近年、様々な事業分野でドローンが活躍しています。
その中でも注目されているのが「ドローン測量」です。
国も測量現場において、積極的なドローン活用を進めており、i-Construction(※)の中で具体的な要件も提示しています。
※i-Constructionとは
生産性向上のために、建設業界にICT(情報通信技術)を導入するという国土交通省が掲げた取り組みのひとつ。
国土地理院は、i-Construction の3本の柱の一つである施工の情報化において、UAV(Unmanned Aerial Vehicle=ドローン)を測量に活用することで生産性の向上に寄与するため、工事測量にも活用可能な「UAV を用いた公共測量マニュアル(案)」を整備した。
こうした、国をあげた新技術(ドローン)導入推進の動きの中、
「ドローン測量は実際どのように行うのか」
「ドローン測量のメリットは?」
「測量にドローンを導入する方法が知りたい」
など、ドローン測量について知りたい、または導入を検討しているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、ドローンメーカーに勤務されていた経歴をお持ちで、ドローン測量にも精通し、新技術関連ビジネスの支援などにも携わられている方にインタビューさせていただきました。
この記事を読めば、
- ドローン測量の種類や目的
- ドローン測量のやり方
- ドローン測量のメリット
- ドローン測量の導入方法
などが分かりますよ。
また、ドローン測量の現状と今後についてもお話をお伺いすることができたので、ぜひ参考にしてみてください。
他にも、実際に自社でドローン測量を行っている事業主の方にもインタビューしています。
今回とは違う立場からのお話になっているので、そちらの記事も読めば、ドローン測量についての理解がより深まると思いますよ。
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ドローン測量を検討されている方へ:関連記事のご紹介
ドローン測量のメリットデメリット、おすすめ活用ケース、始めるまでの流れなど「ドローン測量の全体像」については、別のこちらの記事でも詳しく解説しています!
ドローン測量とは?メリットデメリットや始め方(料金・資格等)をインタビュー!
こちらの記事は、過去ドローンメーカーに勤務されドローン測量領域の案件実績も多く持つプロの方に、ドローン測量に関するインタビューを行った内容を記事にしたものです。
お読みいただければ、ドローン測量はどの様な案件に適しているのか、始める際はどの様な手順を踏めば良いのか(かかる料金や資格取得の必要性)、おすすめの測量用ドローンなど、ドローン測量に取り組む前に知っておくべき情報を知ることができます。是非併せてご覧ください!
目次
測量の目的と種類
建設・建築業界でよく聞かれる「測量」。
測量とはそもそもどういった物なのか、その目的や種類を解説します。
測量の目的
──それではまず、測量は何の為に行うのか、その目的を教えてください。
はい。そもそも測量とは、土地の距離・面積・地形・体積などを正確に測る手段です。
その手段を用いて、様々な目的のために土地の調査を行います。
国による地図調整や、マンション・工場などの建設のためにその土地の状況を調べます。
そして、実際に建物を建てるとなった際には、その土地を平らにしなければいけません。
平面にする為に、どれくらいの土を新たに持ってこなければいけないのか、また不要となる土はどれくらいかなども測量で調べます。
また、災害時など、被害が出た土地の状況確認・補修計画を立てるための調査などの為にも測量が行われます」
測量のやり方の種類
──それでは次に、測量にはどんなやり方があるか教えてください。
測量のやり方は大きく以下の通りに分けられます。
- 地上から人が歩き測量する
- 上空から飛行機を使って測量する
- 上空からドローンを使って測量する
従来は、地上を人が歩き測量する方法と飛行機を使った測量といった方法があり、近年はドローンを使った測量方法が手段の一つとして加わりました。
