「火災保険とドローンを上手に活用することで、自己負担を抑えつつ家屋の修繕ができる」という内容が話題になっているようです。
ですが、これだけ聞くとどういうことなのかよくわからないですよね。
「火災保険とドローンってどう関係があるの?」
「なんだか怪しくない?詐欺ではないの?」
「それは、私の家にも使えるの?」
など、さまざまな疑問の声が聞こえてきます。
実は、自然災害によって受けたダメージであれば、火災保険やドローン調査を活用して上手に家屋修繕を受けられる可能性があります。
ドローンで家屋のダメージを点検してそれを元に見積もりを作成、火災保険の補償を利用して自己負担を少なく家屋を修繕する、という方法です。
台風や地震といった自然災害では、家屋に大きなダメージを受けることが少なくありません。そのようなダメージはドローンで上空から確認可能です。人が登って確認するよりも手軽に、事故のリスクなく調査が可能です。
一方で、経年劣化など細かな場所まで丁寧に確認したい場合、ドローンによる調査は向いていないケースもあります。また、経年劣化には火災保険の補償が受けられないことも多いという事実もあります。
火災保険範囲内だけの修繕であれば、ドローン点検+火災保険で手軽に修繕できることがあります。
今回の記事では、火災保険とドローンを活用した家屋修繕の方法、それぞれの果たす役割、この方法が利用できるケース、利用する際に注意したい点などを紹介します。
この記事を読めば、火災保険とドローンを上手に活用した家屋修繕についてしっかりと理解することができます。また、この方法が自宅に活用できるかどうかもわかるでしょう。
目次
ドローンでダメージを発見して、火災保険を利用して修繕する
ドローンと火災保険を活用して家屋を修繕するというのは、簡単にいうと「ドローンでダメージを発見して、火災保険を利用して修繕する」ということです。
ここでは、それぞれについて具体的に説明します。
ドローンを利用することで家屋修繕の事前調査が手軽になる
「ドローンでダメージを発見する」というのは、家屋修繕の事前調査にドローンを活用する、ということです。
家の修繕をする際には必ず事前調査が必要となります。ダメージの程度や修繕の規模・内容を把握し、実際の修繕に必要な期間や費用、作業内容を見積もるための作業です。
実は、これまではこの作業がなかなか大変でした。壁の低い部分や塀などであれば簡単に調査可能ですが、屋根や壁の上の方など、高い場所を調査するためには、専門の職人が足場を組み、屋根に登って調査する必要がありました。
そこで登場したのがドローンです。ドローンであれば、上空を飛行しながらカメラで撮影することができます。
そのため、足場や職人さんを手配する必要なく、手軽に事前調査が行えるようになったのです。
自然災害で受けたダメージであれば火災保険で修繕できる
実は、火災保険では火災以外を原因とした家屋のダメージについても保障されることが少なくありません。
特に、台風や洪水といった自然災害によるダメージについてはほとんどの火災保険で保障を受けることができます。
火災保険で補償を受けられるケースとして、例えば次のようなものがあります。
これらの被害の場合、最大で修復費用の全額が支給される可能性があります。
また、契約内容によっては残存物の撤去費用や修繕中の賃貸費用なども損害金として全額支給対象となることもあります。
詳しい補償内容は契約内容によって異なることもありますので、ぜひご自分の契約内容を確認してみてください。
自然災害の後に家屋の修繕を検討する場合には、ぜひ火災保険で修繕費用を賄うことができないかみてみることをお勧めします。
火災保険が適用されるのは原則自然災害によるダメージのみ
注意しておきたいのは、火災保険で補償されるのは、原則として自然災害に起因するダメージだけというケースがほとんどであるという点です。
経年劣化による破損については火災保険を利用することはできないことが多いです。
ただし、修繕した範囲内に自然災害によるダメージと経年劣化によるダメージが混在していた場合、自然災害によるダメージの修繕費用については火災保険を利用し、超えた分は自己負担とすることもできます。
全額を自己負担で修繕するよりも負担を減らすこともできますので、家屋修繕の際には確認してみると良いでしょう。
