「ドローンを飛ばしたいけれど、『特定飛行』というのがあると聞いた。どんな飛行のこと?」
「仕事でドローンの特定飛行をしたいけれど、その場合はどうすればいい?」
ドローンを飛ばす際に、そんな疑問を持った人も多いでしょう。
「特定飛行」とは、以下の空域・方法でドローンを飛ばすことを指します。
これらを行う際には、事前に国土交通省に申請して、許可・承認を受けなければなりません。
無許可で特定飛行を行えば、50万円以下の罰金を科せられる恐れがあります。
特定飛行の種類 | 飛行したい場合 | ||
---|---|---|---|
飛行空域 | ・150m以上の高さの上空 ・空港周辺の空域 ・人工集中地区(DID地区)の上空 ・緊急用務空域 |
国土交通省の「許可」が必要 ※「緊急用務空域」だけは、一般的には飛行不可 |
|
飛行方法 | ・夜間飛行 ・目視外飛行 ・人または物件から30m未満での飛行 ・催し場所上空での飛行 ・危険物の輸送 ・物件投下 |
国土交通省の「承認」が必要 |
こう聞くと、「申請が必要とは、面倒だな」と感じるかもしれません。
が、実際には以下のような措置があり、ビジネスで特定飛行をしたい人や資格を持っている人であれば、申請手続きが簡便になります。
1)「個別申請」と「包括申請」:ビジネス目的の場合は、複数回の飛行をまとめて申請できる
申請形式 | 概要 | 向いているケース |
---|---|---|
個別申請 | 飛行1回ごとに申請する方法 | 趣味でドローンを飛ばす場合 |
包括申請 | 同じ申請者が、一定期間内に繰り返し、継続して飛行を行う場合に、それらをまとめて申請する方法 | ビジネス目的でドローンを利用する場合 |
2)ドローンの国家資格:飛行申請が不要(または一部省略)な場合がある
飛行申請が不要 |
---|
以下のすべてを満たす場合 ※同じ特定飛行でも、「空港周辺」「150m以上の上空」「催し場所上空」「危険物の輸送」「物件投下」の場合は、申請の一部を省略できる |
そこでこの記事では、特定飛行について知っておきたいことをまとめました。
◎ドローンの「特定飛行」とは
◎特定飛行①:4つの「飛行空域」
◎特定飛行②:6つの「飛行方法」
◎特定飛行に該当しなくても、申請が必要なケースがある
◎「ドローン情報基盤システム2.0(DIPS)」での特定飛行の許可申請の流れ
◎特定飛行に関する注意点
最後まで読めば、知りたかったことがわかるはずです。
この記事で、あなたが法律を守って正しくドローンを特定飛行させられるよう願っています。
目次
ドローンの「特定飛行」とは
ドローンに関しては、「航空法」や「小型無人機等飛行禁止法」などの法律によってさまざまな規制が定められています。
中でも重要なのが、「特定飛行」に関する規制です。ドローンを飛ばす人は、この特定飛行について正しく理解しておかなければなりません。
そこでまず、「特定飛行とは何か?」について、わかりやすく説明しておきましょう。
「特定飛行」は航空法で飛行に許可・承認が必要な区域・方法
「特定飛行」とは、「航空法において規制の対象となる空域における飛行又は規制の対象となる方法による飛行」(国土交通省「無人航空機の飛行の安全に関する教則」より引用)のことで、これを行う際には、事前に国土交通省の許可・承認を得なければなりません。
というのも、ドローンを飛ばすとき、その場所や飛ばし方によっては大きな危険を伴います。
たとえば、高度上空を飛ばしていると、飛行機などに接触する恐れがありますし、人が大勢いる場所や、ドローンが見えにくい夜の時間帯などに飛ばす場合も、墜落や衝突などの事故を起こすリスクが高まるでしょう。
そのため、危険性の高い場所や方法でドローンを飛ばすことを「特定飛行」と定め、許可・承認なく行うことを原則禁止しているのです。
航空法が定める特定飛行:4つの空域と6つの飛行方法
では、航空法ではどんな飛行を「特定飛行」と定めているのでしょうか?