従来の測量とドローン測量
──測量の基本的な目的や、やり方が分かったところで、次はドローン測量についてお伺いします。まず、従来の測量とドローン測量について、それぞれの方法や課題について教えてください。
はい。まずは従来の測量です。
先でも述べた通り、地上からの測量と、上空からの航空測量があります。
従来の測量方法と課題
【地上での測量】
■方法
最も多く採用されている基本的な方法は、TS(トータルステーション)という機器や、3Dレーザースキャナーを使うやり方。
地形変化が生じるごとに、距離や高さの差を測定する。
道路などで、TSや3Dスキャナを覗いて測量している現場の人を見たことがある方も多いのでは。
地上からTS・3Dスキャナを使うとミリ単位の高精度な測量が可能。
■課題
- 人が歩いて行うので時間がかかる。
- 山岳部など、立ち入るのが困難な場所での作業は危険も伴う。
【航空測量】
■方法
航空機に搭載されたカメラで撮影する航空写真測量や、航空機に搭載したレーザ装置から、地上にレーザ光を照射して得られる位置情報等により、地形の形状を調べる航空レーザ測量といった方法が一般的。
航空レーザ測量の計測イメージ
航空測量は広域の測量に有効。圧倒的に短時間で測量できる。
■課題
- 飛行機を飛ばす為、測量費用が高額になる
- 天候に左右されやすい
- 機器の用意、予備も含めて準備が大変
ドローン測量方法と課題
続いて、ドローン測量についてです。
【ドローン測量】
■方法
ドローンに掲載したカメラで空中から撮影する。
航空測量と同じく、写真測量とレーザー測量がある。
地上に標定点(GCP)と呼ばれる、測量精度を上げるための目印の配置が必要。
【写真測量】
地上に標定点(GCP)を設置し、ドローンに搭載したカメラで撮影範囲を重複させた写真を複数枚撮り、つなぎ合わせて地形情報を調査する測量方法。
重ね合わせて写真を撮影/写真測量イメージ図
【レーザー測量】
ドローンに搭載したレーザー測距装置から地上にレーザーを照射し、距離情報と標定点(GCP)から位置情報を得る。その情報を元に、地表の状況を確認する測量方法。
森林や山間部など、上空から地表を写真撮影できない環境下では、レーザーを使い木や葉の間を抜けさせデータを取得する。
写真測量に比べて、より精度の高いデータが取得できるが、レーザー装置が高額で、数百万〜1千万円程度の購入費用がかかる。
※詳しいドローン測量のやり方は4章・4-3にて解説しています。
■課題
- 連続した長時間飛行ができない
現在の一般的なドローンのバッテリー持続時間は30〜40分程度。
天候や気温状況によっては、バッテリー消費が早まり、もっとフライト可能時間が短くなる場合も。
なので、現場で何回かバッテリー交換作業が必要となる。
- 木々に覆われた山や林などは写真測量が難しい
上空から撮影するドローン写真測量では、木の枝や葉が生い茂った環境下だとそれらが障害物となり、うまく測量することができない。
レーザー装置を搭載したドローンを使ったレーザー測量の場合、ある程度の障害物がある環境下でも対応できるが、わずかな隙間もない密な森林など、レーザーでも無理な場所もある。
──なるほど、各々課題があるんですね。従来の測量方法で生じる課題は、ドローン測量で解決できるものもあるのでしょうか?
はい。地上で人が歩いての測量は時間がかかるというのが一つのデメリットですが、ドローンなら時間の短縮が可能です。
【例】地上での測量
10ヘクタール(200m×500m)を測量する場合、歩いての測量だと2人がかりで丸一日かかる。
→ドローンを使えば半日かからずに完了。
また、航空測量の費用が高額になるという課題についても、コスト削減が可能です。
【例】航空測量
航空機としてセスナを飛ばして測量する場合、100万円以上の費用がかかることも。
→ドローンだと十数万で行うことができる。
──ドローンを使うことにより、かなりの時間短縮・コスト削減効果が期待できるんですね。
そうですね。作業員の数や拘束時間も低減することができるので、効率も上がります。
──それでは、従来の測量と比べ、ドローン測量では不十分な部分はありますか?
