【プロにインタビュー!】ドローン赤外線外壁調査のメリットや始め方

建築基準法第12条の定めに基づく定期報告制度(いわゆる12条点検)で必要となる外壁調査の手法として、ドローンを使った赤外線診断が注目されています。

もともと外壁調査を手がけていて「ドローンを導入したい」と考えている企業様、マンション管理やビル経営などに携わっていて「次はドローンを使って調査してもらおう」と考えている方は多いのではないでしょうか?

事実、ドローンによる赤外線外壁調査には多くのメリットがあります。

しかしその一方で、もちろん注意点もありますし、そもそもドローン飛行が適さないケースもあります

ドローンによる赤外線外壁調査をビジネスとして行うことや依頼することを考えているのであれば、そうした注意点も含めきちんと認識しておくべきです。

加えて、ビジネス導入を前提としているなら、以下に挙げるようなことについても併せて知っておきたいところです。

  • 現在および将来の市場ニーズ
  • 具体的な導入手順
  • スキル習得に要する期間の目安
  • 赤外線外壁調査に適したドローン機種 など

そこで本記事では、ドローンによる赤外線外壁調査の実績多数、運営するドローンスクールでは赤外線調査に特化したコースも開設している株式会社ドローン・フロンティア様への取材をもとに、そうした情報を幅広くご紹介します。

実際に現場でドローンを飛ばしている方から伺ったお話に基づくリアルな情報ですので、外壁調査ビジネスへのドローン導入検討におおいに役立てていただけるはずです

また、ドローン導入を検討している企業様が必要とする情報だけでなく、依頼する場合の価格相場についても取り上げていますので、調査を依頼する側の皆様にとっても有益な内容となっています。

立場を問わず、ドローンによる赤外線外壁調査にご興味をお持ちの方は、ぜひご参考になさってください!

ドローンによる赤外線外壁調査とは

ドローンによる赤外線外壁調査とは

ドローンを使った赤外線外壁調査とは、赤外線カメラを搭載したドローンを飛ばし、上空で外壁を撮影して、その撮影データからタイルの浮きや剥がれを見つけるという手法です。

注目されるドローンによる赤外線外壁調査

かつて外壁調査といえば専用のハンマーを用いた打診調査がほとんどでしたが、今日ではドローンを使った赤外線外壁調査が大変注目されています。

その理由は、人の代わりにドローンが高所の調査箇所に近づいてくれるから。

地上から操作するだけでよいドローンによる赤外線外壁調査は、人が調査箇所に直接アクセスする必要のある打診調査よりもずっと楽で、手間もかかりません

赤外線カメラによる調査自体は新しいことではないのに注目される理由

赤外線カメラによる調査自体は新しいことではないのに注目される理由

実は、赤外線カメラを利用した調査方法自体は新しいものではなく、ビルから20〜30m離れた場所から手持ちの赤外線カメラで撮影するという方法が以前より行われていました

それにもかかわらず、ドローンによる赤外線外壁調査が画期的な手法として注目を集めているのは、高層階になると精度が落ちるという従来手法の弱点をクリアしているからです。

赤外線カメラで精度の高いデータを得るには、壁面に対しできるだけ垂直に近い方向から撮影する必要があり、地上からの撮影ではビルが高くなるほど壁面に対する角度がついてしまうのが難点でした。

カメラに望遠レンズをつけて遠くから撮影すれば角度の問題は解消されるものの、距離が離れることで熱エネルギーを捉えづらくなり、結局正しいデータを取れなくなってしまいます。

その点、空を飛ぶドローンからなら、赤外線データを取れる範囲内の距離、壁面に対し垂直方向に近い位置を保ちながら撮影できます

理想的なポジションから撮影することで高精度なデータを得られる手法、赤外線カメラを使った調査方法の利点を最大限活かせる手法として、ドローンによる赤外線外壁調査が注目されているのです。

