【ドローンの太陽光パネル点検】メリットと方法・費用や報告書例も紹介!

ドローンの飛行を見守る作業員

太陽光パネル点検にドローンを導入しようと思っても、実際にどのように行われるのか、どんなメリットがあるのかわからないという方も多いのではないでしょうか。

また、ドローンによる太陽光パネル点検を依頼する際のメリットについても知りたいという声もよく聞かれます。

太陽光パネル点検にドローンを取り入れるメリット

  • 効率的で精度の高い点検ができる
  • 作業時間や人員を削減できる
  • 安全に作業できる
  • 撮影した画像から効率よく点検報告書を作成できる

などが挙げられます。

すでに多くの点検サービス提供業者が存在しており、太陽光パネル点検のドローン活用は普及フェーズに入っています。

そこで今回は、

  • ドローンによる太陽光パネル点検の流れ
  • ドローンによる太陽光パネル点検で発見された異常事例
  • ドローン太陽光パネル点検の報告書
  • ドローン太陽光パネル点検の費用目安
  • 太陽光パネル点検+αのサービス
  • ドローンによる太陽光パネル点検に必要な資格

などについてお伝えし、ドローンによる太陽光パネル点検の有効性について解説していきたいと思います。

この記事を読めば、ドローンによる太陽光パネル点検に関する幅広い知識が得られ、自信を持ってドローンを活用した太陽光パネル点検導入に踏み切ることができるでしょう。

 

ドローンの太陽光パネル点検について、現在自社でドローンを使った太陽光パネル点検業務に従事されている田中さん(仮名)をお迎えし、具体的なドローンの太陽光パネル点検の導入方法についてお伺いしました!こちらの記事で紹介していますので、併せてご覧頂くことをお勧めします。

プロに聞く!太陽光パネル点検へのドローン導入のキーポイントとは?

ドローンによる太陽光パネル点検とは

太陽光パネルの点検をするドローン

ドローンによる太陽光パネル点検とは、ドローンからの空撮(熱検知カメラ)を使った点検です。

実際の太陽光パネル点検の様子はこちら

ドローンによる太陽光パネル点検の流れは以下の通り。

  1. 太陽光パネルのオーナーや管理者から太陽光パネルの位置などの情報をもらう
  2. 気象状況を踏まえた周辺情報の現地調査
  3. ドローン機体の確認後、検査を実施
  4. 撮影データから報告書を作成、提出

太陽光パネルのオーナーや管理者から太陽光パネルの位置などの情報をもらう

太陽光パネルの配置図や正確な位置情報など、ドローン点検に必要な書類・情報を提出します。

気象状況を踏まえた周辺情報の現地調査

現場の安全確認や気象情報の確認・計測(風速・日射量・気温・湿度など)を行います。

ドローン機体の確認後、検査を実施

機体の状態の確認、気象情報の最終確認の後、検査を実施します。

撮影データから報告書を作成、提出

撮影データをもとに報告書を作成し、依頼者に提出します。

 

太陽光パネル点検にドローンを使うメリット

ドローンの点検を行う作業員

ドローンによる太陽光パネル点検には、以下の4つのメリットがあります。

  • 効率的で精度の高い点検ができる
  • 作業時間や人員を削減できる
  • 安全に作業できる
  • 撮影した画像から効率よく点検報告書を作成できる

効率的で精度の高い点検ができる

太陽光パネル点検にドローンを使うことで、従来の方法に比べて効率的かつ精度の高い点検が可能になります。

ドローンによる太陽光パネル点検は、赤外線カメラを搭載したドローンでパネルを撮影することで、肉眼では見ることの難しいホットスポットと呼ばれる異常箇所や、低温部の機能が停止している部分がないかどうかを正確に点検することが可能です。

作業時間や人員を削減できる

ドローンによる太陽光パネル点検は、従来の方法に比べて人員を削減できるというメリットがあります。

従来の方法ではすべての太陽光パネルを1枚1枚点検していましたが、ドローンを使って上空から撮影することで作業時間と人員を大幅に削減することが可能に。

国内に多い出力約2MWの高圧連系の発電所の場合、多くのサービス企業では空撮時間として15~20分間と公表しています。

これに対し、従来の地上を歩き回る方法の場合、1~2日間を要します。

安全に作業できる

ドローン点検なら、屋根の上など高所に設置された太陽光パネル点検でも、危険にさらされることなく点検することができます。

高所に設置されたパネルの場合、従来の方法では登って1枚1枚確認する必要がありどうしても落下などの危険が伴いましたが、ドローンは地上から操作するだけで点検できるので安全。