ドローン測量の課題にもあがっていますが、葉や枝が密に重なるような森林や山岳部など、レーザーの光が届かない場所の測量は、地上からしかできません。
今後の技術開発によってはクリアされる課題かもしれませんが、地上のデータをきちんととりたいのであれば、レーザーが抜けない場所の測量はドローンではできないのが現状ですね。
ドローン測量のリスク対策
──ドローンを使用するとなった際、考えてしまうのは墜落や衝突のリスクだという方も多いと思います。そういったドローンに起こりうるリスクについて、何か対策などがあれば教えてください。
はい。突然の電波ロスや混線による機体の制御不能など、回避の難しい事態は確かに起こり得ます。
しかし、事故の原因はヒューマンエラーが圧倒的に多いです。
機体などの劣化部の見逃し、バッテリー残量の見落としといった人為ミスは、定期的なメンテナンスや事前の確認作業で防げる部分が大きいと思います。
飛行前、飛行後のチェックリストなどを作成し、測量毎に確認するといった方法もおすすめです
──機体の状況確認やメンテナンスなどをしっかり行うことで、リスク回避に繋がるんですね。
そうですね。また、もしもの事態に備え、機体保険・賠償責任保険加入も必要だと思います。レーザー機器などはかなり高額なので、測量機器搭載(レーザー・赤外線)ドローンの専用保険も登場していますよ。
──測量に限らず、業務でドローンを使用する際は保険加入が必須といってもいいかもしれませんね。
ドローン測量のメリット
──測量にドローンを使用するメリットを教えてください。
はい。測量ドローンは、
- 平面と3Dのデータが同時に作成できる
- 人が立ち入れない場所の測量が可能
- 時間短縮、コスト削減が可能
- 失敗してもやり直しが比較的楽
このようなメリットがあげられます。一つずつ解説していきます
■平面と3Dのデータが同時に作成できる
従来の地上での測量は、取得したデータから必要な各種展開図の作成を行い、さらに3Dデータへ編集するといった流れが一般的。
ドローンは専用ソフトにより自動でデータを作ることができるので、2重業務の手間をかけることなく平面と3Dデータの同時作成が可能。
■人が立ち入れない場所の測量が可能
災害時など、人が立ち入ることの出来ない危険な場所の測量ができる。
安全確保、また、環境への負荷を低減できるといったメリットも。
■時間短縮、コスト削減が可能
地上で測量するのは時間がかかるが、飛行機を飛ばすまでもないといった測量範囲が中規模の案件で、時間短縮・コスト削減の効果がより高くなる。
■失敗してもやり直しが比較的楽
データがうまく取れていなかったり条件を満たせていなかった場合、またやり直しということになると地上測量は時間がかかる。
航空測量は高額な費用がかかるし、飛行機の準備も大変。
──多くのメリットがあるんですね。そのメリットを、一番活かせる測量案件(環境、条件など)はどんなケースですか?
測量範囲が5ヘクタール以上の現場だと、ドローンのメリットを活かせると思います。
また、起伏が激しい場所は歩くのが困難ですし、航空測量では細かい地形が取れないので、そういった環境下でもドローンが活躍します。
測量現場でのドローンの活躍
実際の測量現場で、どのようにドローンが活躍しているのかを解説します。
ドローン測量の案件依頼の流れ
──まず、ドローン測量の依頼はどんな依頼主から、どのような形で依頼されるのでしょうか?
はい。それではまず民間企業から依頼を受ける場合の流れをご説明します。
依頼側が工場やマンションなど、新たに建物を建てたいといった場合、
- そもそもその土地に建設が可能なのかの判断
- どれくらい土を削ったり、入れたりしなければならないのか など
こういったことを調べるために測量を依頼されます。
依頼をする側は、ゼネコン(総合土建業者)やコンサルティング会社に依頼をして、請け負った元請が測量だけ外部委託するか、自分たちで行うかを決めるといった流れが一般的です。
また、依頼主が建築はせず、測量データだけを必要とする場合は、測量会社に直接依頼するケースが多いです。
それでは次に、国(観光庁)や自治体からの依頼の場合です。
- 建築、建設
- 地形調査
- 河川、森林の調査 など
こういった目的のために測量を依頼されます。
公共工事の多くは「入札」という方法を導入しているため、依頼を得るためには入札に参加し、落札しなければいけません。
■入札とは?