《ドローン以外の機器を使った外壁調査方法》

ワイヤーで吊るすタイプ、壁面に吸着することで自走するタイプといった壁面調査ロボットも研究・開発されています。

ロボットが打撃しながら集音して周波数から診断するなど、調査員のスキルへの依存という打診法のデメリットを解消する手法といえるでしょう。

しかし、多くがまだ研究段階であること、量産化されていないため高コストであることなどから、少なくとも現時点ではそうしたロボットを積極的に活用している企業は出てきていない状況です。

ドローンによる赤外線外壁調査のメリット

ドローンによる赤外線外壁調査のメリット

外壁調査にドローンを活用することのメリットには、次のようなものがあります。

  • 現場作業時間を短縮できる
  • 人工(にんく)を減らせる
  • 事故リスクを低減できる
  • 壁面に損傷を与えない
  • 入居者負担を軽減できる
  • 可視化データを取得できる

それぞれについて見ていきましょう。

現場作業時間を短縮できる

ドローンによる赤外線外壁調査では、従来手法である打診で調査を行うよりも、現場での作業時間を大幅に短縮できます。

物件の大きさにもよりますが、打診調査の場合、外壁全面を調査するのに半月から1ヶ月の期間がかかります。

一方、同じ作業にドローンを使えば、赤外線カメラでの撮影自体は1日以内に終わる場合が大半

悪天候でドローンを飛ばせないという事態を想定した予備日を含めても2日です。

その後持ち帰った撮影結果を解析する作業はありますが、それは社内でじっくり対応すればよい種類の業務です。

現場での作業が短時間で完了するのは大変大きなメリットといえるでしょう。

人工(にんく)を減らせる

現場の大小にもよりますが、ドローンによる赤外線外壁調査では、打診調査に比べ期間全体の延べ人工がずっと少ないことがほとんどです。

足場をかけて打診をするとなると打診作業自体に一定期間を要し、さらに足場を解体するなどの作業も発生しますが、ドローンを使えば前述のとおり現場での作業時間はわずか1日。

大型物件の周辺に複数人の警備員を配置するなどして現場に5〜6人の人員が必要となるケースもないわけではありませんが、それも現場での撮影作業を行う1日だけで済む話です。

期間全体の人工が多くなりがちな打診調査よりも圧倒的に少ない人工で済むのも、ドローンによる赤外線外壁調査の大きなメリットです。

事故リスクを低減できる

ドローンによる赤外線外壁調査の事故リスクは大変低いです。

調査員が足場の上で直接外壁を打撃する打診調査には高所作業ならではの転落事故リスクが伴いますが、調査員の代わりにドローンが高所を飛行して撮影する手法にそうしたリスクはほとんどないからです。

ドローンの墜落があり得ないとは言い切れませんが、飛行範囲に人が立ち入らないようにした上で作業を行いますし、ドローンスクールの赤外線調査に特化したコースを受講しておけばまず問題なく安全運用できるはずです。

もちろん適切な運用が前提とはなりますが、打診調査と比較すれば事故リスクがはるかに低いのがドローンによる赤外線外壁調査なのです。

壁面に損傷を与えない

壁面に損傷を与えない

ドローンによる赤外線外壁調査は、壁面にダメージを与える心配がありません。

なぜなら、壁面から離れた位置を飛行するドローンにはそもそも壁面との物理的接触が発生しないためです。

壁面との接触を避けられない打診の場合、劣化が進行した壁面ではごく軽く撫でただけでタイルが剥がれ落ちることも。

また、足場をかける際には固定用のアンカーを壁面に打ち込む必要があり、作業終了後に補修はされますが、外壁に穴をあける以上その穴が原因で劣化が進むことも考えられます。

ドローンによる赤外線外壁調査では、飛行中のドローンが建物にぶつかりタイルに傷をつけてしまう可能性はゼロではないものの、機体に障害物回避機能が備わっていることを考えると、そのおそれはほとんどないでしょう。

