さまざまな分野での活用が進みドローンがどんどん身近な存在になりつつある今、ドローンを飛ばすにあたって「ドローンパイロットになるには免許や資格を取らなければいけないの?」と疑問に思っている方も多いかもしれません。
また、業務上ドローンを使用する方の中には「ドローンに関する資格について知りたい」「資格を取得したいが方法がわからない」という方もいるのではないでしょうか。
ドローンの資格取得は義務ではありませんが、実質的には資格を取得しておいた方が多くのメリットが得られます。
特にビジネスでドローンを利用する場合は資格取得はマストと言っていいでしょう。
また、2022年に国のライセンス制度が導入されることが決まっていますが、ドローンのビジネス利用を考えているならすぐに民間ドローン資格を取得した方が良いケースもあります。
そこでこの記事では、
- ドローンの資格とは?
- ドローン資格を取得するメリット
- ドローン資格の取得方法
- ライセンス制度と民間資格の関係
- ビジネス向けやFPVドローンにおける電波法に関わる2つの資格について
- 農業用ドローンの技能認定
などについてお伝えし、ドローンに関わる資格の種類や必要性、これからの動向などについてわかりやすく解説していきたいと思います。
この記事を読めば、ドローンに関する民間資格や取得するメリット、国のライセンス制度との関わりについての知識が得られ、ドローンを扱う上で必要な正しい知識の習得方法を見つけることができるでしょう。
2022年12月5日に、ドローンの国家資格(免許)制度が開始されました。
こちらの記事で、ドローンの国家資格(免許)制度の全体像について詳しく解説していますので、是非併せてご覧ください。
目次
ドローンの資格とは
ドローンの資格とは、ドローンスクールと呼ばれるスクールに通い、講習・試験を受けた後に取得できる民間資格のことです。
ドローンは多くの分野で実用化されており、ドローンパイロットの数も増加しています。
ドローンを安全に飛ばし正しく運用するためには、正しい知識や基本的な操縦スキルが必要ですが、現在ドローンを飛ばすために義務付けられている公的な資格や免許は存在しません。
そこで登場したのが、ドローンの基礎(飛行原理・各種構成等)、法令、電波、気象、安全管理についての知識や基本的な操縦スキルを学ぶことができるドローンスクールです。
ドローンスクールとは、国土交通省航空局が認定した「管理団体」が運営する「講習団体」。
このドローンスクールに通い講習を受けた後、座学と実技の試験に通過することで、民間資格を取得することができます。
ドローン操縦に資格の取得はマストではないが取得すべき
ドローンには、自動車免許のような、ドローンを飛ばすために義務付けられている公的な資格や免許はなく、前章で説明した民間資格の取得も任意です。
ただし、資格取得が義務付けられていなくても、ドローンの運用には法令(航空法、小型無人機等飛行禁止法、道路交通法、電波法、条例など)によってルールが決められており、ドローンを事故なく安全に運用するためにはこのようなルールを学んでおくことが必要不可欠。
また、航空局への申請が必要になるケースについても正しく把握しておかなければなりません。
実質的には資格を取得しておいた方が良い
ドローンの資格取得は義務ではありませんが、実質的には資格を取得しておいた方がいいでしょう。
その理由は以下の3点です。
【知識や技術の取得という意味でもあった方が良い】
ドローンを飛ばすには、さまざまな規制や法律などについて知っておく必要があります。
特にビジネスでドローンを利用する方は、基本的な技術と、ドローンに関わる法令や安全運航管理に関する正しい知識の取得はマストです。
【申請時の書類を作成するのが大変】
飛行申請時の書類作成は個人での確認が難しい書類が多く手間がかかりますが、資格を取得しておけばその点が解決されることに加え、提出書類を一部省略することが可能です。
【申請の際10時間の飛行証明が必要なため】
航空局に飛行申請を行う際は、10時間の飛行証明が必要となりますが、資格取得のためにドローンスクールに通うことで、飛行経験を積むことが可能です。
飛行申請の詳細については次章で詳しく説明します。
ドローン資格を取得する3つのメリット
ドローンの資格を取得するメリットは以下の3点があげられます。
- ドローンに関わる法律の正しい知識が得られる・技術を証明できる
- 飛行申請時に申請項目を一部省略できる
- 10時間以上の飛行経験ができる
①ドローンに関わる法律の正しい知識が得られる
関連法規についての正しい知識が得られる
ドローン資格を取得することで、ドローンを規制している法律や条例についての正しい知識を習得することができます。
ドローンを運用する際には、航空法、小型無人機等飛行禁止法、道路交通法など、国や警察、自治体が定める法律や条例に従わなくてはなりません。
