今や様々な分野で活躍するドローン。
「実際どのくらいの距離を飛行できるんだろう」と、気になる方も多いのではないでしょうか。結論からいうと、ドローンの飛行可能な直線距離は目に見える範囲まで。
目視内以上の距離を飛ばしたい時には、申請・承認が必要です。性能的にそれ以上の飛行が可能な機体でも、申請しなければ目視圏外の飛行は違法になってしまいます。
この記事ではドローンの飛行距離について詳しく解説していきます。
この記事を読むとわかること
- ドローンの飛行可能距離は?
- 目視圏内の飛行について
- ドローンの飛行距離に大きく関わる「伝送距離」とは
- 送信機とスマホによる伝送距離の違い
- 長距離飛行をする時の注意点
この記事を読めば、長距離飛行の注意点や法律によるルールがわかり、ドローンの飛行距離について詳しく理解することができますよ。
目次
ドローンの申請なしでの飛行可能距離は「目視圏内」
航空局長の承認を得る申請を必要としないのは、「目視できる範囲での飛行」のみ。
大体の目視可能範囲は、一般的に100m~300mほどです。それ以上の飛行を無許可で行うと、航空法違反として処罰の対象となります。
また、高度150m以上の飛行も申請が必要となるため、許可・承認を受けない場合、ドローンの飛行可能距離は、高度150m未満、目視できる範囲というのが目安となります。
飛行可能距離は機体によって様々ですが、性能上2,000m以上のフライトができるドローンが多く、目視内距離より遥かに長い距離を飛ぶことができます。
ですので、目視外飛行の申請をせず、目視内のみでのフライトを考えているのであれば、飛行可能距離に優れた機体を選ぶ必要はないかもしれません。
ドローンの飛行距離に関しての航空法
ドローン飛行には、様々なルールが航空法により定められています。ドローンの飛行距離に関わる法律には、申請・承認を必要としないのは「目視圏内」飛行のみというものがあります。
目視圏内の飛行
前述したとおり、人が目視できる範囲は大体100m~300mほど。
補助者などではなく、ドローンを飛行させている本人が、眼鏡以外のカメラや双眼鏡などは使用しない状態で、しっかり機体を見ることができている状態を「目視圏内の飛行」といいます。過去には無許可で目視外飛行をしてしまい、書類送検に至った事例もあるので気をつけなければいけません。
【目視外飛行について】
目視外飛行の申請をした際、承認を得るためには事前の訓練が必要になります。承認を得た場合にも、「目視人」の配置が条件下されます。
操縦者からドローンが見えなくとも、必ず機体の状態を把握できるアシスタントを配置する必要があるということです。目視人とトランシーバーなどで連絡を取り合い、常にドローンの状況を確認し合うようにします。
ドローンの飛行距離に大きく関わる「伝送距離」
申請をし、目視範囲外のフライト許可を得た場合や、目視できる範囲内を周遊をする際、
飛行距離を左右するのは伝送距離です。下で詳しく解説します。
伝送距離とは
伝送距離とは、送信機からドローンに電波が届く距離のこと。
ドローンの飛行可能距離は、簡単にいうと「飛行可能距離=伝送距離」といえます。一般向けドローン市場において約7割ものシェアを占めているとされるDJIの機体には、約8kmもの伝送距離を誇るドローンも登場しています。
しかしこの数字も、「無風・障害物なし」という状況下において、という条件付きです。風もなく、建物などの障害物もない環境というのはなかなか難しいですよね。
実際はメーカーが謳う飛行距離の半分ほどの距離が、現実的な飛行可能距離となるようです。
送信機とスマホによる伝送距離の違い
ドローンは基本的に、プロポと呼ばれる送信機やスマートフォンを電波(Wi-Fi)に繋げてフライトしています。送信機を使用したフライトが主流ですが、最近ではほとんどのドローンに、専用のアプリをインストールすればスマホだけで操作できる機能が搭載されており、スマホWi-Fiで飛行させる人も増えてきました。
【スマホWi-Fiを使うケースは手軽・身軽にドローンを飛ばしたい時】
送信機+モニターがなくとも手軽にスマホ1つでフライトさせることができるので、
- 室内の点検作業などの短時間飛行
- 出先の飛行で荷物を減らしたい時
- 撮影映像をすぐにSNS等にアップしたい時
など、手軽・身軽にドローンを飛ばしたい場面の多い人にはスマホWi-Fiは便利です。しかし、送信機を使用した際の飛行可能距離は2〜4kmに対し、スマホ使用になると80~100mとかなり短くなってしまいます。
DJIの機体を例に上げてみます。
機種 | 飛行距離【送信機】 | 飛行距離【スマホWi-Fi】 |
---|---|---|
Mavic Pro | 4km | 80m |
Spark | 500m | 100m、50m(高度) |
送信機はドローン専用機器ですが、スマートフォンは専用機器ではなく、効率よくドローンに電波を送受信できる仕様ではないからです。
スマホによる飛行は注意が必要
簡単で手軽なスマホWi-Fiを使ったドローン飛行ですが、フライトさせる際はいくつかの注意点があります。
【電波干渉を受けやすい】
日本国内でドローンを飛ばす時に使われている電波帯は主に2.4GHz帯です。
この2.4GHz帯は、資格や届けも不要で使うことができますが、伝送が途切れやすいという弱点があります。電話や無線LANなど、多くの通信機器に使用されている周波数帯なので、電波干渉を受けやすいからです。また、混雑した場所などでは、違う周波数のものと噛み合ってしまい、これも電波途絶の原因となってしまいます。