入居者負担を軽減できる

入居者負担を軽減できる

ドローンによる赤外線外壁調査では、打診調査に比べて物件の入居者の負担を軽減できます。

なぜなら、入居者の暮らしに少なからず影響を与える足場を組む必要がないためです。

作業員による高所作業となる打診調査では足場を組みますので、日当たりが悪くなったり、窓を開けづらくなったりといったことへの我慢を一定期間入居者に強いてしまうことになります。

足場伝いに各戸にアクセスできる状態となるため、プライバシー面やセキュリティ面での不安もあるでしょう。

しかし、足場の不要なドローンによる赤外線外壁調査であれば、そうした足場由来の不便や不安は生じません。

ドローンから撮影しますので、プライバシー面の不満はゼロとはならないかもしれませんが、長期間組まれたままの足場とたった1日の飛行とでは負担感はまったく違うはずです。

可視化データを取得できる

ドローンによる赤外線外壁調査のある意味最大にして根本的なメリットといえるのが、可視化したデータを取れることです。

打診を行う調査員による聞き分けはあくまで感覚的なもの。本当に聞き分けた通りなのかを証明することは難しいですが、赤外線カメラで撮影した画像があれば「ここがこうなっています」と明確に示せます

また、お客様にとっても施工者にとっても、「このときの調査ではこうだった」とわかる画像データが残るのは大きなメリットといえます。

調査員の感覚に基づく打診調査では「確かにその箇所にタイル浮きが生じていることの証拠」を示せないだけに、ドローンによる赤外線外壁調査において関係者全員が客観的なデータを共有できることの意義は大きいです。

《ドローンによる赤外線外壁調査が適さないケースもある》

ドローンによる赤外線外壁調査にはさまざまなメリットがありますが、あらゆる場面で使える手法というわけではありません。

前後左右や上方向に逃げ場がないような環境では物理的な危険が伴うため、ドローン飛行は向きません。

  • 隣接するビルとの距離が概ね5m未満
  • 複数本の電線が縦横に張り巡らされている
  • 周囲に電柱が多い

といったケースが当てはまります。

そうしたケースでは、ドローンを使える壁面にはドローンを使い、ドローンを使えない壁面はロープアクセスに切り替えるなど他調査方法を併用することになるでしょう。

ドローンと他調査方法の併用

あるいは、10階建ての物件の真裏に3階建てのアパートが近接して建っているような場合には、3階か4階辺りまでは地上から撮影し、そこから上の階はドローンから撮影するといったような組み合わせが考えられます。

ドローンとそれ以外の手法のコンビネーションにより、コストを抑えつつ信頼性も確保することが可能になります。

ドローンによる赤外線外壁調査の注意点

ドローンによる赤外線外壁調査の注意点

良いこと尽くめのように思われるドローンによる赤外線外壁調査ですが、注意点もあります。

外壁調査にドローンを導入しようと検討しているのであれば特に、注意点についてもきちんと把握しておきたいですね。

風雨に弱い

ドローンには風雨に弱いところが残念ながらあります。

プロペラで飛ぶため風に煽られやすく、精密機械であるため雨(水気)は厳禁だからです。

「風があまりなく、雨の予報も出ていない日」が作業実施の条件となりますので、天候不良で延期となった場合に備えた予備日を設定しておくのが無難でしょう。

相手は自然現象であるだけに、天気予報を参考にして風雨の心配のない日を選んで作業することになります。

気温や日照の影響を強く受ける

これはドローンの使用有無に関係なく赤外線調査そのものの注意点ですが、気温や日照の影響を強く受けるということが挙げられます。

なぜなら、タイルと壁面の間に生じた隙間の空気がタイルが密着した部分よりも温められた状態となっているのを赤外線カメラで捉えることでタイル浮きを発見する手法だからです。