それは、以下の4つの空域と、6つの飛行方法です。
【航空法が定める「特定飛行」】
<飛行空域>
・150m以上の高さの上空
・空港周辺の空域
・人工集中地区(DID地区)の上空
・緊急用務空域
※「緊急用務空域」とは、災害などが発生した際に、人命救助、捜索、消火などのためにヘリコプターなどが飛行するのを妨げないよう、ドローンの飛行が原則禁止される空域です。
災害に応じて国土交通大臣が指定します。
出典:国土交通省「無人航空機の飛行許可・承認手続」
<飛行方法>
・夜間飛行
・目視外飛行
・人または物件から30m未満での飛行
・催し場所上空での飛行
・危険物の輸送
・物件投下
出典:国土交通省「無人航空機の飛行許可・承認手続」
このうち、4つの空域を飛行したい場合は国土交通省の「許可」が、6つの方法で飛行したい場合は同じく「承認」が必要になります。
(ただし、空域のうち「緊急用務空域」だけは、一般のドローンの飛行許可は出ません。)
それぞれのくわしい説明は、2章以降で行いますので、のちほどそちらもよく読んでください。
特定飛行の際の国土交通省への申請とは
さて、前項で述べたように、特定飛行は原則として航空法で禁止され、行いたい場合は国土交通省からの許可・承認が必要です。
この申請について、説明しておきましょう。
特定飛行のうち4つの空域には「許可」、6つの方法には「承認」が必要
まず前提として、特定飛行についての国土交通省への申請は、「許可」と「承認」の2つにわかれています。
航空法では、前述した特定飛行のうち、4つの空域を飛ばしたい場合は「許可」が、6つの方法で飛ばしたい場合は「承認」が必要としています。
これらはどう異なるのでしょうか?
「許可」とは、法的に禁止されている行為を、ある条件を満たした場合に限って禁止を解除することです。
一方「承認」とは、行政が定めたルール以外の方法をとる場合に、行政がそれを認めることをあらわします。
つまり、禁止されているものを特別に行う際に必要なのが「許可」で、ルールが定められているものをそれ以外の方法で行う際に必要なのが「承認」と言えるでしょう。
「許可」が必要 | <飛行空域> ・150m以上の高さの上空 ・空港周辺の空域 ・人工集中地区(DID地区)の上空 ・緊急用務空域 →原則として禁止されている 一定の条件を満たした場合には、禁止が解除される=「許可」される |
|
---|---|---|
「承認」が必要 | <飛行方法> ・夜間飛行 ・目視外飛行 ・人または物件から30m未満での飛行 ・催し場所上空での飛行 ・危険物の輸送 ・物件投下 →本来は、「日中飛行」「目視内飛行」「人または物件との間は30m以上」「催し場所上空では飛行させない」「危険物を輸送しない」「物を投下しない」というルールが定められている そのルールを外れた方法で飛行したい場合、行政に申請してそれを認めてもらう=「承認」される |
ただ、「許可」「承認」いずれの場合も、国土交通省に申請する手続きは同じですので、手続き上の区別は必要ありません。
あくまで法律・規定の上でそのように区別されているということですので、知識として覚えておいてください。
飛行許可の申請には「個別申請」と「包括申請」がある
次に知っておきたいのは、特定飛行の許可申請には「個別申請」と「包括申請」という2つの申請形式があるということです。
それぞれの違いは以下です。
申請形式 | 概要 | 向いているケース |
---|---|---|
個別申請 | 飛行1回ごとに申請する方法 | 趣味でドローンを飛ばす場合 |
包括申請 | 同じ申請者が、一定期間内に繰り返し、継続して飛行を行う場合に、それらをまとめて申請する方法 | ビジネス目的でドローンを利用する場合 |
現在、空撮や点検、農薬散布などさまざまな分野で、ドローンのビジネス活用が進んでいます。
今後は物流・輸送の分野での利用を進めていくよう、官民で協力して取り組んでいるところです。
そんな中で、たとえば宅配業者はドローンを使って配達しようと考えた場合、配達1回の飛行ごとに個別申請が必要となれば、時間も手間も膨大にかかってしまい、ビジネスとして成立しないでしょう。
そこで、事業でもドローンを活用しやすいよう、包括申請が認められているのです。
ただし、どんな場合でも包括申請ができるわけではありません。
以下に、包括申請できる場合とできない場合をまとめましたので、確認してください。
包括申請については、別記事「ドローンは包括申請がおすすめ!その理由や申請条件、注意点も解説」でくわしく解説していますので、実際に申請する際にはそちらも読んでください。
国家資格があれば申請が不要(あるいは一部省略)な場合がある
また、申請者がドローンの国家資格を持っていれば、特定飛行の飛行申請が不要になる、または一部を省略できる場合があります。
それは以下のようなケースです
飛行申請自体が不要 |
---|
以下のすべてを満たす場合 ※同じ特定飛行でも、「空港周辺」「150m以上の上空」「催し場所上空」「危険物の輸送」「物件投下」の場合は、申請の一部を省略できる |
特定飛行の許可・承認申請について、さらにくわしく知りたい場合は、別記事「【チャート付】ドローンの飛行申請が必要な全パターンとその申請方法」が参考になりますので、そちらもぜひ読んでください。
一般的に「緊急用務空域」では飛ばせない
ただし、「緊急用務空域」は少し事情が異なります。
特定飛行の許可申請をしても、一般的には許可は得られないでしょう。
というのも、そもそも「緊急用務空域」とは、災害などが発生した際に、人命救助、捜索、消火などのためにヘリコプターなどが飛行するのを妨げないよう、ドローンの飛行が原則禁止される空域で、必要に応じて国土交通大臣がエリアを指定するものです。
特定飛行の中でも、特に危険性、緊急性が高い空域だと言えます。
そのため、ドローンの飛行申請をすることはできますが、インフラ点検や報道など災害時であってもドローンを飛ばす必要性がある場合にしか許可されません。
一般の個人の場合は、「緊急用務空域が指定されたら、その場所ではドローンは飛ばせない」と考えてください。
100g未満のドローンは、一部の特定飛行の申請は不要
また、特定飛行は、すべてのドローンに対して禁止されているわけではありません。
重さ100g未満のドローンであれば、航空法の適用外です。
そのため、航空法が定める「特定飛行」の一部については、国土交通省への飛行許可・申請は必要ないのです。
では、特定飛行のうちどれが許可・申請不要でどれが必要なのでしょうか?
