ドローンを導入するにあたり危険性についての知識を得たいと考えても、実際どんな危険性があるのかすらぼんやりとしかわからないという方が多いのではないでしょうか。
ドローンの危険性は大きく分けて
- 物理的な接触による危険性
- 電波や情報セキュリティの危険性
- 法律違反の危険性
の3種類があります。
ただもちろん、国やドローンメーカーはそれぞれの危険性に対する対策も定めています。
そこでこの記事では、
- 3つの危険性の具体的な内容と対策
- ドローンの過去の事故事例
- ドローンを扱う人が事前に入るべきドローン保険
などをお伝えし、ドローンを正しく活用するための対策を提案していきたいと思います。
この記事を読めば、ドローンの危険性に関する正しい知識が得られ、自信を持ってドローンの導入に踏み切ることができるでしょう。
目次
ドローンの危険性は大きく分けて3つ
ドローンの危険性は、大きく分けて3つあります。
- 物理的な接触による危険性
- 電波や情報セキュリティの危険性
- 法律違反の危険性
それぞれについて詳しくみていきましょう。
物理的な接触による危険性は多数存在する
ドローンを飛ばすという行為は、つまりある程度重さのある精密機械を空中に飛ばすこと。当然物理的な接触による危険性も避けられません。
では、具体的にどのような危険性があるのでしょうか?
ドローンの特徴による危険性
落下
ドローン自体の重さはさほどでもないとはいっても、落下すると非常に危険です。
仮に1kgのドローンが50mの高さから落下したとします。この場合の落下エネルギーは、重さ5kgの物体を10mの高さから落下させたのと同じ。さらに落下速度は秒速31m、つまり2秒後には地面に落下していることになります。
このことからも、ドローンが落下すると、衝撃力も強く非常に危険だということがわかります。
ドローンが墜落する原因はいろいろありますが、以下に主なものをご紹介します。
プロペラの接触
ドローンは、複数のプロペラを高速回転させて飛行します。1秒間に約150回転するというから驚きです。
こちらの動画を見てもわかる通り、回転中のドローンのプロペラは凶器と言えるほど危険。
着陸後は必ずプロペラを停止させ、間違っても触らないよう注意が必要です。
飛ばすと危険な条件
荒天時
ドローンにとって天候は最大の敵と言っても過言ではないほど、注意を払わなくてはいけない要件です。
ドローンを飛ばす際は
- 雨が降っていない
- 風速5m以下
この2つの条件を同時に満たしているときのみ、と覚えておきましょう。
雨天時
まず、ドローンが空飛ぶ精密機械である以上、一滴でも雨が降ったら飛行は中止するべきです。
なぜなら、ドローンの機体には、モーターやバッテリーなどの駆動系部品から発生する熱を内部から逃がすための穴や隙間が多く開いているからです。水が機内に入ってしまうと故障やショートなどのトラブルを引き起こしやすく、最悪の場合墜落してしまう危険性も。
業務上支障をきたす場合は、天候に左右されにくい防水機能付きのドローンを選ぶというのも一つの方法です。
強風時
ドローン飛行において雨と同じぐらい注意しなくてはいけないのが風です。なぜかと言うと、ドローンは風速5m/s以上からGPSを保持できず、操縦が不安定になってしまうためです。
風速5mというと木の葉や細い枝が絶えず揺れている状態。一見ドローンの飛行には問題ないように思えるかもしれませんが、建物周辺の狭い場所や風向きが複雑に変化するような場所では、対応できずに墜落してしまう可能性が考えられます。
国土交通省が発行している「無人航空機飛行マニュアル」にも記載されている通り、風速5m/s以上の状態での飛行は避けるべき。
夜間
夜間は、ドローンの位置だけなく周囲の障害物を把握しにくくなり、ドローンを適切に制御することが困難になる可能性が高まります。
このため、ドローンは日中のみの飛行に限定することが航空法でも定められています。
障害物や大勢の人が集まる場所
落下や衝突の危険を考えると、建物が密集しているような場所や多くの人が集まる場所でドローンを飛ばす際には、細心の注意を払わなくてはいけません。
禁止空域の項でも触れますが、そもそも人口密集地域での飛行は禁止されており、ドローンを飛ばすには許可が必要。許可を取得した場合でも、人や建物との距離を十分に取るよう心掛けましょう。
