農薬散布ドローンの導入を考えている方の中には、除草剤散布を目的としている方も多いと思います。
しかし、ドローンで除草剤を散布するにあたり、どんなメリットがあるのか、今まで使っていた薬剤は使用できるのかという疑問が思い浮かびますよね。
そこでこの記事では、
- ドローンで使用可能な除草剤
- 除草剤散布にドローンを使用するメリット
- 除草剤散布にドローンを使用するにあたっての注意点
などについてお伝えし、除草剤散布においてドローンを正しく活用するための対策を提案していきたいと思います。
この記事を読めば、農薬散布ドローンでの除草剤散布について必要な知識が得られ、自信を持ってドローンを活用することができるでしょう。
※ドローンによる農薬散布のメリットデメリットや導入までの流れの全体像は、こちらの記事にまとめています。
ドローンの農薬散布とは?メリットデメリットや始め方・導入の注意点
※農業用ドローンの選び方や導入費用はこちらの記事にまとめています
目次
ドローンによる散布が可能な除草剤の種類
ドローンで除草剤散布作業を実施する場合は、それに適応している薬剤を使用することが義務づけられています。
ドローンと産業用ヘリコプターは同じ扱いで、ヘリコプターに対応している薬剤であればドローンでも使用可能。
どの薬剤を使用するかは以下のURL(産業用無人航空機農薬)から確認することができます。最新の登録情報や農薬のラベル情報が確認することができ、とても便利。
【検索方法】
- 「様々な項目から探す」をクリック
- 「使用方法」に「無人」と入力
- 「作物を選択」をクリックし、散布したい作物名を選択し、「確定する」をクリック(絞り込みで作物名を入力し、検索することもできます。)
- 「作物を選択」に作物名が入力されていることを確認し、「検索する」をクリック
※除草剤散布には、通常のドローンではなく農薬散布ドローンが必要になります。
農薬散布ドローンで除草剤を散布するメリットは5つ
ドローンでの除草剤散布には以下の5つのメリットがあります。
- 傾斜地でも問題なく散布できる
- 圃場の状態に関係なく散布できる
- 機械メンテナンスの手間が省ける
- 作物を傷めることなく散布できる
- ピンポイントで散布することができる
傾斜地でも問題なく散布できる
スプレーヤーやラジコンヘリでの散布が難しい傾斜地でも、ドローンなら難なく散布可能。
さらに小回りがきくので、複雑な地形にある圃場にも対応することができます。
圃場の状態に関係なく散布できる
圃場がぬかるんで入ることができない場合でも、ドローンなら問題なく薬剤を散布することが可能。
機械メンテナンスの手間が省ける
ドローンによる散布なら、ブームスプレーヤーなどの機械のメンテナンスの手間や費用がかかりません。
スプレーヤーでの散布の場合、例えば北海道など寒い地方ではホースが凍って破裂する恐れがあるので、不凍液を入れなければなりません。
ドローンならその手間や経費をかけることなく、除草剤を散布することが可能です。
作物を傷めることなく散布できる
ドローンなら圃場に入ることなく薬剤散布できるので、散布作業によって作物を傷める心配がありません。
ピンポイントで散布することができる
ドローンは、ヘリやブームスプレーヤーと違い、農薬や除草剤をピンポイントで散布することが可能。
手作業と同じように必要な箇所だけに、効率的に撒くことができるので、生産者の負担を減らすことができます。
農薬散布ドローンは薬剤混在のリスク回避にも有効
農薬散布ドローンは、作業負担の軽減だけでなく薬剤混在のリスク回避にも役立ちます。
どのような作物を育てているかによりますが、例えば植付けと管理作業が重なる時期は連日の作業の疲れから作業事故も起こりやすくなります。
このような時期はいろいろな畑作物の殺菌剤や殺虫剤、除草剤の散布が重なるため、
- 散布後にスプレーヤーのタンクなどの洗浄を入念に行わずに違う薬剤が混じった結果、薬害が起きる
- 除草剤が混じり、せっかく植付けしたのに枯らしてしまう
といった事案も発生しがち。
そこで、ある圃場では従来通りの方法で殺虫剤の散布作業を行い、別の圃場ではドローンで除草剤散布を行うなどの対策を取ることで、薬剤混在のリスクを回避しつつ敵期の作業を確実に行うことができます。
ドローンは水田への除草剤散布に向いている
ドローンは水田への除草剤散布に効果的に活用することができます。
水田では様々な雑草が稲の生育に被害を与えます。よって、除草剤が持ちうる能力を最大限に発揮できる適期を逃さずに植物に応じた薬剤を的確に散布することが重要。
しかし、広大な水田に何度も除草剤を散布することは、生産者にとって大きな負担となります。
その点ドローンなら、時間をかけずに効率的に薬剤を散布することができるので、生産者の負担を大幅に減らすことが可能。
ドローン散布に対応した除草剤の種類の拡大が課題
ドローンによる除草剤散布の課題としては、空中散布可能な除草剤がまだ少ないことが挙げられます。
ドローンで使用可能な農薬の数は増えてきているとはいえ、除草剤に限定した場合、ドローンで使用できる除草剤は水稲用の除草剤が多く、その他の作物除草剤はまだわずか。
