュアルの作成だけでなく、要救助者に確実に物品を届けるための専用機構を開発するなど並々ならぬ努力の末にようやく実現したもの。趣味レベルで同様に行うのは現実的ではありません。

参考:
航空局標準マニュアル(場所を特定した個別申請用)
航空局標準マニュアル(場所を特定しない包括申請用)
航空局標準マニュアル(場所を特定したインフラ点検用)
航空局標準マニュアル(場所を特定しないインフラ点検用)

法的問題をクリアして釣りにドローンを活用する方法

釣りをする男性

「ドローンで投げ釣りは無理か……」とがっかりしているあなたに朗報です!

合法的にドローンを活用して、釣りをよりエキサイティングなものにする方法が他にあります。

200g未満の機体から餌やルアーを投下

西オーストラリアのビーチでのドローンを使った投げ釣りの様子です。
Mavic Proは機体重量200g以上ですが、後述するようにオーストラリアでは合法です。

前述のとおり、航空法が適用されるのは機体重量が200g以上のドローンです。言い換えれば、200g未満のドローンなら航空法を気にせず飛ばせるということ。

機体重量200g未満の小型軽量ドローンの場合、海風の影響を受けやすく、運ぶものの重さも限られてはしまいますが、思い描く「ドローンで投げ釣り」を実現できます。

ただし、航空法の適用基準が機体重量200g未満から100g未満へと遠からず変更される公算が高いことを頭に留めておきましょう。

【図解】2022年市民頭上にドローンが!?飛行のルールが変わる! ドローンの操縦ライセンス制度とは【10/12更新】

200g未満のドローンも規制対象に!4つの規制内容や開始時期を紹介

上空からの魚影確認

 

カメラを搭載したドローンを使えば、上空を自在に飛行させることで魚影を確認できます。

超音波で水中の様子を探る魚群探知機の探知範囲はソナーの周囲に限られますが、ドローンなら広範囲を素早く確認可能。

魚影そのものの確認だけでなく水中の地形の把握にも役立ちますので、魚のいそうなポイントの見当をつけるという使い方もできますよ。

水中ドローンの利用

フィッシング特化型ドローン「PowerDolphin」の紹介動画です。
観ているだけでワクワクしてきませんか?

上空を飛行するドローンに餌やルアーを運ばせる代わりに、水中を移動するタイプの水中ドローンに運ばせるというのも一つの方法です。

上空を飛行しないため、航空法の規制は当然受けません。また、水中ドローンを対象とした法規制は現時点ではありません。

任意の場所で餌や釣り針をリリースできる機能も搭載したフィッシング特化型の水中ドローンもありますので、そうした機種を選べばかなり頼もしい助っ人となるでしょう。

★132°の広角レンズの4Kカメラを搭載したPowerVision社「PowerDolphin

PowerDolphin

(出典:PowerVision社公式オンラインストア

★魚群探知機能も搭載したPowerVision社「PowerRay

PowerRay

(出典:PowerVision社公式オンラインストア

海外でのドローン・フィッシング

大きな魚をもちあげる男性

ドローン関連法規は国によって異なるため、海外でならドローン・フィッシングを楽しめる可能性があります。

日本国内では実質的に禁止されてるドローンを使った投げ釣りですが、たとえばオーストラリアでは合法的に楽しめます。(しかもレジャー目的なら機体重量制限もありません!)

機体重量や用途にかかわらず注意が必要な点

釣りにドローンを活用する場合、機体重量や用途によらず気をつけなければならない点もあります。

海岸から飛ばす場合は管理者に確認が必要

海岸からドローンを飛ばす場合、その海岸の管理者の許可を得なくてはなりません。

趣味で飛ばすのであれば許可申請は不要というケースもありますが、少なくとも確認は必要でしょう。

また、海水浴場となっている砂浜などでは、管理責任者によりドローン飛行が制限されていることもあります。そうした場所からはドローンを飛ばせませんので注意しましょう。

参考:海岸法第5条「管理」および第37条の3「管理」

特定港内または特定港の境界付近に当たる場合は届け出が必要

大型の船舶が出入りできるような港を特定港といいます。
特定港では港則法が適用され、航行する船舶に影響を与える可能性のある行為とみなされるドローン飛行を行うには、管轄の海上保安部(の港長)への事前申請が必要です。(海上交通安全法にも同様の定めがあります)

特定港の場所は、海上保安庁の提供する情報サービス「海洋状況表示システム(愛称:海しる)」で確認できます。(「港則法適用港」のレイヤーを追加して表示)

地図

(出典:「海洋状況表示システム」)

参考:
港則法第31条「工事等の許可及び進水等の届出」
海上交通安全法第36条「航路及びその周辺の海域における工事等」1項

おまけ:ドローンを使った釣りは世界各国で楽しまれている

ちなみに、海外ではドローンを使った釣りが日本国内よりもずっと普及しているようです!

ニュージーランド北島のビーチで一度に何匹ものゴウシュウマダイを釣り上げる様子、フロリダのビーチでサメを、オーストラリア東海岸でマグロを釣る様子など、ドローン・フィッシングを撮影した動画が多数見られます。

投げ釣り用途に開発されたドローンや、専用アタッチメントなども販売されていますよ!

★海面着水も海面発進も可能なAguaDrone社のAguaDrone

AguaDrone社のAguaDrone

(出典:AguaDrone社公式サイト)

★アタリが来ると自動で釣り糸をリリースするSEA ULCER社のSKY RIGGER

ドローン

(出典:SEA ULCER社公式サイト)

まとめ

▼機体重量200g以上のドローンは航空法の規制対象となるため、餌やルアーをドローンで沖合まで運んだ上でドロップするという行為を無許可で行うと法律違反となってしまいます。

ドローンを使った投げ釣りにトライしてみたいのであれば、航空法が適用されない機体重量200g未満のドローンで楽しみましょう。

▼ドローンを使った釣りを法的な問題なしに楽しむ方法には、他にも上空からの魚影確認に利用したり、水中ドローンを利用したりといったものがあります。

ドローンに関して日本国内のような規制がない国もありますので、そうした国に行ったときに楽しむというのもいいですね!

▼ドローンを使った投げ釣りを楽しむ場合、航空法以外の規制にも気をつけなくてはなりません。たとえ200g未満のドローンでも、海岸の管理責任者の許可を得ておきましょう。

また、特定港やその境界付近からドローンを飛行させる場合、管轄の海上保安部への事前申請が必要となります。

堤防からヒョイと軽く竿を振って楽しむいわゆる「ちょい投げ」にも手軽に楽しめる良さがありますが、多彩な魚を狙える沖釣りはやっぱり魅力的ですよね。

とはいっても、毎回乗合船に乗ったりボートをレンタルしたりとなると、そうそう気軽にとは行かないのも事実。

磯釣りの手軽さと沖釣りの魅力を両立する奥の手である投げ釣りを、ドローンでもっと面白くしませんか?