たとえば夏場の晴れの日などで直射日光が1〜2時間当たると、壁面全体が一気に温まってしまいデータを取れなくなります。

逆に冬場には、終日晴れているような日でないと壁面が温まらず、やはりデータを取れません。

このように気温や日照の影響が大変大きいため、気温変化、日照の強弱、太陽の高さなどをもとに綿密に計算し、壁面がほどよく温まるタイミングを見計らって作業を進める必要があります

《機器トラブルへの備えも必要》

ドローン側の問題として、暑すぎてモーターやセンサーに不具合が発生するといったトラブルもあり得ます。しかし、そうした機器の不調については、常に予備機を用意しておくことで対応可能です。

法律や条例による制限がある

法律や条例による制限がある

ドローンの飛行には法律や条例による制限があり、ドローンを飛行させるために特別な手続きが求められたり、場合によってはドローンを飛ばせないというケースも出てきます。

機体重量が100g以上のドローンには航空法が適用されますし、物件のある地区で定められている条例があればそれに従う必要があるからです。

(※2022年6月20日から重量基準が200g以上→100g以上に変更となっています。)

たとえば、都心部や国の重要施設が集まっているエリアでは、航空法に基づき通常求められる申請フローよりも煩雑な手続きが必要となることがあります。

また、小型無人機の飛行が条例で原則禁じられている公園に隣接したマンションでは、調査時に公園上空を飛行させることになってしまう壁面についてはドローン使用を断念せざるを得ないでしょう。

ドローンによる赤外線外壁調査を行うに当たっては、航空法の規制や都市・公園の条例に配慮しつつ作業しなくてはなりません。

ドローンによる赤外線外壁調査の市場ニーズは拡大見込み

ドローンによる赤外線外壁調査の市場ニーズは拡大見込み

ドローンによる赤外線外壁調査の市場ニーズは今後さらに拡大していくことが見込まれます。

なぜなら、外壁調査の需要がなくなることはまず考えられず、且つ外壁調査の分野でおおいに評価されているのがドローンを使った手法だからです。

12条点検の定期報告が必要な特定建築物には外壁にタイルを使った大型の建物が多く、そうした建物の所有者・管理者の法的義務である定期報告を怠れば罰則の対象となるため、外壁調査の需要は底堅いといえます。

実際に、今回取材したドローン・フロンティア様では、年間150棟以上もの多様な物件の赤外線外壁調査を行っています。

ドローン・フロンティアによる赤外線外壁調査事例

[出典]ドローン・フロンティア様公式サイト

また、剥落したタイルの落下事故が実際に発生したことを受けて外壁調査に関する規定が強化されてきたという経緯を考えても、現在義務化されている外壁調査がこの先任意となることはないでしょう。

したがって、今後も必要性が低下しない外壁調査における画期的手法として、ドローンによる赤外線外壁調査はさらに広く支持されていくことになると予想されます。

外壁調査方法として正式に認められたことで存在感はさらにアップ

ドローンによる赤外線外壁調査は、調査手法としてその存在感をさらに増しています。

というのも、赤外線カメラを搭載したドローンによる調査が、定期調査報告制度における外壁調査方法の一つとして、2022年4月1日付けで正式に認められたからです。

(※ただし、「テストハンマーによる打診と同等以上の精度を有するもの」という条件付きですので、精度を確保できることが大前提です)

赤外線カメラを使った調査は、利用可能な外壁調査方法として2008年の時点で既に「特定建築物等定期調査業務基準」内で挙げられており、その精度が十分に高いことについてはかなり以前より認められていたことになります。

ただその一方で、赤外線カメラをドローンに搭載することの可否については明確にされておらず、ドローンへの搭載が問題視されることがなかったため支障なく外壁調査を行えていたという状況でした。

