ドローン測量標定点の必要性とは?設置手順や課題解決策を詳しく解説

オンラインインタビュー

多くの測量現場で導入の進んでいるドローンですが、測量ドローンを行う上で、必要不可欠な物の一つに標定点があります。

ドローン測量に触れたことのある方なら、聞いたことがある言葉だと思います。

「言葉自体は知っているけれど、実際標定点とはどういうものなんだろう?」
「標定点の役割は?」

といった疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。

今回は、そんな疑問を解消するべく、ドローンメーカーに勤務されていた経歴をお持ちで、ドローン測量にも精通し、新技術関連ビジネスの支援などにも携わられている方に、「標定点」について詳しくお話をお伺いしました。

オンラインインタビュー

この記事を読めば

■標定点とはどのようなものなの?

■標定点の役割って何?

  • ドローン測量になぜ必要なのか

■実際の現場でどうやって標定点を活用するのか?

  • 設置手順とそのポイント

■標定点の課題はあるの?その解決方法は?

  • 標定点の課題
  • 課題を解決する方法やツール紹介

といった、ドローン測量における標定点について、詳しくわかるかと思います。

ドローン測量における標定点について

ドローン測量のイラスト

標定点とは?

標定点とは、簡単にいうと「正確な座標(水平位置と標高)が分かっている地上の位置」のことです。

この標定点をドローン撮影時に写真に写り込ませ、データ解析をする際の基準点とします。

なぜ標定点が必要?

標定点を設置する理由は、十分な測量精度を確保するためです。

ドローン測量で3Dデータを取得する為に、GPSからの位置情報などを利用していますが、それらの情報だけでは数メートルの測位誤差が生じてしまい、公共測量が求める精度(最大誤差5cm以下)を満たすことができません。

この数メートルの測位誤差を5cm以下に補正する為に、標定点設置が必要になります。

最大誤差5cm以下

UAV を用いた公共測量マニュアル(案)」で定められている、公共測量が求める精度。

「3次元点群の平面位置及び高さの要求精度を、誤差が最大でも0.05m(5cm)の値を超えないもの」と記載があり、一つの基準となっている。この精度に準ずる事業者も多い。

標定点を設置すると、なぜ精度を高めることができる?

データの基準点となる標定点の座標は、高精度な機器※を用いて正確に計測できるからです。

※GNSSローバーやトータルステーションなど。後述にて詳しく解説します。

補正が必要なGPSの位置情報は、地表から100km以上の高度にある人工衛星からのデータなので、衛星軌道情報の誤差や大気の状況など、様々な要因がメートル単位の誤差を生んでしまいます。

その点、先で述べた高精度機器・GNSSローバーを例にあげると、

  • 地上に置いて使える機器なので、測位誤差を生む外的要因を受けにくい。
  • GPS(アメリカ運用の衛星)の他、ロシアや欧州が運用する複数の衛星情報も受信できる。

といったメリットがあるので、精度の高い位置情報を得ることが出来ます。

また、ドローン測量には標定点の他に、検証点(※)というポイントの設置も必要になります。

※検証点とは 

検証点とは 3次元データに付与した座標が正確かどうかを確認するために用いる点。

確認した誤差が5cm以内であれば、公共測量の求める精度を満たしているということになる。

座標が明確な標定点・検証点との位置関係等をもとに、測量範囲の画像内の座標を高精度で取得できます。

標定点と検証点を適切な数設置することにより、精度の確保が可能となります。

標定点について

ドローン測量の標定点の設置について

ドローンで測量をする作業員たちのイラスト

続いて、実際の測量現場での、標定点と検証点の設置手順、設置の際のポイントについて解説します。

標定点・検証点設置手順

測量範囲に標定点、検証点を設置する手順は以下の通りです。

  1. 標定点・検証点を設置する場所を決める
  2. 標定点・検証点の位置に対空標識を置く
  3. 標定点・検証点の位置を計測する

1項目ずつ説明します。

◆標定点・検証点設置手順

①標定点・検証点を設置する場所を決める

測量範囲の、標定点・検証点の設置場所を決めます。

設置場所は、UAV を用いた公共測量マニュアル 概要版の、「標定点は、三次元点群データの精度の低下を避けるため、計測対象範囲の形状、比高が大きく変化するような箇所、地表面の粒度を考慮して配置するものと規定」を参考にします。