国土交通省の飛行ルールでも、人や建物との距離は30m以上確保するよう記載されています。
目に見えない危険性にも要注意
ドローンには、物理的な危険のほかにも、目に見えない危険性が存在します。
プライバシーの侵害
ドローンは、普段見ることができない高い場所からの撮影が可能であることから、プライバシーの侵害や肖像権といった個人情報に関わる問題が存在することも忘れてはいけません。
たとえばあなたが撮影したドローンの映像に偶然写り込んだ人物や住宅に加工をせず、インターネット上に公開してしまったとします。これが訴訟問題に発展すれば、あなたは何らかの責任を負う事になるのです。
ドローンで空撮する際には、高度や時間帯を考慮し、人や車、住居など第三者が特定できてしまうような撮影は避けるべき。どうしても写り込んでしまった場合は、ぼかし加工をするなどの配慮が必要です。
ドローンの個人情報保護については、総務省でガイドラインが設けられているので、一度目を通しておくといいでしょう。
電波干渉がある場所での飛行
ドローンが操縦不能になる要因の一つに、電波干渉や電波障害による通信の不具合があります。
ドローンを飛ばす際には、近くに強い電波を発するようなものがないかどうか、事前に確認が必要。
アンテナ・基地局・電波塔など | 100m以内の飛行は避ける |
高圧線・変電所など | 30m以内の飛行は避ける |
アンテナや基地局、電波塔などがないかどうかを確認し、ある場合は飛行経路を見直しましょう。素人が周波数帯や出力を判別することは不可能ですが、100m以内は避けるようにしておくと安全です。
また、高圧線や変電所など電磁波の乱れが起こる恐れがある場所も、30m以内は飛行させないようにしましょう。
※どうしても業務上そのようなエリアを飛ばさなくてはならない場合は、飛び交う電波の周波数や出力を可視化できるスペクトラムアナライザという機械を使って事前調査してから飛ばす必要があります。
ドローンの電波干渉で実際に起きた事故の例や、より具体的な電波干渉の対策については、こちらの記事で詳しく解説しています。
情報セキュリティ上の対策
外部からの不正アクセスによる乗っ取りや情報漏洩の危険性もゼロではありません。
ドローンから得られる情報は、主に撮影画像や飛行ログですが、発表前の被写体に関わるものや製品開発に関わるものなど、ほかに知られたくない情報が詰まっている場合も考えられます。
情報セキュリティ上、自分でできる対策を講じることで、安全性を高めましょう。
情報セキュリティ上できる対策としては以下の通り。
- ドローンのファームウェアを定期的に更新する
- 基地局アプリのパスワードを強化する
- コントローラーとして使用するスマートフォンやパソコンにはウィルス対策ソフトを
禁止区域を飛ばしてしまう危険性
法律による規制については他で詳しく触れますが、ドローンを運用する際には、国や警察、自治体が定める法律や条例に従わなくてはなりません。
飛行禁止空域やガイドラインが定められており、これに違反すると罰せられる場合があります。
航空法
まず国土交通省が管轄する航空法132条によって規制されている空域は以下の通り。
「緊急用無空域」とは、捜索、救助等活動のため緊急用務を行う航空機の飛行が想定される場合に、ドローン・ラジコンなどの飛行が禁止される区域。令和3年6月1日以降、災害の規模に応じて指定されます。
航空局ホームページ、Twitterで確認できるとのこと。
人口集中地区については国土地理院のHPの中から詳しく検索することができます。
小型無人機等飛行禁止法
また、上のイラストに記載された航空法で禁止されている空域の他にも、重要な施設の空域でドローンを飛ばすことは禁止されています。
これは警察庁管轄の「小型無人機等飛行禁止法」で定められており、この地域と周囲300mではドローンを飛ばすことができません。
詳しくはここから確認できます。
道路交通法
さらに、道路交通法により規制される公道や、市町村が管理している史跡や公園なども許可が必要な場合があるので要注意。
東京都(自治体ごとに制定)