違反にあたっては、罰則が設けられているので、事前の確認が重要です。
資格取得のためのスクールでは、関連法規についても学ぶことができるので、効率的かつ確実に知識を身につけることができます。
技術を証明できる
ドローンの資格を持っていることで、ドローンを飛ばす技能があることを第三者に証明することができます。
ドローンは空を飛ばすものであり、きちんとした技術がないと事故に繫がる危険性もあることから、ドローンを飛行できる技能があることを証明できる客観的な指標が必要です。
ドローンスクールで取得する資格があれば、ドローンのことを知らない人にも技術を持っていることを証明することができます。
また、技術を証明できる資格を所持していることによって、クライアントにもわかりやすくアピールできるため、ビジネスシーンにおいてもメリットがあると言えるでしょう。
②飛行申請時に申請項目を一部省略できる
資格を取得すると、「国土交通省航空局への飛行許可・承認の申請時に申請項目を省略できる」というメリットもあります。
航空局への申請が必要となるのは「特定の飛行形態での飛行」または「特定の場所での飛行」であり、具体的には以下の9つのケースです。
認定資格は国家資格ではありませんが、国土交通省の定める一定の技能を習得していることの証明となるため、ドローンの飛行経歴・知識・能力の確認を簡略化することができます。
具体的には、以下の2つの書類の省略が可能です。
- 無人航空機を飛行させる者に関する飛行経歴・知識・能力確認書
- 申請事項に応じた飛行させる者の追加基準への適合性を示した資料
(出典:国土交通省HP)
審査が簡略化される分だけ許可・承認も早めに下りるので、特にビジネス用途であればぜひ取得しておきたいところです。
また、上の画像のような書類の確認事項はスクールに通っていなければ自身で確認することは難しく、そういった意味でも資格取得で得られるメリットは大きいと言えるでしょう。
③10時間以上の飛行経験ができる
資格を取得するためにスクールに通うことにより、10時間以上の飛行経験をすることができます。
②で説明した通り、「特定の飛行形態での飛行」または「特定の場所での飛行」をさせる場合には航空局への申請が必要になりますが、この申請の際には10時間以上の飛行経験が必要です。
個人で10時間以上の経験を積むのは飛行場所の確保なども含めて大変ですが、資格を取得するためにスクールに通えば、必要な技術を効率的に習得しながら申請に必要な飛行経験を積むことができます。
ドローンの資格を取得する方法
この章ではドローンの民間資格を取得する方法について説明します。
資格取得にはドローンスクールに通う必要がある
民間のドローン資格を取得するためには、ドローンスクールに通って講習を受ける必要があります。
資格ごとに定められたカリキュラム修了後に試験を受け、試験に合格すると資格証の交付が受けられます。
特に実技講習を受ける環境などについてはスクールごとのばらつきが大きい資格もあるので、スクール選びも重要なポイントとなるでしょう。
スクールの選び方については以下の記事で詳しく解説しておりますので、ぜひ参考になさってみてください。
【受講料の相場は10〜30万円程度】
受講料の相場は、修了後に認定資格が発行される一般的な講習(2〜3日間のコースが主流)の場合、概ね10〜30万円。
受講費には、2〜3日間の講習の費用、練習機のレンタル費用や保険料、テキスト代、受験料、認定資格の証明書の申請費用などが含まれています。
主要な認定資格
ドローンの認定資格を設けている団体は多数存在しますが、その中でも、国交省が無人航空機の講習団体及び管理団体の認可を開始した当初から管理団体として認定されている主要な団体が発行する3つの資格について簡単にご紹介します。
- JUIDA(ジュイダ/一般社団法人日本UAS産業振興協議会)
- DPA(ディーパ/一般社団法人ドローン操縦士協会)
- DJI(DJI JAPAN株式会社)
JUIDA
一般社団法人日本UAS産業振興協議会「JUIDA(ジュイダ)」は、ドローン関連の民間団体の中で最も歴史のある団体。
なんといってもスクール数や会員数、資格取得者数が多いというのが特徴です。
全国にある認定スクールにおいてJUIDAが定めるカリキュラムを修了した操縦士には、JUIDAが定める申請手続きを行った上で、「無人航空機操縦技能証明証」が交付されます。
また、「無人航空機操縦技能証明証」の取得者でなおかつ飛行業務経験のある人は、無人航空機の安全運航管理に関する基本知識とリスクアセスメントを習得することで、申請手続きを行った上で「無人航空機安全運航管理者証明証」の交付を受けることができます。
JUIDAの資格は数あるドローン関連資格の中でも特に信頼性が高い資格の一つと言えます。
