建築業界はドローン活用の最前線!活用事例や機種選びのポイントをご紹介

工事現場を飛ぶドローン

どちらかというとアナログな印象の建築業界ですが、実はドローン活用の先進業界であることをご存知ですか?

もしもあなたが建築関係のお仕事に就いているなら、「うちでもドローンを使ってみようかな」と考えたことがあるのではないでしょうか。

とはいえ、漠然としたイメージだけで購入できるような価格でもなければ、おもちゃのラジコンのようにとりあえず飛ばしてみようというわけにもいかないのがドローンです。

そこで本記事では、建築業界におけるドローン活用の実例や、建築現場向けドローン選びでポイントとなる機能について解説します。さらに、現場へのドローン導入を前向きにご検討中の方向けに、実践的な操縦法や関連知識を学べるドローンスクールの選び方もご紹介しています。

人手不足が労働環境の悪化につながり、労働環境の悪化がさらなる人手不足を招くという負のスパイラルから抜け出すための決定打ともなり得るドローン活用のご検討にぜひお役立てください!

建築業界では既にドローンが大活躍中!

建築業界では既にドローンが大活躍中

(インプレス総合研究所『ドローンビジネス調査報告書2021』掲載情報をもとに作成したロードマップ)

産業ドローンの活用例としてイメージしやすいのが、離島や山間部といった僻地への荷物配送ではないでしょうか。

しかし、人口密集地の上空にドローンを目視しない状態で飛行させることは現行法下では認められていないため、少なくとも陸路による宅配便の感覚での配送にはまだ程遠く、あくまで「近い将来の話」に過ぎません。

その一方で、ドローンが既に一定レベルまで普及しているのが建築の分野です。

工事現場を飛ぶドローン

国土交通省よりi-Construction施策が発表された2015年11月、深刻な労働力不足をICT(Information and Communication Technology)活用による生産性向上で解消するという建築業界全体としての明確な目標が定まりました。

それ以来、目標達成に向けた具体的な取り組みの代表格として、現場でのドローン活用が進んでいます。

もともと人手不足に長く苦しんできた業界であることのほか、ドローン活用による工数とコストの削減効果がはっきりとわかる種類の業務内容であることも、いち早い広がりの大きな理由といえるでしょう。

ドローンで現場はこう変わる!代表的な活用事例3つ

建築の分野でおおいに活躍しているドローンですが、具体的にはどういったシーンで活用されているのでしょうか。建築業界での代表的なドローン活用事例を3つご紹介します。

施工管理

地図

工事が予定通りに進んでいるか、設計図面や品質基準に従って施工されているか、現場の作業環境の安全面に問題はないか……。

工事を安全かつ確実に進めるために、あらゆる角度から目配りするのが施工管理です。これまで「現場を巡回してなんぼ」だった施工管理ですが、ドローンの活用により様変わりしつつあります。

従来の施工管理

現場の状況を確認するには直接現場を訪れる以外に方法がなく、施工管理者や現場監督による巡回が施工管理業務のベースとなってきました。

そのため、大規模な案件を担当していたり、複数の現場を監督していたりする場合、オフィスと現場の往復や現場のはしごにかなりの時間を取られてしまいます。

しかも、多岐にわたるのが施工管理の仕事です。日中を現場回りに費していれば、書類や図面の作成、予算管理業務などは事務所に戻った夕刻から始めることに。結果的に残業が当たり前となってしまっている施工管理者や現場監督が少なくないのが実情のようです。

施工管理はこう変わる!

ドローンを活用すれば、クラウド上にアップロードされた撮影画像を見ることで、事務所にいながらにして現場の様子を把握できます!そのため、現場監督が事務所と現場を頻繁に行き来する必要性がなくなり、負担を減らせます。

こまめなチェックが可能となるので、施工ミスを見逃すことによる手戻りを防げるほか、足場の不備や作業環境の問題点といった安全リスクの予見、ひいては事故発生防止にもつなげられるでしょう。

また、規模の大きい現場では、定点観測的に上空から撮影を行うことで作業現場ごとの施工進捗が一目瞭然。工程管理が容易となります。

施工管理でのドローン活用事例

一例として、清水建設株式会社による大規模交差点改良工事の現場でのドローン活用が挙げられます。

株式会社CLUEの提供する定点観測システムを導入することにより、工事現場を俯瞰した写真をもとにした施工進捗管理が可能となり、現場のあちこちを見て回る必要がなくなりました。