東京都では、都立公園と庭園系81か所にて、園内におけるドローンの使用を全面禁止としています。このように、各自治体によって条例が制定されている場合は、それに従わなければなりません。
禁止空域については、面倒なようでも事前に確認し、飛行場所によっては許可申請を行いましょう。
航空法が定める禁止空域を飛ばす場合の申請についての詳細はこちらから確認することができます。
小型無人機等飛行禁止法に関わる申請はこちら。
危険性に備えてドローン保険は入るべき
ドローンは、機体が高価であることに加え、事故や故障で多額の費用が発生する可能性があるため、もしもの事態に備えてドローン保険に加入することをおすすめします。
機体の破損だけでなく、人や物に被害を与えてしまった場合の賠償金のことも考えると、保険加入は必須と言っても過言ではありません。
ドローン保険には、賠償責任保険と機体保険の2つの補償内容があり、使用目的によって個人向けか法人向けかを選ぶことになります(趣味で飛ばす場合は個人向け、事業目的で使用する場合は法人向け)。
ちなみにドローン最大手のDJI社では、対象製品の購入特典として第三者への賠償責任保険が1年間無償で付帯されます(要登録)。2年目以降は改めてDJI賠償責任保険・機体保険に加入するか、他の保険会社のドローン保険(法人向けでは東京海上日動の「ドローン保険」など)に加入しましょう。
また、ドローン保険以外にも、事業用に便利なビジネス保険に加入するというのも一つの手。ドローンも含め、商用利用する機材に対しての補償があるものもあります。
過去に起こったドローンの事故
では、実際にはどようなドローン事故が起きているのか知りたいという方のために、過去に起きた事案をいくつかご紹介します。
なお、ドローンに関わる過去の事故は、国土交通省のDrone/UAS Information Platform System(DIPS)から見ることができます。
①肥料散布のため無人航空機を飛行させていたところ、家屋に衝突・損傷させ墜落した。
【原因】
- 飛行範囲の周囲については35m以上の立入禁止区域を設け、人などが立ち入る可能性がある進入経路にはそれぞれ補助員を配置して安全確認を行った後に飛行を実施する運用を行っていたが、依頼主当事者の空き家については30m以上の距離を取ることができておらず、第三者の物件でないことから操縦者の意識も希薄となってしまっていた。
- 無線交信によるナビゲーターの指示が不通になった時に停止せず、操縦者の自己判断で前進を進めた。
- 進行方向の延長線上に障害物(家屋)がある場合の飛行高度が不十分であった。
【是正措置】
- 関係者物件であっても飛行ルート上にある障害物に対しては飛行方向を変える対応を行う。
- 無線交信の接続状況を常に確認し、不通となった場合には停止(ホバリング)することを徹底する。
- 進行方向の延長線上に障害物がある場合は、その距離に関わらず、十分な高度を取って飛行することを徹底する。具体的には、前進で飛行させる際には、パイロットから見た機体の延長上には、その距離には関わらず障害物がない状態まで高度を上げて飛行することを徹底する。
②空撮のため無人航空機を飛行させていたところ、電線に接触し切断させた。
【原因】
- 離陸地点の風速は飛行マニュアルの範囲内だったが、上空の方がかなり風が強く、機体が流されてしまった。帰還する際に向かい風になるため、バッテリーの消費が大きかった。
- 着陸場所付近ではバッテリー残量が10%を切っていたため、強制着陸モードが発動。安全に着陸させるため、手動着陸に切り替えたが、操作ミスにより電話の引き込み線に接触してしまった。
【是正措置】
- 強風時の対応策をしっかりと考え、これまで以上に厳しい訓練を重ねて、不測の事態にも落ち着いて対処できるようにする。
- バッテリー残量に常に最大限の注意を払い、安全に帰還できる飛行距離を十分な余裕を持って設定する。
- 万が一、バッテリー残量が少なく、危険な状況になってしまった時に、人や第三者の物件を傷つけずに着陸できる場所の候補をあらかじめ決めておき、補助者とも共有しておく。
③空撮のため無人航空機を飛行させていたところ、機体からの通信が途絶え、機体を紛失した。
【原因】
- 通信途絶した付近は、樹木(杉)の密集地であったので、電波障害が起こったことが考えられる。