その区別をわかりやすく表にまとめましたので、以下を見てください。
【100g未満のドローンに関する特定飛行の可・不可】
特定飛行の種類 | 可・不可 | 備考 | |
---|---|---|---|
飛 行 空 域 |
150m以上の高さの上空 | 申請不要で可 | ─── |
空港周辺の空域 | 申請が必要 | ・航空法では「航空機の飛行に影響を及ぼすおそれのある行為」として許可が必要 ・小型無人機等飛行禁止法の規制によっても許可が必要 |
|
人工集中地区(DID地区)の上空 | 申請不要で可 | ─── | |
緊急用務空域 | 原則不可 | ・航空法では人が「航空機の飛行に影響を及ぼすおそれのある行為」として原則禁止 | |
飛 行 方 法 |
夜間飛行 | 申請不要で可 |
─── |
目視外飛行 | |||
人または物件から30m未満での飛行 | |||
催し場所上空での飛行 | |||
危険物の輸送 | |||
物件投下 |
自分の持っているドローンの重さを確認して、特定飛行が禁止されるかどうか判断してください。
特定飛行①:4つの「飛行空域」
では、「1-2.航空法が定める特定飛行」で簡単に触れた「特定飛行」について、さらにくわしく説明していきましょう。
まずは特定飛行のうち、「飛ばす場所」=「飛行空域」についてです。
以下の4つの空域でドローンを飛ばすことは、航空法により「特定飛行」とされていて、このエリアでの飛行は原則禁止、飛ばす際には国土交通省の許可が必要です。
そのため、これらの空域を「飛行禁止空域」とも呼びます。
【飛行禁止空域】
出典:国土交通省「無人航空機(ドローン、ラジコン機等)の安全な飛行のためのガイドライン」
- 150m以上の高さの上空
- 空港周辺の空域
- 人工集中地区(DID地区)の上空
- 緊急用務空域
それぞれ説明していきましょう。
150m以上の高さの上空
まず、ひとつめの飛行禁止空域は、「地表又は水面から150m以上の高さの空域」です。
これは、飛行機の「最低安全高度」が法律で150m〜と決められているためで、ドローンが飛行機と接触することのないよう、150m以上の高さでの飛行は原則禁止されています。
150m以上で飛ばしたい場合は、事前に国土交通省に申請しなければなりません。
(申請のしかたは、「5.「ドローン情報基盤システム2.0(DIPS)」での特定飛行の許可申請の流れ」で説明します。)
ただ、これには2点、注意すべきことがあります。
- 「地表または水面から」150mが境目であること
- 150m以上の高さの上空」でも、「物件から30m以内」は飛行禁止空域から除外される
どういうことでしょうか?