さらに、空撮写真がわかりやすい資料ともなるので、発注者に対する進捗報告もスムーズに。

そのほか、写真と図面との比較により工事が正確に進められているかの検証にも活かせるなど、多くのメリットがもたらされました。

住宅点検

ドローン

住まいを長持ちさせるためには、点検によるメンテナンスの必要な箇所の早期発見が欠かせません。そうした住宅点検シーンにおいても、ドローンの活用が広がっています。

従来の住宅点検

数年に一度の住宅点検は、住宅の「人間ドック」のようなもの。

法律により義務づけられているわけではありませんが、1年点検、5年点検、10年点検といった住宅の定期点検が多くのハウスメーカーやビルダーにより行われています。(ただし、長期優良住宅認定を受けた住宅については、最低でも30年間、少なくとも10年ごとの頻度での点検が義務づけられています)

はしごや脚立を使うなどして、日頃は目の届かない部分までくまなくチェックします。しかし、小屋裏や床下など狭い場所の点検は思うように進められないことも多く、高い場所の点検には手間だけでなく安全面でのリスクも伴い、そう簡単ではありません。

なんとか目視できる位置まで到達しても、至近距離からのチェックは難しいことは少なくないでしょう。

また、1回の点検に時間がかかるので、点検担当者がどれだけ頑張ったとしても1日に回れる数は限られます。人手不足の昨今にあって、時短・省力化は喫緊の課題です。

住宅点検はこう変わる!

ドローンを利用すれば、従来は人が時間をかけ、リスクを冒して目視により行っていた屋根や小屋裏など高所や狭所の検査がグンと楽で安全になります。

1軒当たりの所要時間が減れば、1日に回れる軒数は増えますので、大幅な効率アップにつながる点も見逃せません。

また、地上からは見えない屋根の様子について「板金が浮いている」「瓦が割れている」などの嘘をつき修繕を請け負うという一部の心ない業者の事例が、誠実に営業している業者の印象まで悪くしてしまっているという実態もあります。

疑心暗鬼とならざるを得ない顧客への配慮としてドローンの撮影映像を見せることで、信頼性が高まり話がスムーズに進むといったメリットもあると考えられます。

住宅点検でのドローン活用事例

たとえば積水ハウス株式会社では、戸建住宅の定期点検の際には高さ11mを超える長い竿の先にカメラを取り付けたものを使い、倒れないように補助者が支えながら屋根の状態をチェックしていました。

しかし点検作業にドローンを導入している現在では、上空から屋根を撮影すれば完了、非常にスムーズです。

同社では高所撮影用のドローンのほかに、床下点検用ロボットおよび小屋裏点検ロボットカメラも導入。
サポートデスクにいる専門スタッフがクラウドを介して撮影画像をチェックし、遠隔で不具合判定を行うという点検システム「スマートインスペクション」を構築済みです。

以前は2人がかりで2時間かけて行っていた点検ですが、スマートインスペクション導入後は1人が1時間45分で完了させられるようになり、工数が半分以下に減りました。

測量

ドローンで工事現場の空撮測量をする

大規模な建物を建築する場合、土台工事開始前に測量を行うことが義務づけられています。工事の途中にも、設計図面通りの位置や高さになっているかの確認のために測量が必要です。

土木工事であれば、地形の把握や土量計算が工事の前段階として欠かせませんし、施工完了部分の形状や勾配、寸法などをチェックする出来形管理も必要となってきます。

そのように必要性が高いにもかかわらず労力・時間・コストがかかる測量は、それだけに導入効果が圧倒的で、業界内でもっともドローン活用が進んでいる分野です。

従来の測量

測量機器を持ち運びながら、隅から隅まで歩き回って行う従来の地上測量は、決して楽なものではありません。

とりわけ山林の険しい急斜面などで行う測量は大変な重労働であり、何日も、何週間も、場合によっては何ヶ月もかけて行われるのが通常です。

測量はこう変わる!