実際の運用には支障がなかったのですから、正式に認められたからといって実質的にはこれといった変化はありません。

しかし、調査手法として有効であると明文化され、その信頼性が法的に認められたことは、ドローンによる赤外線外壁調査の今後の発展にとり大きな意味と価値を持つといえます。

ドローンによる赤外線外壁調査サービスの利用者は、客観的データを残せるという利点やコストメリットから他の所有・管理物件でも同サービスを利用する傾向ですので、調査手法として正式に認められたことは追い風となるでしょう。

ドローンによる赤外線外壁調査を始める上で知っておくべきこと

ドローンによる赤外線外壁調査を始める上で知っておくべきこと

ドローンによる赤外線外壁調査を始めるに当たり知っておきたいことには、次のようなものがあります。

まずはドローンスクールで赤外線外壁調査に特化したコースを受講するのがおすすめ

ドローンによる赤外線外壁調査を始めるに当たっては、まずはドローンを飛行させる上で必要となる知識や操縦スキルを学ぶ場であるドローンスクールで受講しましょう。

というのも、独学でドローンによる赤外線外壁調査を始めるのはかなりハードルが高いからです。

受講者の経験値や持っている知識・スキルには差があり、たとえば次のようなパターンが考えられます。

  • 赤外線外壁調査経験もドローン飛行経験もあるが、赤外線外壁調査でのドローン活用経験はない
  • 赤外線外壁調査を業務として行っているが、ドローンを活用したことはない
  • 打診での外壁調査経験はあるが、赤外線カメラを用いた外壁調査経験はない
  • ドローン飛行だけでなく外壁調査自体の経験もない

受講者のレベルにより学ぶべき内容は変わってきますが、たとえ赤外線カメラを使っていてもドローンに載せるとなれば話はまた別のため、上記のどのパターンにおいても安全に運用するには専門的な技能を磨く必要があるのです。

独学でなんとかしようとする場合、ドローンに関することか、赤外線に関することか、ドローンによる赤外線外壁調査ビジネスの運用に関することのいずれかでつまづいてしまうと予想されます。

ドローンスクールでの講習は、全般的な知識・スキルの習得を目的とした内容であることが一般的ですが、一部ドローンスクールでは産業分野でのドローン活用に求められる技能の習得に特化したコースが提供されています。

そうした特化コースのうち、赤外線調査に特化したコースを受講すれば、安全運用に役立つ実践的な内容を学べますよ!

スクールに行くべき理由:確実な診断のためには理論を学ぶ必要があるから

赤外線カメラで撮影するのはあくまで現場での作業であり、その後のデータ解析が的確でなければ正しい診断には行き着きませんよね。

赤外線カメラの撮影データを正確に解析するには、なんといっても理論をしっかりと学ばなくてはなりません。

なぜなら、打診が理屈というよりは聴覚や経験によるところが大きい一方で、赤外線外壁調査は理論ありきだからです。

赤外線外壁調査では、取れるデータも軸となる理屈もただ一つ。

理論を実践に落とし込むために一定以上の経験が必要なのは確かですが、調査員のスキルに依存する部分の大きい打診とは異なり、理論を学んだ誰もが客観的に診断できるため診断結果がブレません

打診の技術が一朝一夕に習得できるものではないのと同様に、赤外線データ解析作業も1回教えてもらえればすぐにできるような簡単なものでは決してありません。

しかし、理論を身につけさえすれば確かな診断ができるのですから、ドローンスクールで理論をしっかり学ぶ価値はやはり小さくはないのです。

解析作業をマスターするにはスクール卒業後最短1ヶ月が目安

解析作業をマスターするにはスクール卒業後最短1ヶ月が目安

赤外線データの解析作業をマスターするには、スキルによる部分もありますが、ドローンスクールで受講してから短くても5〜10物件ほどは実務経験を積む必要があるでしょう。