国や地方自治体が、公共事業の依頼先を複数の業者の中から選ぶ契約方法。
事業内容や契約事項を公示し、最も希望に沿う条件を出した業者に契約を発注する。
「入札」という方法を取ることにより、公的機関はコストの低減や品質の確保、不正行為の防止などを政策目標としている。
公的機関の提示した事業の契約を受注することを「落札」という。
入札し、事業を受注した後は、自社で測量をするか、外部に委託するかを決めます。
──なるほど。依頼側からドローン使用を指定されることはありますか?
ありますね。国や自治体は、DX(デジタルトランスフォーメーション※)の観点から、新技術導入を推奨しているので、積極的なドローン使用を呼び掛けています。
※DX:デジタル技術を浸透させることで人々の生活をより良いものへと変革すること
依頼側が民間企業の場合、基本的には正確な測量データが得られれば、測量方法を問われることはあまりありませんが、DXが進んでいるという印象を与えられるので、ドローン使用を指定する企業もあります。
また、ドローンのほうが結果として安くて短時間でデータ取得ができる場合なども、ドローンを使った測量を依頼されます。
──それでは逆に、ドローン使用を依頼側に提案して断られるケースなどもあるのでしょうか?
そうですね。地権者や周辺住民への配慮からNGとなることはあり得ます。
飛行禁止区域であったり、付近に撮影禁止施設などがある場合もドローンを使用することはできません。
──飛行が禁止されている場所や、周りへの配慮といった面でドローンが飛ばせない場合もあるんですね。
実際の現場でのドローン測量
──それでは次に、ドローンが使用できる現場の割合はどの程度あるのか教えてください。
はい。現状、8割以上が使おうと思えば使える環境だと思います。
あとはドローン使用するメリットがある案件か、ドローンがその測量に適した手段になる案件かどうかといったところで、実際に使用するかしないかを決める必要はありますね。
──なるほど。実際の現場で、飛行禁止区域や周辺への配慮といった部分以外で、ドローン使用を避けるシーンなどはあるのでしょうか?
そうですね。見通しが悪い場所や、谷合いなどのGPSが不安定な場所など、電波ロス等で自動操縦が難しくなる環境下は、ドローン使用を避ける事業者もいます。
──現場でドローンで測量をする際に生じる課題と、その解決策があれば教えてください。
現場に高スペックのPCを持ち込むのが難しく、漏れなくデータ取得できているかの確認が難しいといった課題がありますね。
解決策としては、現場で使える、簡易的な測量用の処理ソフトを使ってデータ確認するといった方法で対応しています。
──実際の現場では、その環境や案件内容により、ドローン使用にメリットがあるかどうかでドローン測量を行うかを決めるという事ですね。
ドローン測量の手順
──実際の現場で、ドローンを使った測量を終えるまでの手順を教えてください。
はい。それではドローン測量の手順を、写真測量を例に詳しく解説していきます。
【ドローン測量の手順】
1.現地調査
■現地に出向いたり、案件によってはGoogle マップなどで現地調査を行う。
【調査内容】
- 木や草が多い場所(障害物があるか)どうか
- 通信状況の確認
- 付近の環境確認 など
2.飛行ルート作成
■現地調査した結果を元に、測量内容に適した飛行ルートを作成する。
■ドローンにルートを登録し、当日は自動操縦でフライトする。
【ドローンに登録する内容】
- 測量に最適な飛行ルート
- シャッター速度
- ラップ率(写真を重ねる率)
- 高度 など
3.標定点(GCP)測量精度を上げるための目印)の設置
■最低でも5箇所以上の標定点を設置する
※GCPが必要なくなる?より精度を上げるRTKとは?