上空を飛行して行うドローン測量であればはるかに短時間で済みます。ごく限られた範囲であればものの数時間で完了することも珍しくないほどです。

足場が悪いなど危険の伴う場所に立ち入る必要もありません。

同じような上空からの測量方法にセスナを用いた測量もありますが、ドローン測量のほうが低コストである上、セスナよりも低い高度(高度70m前後)を飛行するためより高精度です。

測量でのドローン活用事例

大手ゼネコンである大林組では、ドローン測量を本格導入しています。

東京ドーム1個分の敷地を測量する場合、従来の地上での測量では、計測作業、それに続く計測データからの土量計算までの作業がだいたい28人工です。

同じ面積の測量をドローンで行う場合、上空からの撮影と、それに続く専用ソフトを使っての土量計算までが2人工。
手間とコストの大幅な削減を実現しています。

同社では、ドローン測量で得られる3D点群データを、土量計算だけでなく出来形管理や施工管理、断面図作成にと広く活用し、劇的な効率アップにつなげています。

大林組でのドローン測量導入について

建築現場で活用するドローン選びのポイントとなる3つの機能

工事現場

建築現場で活用するドローンに求められる機能のうち、ドローン選びのポイントとなるものとして次の3つが挙げられます。

カメラ性能

建築現場で活用するドローンには優れたカメラ性能が求められます。

建築現場でドローンを飛行させるのは、人の目で直接見るのは大変な箇所を撮影させ、目視によるチェックに代えるため。
撮ってくる写真がお粗末なものでは意味がありませんよね。

一般的なカメラは2000万画素程度ですが、特に点検作業での活用などを想定するのであれば、数m離れた位置からでも細かなクラックなどを視認できるよう、できる限り高解像度のものがよいでしょう。

たとえば、1億画素のカメラを搭載していれば、かなり離れた位置から撮影した全体画像の一部を拡大しても十分に鮮明なため、全体を撮影した画像1枚で詳細点検までが可能となり、撮影工数を減らせるというメリットもあります。

★1億画素の超高解像度カメラを搭載したドローンの例★
ACSL-PF2

ドローン

(参照:株式会社ACSL公式サイト

障害物回避機能

柱と柱の間、壁と壁の間など限定された空間での撮影も少なくないこと、特定の箇所の詳細な様子を撮影するには一定の距離まで近づける必要があることを考慮すると、障害物回避機能もポイントとなってきます。

障害物への衝突を避けて安全に飛行・撮影できるよう障害物検知センサーを搭載したドローンは珍しくありませんが、センサー数は限られていることが一般的です。

前方だけでなく後方や下方、上方といったように、できるだけ多くの検知センサーを搭載している機種が望ましいでしょう。

★5方向の障害物検知が可能なドローンの例★
Phantom 4 Pro V2.0

Phantom 4 Pro V2.0(参照:DJI JAPAN 株式会社公式サイト

防塵機能

砂埃などをどうしても避けられないのが建築現場。防塵性能を備えている機種だと安心ですね。

最先端技術を詰め込んだ精密機械であるドローンはデリケート。地面にシートを敷いた上で離着陸させる、こまめにメンテナンスするなどの対策もありますが、砂埃が内部に入り込むことによるモータートラブルを避けるための有力手段はやはり防塵機能です。

★防塵構造モーター搭載の点検用小型ドローンの例★
IBIS

IBIS

 

(参照:株式会社Liberaware公式先サイト

建築現場でのドローン活用の始め方

ドローンと男性

現時点では、ドローンを飛ばすのに免許は必要ありません。ですが、現場で安全に飛行させ、的確な操縦でしっかりと成果を上げようと思えば、やはりドローンスクールで習うのが現実的。

建築現場でのドローン活用のはじめの一歩は「スクール探し」ということになるでしょう。

建築の仕事で使うという明確な目的がある以上、建築分野に強いスクールに通うのが正解です。多数あるドローンスクールの中から建築分野に強みを持つスクールを探し出す方法には、次のようなものがあります。

建築に強い管理団体に属するスクールを探す

全国のドローンスクール(講習団体)は2021年4月に1,000団体を超え、現在さらに増加中です。そうしたスクールを管理する団体数も70に上っています。(2021年9月時点)

管理団体にはそれぞれ特色や得意分野があるため、まず建築に強い管理団体を探し、その管理団体に属するスクールから選ぶというのは一つの方法です。

具体的な管理団体の例としては、JUAVAC(一般社団法人 日本UAV利用促進協議会)JDC(一般社団法人日本ドローンコンソーシアム)などが挙げられます。

建築関連企業の運営するスクールを探す

もう一つの方法は、建築関連企業が運営するスクールを探すというものです。

本業の建築業で実際にドローンを活用していることから、カリキュラムにも実践に即した内容が期待できる点、その経験に裏打ちされたノウハウも含め教えてもらえる点が大きなメリットといえます。