標定点の配置

標定点の設置間隔や、検証点の数によって、得られる測量データの精度に違いが出ます。

要求制度別標定点間隔と検証点数

参考:UAVを用いた公共測量マニュアル(案)

このように、標定点には求められる測量精度を満たす為に配置の目安が定められています。

自身の求める精度を考慮して、適切な数を適切な配置で設置しましょう。

②標定点・検証点の位置に対空標識を置く

標定点と検証点の目印である対空標識(※)をおきます。

風や通行車両などでズレてしまわないように、杭打ちなどをして、しっかりと固定しておきましょう。

対空標識とは?

ドローン測量をする上で重要となる、標定点の位置をわかりやすく示すための目印です。

対空標識はサイズや色など規定があり、ネットからでも購入できます。

商品例)ドローン関連標識(公共測量用)

対空標識の模様

対空標識の辺長又は円形の直径は、撮影する空中写真に 15 画素以上で写る大きさを標準とする。

対空標識の色は白黒を標準とし、状況により黄色や黒色とする。

参考:UAV を用いた公共測量マニュアル(案)

③標定点・検証点の位置を計測する

標定点と検証点の座標を測定します。

座標を測定する方法

トータルステーションを使用したり、水平位置と標高を同時に得られるGNSS測量で行います。

VRS-GNSSとトータルステーション

GNSS操作・手順例】

  1. GNSSアンテナの電源ON
  2. プロジェクトを作成
  3. 測量開始 

のたった3ステップ。

こちらの動画でも操作方法を紹介しています。

このような手順で設置作業を行います。

標定点設置のポイントをまとめました。

■標定点を設置する際のポイント

・標定点は測量範囲に均等に配置する

外部配置の間隔は、レベル測量の最大視準距離(100m)を超えない範囲(30〜80m程度)で、できるだけ等間隔に設置することが望ましいです。

高低差の異なるポイントに設置する

高低差が激しい現場では、なるべく高い場所と低い場所両方の地点に標定点を配置しましょう。

障害物で隠れない場所に配置する

標定点を取った周囲に木やビルが存在していると、それらが影になって対空標識が写真に映らない場合があるのでできるだけ開けた場所に設置することが望ましいです。

また、真上からだけでなく、斜めからの視点で見ても障害物に被っていないかを考慮して配置しましょう。

レーザー測量は浮かせて設置する

写真測量よりも設置数は減らせますが、レーザー測量時にも標定点設置は必要です。

ただレーザーの場合、写真と異なりデータに色がないので高低差しか認識できません。

なので、上空から対空標識をしっかりと確認させる為、地面から浮かせるように設置することが望ましいです。

標定点の使用例

画像出典:現場屋本舗

画像のような対空標識専用の杭などもありますが、簡易的な台や脚立、テーブルなどを利用することもできます。

・座標の事前計測で当日の作業を効率的に

標定点の座標計測は、ドローン測量と同日に行う必要はありません。

事前に済ませておけば、測量当日の作業時間を短くすることができ、効率的です。

ドローン測量の標定点の課題とその解決策

課題と解決策のイラスト

標定点の課題とは

ドローン測量において、標定点の重要性をおわかりいただけたかと思います。

そんな標定点ですが、課題もいくつかあげられます。

標定点の課題

【標定点の課題について】

設置作業に時間を取られる

標定点の大きな課題の一つは、その設置に多くの作業時間が取られてしまうということです。

座標の計測、対空標識の設置・回収に費やす時間は、実に測量作業時間の3〜4割を占めるといわれています。

公共測量が求める精度を満たす為には、隣接する標定点は100m以内に設置することが標準とされています。

これに準じた場合、単純計算で

  • 4haの現場…必要な標定点設置数=14点
  • 40haの現場…必要な標定点設置数=140点

ということになります。

そして、設置した標定点は測量後、回収して回らなければなりません。

さらに高低差のある現場はより多くの数を設置する必要があったりと、多くの作業時間がかかっているのが現状です。

案件ごとに作業コストがかかる

案件=測量する場所が変われば、標定点の座標を計測、設置、回収という作業を一から行わなければならないので、その都度、経済的コスト(人件費など)・時間的コスト・肉体的コスト(労力や手間)がかかってしまいます。