ドローン測量は、ドローンのGPS情報と標定点(GCP)設置により、その位置情報を得ているのですが、実はこのGPSとGCPにはそれぞれ課題点があります。
- GPSの課題点…測位誤差が生じる。GPSだけだと数メートル以上。 GCPを設置すると、数10cm以下になる。
- 標定点(GCP)の課題点…設置するのに時間を取られる。総作業時間の3割程度時間を使っているのが現状。
そんな中、この2つの課題を解決できる新技術「RTK搭載ドローン」が登場。
RTK(リアルタイム・キネマティック)とは、測位衛星からの電波受信だけでなく、
地上にある「基準局(電子基準点)」からも、同時に電波の送受信が可能な為、測位の精度をより高めることが出来る。
GPS+標定点(GCP)の場合、数10cmの測位誤差が生じるが、RTK搭載ドローンを使用することにより、誤差を数㎝程度に抑えられるので、より高精度での測量が可能。
4.ドローンを飛ばし撮影する
■登録したルートを自動操縦で飛行させ、地表データを取得する。
■取得したデータを確認。何か問題や不足部分があった場合は再飛行の必要も。
5.専用ソフトでデータ解析を行う
■ドローンで撮影した写真を専用ソフトを使い繋げる。
■所要時間は測量範囲次第。400m×200mで約2〜3時間。
【データ解析内容】
- 撮影写真を繋げる
- 距離、面積、体積、角度、断面等各種解析などの計測
- 3Dモデル作成 など
ドローン写真測量はこういった流れで行われます。
上空から地表の見えづらい森林地帯などは、ドローン搭載レーザーから光を射出するレーザー測量を用います。
測量現場にドローンを導入する方法
それでは実際に、測量現場でドローンを使いたいとなった際、どのように導入を進めていけばいいのでしょうか。
詳しく解説していきます。
事前準備
──測量現場にドローンを導入する方法をお伺いします。導入するにあたり、事前の準備などはありますか?
はい。まずは測量とドローン、両方の知識を得ることが導入の第一歩だと思います。
そもそも測量もドローンも知識がないと、何をすればいいか、何を選べばよいかわからないですよね。
測量に関する知識がある人は、ドローンの操縦方法や、ドローンの法律の勉強をする必要があります。
ドローンの知識だけしか持っていない人の方が、導入において少しハードルが高いですね。測量は、国家資格があるくらい専門的知識を要するので。
実際に自分で測量を行うには、測量士や測量士補の資格も必要です。
──知識を備えてから、導入を始めるということですね。それでは、ドローン測量を始める際、最低限必要なものを教えてください。
最低限必要なものは、ドローン本体と処理ソフトですね。
自分がどんな測量をやるのか、どういったお客さんをターゲットにするのかにもよって変わってきますが、ある程度の精度担保されたものを選ぶことが大事です。
──「精度担保された」とは、どのようなものなんでしょうか?
ドローンに搭載されたカメラやレーザー機材、データ作成・処理ソフトなど、こういったものを使えばこれくらいの精度が保証できますよといった情報を、国が提供しているんです。
それに応じてメーカー側も、国が提唱している精度の測量に準拠できる商品はこれですと紹介しています。
顧客からの信頼感や安心感を得るためにも、こういった精度が担保された機材を揃えておくのも、一つのアピールポイントになると思いますよ。
──なるほど。精度の保証された機材を使うことは、顧客の信頼にも繋がりますし、導入後の案件獲得に有利な可能性もあるといった意味では、自身にもプラスになりそうですね。
ドローン測量の知識・技術取得方法
──続いて、先ほども少しお話にあがりました、ドローン測量の「知識」についてなんですが、知識や技術取得の為に、ドローンスクールに通うという選択についてお伺いします。
ドローンのスクールは、大きく分けて
- ドローンの基礎的知識、法律、操縦方法が学べる一般スクール(基本コース)
- 専門分野に特化した、特化型スクール(専門コース)
この2種類があります。
──ドローン測量をするにあたり、ドローンの一般スクール(基本コース)を受講することはプラスになると思われますか?
