農業用ドローンの市場シェアはDJI独占?最適な機体選びの方法とは

ドローン

農業用ドローンを導入するにあたり機体を選択しようと思っても、農業用ドローンには主にどのようなメーカーがあり、どんな機種が人気なのかわからない…という方も多いのではないでしょうか。

農業用ドローンの歴史は浅く、中国の大手メーカーであるDJIが16年に初めて商品化し、急速に普及しました。現在、日本の農業用ドローンのうち実に7割程度がDJI製だと推定されています。

そこでこの記事では、

・農業用ドローンの市場シェアや市場動向
・農業用ドローンの人気モデルの特徴
・農業用ドローンを選ぶポイント

などについてお伝えし、最適な農業用ドローンを見極める方法について提案していきたいと思います。

この記事を読めば、農業用ドローンの市場シェアや動向、選び方についての知識が得られ、自身の圃場・用途に最適なドローンを入手して有効活用することができるでしょう。

※ドローンによる農薬散布のメリットデメリットや導入までの流れの全体像は、こちらの記事にまとめています。

ドローンの農薬散布とは?メリットデメリットや始め方・導入の注意点

※農業用ドローンの選び方や導入費用はこちらの記事でもより詳しくまとめています。併せてご覧ください。

農業用(農薬散布用)ドローンのおすすめメーカーは?価格や補助金、選び方もご紹介

農業用ドローンはDJIが圧倒的シェアを占めている

ドローン

農業用ドローンにおける日本での市場シェアは、DJIが圧倒的シェアを誇っています。農業用に限らずドローン市場において世界で7割のシェアを誇るDJIは、12年から農業用ドローンの研究を始め、16年に世界初となる農業用ドローン「AGRAS MG-1」を発売。日本では13年に日本法人のDJI JAPANを設立、17年から農業用ドローンの取り扱いを開始しました。

少し古いデータになりますが、農林水産省が2019年3月に発行している「農業用ドローンの普及に向けて(農業用ドローン普及計画)」という資料によると、2018年12月の時点で、一般社団法人農林水産航空協会に登録されていたドローン機体は1437台。内訳は以下の通りです。

    DJI 576台(40%)
    丸山製作所 236台(16%)
    エンルート 218台(15%)
    クボタ 183台(13%)
    その他 224台(16%)

これ以外には、市場シェアを示す公的なデータはほとんどありませんクボタやヤンマーがDJIのOEMであることや販売状況などから考えると、現在、日本の農業用ドローンのうち実に7割程度がDJI製だと推定されます。

続いて、18年から日本の代理店網を拡充し、さらに農薬分野で世界首位のドイツのバイエルと業務提携したことで急速なシェア拡大が始まっている中国ドローンメーカー「XAG」が第2位。日本企業ではヤマハ発動機やナイルワークス、TEAD、マゼックスなどが挙げられます。

DJIとXAGの特徴

農業用ドローンはこれからも市場規模が拡大する

畑の上を飛ぶドローン

日本において17年にDJIが農業ドローンの製品販売を開始してから、登録機体数は右肩上がりで伸び続けており、20年には3,000台を突破。日本の農業機械製品の歴史において短期間にこれほど普及したものは、1950年代の歩行型トラクター以来だと指摘する専門家もいます。

農業用ドローンは、稲作においては既に普及フェーズに入っていますが、今後農薬取締法の緩和などを受けて登録農薬数が増加すれば、飼料・畑作物、露地野菜、果樹などに広がることが見込まれています。また用途においても、現在の農薬散布からセンシングや肥料散布、播種、受粉、収穫作物等の運搬、ドローンを使った散布代行や生育診断を行うサービス分野にも広がっていくことが予想されます。

対象品目や用途が広がるにつれて市場は順調に伸長していき、農業用ドローンの国内市場規模は25年にはおそらく1,000億円を超えるでしょう。

農業用ドローンの主要メーカーと人気機種

畑の上を飛ぶドローン

市場シェアがわかったところで、日本国内における農業用ドローンの主要メーカーと特色、人気機種をご紹介します。

DJI

中国創業のグローバルメーカー「DJI」は農業分野でも圧倒的な存在感を放っています。大容量タンク、高性能ノズル、カセット式バッテリー、全方向デジタルレーダー、マルチスペクトルカメラなどの革新的な改良により、日本市場でも確固たる地位を確立。主要モデルは、農薬・肥料・種子の散布を主目的とする「AGRAS」シリーズ、リモートセンシングに使用する「Phantom」シリーズに分かれています。

AGRAS T-20

AGRAS MG-1 ADVANCED

DJI農業ドローンの人気機種は、散布装置の取り付けが容易で様々な適用シーンで利用できるAGRAS T-20と、比較的買いやすい値段と扱いやすさが魅力のAGRAS MG-1 ADVANCED。