設置が難しい場所がある

足場が不安定であったり、立ち入りが困難、安全確保に懸念があるなど、標定点の設置が難しい現場の場合、設置作業に多くの労力がかかってしまいます。

標定点の課題解決方法

続いて、先で述べた標定点の課題を解決する方法をご説明します。

RTK、PPKによる標定点数の削減

多くの作業時間がかかる標定点の設置ですが、その数を減らす、または省くことが出来る測量システムも登場しています。

標定点の削減が可能になれば、大幅な作業時間・作業コストのカットが期待できますよね。

それを実現させてくれるのが、RTKとPPKと呼ばれるシステムです。

【RTK、PPKについて】

RTKとは

RTK搭載ドローンを使用した測量では、標定点設置数の削減が可能となります。

RTK-GNSS 搭載型 UAV を用いた空中写真測量における標定点数削減に関する検討 によると、RTK搭載ドローンを用いた測量において、従来5点設置するべき標定点

  • 設置標定点なし(0点)→公共測量の求める精度(誤差が最大でも0.05m(5cm))の確保は難しい
  • 設置標定点1点→公共測量の求める精度を満たすことができる

という検証結果が得られました。(※精度確認の為の検証点は、設置の必要がある)

つまり、RTK搭載ドローンを用いた測量では、5点設置が必要だった案件が、1点の標定点設置で精度を確保できるということになるので、大幅な作業時間カットが期待できます。

DJIのドローンの中では、下記のものが測量に適したRTK搭載ドローンとして発売されています。

※記事作成当時の情報です。

続いて、PPKについてもご説明します。

PPKとは

PPKサービスを利用すると、標定点設置は任意、または不要と出来るケースがあります。

その理由は、PPK測位技術が「標定点の設置を省略できる方法」に追加されたからです。

令和2年3月に国土交通省が発表した『空中写真測量を用いた出来形管理要領(土工編(案)』の改定に伴い、PPKが「カメラ位置を直接計測できる手法」の一つとして認められ、標定点の設置を任意(設置不要)とすることができるようになりました。

標定点ゼロでも、公共測量が求める精度を満たすことが出来るということですね。

この技術を用いれば、標定点設置が難しい場所がある、という問題も解決することが出来ます。

Phantom 4 RTK に完全対応したPPKソフトウェア「PPKGo」の販売価格は約40万円です。

対空標識と専用ソフトで作業時間短縮

続いての標定点の課題解決方法は、設置作業の時間短縮を可能にする対空標識です。

時間のかかる設置作業ですが、その作業内容には、

  • 求める精度を満たせる数の対空標識を、出来るだけ等間隔で実際の現場に設置する
  • 対空標識を置いた地点の標定点の座標を計測する

【ドローン撮影】

  • 対空標識の回収

といった工程があります。

更にその後、データ処理作業を行うのですが、ドローン測量で得られる高精度で膨大な量のデータを処理するには数時間〜測量範囲によっては半日かかるケースもあり、現場での作業後も多くの時間を必要とします。

そういった課題解決に役立つツールも登場しています。

GNSS測位機能付き対空標識「AEROBOマーカーです。

AEROBOマーカー/エアロセンス(株)

AEROBOマーカーとは?

標定点をわかりやすくするための目印という役割の対空標識に、GNSS測位(位置情報を取得し記録してくれる)機能が搭載されたツールです。

ドローン撮影を行いながら、複数の標定点座標を同時に計測できます。

直径24cm、厚さ3cm。重さは474gで、リンゴ1個分程と軽量です。

AEROBOマーカーでできること

GNSS測位機能搭載

AEROBOマーカー自体にGNSS測位機能が搭載されているため、標定点座標の事前計測が不要。

ドローン撮影をしながら多点同時計測できます。

高精度測量が可能

測位精度1〜2cm程度とかなり高精度。公共測量が求める精度(最大誤差5cm)を十分満たしています。

データ処理作業の自動化

クラウド上で利用できるAEROBOクラウドを使うことで、

  • ドローン撮影データの対空標識を自動認識
  • 観測ログのマルチセッション分割  
  • 多角網の生成  
  • 基線解析  
  • 点検計算  
  • 3次元網平均計算(仮定網・厳密網)  
  • 帳票出力(作業規定準則にそった手簿、記簿、成果簿、網図、精度管理表など)

などのデータ処理を自動化出来ます。

参考資料:エアロボマーカー/エアロボクラウド基準点測量機能テクニカルレポート

作業時間の削減効果はどれくらい?