そうですね。測量現場でのドローンはほぼ自動操縦なので、操縦技術はそんなに必要ないです。
ですが、一般スクールでも
- 基本的な操縦方法や法律など効率よく学べる
- 10時間以上の飛行証明が取れる※
といったメリットがありますので、測量知識はあるけれど、ドローンは全く知らない・触ったこともないという人は、行ってもいいと思います。
※10時間以上の飛行証明とは
国土交通省に飛行許可申請をする際は10時間以上の飛行経歴が必要(国土交通省「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」)と定められています。
飛行経歴の取得方法に決まりはなく、
- 自分で練習した時間の飛行記録を取る
- 業務内の飛行時間を経歴にする
- スクールへ行き証明取得をする
などの方法があります。
また、自動航行を学べるスクールや講習もあります。
自動航行の設定方法や、航行させるスキルを修得できるカリキュラムが受講できます。
■秋葉原ドローンスクール:DJI GS Proコース
■トレーニングセンター(関西・岡山・関東):自動航行プログラミング講習
──次に、特化型スクール、測量専門コースへ行く意味はあると思いますか?
はい。実際に現場で従来の測量を行っている人でも、測量専門のスクールではソフトの使い方や飛行時のノウハウも含めて教えてくれるので、通う意味はあると思います。
ソフトの使い方を理解するのに苦労した、という話はよく聞きますので。
──なるほど。スクールの修了書を持っていると、現場での信頼度が上がる、依頼が増えるなどのメリットはありますか?
修了証所持は、ほぼ意味はないかなと感じます。
あくまで免許ではなく技術認定なので、以前とったデータを成果物として見せる方が、顧客に対しては意味があると思います。
──スクール以外で測量のドローン操縦技術を取得する方法はありますか?
操縦技術は、多くの場合自動操縦なので自主練でもなんとかなります。
操縦技術というより知識、ノウハウ、慣れが必要なので、こればかりは自動車の運転と同じで、経験を積んでいくしかないと思います。
──そうですね。スクールは、必要なスキルを効率よく取得する有効な手段の一つと考え、検討してみるといいですね。
ドローン導入の進め方
──それでは次に、測量にドローンを導入をする際、どのように進めていけばいいか教えてください。
はい。まずは知識・スキルを習得し、機材を選びます。
導入費用は、選ぶ機材・ソフトウエア等によって大きく変わってきます。
例えば、安価なドローンの機体なら2〜30万円程度で購入できますが、レーザー機器は数百万〜1千万円と高額です。
ソフトウエアも購入価格は50万円〜、保証サポートも、多くは2年目から年間10万単位で費用が発生してきます。
その他にも、
- 保険費用
- メンテナンス費用
- (必要に応じて)スクール、講習費用
などといったものが導入費用に加わります。
──自社業務に合わせて、機材やソフトウエアの性能、価格を選定していく必要があるんですね。
ドローン測量におすすめの機体
──続いて、ドローンの機体についてお伺いします。測量の専用ドローンといったものはあるのでしょうか?
専用というよりは、測量に向いているドローンはあります。
測量に適しているのは、
- 長時間飛ばせる
- 高性能の機器はどうしても重さが出てしまうので、そういった重いものを積める
- カメラのゆがみが少ない
このような条件があげられます。
──なるほど。おすすめの機体はありますか?
センサーサイズが1インチ以上は必須です。
なので機体でいうと、DJI製はPhantom4Pro V2かMavic2 Pro※あたりがおすすめです。
公共測量では、国産が指定される可能性もあるため、NEDOのプロジェクトで開発されたSOTENもおすすめですね。
※ドローンの販売状況は変動があります。
──測量に使えるドローンの購入方法を教えてください。
インターネットで購入可能です。
ドローンのトレーニングを受けるのであれば、トレーニング事業者から購入するのが良いと思います。
あとは使い方や測量データ処理ソフトの取り扱い方法など知っている代理店を選んだり、購入時にサーポート(故障時などに備えて一時的なレンタルが可能か)などの確認もした方がいいですね。
測量業界において、ドローンの現状と今後
測量業界で、ドローンは現在どのような立ち位置にある存在なのでしょうか。
測量ドローンの現状と今後についてご説明します。
ドローンの現状
──測量において、現在ドローンの重要性や必要性はどのような位置にありますか?