さらにその中からその土地の防除体系を崩さずに使える薬剤を選ぶことになるので、ドローンによる除草剤散布がこれまでの方法にすべて取って代わることは現状において不可能と言わざるを得ません。
ですがドローンは、適期防除ができない部分のサポートや悪天候時、作業事故のリスク回避など生産者が使いたい時に都合よく使うことができる存在であることは間違いありません。
除草剤以外の農薬散布作業や肥料散布作業とうまく組み合わせることで、作業効率は大幅にアップするでしょう。
国の対応
農林水産省ではホームページにおいて農業用ドローンの普及啓発を行っており、各都道府県からのドローン散布農薬についてのニーズを農薬メーカーに通知して登録申請の検討を促すと同時に、特にニーズの高い農薬については産地とメーカーのマッチングを図るなど、ドローンに適した農薬の適用拡大を推進しています。
除草剤散布にドローンを使用するにあたっての注意点
除草剤散布にドローンを使用するにあたっての注意点は以下の2点。
- 必要な手続きをした上で航空法と農薬取締法に則って使用する
- 農薬散布ドローンはしっかりメンテナンスを行う
必要な手続きをした上で航空法と農薬取締法に則って使用する
除草剤も農薬の一つなので、ドローンによる散布に関して必要な手続きは農薬散布の場合と同じです。関係する法律は以下の2つ。
航空法
ドローンで農薬散布するためには、航空法の「危険物輸送」と「物件投下」の項目に該当します。
飛行開始予定日の10開庁日前までに飛行予定場所を管轄する空港事務所または地方航空局に申請が必要。
農薬散布法
ドローンでの農薬散布は航空法の他に、農薬取締法にも該当します。そのため農薬ラベルに記載されている使用方法を守る必要があります。
農薬散布ドローンはしっかりメンテナンスを行う
除草剤散布や農薬散布作業に使用したドローンは、特にメンテナンスをしっかりと行うことが重要。
こちらでは、農薬散布ドローンのメンテナンス方法を確認していきます。
配管、タンク内の掃除
作業後には必ずと言っていいほど配管に薬剤が残留してしまいます。もしこの薬剤が残ったままだと配管内で固着してしまい、つまりの原因となることも。
農薬散布ドローンを長持ちさせるためにも、配管の掃除は怠らないようにすることが大切です。タンク内もしっかり洗浄しましょう。
ポンプの掃除
使用後にはポンプに水道水を通して掃除しましょう。
ポンプ内に薬剤が残っているとポンプ内のギア部分で薬剤が固着してしまい、作動しなくなる恐れがあります。
モーターの掃除
薬剤がモーター内に固着していたり、粉塵が固着していると飛行中に悪影響を及ぼす恐れがあります。
ただしモーターはデリケートなので、軽い掃除以外はむやみに触らず、年一回はメーカーに依頼して機体のメンテナンスを行うことをおすすめします。
ノズルの掃除
薬剤を噴霧する部分のノズルは最もゴミがたまりやすい部分。内部にはゴムパッキンも含まれており、薬剤が付着している状態で長時間保管すると痛んでしまいます。
そのままにしておくとボタ落ち防止機能が作動しなくなるので、使用後は必ず掃除しましょう。
※ボタ落ち防止機能…薬剤を噴霧している最中に停止した時に、1秒以内に薬剤の吐出を止めることができる機能。止めた後はポタポタと落ちないように、ノズル先端付近に弁が付いている。
まとめ
この記事では農薬散布ドローンによる除草剤の散布について紹介してきましたが、もう一度大まかな要点を確認しておきましょう。
- ドローンで除草剤散布作業を実施する場合は、空中散布可能な薬剤を使用しなければならない。使用できる薬剤については農薬登録情報提供システムから確認する。
- 農薬散布ドローンで除草剤を散布するメリットは5つ
- 傾斜地でも問題なく散布できる
- 圃場の状態に関係なく散布できる
- 機械メンテナンスの手間が省ける
- 作物を傷めることなく散布できる
- ピンポイントで散布することができる
- 農薬散布ドローンは、様々な薬剤散布が重なった時などに他の散布方法と併用することで薬剤混在のリスクを回避することができる。
- 農薬散布ドローンは、複数回異なる薬剤を散布しなくてはならない水田への除草剤散布に効果的に使用することができる。
- ドローン散布に対応した除草剤の種類の拡大が課題だが、国としても農薬メーカーに登録申請の検討を促すなど適用拡大を推進している。
- 除草剤散布にドローンを使用するにあたっての注意点は以下の2点。
- 必要な手続きをした上で航空法と農薬取締法に則って使用する
- 農薬散布ドローンはしっかりメンテナンスを行う(薬剤が残ったままだと詰まりを起こしたり作動に影響する恐れがあるため)
現在、空中散布に対応できる農薬として登録されている除草剤の中から土地に合ったものを選ぶとなると、選択肢は多くはないのが現状です。
しかしドローンは、除草剤だけでなく他の農薬散布や肥料散布に使用したり、これまでの散布方法とうまく組み合わせることで、都合よく使うことができるツールであることは間違いありません。
本記事で得られた知識を元に、あなたの圃場においても効率的に農薬散布ドローンが活用されることを願っています。