- 帰還機能が作動しなかった理由は、設定の際、帰還機能が「OFF」になっていたことが考えられる。
【是正措置】
- 撮影開始前に、帰還機能が「ON」になっていることを、毎回確認する。
- 飛行範囲の設定の際、電波障害になるような障害物の確認をする。
④空撮のため無人航空機を飛行させていたところ、着陸時に突風にあおられバランスを失い、建物に接触し草むらに墜落した。
【原因】
- 十分な距離のない建物の間で飛行させた場合の挙動を認識していなかったため、機体がバランスを失い、結果として建物に接触させる事故を起こした。
【是正措置】
- 無人航空機の飛行を計画する者に対する継続的な教育の実施。
- 飛行計画を承認する者に対する講習の実施。
- 飛行計画時におけチェック項目及びチェック方法の見直し。
- ヒヤリ・ハット事例として今回の経緯及び教訓を記録・共有。
⑤学校空撮のために飛行していたが、突如プロポ接続がエラーとなり、隣接するマンションの壁に衝突し、マンション9階のベランダに墜落した。
【原因】
- モニター画面が消え操作不能と思い込み不適切な操作をした。
- 無人航空機が飛行経路を外れた際の連絡体制が、安全管理者と整えられていなかった。
【是正措置】
- 確実な安全担保が取れる場合を除き、完全に有視界飛行が行える場所で操作する。
- 無人航空機を帰還させる訓練飛行を定期的に行う。
- さらなる安全確保措置をとる。
もちろん予測不能な事態に陥っての事故もありますが、操縦者の確認ミスや操縦ミスも多いことがわかります。
ドローンの危険性について理解し、正しい知識を持って判断することが、事故を防ぐ一番の方法です。
もし事故を起こしてしまったら
こちらでは、もしドローンが墜落するなどの事故を起こしてしまった場合、とるべき行動についてご紹介します。
万が一に備えておけば、いざという時に慌てず冷静に行動することができます。
- 負傷者の救護
- バッテリーの取り外し
- 関係各所への連絡
- 事故届と国土交通省への連絡
負傷者の救護
ドローンが墜落や衝突したことによって第三者が負傷してしまった場合、まずすべきなのは救護活動。
負傷の度合いによっては速やかに救急車を呼び、到着するまでの間しかるべき処置を行います。
バッテリーの取り外し
ドローンが何かに衝突したり墜落したりした場合、バッテリーが損傷することによって発火する危険があります。墜落直後は問題なくても時間を置いて発火する可能性もあるので、バッテリーはすぐに取り外し、安全な場所へ移動させましょう。
関係各所への連絡
ここまでの対応が終わったら(もしくは、現場に複数人いる場合並行して)、関係各所への連絡を行います。
- 敷地の管理者
- 警察署
- クライアントがいる場合は担当者
- 保険会社
事故届と国土交通省への連絡
ドローンを紛失してしまった場合は、警察署で遺失物届を提出します。また、必要に応じて国土交通省航空局安全運行安全課、または許可を取得した航空局に連絡を行います(※受付時間外の場合は、管轄する空港事務所まで連絡)。
詳しい連絡先はこちらから確認することができます。
まとめ
ドローンのさまざまな危険性について紹介してきましたが、もう一度大まかな要点を確認しておきましょう。
1.物理的な接触による危険性
- 落下・墜落する要因を知ったうえできちんと対策をする
- 荒天時には飛ばさない(雨天時・風速5m以上の時は中止)
- 夜間・人の集まる場所では飛ばさない
2.電波や情報セキュリティの危険性
- 個人情報についてのガイドラインを確認する。
- 電波干渉のある場所の確認およびセキュリティ対策を講じる。
3.法律違反の危険性
- 事前に禁止区域について確認を行い、申請が必要な場合は申請を行う
4.ドローン保険は入るべき
- 事故や故障、第三者に被害を与えた場合の賠償金を考慮すれば保険加入は必須
政府は2021年3月、ドローンの操縦ライセンス制度の新設を含む航空法改正案の閣議決定しました。
ドローンを安全に運用するための制度が整備されることももちろん必要ですが、ユーザーが正しい知識を持って対策を行うことでリスクを減らすよう努めることもとても重要です。
本記事で得られた知識を元に、あなたの仕事においてもドローンが有効に活用されることを願っています。