そうですね。無くてはならない技術・手段になってきたと思います。
人材不足の問題もありますし、より効率的に、と考えた時にドローンは適した測量手段になります。
災害時も状況の把握や、修繕計画においても測量は必要になるので、人が立ち入ることが困難な環境下でもドローンは活躍しています。
──実際に国や自治体からのICT(情報通信技術)=ドローン推進の働きかけはありますか?
国や自治体はDXの観点から、測量業界に限らず、様々な現場でオートメーション(自動化)を進めています。
自動化には3Dデータが必要不可欠になってくるので、ドローン推進に力を入れていますよ。
国・自治体が発注する工事は、i-Constructionに則って行いましょうという流れがあります。
──なるほど。そうなると多くの測量会社は、既にドローンを所有しているのでしょうか?
大きな会社はほとんど持っていると思います。
測量案件は報酬金額が高いので、ある程度仕事の目処が立てば、高額な測量レーザー機器を揃えたりも可能だと聞きます。
──測量業界において、実際のドローンの導入率はどれくらいでしょうか?
まだ2-3割程度ではないでしょうか。
──思ったよりも低いんですね。国も導入に積極的な中、なくてはならい存在になりつつあるドローンの導入率が低い理由はなんだと思われますか?
知見がある人は導入を進めていますが、そもそもドローン自体が、使い方や法律など知らない人の方が多い存在です。
黎明期から広がり始めた段階なので、これからの技術というのは感じます。
ドローンを使うよりも人が地上から行う測量の方が高精度なデータが取れますし、街中でドローンが飛んでいると不安に思う人も少なくありません。
──理解と技術の不足が、導入が広がらない理由ということですね。
そうですね。ですが、ドローン所持は一つのアピールポイントになるのは間違いないです。
山間部などで土砂崩れや事故が起こった際、現状どうなっているかと聞かれて、立ち入ることが出来ないから分かりませんというより、ドローンで状況確認し、それを報告できた方がもちろんいいですよね。
──それは確かにそうですよね。ドローンは今後の活躍に大きく期待できる技術ですね。
ドローンの今後
──測量業界において、ドローンの今後はどうなると考えられますか?
中規模範囲の測量は、ほぼドローンに置き換わると思います。
5ヘクタール以上の案件の場合、地上測量・航空測量と比較しても、ドローン測量が圧倒的にメリットがあるからです。
国・自治体のドローン推進の動きも更に加速すると思いますし、民間企業も、最新の機材を使っているというのはイメージアップにも繋がるので、一般化されていくと考えられます。
ただし、徐々に使用機材が限定されてくると思いますよ。
──機材の限定とは、どのようなことなのでしょうか?
脱中国、といった風潮が広がっています。
現在、世界シェア7割を占めると言われている中国企業DJIですが、やはり値段・使いやすさは圧倒的に強いです。
ですが、性能面や安全性も踏まえると、国産メーカーもレベルが上がっており、測量業界でも問題なく使える機材も増えてきています。
──国産の機材に限定されていくということですか?