撮影した画像から効率よく点検報告書を作成できる

ドローンによる太陽光パネル点検には、撮影した画像から効率よく点検報告書を作成できるという大きなメリットがあります。

従来の方法では、不具合が確認されたパネルをマップ上に書き込み、それから点検報告書を作成するという作業をしなければならずどうしても時間がかかっていました。

対してドローンによる点検なら、撮影データからスピーディーに点検報告書を作成することが可能。

さらに、ドローンで撮影した連続写真データをアップロードするだけで、報告書作成まで効率的に一気通貫で行えるクラウドサービスも存在します。

このようなサービスを利用すれば、これまで点検・確認・報告書作成まで数日要していた作業がわずか数時間で完了し、従来比で90%の作業時間の削減が可能。

 

ドローンによる太陽光パネル点検で発見された異常事例

ドローンによる太陽光パネル点検

ドローンによる太陽光パネル点検ではどのように異常を発見することができるのか、具体例で見ていきましょう。

ドローン撮影による赤外線カメラの画像

(赤い部分がホットスポットと呼ばれる異常個所)

右側の画像が、ドローン撮影による赤外線カメラの画像です。

このように異常箇所があればその部分の温度が変わるので一目瞭然。見落とすことなく発見することができるのです。

また、目視点検では太陽光パネルを表面側から見るだけで、コネクター1つ1つの状態まで確認することはほとんどありません。

ですが、ドローンによる赤外線カメラの画像では、コネクターが接続されていなかったり、コネクターの異常によって送電されていない状態を容易に発見できるというのも大きな特徴です。

 

ドローンによる太陽光パネル点検の報告書

太陽光パネル

報告書の観点から言うと、ドローンによる太陽光パネル点検なら誰にでもわかりやすい報告書を効率的に作成できるので、サービス業者にとってもサービス利用者にとってもメリットが大きいと言えます。

ドローンによる太陽光パネル点検なら撮影した画像から効率よく点検報告書を作成できるということは前章でも説明しましたが、実際にはどのような報告書を作成することが可能なのか、具体例をあげてご紹介します。

報告書の例(出典:エナジー・ソリューションズ株式会社

こちらはドローンによる太陽光パネル点検の報告書の例。

ぱっと見てどの部分に不具合があるのが視覚的に理解できるので、知識のない人にもわかりやすいと言えます。

 

ドローンによる太陽光パネル点検の費用

電卓で計算するビジネスマン

こちらでは、ドローンによる太陽光パネル点検の費用についてご紹介します。

太陽光パネルのメンテナンス費用の目安

太陽光パネル点検を含めた一般的なメンテナンス費用目安は、以下の通り。

  • 住宅用太陽光パネルのメンテナンス費用目安は4年に一度5万円~10万円ほど
  • 産業用(50kW未満)太陽光パネルのメンテナンスの費用相場は年間10万円〜30万円
  • 産業用(50kW以上)太陽光パネルのメンテナンスの費用相場は年間100万円~200万円/MW

このうち、住宅用太陽光発電の場合は初期費用にメンテナンス費用が含まれていることが多く、1年目、4年目、9年目の3回の定期点検が一般的です。

よって、個人で太陽光パネル点検を依頼するというケースは少ないものと思われます。

メンテナンスは義務?