AEROBOマーカーを使うことによって、削減・短縮できる作業工程は以下の通りです。

対空標識を置いた地点の標定点の座標を計測する→省略できる。

GNSS測位機能搭載のため、撮影しながら計測できるため。

ドローン撮影データの後処理作業作業時間の短縮。

多くのデータ処理工程を自動化。

例えば、従来は空撮画像から点群モデルを作成し、各標定点・検証点に座標をひとつずつ入力する、という作業の必要がありましたが、これを自動で行ってくれます。

従来のトータルステーションを使った手法との作業時間比較例です。

トータルステーション/既存基準点測量ソフト

エアロボマーカー/エアロボクラウド

現場作業時間
(求める精度:公共測量に準ずる)

標定点25点設置
2人作業でおよそ1日

設置・計測
4時間

後処理作業時間

一般的な測量ソフト使用
3時間

1.5時間
計算時間 2時間 30分
合計 14時間 6時間

従来のトータルステーションを使った手法との作業時間比較

参考資料:エアロボマーカー/エアロボクラウド基準点測量機能テクニカルレポート

このように、作業時間が従来の半分以下に短縮可能となると、ドローン測量業務の大きな効率アップが見込めそうですね。

標定点、または対空標識については、今後も課題解決のための技術進化やツールの登場が期待できます。

まとめ

最後に、この記事のポイントをまとめました。

◆ドローン測量における標定点とは

  • 標定点とは?

標定点とは、「正確な座標(水平位置と標高)がわかっている地上の位置」

ドローン測量では、この標定点を基準点として、測量地点のデータを抽出し精度を高めます。

  • なんのために置く?

ドローン測量で得られるデータ(3次元点群データ)の精度を高めるためです。

3次元点群データを取得するためには、GPSの位置情報が必要です。ですがGPSだけだと数メートル以上の測位誤差が生じてしまいます。

→最大誤差5cmを超えないという、公共測量が求める精度を満たせません。

標定点と検証点を適切な数設置することにより、規定を満たす精度の確保できます。

◆標定点・検証点設置手順

①標定点・検証点を設置する場所を決める

標定点の設置間隔や、検証点の数によって、得られる測量データの精度に違いが出ます。

自身の求める精度を考慮して、適切な数を適切な配置で設置しましょう。

②標定点・検証点の位置に対空標識を置く

標定点と検証点の目印である対空標識をおきます。

風や通行車両などでズレてしまわないように、杭打ちなどをして、しっかりと固定しておきましょう。

③標定点・検証点の座標を測定

測量範囲の標定点と検証点の座標を測定します。

  • 座標を測定する方法

 トータルステーションを使用したり、水平位置と標高を同時に得られるGNSS測量で行います。

◆対空標識とは

ドローン測量をする上で重要となる、標定点の位置をわかりやすく示すための目印です。

対空標識はサイズや色など規定があり、ネットからでも購入できます。    

◆標定点の設置方法とポイント

  • 標定点は測量範囲に均等に配置する
  • 高低差の異なるポイントに設置する
  • 障害物で隠れない場所に配置する
  • レーザー測量は浮かせて設置する
  • 座標計測は事前に済ませて効率アップ

◆ドローン測量の標定点の課題とその解決方法

【標定点の課題】

  • 設置に時間を取られる
  • 案件ごとに作業コストがかかる
  • 設置が難しい場所がある

【課題の解決方法】

RTK、PPKによる標定点数の削減が可能です。

RTK搭載ドローンは測位精度を高めることが出来るので、設置する標定点の数を減らすことが出来ます。

高精度なPPK測位技術が「標定点の設置を省略できる方法」に追加された為、標定点設置は任意、または不要と出来るケースがあります。

いかがでしたでしょうか。ドローン測量の標定点について、詳しく理解していただけたかと思います。

今後ドローン測量を行う際、是非参考にしてみてください。