さまざまな物件のさまざまなデータを見て、そのデータのもととなっている諸条件や状況を比較して初めて正確な解析が可能となるためです。

たとえば、ひと口にタイル貼りの建物といっても、タイル自体も違えば貼り付けるためのモルタルの作り方も職人さんによって違ってきます。

そういったパラメータをデータとして蓄積できていればいるほど、解析結果の精度は上がりますし、1枚の画像から得られる情報量も増えていきます。

調査頻度に大きく左右されるところはありますが、目安としては、スクールを卒業してから早い人だと1ヶ月、長い人だと半年程度かけて解析作業を自分のものにしていくことになるでしょう。

おすすめ資格は「赤外線建物診断技能師」

外壁調査を請け負う立場であればぜひ取得しておきたい資格が「赤外線建物診断技能師」です。

国家資格ではないためマストではありませんが、それでも取得しておくのが望ましい理由は、特に自治体案件などでは同資格を保有していることが受注条件となっている場合が多いからです。

ドローンの技能には関係してきませんが、赤外線の知識と建物診断のスキルを持っていることを証明する資格ですので、外壁調査を依頼する側にとって安心材料となるのは確かです。

街と暮らし環境再生機構の実施する講習を受けた上で受験という進め方で取得するのが一般的ですが、赤外線外壁調査に携わっていて建物診断の知識もあるのであれば、受講せずに受験することを検討してもよいかもしれません。

いずれにしてもこの資格を取っておけばビジネス面で役立つでしょう。

《その他の関連資格》

赤外線調査に関連する資格として、Teledyne FLIR社の独自ライセンスも挙げられます。同社の運営する赤外線トレーニングセンター(ITC)で実施される講習各コースを受けることで取得可能です。

こちらは、どちらかといえば赤外線工学の専門的・科学的な知識を習得することが主となっております。

建物診断の分野における活用も可能ではありますが、日本国内での外壁調査における実用性という点からは、資格取得の費用面も考慮すると赤外線建物診断技能師資格を保有していれば十分といえます。

初期費用目安は400万円前後

外壁調査に適したドローンとそれに搭載する赤外線カメラや解析アプリ、その他必要となってくる周辺機器一式を購入する場合の初期費用の目安は概ね400万円前後です。

本格導入を迷っている場合にはレンタルも視野に入ってくるかもしれませんが、ドローン本体と赤外線カメラを1日借りるだけでも10〜20万円ほどはしますので、よほど使用頻度が低いのでなければ早めに決断したほうがよさそうです。

赤外線外壁調査に適した機種は限られている

ドローンによる赤外線外壁調査を始めるに当たり機体を購入することになりますが、どの機種にしようかと迷うことはほとんどなく、実際のところDJI製のMATRICE 300 RTKのほぼ一択です。

というのも、量産されているドローンで選択肢となり得るのは産業機(産業向けの機種)であり、且つ赤外線外壁調査に適したほぼ唯一の産業機がDJI製のMATRICE 300 RTKだからです。

(※同じMATRICEラインに先ごろ加わった新機種も検討対象となり得そうです。こちらについては後述しています)

国産メーカーの他製品もあるにはありますが、現時点ではコスト面で折り合えないと判断されるケースがほとんどでしょう。

また、オーダーメイド機を用意するのも一つの考えですが、利用可能な量産機が市販されている以上、わざわざ手間とコストをかける意味はなさそうです。

搭載するカメラ、解析するためのアプリについても、それぞれ専用のものが同じくDJIから出ていますので、こちらも迷う余地はありません。

《新発売のMATRICE 30シリーズも選択肢になるかも》

先ごろ、MATRICE 300 RTKの小型版といえるMATRICE 30シリーズが発売されました。

今後は同機種も選択肢となってきそうです。

赤外線カメラとしてのスペックはMATRICE 300 RTKを使うケースと変わらず、全体のスペック的にも赤外線外壁調査に使用するのに差し支えないレベルです。

(なお、搭載するカメラも小型化される分ズーム性能は落ちますが、画素数は上がっていますので、可視画像についてはむしろMATRICE 30シリーズを使うケースの方が精細に撮れるでしょう)

MATRICE 300 RTKの機体寸法が展開状態で810×670×430 mm(プロペラを除く)、MATRICE 30シリーズは470×585×215 mmとひと回りからふた回り小さいイメージですので、小回りが効くほうが望ましい現場にはむしろ向いているかもしれませんね!