ドローンによる家屋点検の特長
これまでは全て人力で行っていた家屋点検ですが、ドローンを活用することで手軽にかつ安全に行うことができるようになりました。
ここでは、これまでの家屋点検に比べてドローン点検にはどのような特長があるのか紹介します。
足場など必要なく短時間で気軽に点検を受けられる
最も大きな特長の一つが、手軽に点検を受けることができるという点です。
屋根や壁の高いところを点検するためには、これまでは人がのぼって直接見ることしかできませんでした。
そのためには足場を組み、高所に登って作業をする必要がありました。足場を組む・屋根に登るといった作業は専門の職人の力が必要であり、人件費も発生します。また、高所での作業ですので、転落など事故の危険性もあります。
その点ドローンであれば、地上からドローンを操作して飛行させ、上空から撮影することでより手軽に点検を行うことができるようになりました。実施する人員についても、ドローンの操作と映像の確認を行う1人だけで実施できます。
このように、安全面・効率面からも気軽に調査が可能となったという点がドローン調査の大きな特長と言えます。
踏み抜きなど点検中の事故による屋根のダメージがない
屋根や外壁といった点検箇所に対するダメージの心配が少ないことも特長の一つです。
実際に人が屋根に登って行う点検では、点検中に屋根を踏み抜いてしまったり、うっかり瓦を落としてしまったりといった事故リスクをゼロにすることは不可能でした。
その結果、修繕の事前調査のせいで修繕箇所が増える、という本末転倒な結果になることも。
その点ドローンは修繕対象箇所に触れることなく点検が可能ですので、こういったリスクはありません。
人が確認できない部分も確認できる
屋根の裏側や塀と壁の隙間など、人が簡単に入っていけないような場所でもドローンであれば調査可能です。
まずはドローンを飛ばして調査してみて、修繕の必要性が発見された場合にだけ、専門の器具などを使用して修繕する、あるいはさらに詳細な調査を行う、といった使い方も可能です。
点検中の屋根の様子を一緒に確認できる
ドローンによる点検映像はリアルタイムで確認できますので、点検中の屋根の様子を一緒に確認することができます。
従来の点検では、点検箇所の様子は実際に登って見ている人にしかわかりようがありませんでした。
そのため、実際には不要な修理を行われたり、必要な箇所よりも広範囲の修繕を契約させられたりといったトラブルも起こっています。
その点ドローン調査の場合、家主も一緒に状態を確認し、気になる点はその場で質問することができます。
そのため、より納得度の高い調査が可能というメリットもあります。
ドローンを使った屋根点検のメリット・デメリット・進め方等については、こちらの記事でより詳しく解説しています。
ドローンによる家屋点検の弱点
一方で、ドローンによる点検には弱点もあります。
次のような弱点があることを認識し、場合によってはドローン点検の後に人の目による点検も併せて行うなど、弱点を補うような取り組みが必要となることもあります。
ドローンでの調査は手軽である一方、どうしてもできないこともあります。後ほど詳しく説明しますが、事前調査にはどうしても人の手・人の目が必要となることがあります。
特に経年劣化に伴う小さな歪みや傷など、カメラに映らない小さなダメージについてはドローンで見つけることはできません。
実際、ドローンを活用して業務を行うリフォーム業者の中にも、戸建ての細かなダメージにはドローン点検は向かないと主張している企業もあります。例えばこちらのブログなどでもそのように説明されています。
ドローン調査で全体を概観した後に、特に気になるポイントについて再度人による詳細な調査を行う、といった組み合わせによる取り組みも有効です。見積もりの際に業者に確認してみましょう。
人の目での調査を渋るような様子があった場合、別の業者に依頼を検討した方が良いかもしれません。
本当の細部まではカメラ画像で判断できないことも
ダメージの程度や内容・場所によっては、ドローンのカメラ映像だけで判断が難しいこともあります。
例えば経年劣化による屋根の傷みなどについては、よほど近くに寄って目を凝らさないと見えないようなものもあります。