XAG JAPAN

XAGは「農業をもっとスマートにする」というビジョンのもとに設立された農業用ドローン専業メーカー。自社でも農薬散布サービスを行っているという点が特徴で、現場のニーズや課題をダイレクトに吸い上げる場を有していることが、既存製品の改良や新製品開発に活かされています。

P30

XAGの人気機種は、完全自動飛行・完全自動散布可能で、操作はすべてスマートフォンで行うことができる「P30」。

ヤマハ発動機

ヤマハ発動機の農業用ドローンには、長年にわたる無人ヘリコプターで培ったノウハウと同社のものづくりにおける哲学が凝縮されています。農業用ドローンの具体的な特徴は、ダウンウォッシュの強さと高い耐久性。

YMR-08

YMR-08AP

ナイルワークス

株式会社ナイルワークスは、2015年1月に創業した農業用ドローンの設計/開発/製造、生育診断技術・栽培技術の研究開発、農業クラウドサービスの開発・販売を行う企業。自動で薬剤散布と生育診断を実行するドローン「Nile-T19」を提供しています。

Nile-T19

NTT e-Drone Technology

NTT e-Drone Technology」は、今年誕生したばかりの、東日本電信電話株式会社と株式会社オプティムと株式会WorldLink&Companyの3社による合弁会社です。ドローンの開発に関しては、スカパーJSATグループの国産ドローン企業であるエンルート株式会社の開発事業が一部譲受されました。

巨大通信インフラ企業から利用者の課題に寄り添う事業へと転換を図るNTT東日本と、ドローンによる農業の専門家、その販売の専門家、国産ドローン開発の専門家が集結したことで、ドローン関連の産業振興や社会実装への期待が高まっています。

AC101

MAZEX

MAZEX(マゼックス)は、農薬散布・防除・農業・林業・設備業等の産業用ドローンメーカー。「Drone is in your hands」をスローガンに、安全・手軽に利用できることを前提に産業用ドローンの開発・製造を行っています。低価格で購入できるドローンが揃っているのが特徴。

MAZEX

MAZEX

TEAD

TEAD株式会社は、産業用無人航空機(大型ドローン)の開発、製作、販売をはじめ点検業務など、ドローンを利活用したトータルソリューションを目的に活動している企業。2016年の設立以来、高齢化や人材不足が深刻な社会問題となっている農業分野における農薬散布領域での実証実験にいち早く参画し、高品質な農薬散布ドローンの製造販売を行っています。

TEAD

丸山製作所

丸山製作所は、ポンプ技術をコアに、農林業用動力噴霧機などを製造販売している会社。防除製品の技術を活かして、独自の液体散布ドローン用散布システムを積んだ機体を販売しています。長年防除機器を手掛けてきたこともあり、生産者に近い立場でドローンの販売、サービスができるのが強み。

スカイマスターMMC

農業用ドローンを選ぶための6つのポイント

ドローン

農業用ドローンは、シェアや人気に囚われず、自身の圃場・用途に合ったモデルを選ぶことが大切。

ここまで農業用ドローンの市場シェアや人気機種をご紹介してきましたが、高いシェアを占めている機種を導入するのが良いのかと言うとそういうわけではありません。なぜかと言うと、人気の機体がすべての圃場・作物・用途に合うとは限らないからです。用途に合った農業用ドローンを選ぶ際のポイントは以下の6つ。

  • 最大飛行時間
  • タンク容量
  • 散布性能
  • 離陸重量
  • 自動飛行の有無
  • バッテリーの種類

最大飛行時間

農業用ドローンを選ぶ際には、最大飛行時間をチェックしましょう。

主に農業用ドローンは農薬散布目的で導入されるのが一般的ですが、ドローンによる農薬散布は1分間あたりの散布量が決まっており、その散布量がドローン選定のポイントになります。飛行時間が長いほど散布できる面積が広く、作業の効率化を図ることが可能。

圃場の面積にもよりますが、農業用ドローンであれば20分以上の飛行時間を目安にすると良いでしょう。

タンク容量

次にチェックしたいのが薬剤を入れるタンクの容量です。タンク容量が大きいほど当然搭載できる農薬の量も多くなるので、一度の飛行で多くの農薬を散布することが可能です。ただし、容量が大きいと飛行時間に影響する場合があるため、タンク容量の多さ=性能の高さというわけではありません。

タンク容量の目安は以下の通り。

タンク容量

【5L機がおすすめのケース】

  • 総面積が10ha以下
  • 中山間地などの小回りが必要な場所

【10L機がおすすめのケース】

  • 総面積が10ha以上
  • 請負作業も考えている

【16L機以上がおすすめのケース】

  • 大面積を管理している
  • バッテリーが高価になるが、費用的に問題ない

散布性能

散布目的で農業用ドローンを導入する場合に欠かせないのが散布性能です。散布性能はそれぞれのドローンの特徴が出る箇所でもあり、自身の圃場や目的に合ったドローンを選択する際の重要なポイントになるので入念にチェックしましょう。