JUIDAの資格詳細やどの様な団体かについては、こちらの記事でより詳しく解説しています。
DPA
一般社団法人 ドローン操縦士協会「DPA(ディーパ)」もJUIDAと同じように、全国に多数の認定スクールを持つ団体です。
カリキュラム修了後に取得できる「ドローン操縦士回転翼3級」では、ドローンの安全な飛行に必要な基礎知識と基本技能を持っていることの証明を受けることができます。
DPA(ディーパー)は飛行実技に力を入れているのが特徴で、実習を通じてドローンオペレーターとして即戦力になるために必要な知識と経験を学べるカリキュラムが強みであると言えます。
DPAの資格詳細やどの様な団体かについては、こちらの記事でより詳しく解説しています。
DJI
DJIは、世界ナンバーワンのシェアを誇る中国のドローンメーカーです。
DJI製品に特化した独自のドローン操縦者育成プログラム「DJI CAMP」に参加し、所定の試験に合格することで、DJI CAMPスペシャリストと呼ばれる資格を得ることができます。
「DJI CAMP」はスクールに常設されているわけではなく、時期を指定して受講者を募集する形式なのが特徴。
また、参加資格として10時間以上の飛行経験とDJI製の機体を所持していることが条件となっています。
DJI CAMPの資格詳細については、こちらの記事でより詳しく解説しています。
2022年ドローンのライセンス制度がスタートする
前章までで紹介した通り、今存在するドローンの資格は民間資格のみですが、2022年よりドローンの操縦ライセンス制度がスタートする予定です。
こちらは国家資格で、レベル4(補助者なし、操縦者の目視なしで、ドローンを人がいるエリアの上空に飛ばすこと)の実現に向けて取り入れられる制度です。
2つの操縦ライセンスが作られる
操縦ライセンスは、一等資格と二等資格の2つが作られる予定で、レベル4のような人がいる場所の上空でドローンを飛ばすためには、一等ライセンスが必要になるとされています。
レベル4以外の場面であれば二等ライセンスで対応可能です。
ライセンスの要不要、どちらのライセンスが必要になるかは下図をご覧ください。
一等ライセンスが必要なケース
一等ライセンスは、立ち入り管理措置(補助者や看板の配置などにより、第三者の立ち入りを管理すること)なしでドローンを飛ばす際に必須となります。具体的には以下のような飛行形態が想定できます。
二等ライセンスが必要なケース
二等ライセンスは一等ライセンスと異なり、必須ではありませんが、飛行申請が必要な場合に承認・許可の手続上の便宜を受けることができます。
二等ライセンスの具体的には、以下のような飛行形態が想定できます。
ドローンのビジネス利用を考えている場合は、社会的信用性や申請の手間の簡略化という観点から、取得すべきでしょう。
ライセンスの取得方法
一等資格、二等資格いずれを選ぶにしろ、国が認定したドローンスクールで講習を受け、指定試験機関で試験・身体検査を受けるという流れが基本になる予定です。
ライセンス取得のためには学科試験と実地試験の2つをクリアする必要があります。
一等ライセンスはステイ、二等ライセンスでビジネス利用ならすぐに民間資格を取得すべき
国のライセンス制度がスタートしたからといって民間資格がなくなるわけではありません。
つまり、民間のライセンス制度と国のライセンス制度が共存するということになります。
二等ライセンス取得を想定している方の中で現時点でビジネス活用したいと考えている場合はすぐスクールに通って民間資格を取得することをおすすめします。
なぜなら、操縦ライセンスがビジネス上の信頼に直結するうえ、時間の効率化(申請書類を一部省略できる)に繫がるからです。
一等ライセンス取得を想定している方は、現時点でこの技術を取得できるスクールは存在しないため、ライセンス制度が開始するのを待ってスクールに通いましょう。
操縦ライセンスと共にスタート予定の機体認証制度も要チェック
操縦ライセンスと共に、ドローンの種類、製造者、製造番号、所有者と使用者の名前や住所などを登録する機体認証制度もスタートする予定です。
併せて、自動車の車検のように機体の整備が義務付けられることになります。
具体的な登録方法などの詳細はまだ発表されていませんが、操縦ライセンスと共に今後の動向をこまめにチェックしておくことをおすすめします。
ドローンのライセンス制度に関しては下記の記事にて詳細を解説しておりますので、ぜひご覧になってみてください。
ビジネス向けやFPVドローンは電波法に関わる資格が必要なケースがある
DJI phantomなどの大手メーカーが大衆向けに販売しているドローンは資格不要ですが、産業用ドローンやFPVドローンなどの特殊なドローンは一般のドローンとは別の周波数帯を使用するため、無線資格が必要となるケースがあります。