たとえば、赤外線外壁調査会社が運営するアジアドローンカレッジ東京足立校、測量会社が運営する土木UAVマイスター育成スクールなどが例として挙げられます。

建築業界でのドローン活用における課題

地図

他業界と比べると建築業界でのドローン活用はかなり進んでいるといえますが、今後のさらなる普及に向けた課題も見られます。

現場作業者による安全運用の課題

建築現場でドローンを操縦するのが現場作業者であることに起因する、安全運用上の課題があります。

現場作業者による運用がスムーズではない

建築現場でドローンを操縦するのは、基本的に現場作業者です。「ドローンのプロ」というわけではない現場作業者でも、安全かつスムーズに飛行させ、確実に目的を達成できる運用を無理なく行える必要があるでしょう。

たとえば、基本的な飛行技術の習得にとどまらず、人口集中地区での飛行に求められる厳重な安全確保や、プライバシーへの配慮といったリテラシー面を含む教育や訓練も十分に行わなくてはなりません。現場での運用に即した内容を学べる場、人材育成の場の充実が求められます。

また、熟練の操縦技術がなくとも満足行く運用ができるよう、ドローン側の高度な自律飛行性能、点検調査や撮影などの自動化対応なども望まれるところです。

課題解決へ向けた今後の展望

ドローンの安全活用のための人材育成・技術支援・標準化を目指し設立されたJADA(社団法人日本建築ドローン協会)により、「建築物へのドローン活用のための安全マニュアル」が作成されました。

同マニュアルには、ドローンを活用した建築物の施工管理や調査に関する内容も実用編として解説されています。

また、JADAでは同マニュアルを活用した「建築ドローン安全教育講習会」を年に3〜4回程度の頻度で開催。応用編に当たる「建築ドローンインスペクションモデル講習会」やレベルアップのための研修会も開催するなど、建築分野のドローン利用に関わる人に対する啓蒙活動と安全運用への取り組みを強化しています。

ドローンの自動化対応については、自動巡回型の点検用ドローンなどが既に実用化されており、今後さまざまな分野で自動化が進んでいくと考えられます。

3次元データと2次元データの混在の課題

ドローン測量で得られるデータが3次元である一方、現場工事は依然として2次元の図面をもとに進められていることによる効率面での課題があります。

ICT化が一部工程にとどまっている

現場工事は2次元図面による発注が主流であるため、ドローン測量による3次元データとの連携が難しく、3次元から2次元へ、あるいはその逆方向の変換作業に時間がかかってしまっているケースが目立ちます。

測量から図面作成、施工、管理までの工事全体をICT化しないと、ドローン活用のメリットが十分に活きてきません。

課題解決へ向けた今後の展望

国土交通省は、i-Constructionを推進していくに当たり先行的に実施すべき3つの施策を「トップランナー施策」として掲げています。

そのうちの一つが、全プロセスにおいて3次元モデルを利活用する「ICT施工」の実現です。

ドローンなどによる3次元測量によって得られる3次元データをもとに設計・施工計画を行い、施工土量も自動算出。工事現場では3次元設計データに基づきICT建設機械を自動制御し、書類に代えて電子成果品をもって検査を実施するといったフローが明確に示されています。

工事全体を3次元データでつなぐ動きは今後ますます加速していくでしょう。

まとめ

他産業に比べ全般的にIT化のスピードが緩やかといえる建築業界ですが、ことドローン活用に関しては先頭を走っているといえる状況です。

ドローンが活躍している分野としては

  • 施工管理
  • 住宅点検
  • 測量

などがあります。

そうした現場で活用するためのドローン選びの際にポイントとなってくるのは、

  • カメラ性能
  • 障害物検知機能
  • 防塵機能

といったところです。

もしも実際にドローン活用を始めたいのであれば、まずはドローンスクールで習うというのが現実的です。建築現場での活用を前提として、実践的なカリキュラムを希望する場合、

  • 建築を得意分野とする管理団体に所属するスクール
  • 建築関連企業の運営するスクール

のいずれかを探すとよいでしょう。

今後ますます広がっていくことが見込まれる建築業界でのドローン活用ですが、現場作業者による安全運用の実現、工事全体のICT化といった課題もあります。しかし、こうした課題解消への動きとともにドローンは建築現場にさらに普及し、業界全体が長年苦しんできた労働力不足の克服につながっていくはずです。

今や十分に実用化レベルに達しているドローンで、あなたの現場が抱える問題の解決を目指しませんか?