大きなダメージを修繕するだけであればドローン調査だけで十分であることも少なくありませんが、将来を見越して細かなダメージにも全て手を打っておきたい場合には、人の目による確認が必要となることもあります。
触診ができない
ドローン調査では人が登るわけではないので、実際に手を触れて確認することができません。
家屋のダメージの中には、目で見ただけでは判断が難しく、実際に触れてみる必要があるようなものもあります。ドローンでは触診はできませんので、その場合には実際に人が登って確認する必要があります。
その場で応急処置はできない
人が登って点検している場合、その場でちょっとした応急処置を行うこともできますが、ドローンではそれはできません。
急を要するダメージがあった際には、その場で応急処置を行っておき、後日しっかりと直す、ということもあります。あるいは小さなダメージであれば点検と一緒に修繕してしまうケースもなくはありません。
ドローン調査の場合、そういった対応はできませんので、いずれも場所を確認しておいて、改めて人が登って対応することになります。
熟練した操縦者でないと事故や破損のリスクも
ドローンの操縦には熟練した技術が必要です。慣れない操縦者が操縦すると、風に煽られて思わぬ方向へ動いてしまったり、意図した通りに動かせなかったりといったことが起こり得ます。
悪くすると、屋根や壁にぶつかったり、最悪の場合には墜落して人に当たったりといったリスクもあります。
ドローン調査を受ける際には、確かな操縦技術を持ったスタッフが対応すること、万一のために保険に入っていることなどを明言している業者を選びたいところです。
「ドローン調査と火災保険で無料修繕」を謳う悪徳業者に注意
最近では、このようなドローン調査や火災保険での家屋修繕を謳って、多額の費用を請求する悪徳業者が出現しているため、注意が必要です。
悪徳業者や詐欺の手口として、例えば次のようなものがあります。
「ドローンで見てみたところ、屋根の修繕が必要な箇所が見つかった」と訪問し契約を迫る
事前連絡なく突然訪問し、押し売り的に契約を迫るようなケースがあります。
「ドローンでお宅の屋根を見てみたところ、修繕の必要がある場所が見つかりました。すぐに修繕しないと雨漏りするようになりますよ」などと言って家主の不安を煽り、本来であれば不要な修繕契約を結ばせるという手口です。
実際には契約後も修繕は何も行われないか、ひどいケースでは修繕が必要なかった箇所を無理に壊して杜撰な修繕を行い、元よりも悪い状態にしてしまうことすらあります。
このようなケースに遭遇したら、その場で契約しないことが何よりも大切です。不安な場合には、改めて信頼できる業者に状態点検を依頼すると良いでしょう。また、「撮影した映像をみせてください」と申し出ることも有効です。
「火災保険を利用すれば自己負担金ゼロで修繕できる」と言って契約させ、後から多額の費用を請求する
自己負担金ゼロと言われたので契約したにも関わらず、実際には全額を費用請求された、というケースもあります。
「火災保険を利用すれば無料で修繕できますよ。まずは契約していただき、その後火災保険の手続きをしてください」と言って契約させ、その後費用を請求するのです。
経年劣化など、明らかに火災保険を利用できないダメージであっても、「火災保険を利用できる」と言って契約させるケースもあります。
契約前にはしっかりした見積書を作成してもらい、保険の適用範囲を調べてから判断するようにしましょう。
ドローン調査・火災保険対応で安心できる業者を見つけるためのポイント
後悔しない家屋修繕のためには、このような悪徳業者や詐欺に騙されることなく、本当に優良な業者を見つけ出す必要があります。
良い業者をしっかりと選ぶために、まず大前提として、複数の業者に見積もりを依頼する、いわゆる「相見積もり」は必ず行うようにしましょう。
見積もりは施工にかかる費用を知るだけでなく、見積もり作成時の対応を見ることで、業者や担当者の人となりや姿勢を知ることができます。
業者に見積もりを作成してもらう際には、次のようなポイントに着目すると良いでしょう。
ドローンの空撮映像を一緒に確認する
ドローンによる家屋調査の際には必ず立ち会い、カメラ映像を一緒に確認するようにしましょう。