ドローンをスマホのWi-Fiで飛行させるときは、周りに電波塔や他のWi-Fiを使用した通信機器がないか確認するなどして、電波途絶が起きにくい場所かどうかのチェックをするようにしましょう。
ドローンの電波干渉で実際に起きた事故の例や、より具体的な電波干渉の対策については、こちらの記事で詳しく解説しています。
【飛距離が短くなる】
前述したように、送信機よりもスマホのWi-Fi使用の場合、飛行距離が短くなります。伝送距離にも注意が必要です。
Wi-Fi中継機を利用することで、若干飛行距離を伸ばすことが出来るようです。ドローンと中継機の相性や、飛ばす環境のWi-Fi状況によって飛ばせる距離は変わってくるので、使用する際はモニターを注視し、電波ロストしないように気をつけてください。
スマホWifiを使ったドローン飛行については、こちらの記事でより詳しく解説しています。
長距離飛行時のバッテリーについて
ドローンの長距離飛行について、承認・申請以外のポイントで、注意するべき点を解説します。
【容量の大きさと飛行可能距離は比例しない】
長距離飛行の要はなんといってもバッテリーです。基本的に大容量の機体の方が長時間飛行が可能ですが、全ての機体がバッテリー容量の大きさと飛行時間が比例するわけではありません。下記の表は容量と飛行時間を比較したものです。
機体 | 容量 | 飛行時間 |
---|---|---|
RC EYE One Xtreme | 800mAh | 約7分 |
Phantom3 | 4480mAh | 約23分 |
S1000+ | 10000mAh | 約15分 |
このように、容量が約2倍以上あるのに飛行時間が短い、という機体もあります。これは、様々な機能が搭載され、消費電力も多い為にフライトできる時間が短くなってしまうからです。
シンプルなドローンの方が長距離飛行には向いています。
【バッテリー切れには要注意!】
飛行前のフル充電はもちろんマストですが、飛行中のバッテリー残量も常に気にかけていなければなりません。バッテリーの消費を早める要因はいくつかあります。
・気温
気温が低いとバッテリー消費が早まります。その理由は、ドローンに使用されているリポバッテリーは化学反応で電気を作っていて、低気温下ではその反応が鈍くなり電圧が下がってしまうから。
フライト前には気温のチェックを行い、低気温の中ドローンを飛ばす際はバッテリーを出発直前まで冷やさないようにしましょう。
・積載重量
ドローン本体が重くなればなるほど、バッテリーの減りは早くなります。長距離飛行の際はアクセサリやGoProなどは積載せず、身軽の状態で飛行させましょう。
・高度
高度が高くなると空気が薄くなり、より多くの推力が必要となります。推力とはドローンを進ませる力なので、バッテリーの消費も早まってしまいます。
高度の上げすぎには気をつけましょう。
まとめ
最後にこの記事を簡単にまとめます。
◆ドローンの飛行可能距離は?
承認・申請を必要としない飛行可能距離は、高度150m未満、目視できる範囲(100m~300m程度)が目安。
◆距離に関しての航空法
2021年10月より、航空法施行規則が改正(飛行規制が一部緩和)された。
目視外飛行(法第132条の2第1項第6号)の許可・承認が不要となったが、これには「十分な強度を有する紐等(30m以下)で係留し、飛行可能な範囲内への第三者の立入管理等の措置を講じてドローン等を飛行させる場合」という条件がつく。
なので、長距離飛行が承認なしで可能となるという内容の規制緩和ではないので、注意が必要。
◆「目視圏内」とは
ドローンを飛行させている本人が、眼鏡以外のカメラや双眼鏡などは使用しない状態で目視できる範囲のこと。
◆ドローンの飛行距離に大きく関わる「伝送距離」とは
伝送距離とは、送信機からドローンに電波が届く距離のこと。承認・申請を受けた場合や、目視圏内での周遊をさせる際、「飛行可能距離=伝送距離」といえる。
メーカーが謳う飛行距離は「無風・障害物がない状況下」なので、実際は約半分ほどの距離が飛行可能距離となるようだ。
◆送信機とスマホによる伝送距離の違い
送信機を使用した際の飛行可能距離は2〜4kmに対し、スマホ使用になると80~100mとかなり短くなる。
これはスマートフォンはドローン専用機器ではなく、効率よくドローンに電波を送受信できる仕様ではないから。
◆スマホによる飛行は注意が必要
電波干渉を受けやすく飛行距離が短くなるので、フライト中の電波ロストに注意が必要。飛行場所の電波状況確認や、フライト中もモニターで電波状況を常に気にするようにしましょう。
◆長距離飛行をする時の注意点
・バッテリー容量の大きいものでも飛行時間には比例しない
→長距離飛行をさせる際は、消費電力の少ない、シンプルなドローンを選ぶ。
【バッテリー消費を早める要因】
・気温(低気温下ではバッテリー消費が早くなる)
→バッテリーを出発直前まで冷やさないようにする。
・積載重量(重くなればなるほどバッテリーを消費する)
→アクセサリやGoProなどは積載せず、機体を軽くする。
・高度(空気が薄いほどバッテリーを消費する)
→高度の高すぎる場所は飛行させない
ドローンの飛行距離について解説してきました。しっかりと決まりを守り、安全にドローンを活躍させてください。