太陽光パネルでメンテナンスが義務化されているのは以下の2つのケースです。

“メガソーラー”と呼ばれる大規模な太陽光発電所は、「再生可能エネルギー特別措置法の一部を改正する法律(改正 FIT 法)」により、50kW以上で1年に2回以上、2MW以上で常時行うとされる点検が発電事業者に義務付けられています。

以下の条件を満たしている場合は、メンテナンスをしなければならないというルールはありません。

  • 50kW未満の太陽光で全量自家消費の場合
  • 50kW未満の太陽光で固定価格買取制度を適用し売電をしていない場合

50kW未満

産業用で50kW未満の太陽光パネルの場合、設置容量によって価格が大きく異なります。

ただ、ひとつ言えることは、点検費用だけを考えるのではなく年間のメンテナンス費用で見るとどのくらいになるのかを考えるのが現実的であるということ。

メンテナンス費用の目安で言うと、低圧(50kW未満)の太陽光発電所であれば年間10万円~30万円くらいが相場になるでしょう。

例えば、エナジー・ソリューションズが提供するメンテナンスパック「om’s(オムズ)」は、

  • 定期目視点検(年1回)
  • 駆けつけサービス(一次対応)
  • モニタリングサービス
  • 保険加入
  • 故障時の工賃無料サービス
  • 売電補償・EM補償

といったサービス内容で月額9,680円~というリーズナブルな価格で提供されています。

このようなサービスを利用すれば、点検後の対応までスムーズに行うことができるので便利。

50kW以上

50kW以上の大規模な太陽光発電設備では、メンテナンスが義務づけられている上、費用も高額です。

ドローン点検費用については、例えば「2MWまで20万円、それ以上は1MW追加ごとに50000円」というような設定の業者もあれば、年間のメンテナンスがパックになったサービスなどさまざま。

ただ、このようなメガソーラーにおいても、架台の破損や腐食、草刈りといったパネル以外のメンテナンス費用もすべて含めた金額で考えることが必要です。

実際、定期的な点検の他にも異常時の駆け付けや除草、パネル洗浄、製造時に起因すると予想される不具合を発見した場合のパネルメーカーとのパネル交換交渉など、ワンストップのO&M(運用・保守)サービスを受けたいという発電事業者が多く、総合的なメンテナンスサービスへの需要は高まっています。

 

ドローンによる太陽光パネル点検の課題

太陽光パネルの点検に向かうドローン

ドローンによる太陽光パネル点検の課題は以下の2つが挙げられます。

  • 点検時の日射強度や気温などに左右される
  • どのように点検サービスのコストを抑え、どう差別化を図るか

点検時の日射強度や気温などに左右される

太陽光パネルのドローン点検は、どうしても点検時の日射強度や気温、発電の状況によって左右されます。

パネルの異常加熱を赤外線カメラで捉えるため、発電効率の高い晴天時に点検作業を行わなければなりません。

そのため、点検を依頼する側も点検を行う側も、余裕を持ったスケジュールを立てることが必要になります。

どのように点検サービスのコストを抑え、どう差別化を図るか

点検サービス事業者側からの課題に関して言えば、太陽光パネルのドローン点検は普及期に入っておりドローン点検サービス事業に参入する事業者も多いことから、コストをどう抑えるかどう差別化を図るかが課題であると言えるでしょう。

業務フローの効率化でコストダウンを狙う

コストに関しては、

  • 異常箇所の自動検出
  • レポート作成の自動化

など、業務フローの効率化によってコストダウンに繋げることが期待されています。

ドローン撮影によって点検時間を削減できても、異常個所の検出を人が行っていては大幅なコストダウンは見込めません。

+αで差別化を図る

太陽光パネル点検のドローン活用が普及フェーズに入っている現在は、単にドローンを使って太陽光パネル点検をするというだけでは事業として成立しない時代に入ってきていると言えるかもしれません。

点検を依頼する発電事業者のニーズを考えると、

  • 外周の柵の点検、害獣の侵入点検、雑草対策などのオプションを設定する
  • AIを活用した報告書作成
  • 定期点検とその他のメンテナンスをパッケージしたサービス
  • 専門技術者を配置する
  • 緊急度の高いトラブルを発見することに限定した「簡易的な診断」で低コストを売りにする
  • 月次レポートの作成や予測型監視などトータル的な保守サービスを提供する

など、ドローンによる点検+αのメンテナンス新しいサービスの形を提案することで、他との差別化を図ることが必要になるでしょう。

 