また、この2つの資格は、免許取得後に電波を使用するための開局申請が必要になります。
第三級陸上特殊無線技士
産業用途などで使用する大型のドローンの中で5.7GHz帯という周波数の電波を使用する機体を飛行させるためには、第三級陸上特殊無線技士以上の資格が必要です。
国家試験を受験して合格するか、養成講座や講習会に参加し修了試験を受けて合格するかのどちらかの方法で取得可能。
受験に関する詳しい情報はこちらから確認できます。→公益財団法人 日本無線協会
第四級アマチュア無線技士
5.8Ghz帯の映像伝送を行うFPVドローンを操作するためには、個人用途の場合「第四級アマチュア無線技士」以上の資格が必要です。
FPVドローンとは、ゴーグルを装着すると、ドローンで撮影しているカメラの映像をリアルタイムで見ることができるドローンのこと。
主にドローンレースなどで使用されます。こちらも国家試験を受験して合格するか、養成講座や講習会に参加し修了試験を受けて合格するかのどちらかの方法で取得することができます。
受験に関する詳しい情報はこちらから確認できます。→公益財団法人 日本無線協会
電波法に関わる資格については下記の記事でも詳しく解説しておりますので、参考になさってください。
農業用ドローンは技能認定が必要なケースがある
農業用ドローンは、操縦に関しての自動車免許のような資格は必要ありませんが、選ぶ機体によって技能認定を受けなければ購入できない場合があります。
技能認定後でなければ購入できないのは、以下の2つの場合です。
- 農林水産航空協会の認定機を使用する場合
- DJI、クボタの農業用ドローンを使用する場合
これ以外の農業用ドローンを使用する際には、認定資格は不要です。
ただし、どの場合においても、ドローンによる農薬散布は国土交通大臣の承認が必要となる飛行形態「危険物輸送」「物件投下」に該当するため、事前に承認申請が必要です。
技能認定を受けるには
農水協やUTCの認定機の技能認定を受けるには、農水協認定機であれば農林水産航空協会、DJI・クボタの農業用ドローンであればUTC農業ドローン協議会に認定された教習施設で行われる教習を受講することが必要になります。
農業用ドローンの資格については下記の記事にて詳しくご紹介しております。
まとめ
ドローンに関わる資格の種類や必要性、これからの動向などについて紹介してきましたが、もう一度大まかな要点を確認しておきましょう。
- ドローンの資格とは、ドローンスクールと呼ばれるスクールに通い、講習・試験を受けた後に取得できる民間資格のこと。
- ドローン操縦に資格の取得はマストではないが、以下のような理由から資格を取得しておいた方が良いと言える。
☑知識や技術の取得という意味でもあった方が良い
☑申請時の書類を作成するのが大変
☑申請の際10時間の飛行証明が必要なため
- ドローンの資格を取得するメリットは以下の3点。
- ドローンに関わる法律の正しい知識が得られる・技術を証明できる
- 飛行申請時に申請項目を一部省略できる
- 10時間以上の飛行経験ができる
- 民間のドローン資格を取得するためには、スクールに通い、特定のカリキュラムを修了した上で最終的に認定試験に合格する必要がある。
- ドローンの認定資格を設けている団体は多数存在するが、国交省が無人航空機の講習団体及び管理団体の認可を開始した当初から管理団体として認定されている主要な団体は以下の3つ。
【実技系】
JUIDA(ジュイダ/一般社団法人日本UAS産業振興協議会)
DPA(ディーパ/一般社団法人ドローン操縦士協会)
DJI(DJI JAPAN株式会社)
- 2022年スタートのライセンス制度で作られるのは2種類のライセンス。レベル4のような人がいる場所の上空でドローンを飛ばすためには、一等ライセンス取得が必須となる。
- 二等ライセンスは飛行申請が必要な場合に承認・許可の手続き上の便宜を受けることができる。二等ライセンス取得を想定しており現時点でビジネス活用したいと考えている場合は、すぐスクールに通って民間資格を取得するべき。
- 産業用ドローンやFPVドローンなどの特殊なドローンは一般のドローンとは別の周波数帯を使用するため、無線資格が必要となるケースがある。
- 農業用ドローンは、選ぶ機体によって技能認定を受けなければ購入できない場合がある。
2022年、いよいよドローンライセンス制度がスタートする予定です。これにより、ドローンの社会との関わり方が大きく変わることになります。
しかし、現時点でドローンをビジネス利用するならば、スクールに通って民間資格を取得するのが現実的な有効手段であると言えるでしょう。
本記事で得られた知識を元に、ドローンを扱う上で必要な技術や正しい知識を習得し、あなたのビジネスにおいてドローンが有効的に活用されることを願っています。