欧米産も候補になります。
というのも、情報セキュリティの観点から、内閣府が“情報漏洩や機能停止の懸念がある情報通信機を制限・排除する”という方針を出したんですね。
はっきりと明言はしていませんが、制限・排除対象となるのは中国製品という考えだと思われます。
携帯の通信機器ファーウェイ禁止もその流れですね。
なので、国・自治体が発注する公共事業に関しては、情報漏洩の危険がない機器を使おうという指針を示しています。
──なるほど。それでは今まで伺ったお話を踏まえて、今後ドローン導入を考えている人へアドバイスがあればお願いします。
そうですね。まず大事なのは、自分がドローンでどんなことがやりたいか、どういったお客さんをターゲットにするかを明確にすることです。
そして、写真測量をするのか、レーザー測量にするのか、または両方の方法で測量するのかで、どのようなドローン・機材を選ぶかを決めます。
測量の勉強が1番難しく、1番重要なので、しっかりと学び身に付ける、または測量スキルを持つ人とパートナーを組むという方法もあります。
これからの測量業界にドローンはなくてはならない技術なので、市場はもっと広がっていくと思いますよ。
──ドローン測量について、色々と知ることができました。今回は貴重な話をありがとうございました。
まとめ
インタビューさせていただいた内容をまとめました。
◆測量の目的と種類
- 測量の目的…土地の距離・面積・地形・体積などを正確に測る為の手段として測量を用いる。
- 測量の種類…1.地上から人が歩き測量する 2.上空から飛行機を使って測量する 3.上空からドローンを使って測量する
◆従来の測量方法とドローンを使った測量について
■従来の測量
地上での測量
【方法】
最も多く採用されている基本的な方法は、TS(トータルステーション)という機器や、3Dレーザースキャナーを使うやり方。地形変化が生じるごとに、距離や高さの差を測定する。
地上からTS・3Dスキャナを使うとミリ単位の高精度な測量が可能。
【課題】
- 人が歩いて行うので時間がかかる。
- 山岳部など、立ち入るのが困難な場所での作業は危険も伴う。
航空測量
【方法】
航空機に搭載されたカメラで撮影する航空写真測量や、航空機に搭載したレーザ装置から、地上にレーザ光を照射して得られる位置情報等により、地形の形状を調べる航空レーザ測量といった方法が一般的。
航空測量は広域の測量に有効。圧倒的に短時間で測量できる。
【課題】
- 飛行機を飛ばす為、測量費用が高額になる
- 天候に左右されやすい
- 機器の用意、予備も含めて準備が大変
ドローン測量
【方法】
ドローンに掲載したカメラで空中から撮影する。
航空測量と同じく、写真測量とレーザー測量がある。
地上に標定点(GCP)と呼ばれる、測量精度を上げるための目印の配置が必要。
写真測量
ドローンに搭載したカメラで撮影範囲を重複させた写真を複数枚撮り、つなぎ合わせて地形情報を調査する測量方法。
レーザー測量
ドローンに搭載したレーザー測距装置から地上にレーザーを照射し、距離情報と標定点(GCP)から位置情報を得る。その情報を元に、地表の状況を確認する測量方法。
写真測量に比べて、より精度の高いデータが取得できるが、レーザー装置が高額で、数百万〜1千万円程度の購入費用がかかる。
【課題】
- 連続した長時間飛行ができない
- 木々に覆われた山や林などは写真測量が難しい
◆従来の測量の課題をドローンが解決できる部分もある。
- 地上からの測量は時間がかかる→ドローン:時間の短縮が可能
- 航空測量の費用が高額になる→ドローン:コスト削減が可能
◆ドローン測量のメリット
- 平面と3Dのデータが同時に作成できる
- 人が立ち入れない場所の測量が可能
- 時間短縮、コスト削減が可能
- 失敗してもやり直しが比較的楽
◆ドローン測量の手順
1.現地調査
■現地に出向いたり、案件によってはGoogle マップなどで現地調査を行う。
2.飛行ルート作成
■現地調査した結果を元に、測量内容に適した飛行ルートを作成する。
■ドローンにルートを登録し、当日は自動操縦でフライトする。
3.標定点(GCP)測量精度を上げるための目印)の設置
■最低でも5箇所以上の標定点を設置する
4.ドローンを飛ばし撮影する
■登録したルートを自動操縦で飛行させ、地表データを取得する。
■取得したデータを確認。何か問題や不足部分があった場合は再飛行の必要も。
5.専用ソフトでデータ解析を行う
■ドローンで撮影した写真を専用ソフトを使い繋げる。
■所要時間は測量範囲次第。400m×200mで約2〜3時間。
いかがでしたでしょうか。
測量とは?といったところから、ドローン測量の詳しい手順や、現業・今後についてまで理解していただけたかと思います。
測量現場においてドローン使用を検討されている方は、ぜひその導入の参考にしてみてください。