ドローン太陽光パネル点検に必要な資格

太陽光パネルの上を飛行するドローン

ドローンによる太陽光パネル点検には、取得しなければならない資格はありません。

ですが、高い操縦技術に加えて太陽光発電に関する知識は必要不可欠なので、それに合わせた資格を取得することを推奨します。

ドローンに関する資格

ドローンを太陽光パネル点検業務に導入する場合、高い操縦技術はもちろん、太陽光パネル点検に特化した知識や技術も必要となります。

最近は太陽光パネル点検業務に特化した資格講習もあるので、目的に合わせてスクールに通うのも技術を磨く一つの方法です。

点検から報告書作成まで、一連を学べる講座。「太陽光パネル点検ドローンオペレーター」という資格を取得することができます。

太陽光パネル点検に関する資格

太陽光のメンテナンスには民間が認定している資格がいくつかあり、メンテナンスを依頼する際の目安にされる場合があるので、以下のような資格を取得するとサービス事業を展開するうえで大きな強みになります。

一般社団法人太陽光発電安全保安協会(JPMA)が付与している資格で、資格認定講座や技能講習会を受講し、確認テストに合格すると資格を取得できます。

PV施工技術者は太陽光発電施工者とも呼ばれ、太陽光発電設置業者や量販店等、太陽光発電パネルの販売や設置を請け負っている会社で求められている人材です。

こちらはメンテナンスの資格ではありませんが、太陽光発電システム全体に精通した高い知識が必要となるので、点検を併せたメンテナンスサービス事業を行う上で大きな強みとなります。

ドローンの太陽光パネル点検について、現在自社でドローンを使った太陽光パネル点検業務に従事されている田中さん(仮名)をお迎えし、具体的なドローンの太陽光パネル点検の導入方法についてお伺いしました!こちらの記事で紹介していますので、併せてご覧頂くことをお勧めします。

プロに聞く!太陽光パネル点検へのドローン導入のキーポイントとは?

まとめ

ドローンによる太陽光点検業務

ドローンによる点検業務について紹介してきましたが、もう一度大まかな要点を確認しておきましょう。

  1. ドローンによる太陽光パネル点検のメリットは以下の4つ
  • 効率的で精度の高い点検ができる
  • 作業時間や人員を削減できる
  • 安全に作業できる
  • 撮影した画像から効率よく点検報告書を作成できる

2. 太陽光パネル点検を含めた一般的なメンテナンス費用目安は、以下の通り。

  • 住宅用太陽光パネルのメンテナンス費用目安は4年に一度5万円~10万円ほど(住宅用太陽光発電の場合は初期費用にメンテナンス費用が含まれていることが多い)
  • 産業用(50kW未満)太陽光パネルのメンテナンスの費用相場は年間10万円〜30万円
  • 産業用(50kW以上)太陽光パネルのメンテナンスの費用相場は年間100万円~200万円/MW

    3. 太陽光パネルでメンテナンスが義務化されているのは以下の2つのケース。

    • 固定価格買取制度を適用している太陽光
    • 50kW以上搭載の太陽光

    メンテナンスは、点検費用だけでなくメンテナンス費用全体で考えることが重要。ワンストップのO&Mサービスの需要は大きい。

    4. ドローンによる太陽光パネル点検の課題は以下の2つ。

    • 点検時の日射強度や気温などに左右される
    • どのように点検サービスのコストを抑え、どう差別化を図るか

    点検サービス事業者は、

    • 業務フローの効率化でコストダウンを狙う
    • +αで差別化を図る

    などの工夫が必要。

    5 ドローンによる太陽光パネル点検には、取得しなければならない資格はないが、高い操縦技術に加えて太陽光発電に関する知識は必要不可欠なので、それに合わせた資格を取得することが推奨される。

    2022年度のフィード・イン・プレミアム(FIP)開始を控え、2021年度は太陽光業界にとって、1MW以上の大規模案件では固定価格買取制度(FIT)を利用できる最後の年となります。

    太陽光発電業者にとってはこれまで以上に高度なノウハウが必要となり、それに伴い、点検サービスを始めとしたメンテナンス事業者にもニーズに合った内容が求められることになるはずです。

    これから事業参入を考えるなら、業務フローの効率化によってコスト削減を実現すると共に、ドローン点検だけではない、発電事業者がメンテナンス全体をスムーズに行うことができるようなサービス提供を目指すことが必要。

    さらに脱FITの動きにも注目し、市場の動きに目を光らせておくことが大切です。

    本記事で得られた知識を元に、あなたの太陽光パネル点検ビジネスにドローンが有効活用されることを願っています。