[参考]
MATRICE 300 RTK
MATRICE 30シリーズ

【依頼したい方向け】ドローンによる赤外線外壁調査の価格相場

【依頼したい方向け】ドローンによる赤外線外壁調査の価格相場

平米単価の主流は300〜500円辺りですが、価格決定には流動的な部分も多く、相場はいくらと一概には言えないというのが実情です。

たとえば、ボリュームディスカウントが慣行として行われるため、タワーマンションクラスになると平米単価がかなり下がる傾向です。

また、取材したドローン・フロンティア様では1平米当たり510円(対応可能な最小面積の場合。調査面積に応じて、そこから単価が下がります。)を基本としていますが、撮影・解析対象となる壁面ベースで算出するため、ガラス窓(=撮影・解析対象外)の多い建物であれば相応の値引きがされるそうです。

その一方で、何階建てから何階建てまでの物件はいくらといったようにざっくりとした価格設定をしている企業もあるようです。

このように壁面積がわかれば価格もすぐにわかるといった性質のものではないため、やはりまずは見積もってもらう必要があるでしょう。

まとめ

▼メリット
近年注目されているドローンによる赤外線外壁調査には、次に挙げるメリットがあります。

  • 現場作業時間を短縮できる
  • 人工(にんく)を減らせる
  • 事故リスクを低減できる
  • 壁面に損傷を与えない
  • 入居者負担を軽減できる
  • 可視化データを取得できる

手持ちの赤外線カメラを使った調査手法は以前からありましたが、物件の高さにかかわらず精度の高いデータを取れる点で、ドローンに赤外線カメラを搭載して撮影する手法のほうが有利です。

▼注意点
その一方で、ドローンによる赤外線外壁調査には次のような注意点もあります。

  • 風雨に弱い
  • 気温や日照の影響を強く受ける
  • 法律や条例による制限がある

▼参入希望者が知っておくべきこと
ドローンによる赤外線外壁調査をビジネスとして始める人が知っておきたいこととしては、次のようなことがあります。

  • まずはドローンスクールに行くのがおすすめ
  • 解析作業をマスターするには一定の時間がかかる
  • 「赤外線建物診断技師」はぜひ取得しておきたい資格
  • 初期費用目安は400万円前後

▼使用機種
赤外線外壁調査に使うドローンはDJI製のMATRICE 300 RTKのほぼ一択です。(将来的には最近発売となったMATRICE 30シリーズも選択肢になりそう)

搭載カメラやアプリはそれぞれ専用のものがあるため、こちらも迷う必要はほぼありません。

▼ドローンによる赤外線外壁調査の市場ニーズ予想
外壁調査の需要は底堅く、外壁調査はこの先もビル所有者・管理者の義務であり続けるでしょう。

定期調査報告制度における外壁調査方法の一つとして2022年4月1日付けで正式に認められたことも追い風となり、ドローンによる赤外線外壁調査の市場ニーズは今後も拡大していくと予想されます。

▼ドローンによる赤外線外壁調査を依頼する場合の価格相場
平米単価や、戸数や階建による一律価格であったりと会社によって流動的な部分も多いため、まずは見積もりを取るのがおすすめです。

コスト面でも安全面でも、そして客観的なデータの共有という点でも多くのメリットがあり、大きな注目を集めている外壁調査手法がドローンによる赤外線外壁調査です。

従来の打診法に代わる調査法として導入を検討している関連企業の皆様にとり、本記事がご参考となれば幸いです!