例えば機体によっては以下のような散布性能の特色があります。

  • 散布幅が広い
  • 液滴サイズを⾃由に変更可能できる
  • ダウンウォッシュが強い
  • 粒剤散布も可能
  • ⾼精度な噴霧システムを搭載している
  • 液剤散布時の飛散が少ない

自身の圃場や作物、用途に最適な散布性能を持っていることが、農業用ドローン選びの大きなポイントになります。

離陸重量

離陸重量とは機体そのものの重さではなく、農薬・バッテリー・装置などを最大限搭載した時の重量のこと。ドローンは航空法により、機体の重さの規定があり、最大離陸重量が25kgを超えると点検にさまざまな項目が課せられ、個人での所有ハードルが高くなります。よって農業用ドローンは大きさや容量だけでなく、離陸重量のチェックも必要。

自動航行システムの有無

より効率的な散布を実現したいなら、自動航行システムの有無も確認しましょう。

自動航行システムとは、ドローンが設定された飛行ルートに従って自動航行しながら農薬散布を行う機能のこと。自動飛行なので操縦技術に影響されることなく、誰が行ってもムラなく均一に作業できるのがポイントです。

また、自動航行システム自体も進化しており、従来はGPSのみを使用した自動飛行が主流でしたが、最近ではネットワークRTK(地上に設置した基準局からの位置情報データによって高い精度の測位を実現する技術のこと。これを使用することで誤差を数センチ以内に抑えることができる)にドローンを組み合わせた自動航行がメインとなりつつあります。

こちらは実際に自動航行システムを使って農薬散布を行ったもの。マニュアル制御に比べて実感として2倍効率的に作業できたとのことで、効率化にも有効であることがわかります。

バッテリーの種類

農業用ドローンは、バッテリーの種類にも注目しましょう。現場でハードな使い方をすることが多い農業用ドローンは、インテリジェントバッテリー搭載のものを選ぶのがおすすめ。

農業用ドローンに使われているバッテリーは主にリポバッテリーと呼ばれるもので、小型でありながらパワフルな電力を出力できるというメリットがある反面、取り扱い方が難しいデリケートな電池です。

インテリジェントバッテリーには、バッテリーそのものに制御装置が搭載されているので発火などのリスクが少なく、安心して使用することができます。

デモフライトや説明会を積極的に利用しよう

畑の上を飛ぶドローン

百聞は一見に如かず。機体選びが作業効率を大きく左右する農業用ドローンは、実際に農薬散布などのデモンストレーションを目の前で見てから決めるのが一番の方法です。

農業用ドローンは直販されていないものが多いので、購入する際は各社グループ販売店、農機販売店、JAなどを経由して購入することになります。販売店によってはデモフライトや説明会を開催したり、デモフライトの要望を受け付けてくれるところがあるので、そのような機会は積極的に利用しましょう。

また、このような機会があれば運用にあたっての疑問点なども担当者に聞くことができるので、不安をなくしてから導入に踏み切ることができるというメリットもあります。

まとめ

畑の上を飛ぶドローン

農業用ドローンの市場シェアや人気機種、農業用ドローン選定のポイントについて紹介してきましたが、もう一度大まかな要点を確認しておきましょう。

  • 日本の農業用ドローンのうち実に7割程度がDJI製、次いでXAG。
  • 農業用ドローンは、現在の農薬散布からセンシングや肥料散布、播種、受粉、収穫作物等の運搬、ドローンを使った散布代行や生育診断を行うサービス分野にも用途が広がり、市場拡大が見込まれている。
  • 日本国内における農業用ドローンの主要メーカーは以下の通り。

 DJI
 XAG JAPAN
 ヤマハ発動機
 ナイルワークス
 NTT e-Drone Technology
 MAZEX
 TEAD
 丸山製作所

  • 農業用ドローンは、シェアや人気に囚われず、自身の圃場・用途に合ったモデルを選ぶことが大切。選定のための6つのポイントは以下の通り。

  ①最大飛行時間
  ②タンク容量
  ③散布性能
  ④離陸重量
  ⑤自動飛行の有無
  ⑥バッテリーの種類

  • 購入する際は各社グループ販売店、農機販売店、JAなどが行うデモフライトや説明会は積極的に利用すべき

業界最大手のDJIは、他の用途で培ったノウハウや技術の蓄積があるため製品開発力が高く、常に最先端の技術を提供できるのが最大の強み。しかし、その用途がすべての圃場にマッチするとは限らないので、高いシェアを誇る機体が一番良いとは言い切れません。例えば国産メーカーは、日本の農業の現場を見てきたからこそ思い付くことができる機能を搭載しているのが強みなはずです。

もちろん人気があるのにはそれだけの理由があるのは事実ですが、自身の農場、目的に合ったドローンを見極めることが何よりも大切なのではないでしょうか。

本記事で得られた知識を元に、あなたの圃場・用途に合った農業用ドローンが入手でき、有効的に活用されることを願っています。