映している映像をリアルタイムで確認できるのがドローン調査の良い点です。調査中の映像を一緒に確認し、修繕が必要な箇所についてはその場で教えてもらうようにしましょう。
その際、わからないことや気になることがあれば必ず聞いておきましょう。説明が曖昧であったり、話を逸らされたりするような場合は要注意です。
しっかりと一緒に確認することで、ありもしないダメージをでっち上げて不要な修繕を迫られることを防ぐことができます。
火災保険の活用に関してしっかりと説明を受ける
修繕が必要になった場合、火災保険の活用についてはしっかりと説明を受けるようにしましょう。
具体的には、次のような内容については必ず契約前に確認しましょう。
- 火災保険は適用できるのか
- 火災保険が適用できない修繕箇所はあるか
- 火災保険と自己負担額の比率はどの程度になりそうか
- 火災保険の手続きは自分で行うのか、サポートは受けられるのか
- 手続きサポートの具体的な内容
- 手続きサポートをしてくれる人は法律家なのか
- 手続き代行や手続きサポートを担当する法律事務所の名前と連絡先
これらの確認を怠ると、最終的に思っていたよりもずっと多くの金銭負担が発生してしまうリスクがあります。
火災保険の適用可否や手続きについては必ず契約前に確認し、納得してから契約することを強くお勧めします。
ドローン調査後、必要に応じて目視確認も依頼する
確実な現状調査のためには、ドローン調査だけでなく、必要に応じて目視での点検も併せて行うことも有効です。
すでに説明している通り、ドローンだけでは見つけにくいダメージや触れないとわからないこともあります。
そのような場合において、「修繕しながらみるから、まずは契約してください」などと言って契約を迫るような業者はやめておいた方が良いでしょう。
修繕箇所やダメージの確認は必ず見積もり作成前に行い、不安が残る場合にはとことん詳細に調べてくれるような業者を選ぶことが大切です。
まとめ
ドローンを活用することで、これまでよりも気軽に家屋点検を受けることができることがわかりました。また、災害が原因でできたダメージについて火災保険で修繕することも可能です。
これらを上手に活用すれば、これまでよりもずっと少ない負担で家屋の修繕が可能となるでしょう。
一方で、これらを悪用した悪徳業者や詐欺が存在していることも事実です。このような業者に騙されないよう、しっかりとした知識を持って安心できる業者を選ぶことが大切です。
最後に、この記事の内容をもう一度まとめます。
◎ドローンでダメージを発見して、火災保険を利用して修繕する
- ドローンを利用することで家屋修繕の事前調査が手軽になる
- 自然災害で受けたダメージであれば火災保険で修繕できる
◎適用にならないケース・向いていないケースに注意
- 経年劣化など細かなダメージにはドローン調査は向いていない
- 火災保険が適用されるのは原則自然災害によるダメージのみ
◎ドローンによる屋根点検の特長
- 足場など必要なく短時間で気軽に点検を受けられる
- 踏み抜きなど点検中の事故による屋根のダメージがない
- 人が確認できない部分も確認できる
- 点検中の屋根の様子を一緒に確認できる
◎ドローンによる屋根点検の弱点
- 本当の細部まではカメラ画像で判断できないことも
- 触診ができない
- その場で応急処置はできない
- 熟練した操縦者でないと事故や破損のリスクも
◎「ドローン調査と火災保険で無料修繕」を謳う悪徳業者に注意
◎ドローン調査・火災保険対応で安心できる業者を見つけるためのポイント
- ホームページや提携先の会社をチェックする
- ドローンの空撮映像は必ず一緒に確認する
- 火災保険の活用に関してしっかりと説明を受ける
- ドローン調査と目視確認を組み合わせる
- 複数の業者で相見積もりをとる
家は、住む人の生活と命を守る大切なものです。ダメージや劣化はできるだけ早く見つけて修繕することが一番です。
一方で、家屋修繕は素人にはわかりにくく、不安が残ることも少なくありません。安心して住み続けるためには、家に住む人が家のことを理解し、安心して任せられる業者に修繕を依頼することが一番です。
今回紹介したような内容を上手に活用して、安心して生活できる場所を守ることできればと願っています