「地表または水面から」150mが境目であること
この規定は、「地表または水面から150m」を境にして、特定飛行とそれ以外とをわけています。
つまり、山の頂上であれば、「頂上の地面から150m」が境目です。
下の図の、緑色の枠で囲った部分を見てください。
山など地形の起伏にあわせて、「150m以上」の飛行禁止空域の境目も起伏がついています。
「地表または水面から150m以上」とは上図のような意味です。
「海抜150m」や、「操縦者がいる場所を0mとして、高さ150m」などではありませんので注意してください。
「150m以上の高さの上空」でも、「物件から30m以内」は飛行禁止空域から除外される
また、「150m以上の高さの上空」を飛行する場合でも、「物件から30m以内」の範囲は飛行禁止空域から除外されることになっています。
図で表すと、以下のようになります。
出典:国土交通省「無人航空機(ドローン、ラジコン機等)の安全な飛行のためのガイドライン」
これは、ドローンの飛行方法のルールとして、「人(第三者)又は物件(第三者の建物、自動車など)との間に30m以上の距離を保って飛行させること」と定められているためです。
たとえば、このルールを守って140mの高さのビルの上を飛ぶと、ドローンは170m以上上空を飛ぶことになり、本来であれば「150m以上」の特定飛行の許可申請が必要になります。
が、「ビルの高さ140m+30m=170m」ですので、170mの高さを飛ぶのであれば、飛行禁止空域ではない、つまり「150m」特定飛行の許可申請は必要ないのです。
ただし、この除外部分を飛行することは「物件から30m以内の飛行」になるので、「30m以内」の特定飛行の承認申請は必要です。
また、そのエリアが「空港周辺」「人工集中地区(DID地区)の上空」など、他の特定飛行の条件に該当していれば、やはり許可申請は必要ですので注意してください。
空港周辺の空域
2番めの飛行禁止空域は、「空港周辺」です。
空港周辺では、離発着する飛行機が低空を飛ぶため、もしドローンを飛ばせば接触の危険性が特に高まるでしょう。
そのため、ドローンは原則禁止、飛ばす必要があれば国土交通省に申請が必要とされています。
また、空港周辺については、航空法だけでなく「小型無人機等飛行禁止法」という法律でも飛行が制限されています。
「空港周辺」エリアの確認方法
といっても、どこまでが「周辺」なのか、判断しにくいでしょう。
「航空法」が「特定飛行」と定めている=飛行許可が必要な「空港周辺」のエリアについては、国土交通省「空港等設置管理者・空域を管轄する機関の連絡先について」で確認することができます。
同ページの「空港等の進入表面等、管制圏等のエリアに該当しているか」という項目の最後、「地理院地図(国土地理院)」というところからリンクで、以下のような地図が確認できます。
【地理院地図で、飛行許可が必要な「空港周辺」を確認する方法】
左の「地図の種類」で「空港等の周辺空域」を選択する
→緑色の部分を飛行する際には、国土交通省の飛行許可が必要
出典:国土地理院「地理院地図」
「空港周辺」の高さの確認方法
ただ、これは平面的なエリアしかわかりません。
実際には、「高さ」についても「150m」とはまた別に規定があり、「空港やヘリポート等の周辺に設定されている進入表面、転移表面若しくは水平表面又は延長進入表面、円錐表面若しくは外側水平表面の上空の空域」は飛行禁止空域です。
これについては、空港によって禁止の範囲が異なりますので、具体的には以下の図を参照してください。
◎新千歳空港、成田国際空港、東京国際空港、中部国際空港、大阪国際空港、関西国際空港、福岡空港、那覇空港の場合
→以下の図に示す空港の周辺に設定されている進入表面、転移表面若しくは水平表面若しくは延長進入表面、円錐表面若しくは外側水平表面の上空の空域、進入表面若しくは転移表面の下の空域又は空港の敷地の上空の空域
出典:国土交通省「無人航空機(ドローン、ラジコン機等)の安全な飛行のためのガイドライン 」
◎その他空港やヘリポート
→以下の図に示すその他空港やヘリポート等の周辺に設定されている進入表面、転移表面若しくは水平表面又は延長進入表面、円錐表面若しくは外側水平表面の上空の空域
出典:国土交通省「無人航空機(ドローン、ラジコン機等)の安全な飛行のためのガイドライン 」
人口集中地区(DID)の上空
飛行禁止空域の中で、もっとも問題になりがちなのが「人口集中地区(DID)の上空」でしょう。
ドローンを飛ばしたいと思っても、人が大勢いる場所では墜落や衝突の危険が大きいため、特定飛行として原則禁止しています。
「DID」とは、国勢調査によって5年ごとに定められるもので、以下に該当する地域です。
1)原則として人口密度が1平方キロメートル当たり4,000人以上の基本単位区等が市区町村の境域内で互いに隣接している
2)それらの隣接した地域の人口が国勢調査時に5,000人以上を有する
どのエリアがDIDかは、国土地理院の「地理院地図」で最新情報を確認することができます。
たとえば以下のように表示されますので、自分がドローンを飛ばしたいエリアが該当するか、事前にかならず確認してください。
【東京周辺のDID地区】
左の「地図の種類」で「人口集中地区」の最新のものを選択する
→赤いエリアがDID
出典:国土地理院「地理院地図」
緊急用務空域
4つめの飛行禁止空域は、「緊急用務空域」です。
これについてはここまで何回か触れましたが、あらためて説明しましょう。
「緊急用務空域」とは、地震や火災などの災害などが発生した際に、国土交通大臣が指定するものです。
災害地では、人命救助、捜索、消火などのためにヘリコプターなどが出動します。
その飛行を妨げることがないよう、ドローンなどの飛行が禁止されるのです。
ですから、平時であれば緊急用務空域というのはありません。
が、災害が起きて緊急用務空域が指定された場合、もし誰かがそれを知らずにドローンを飛ばしてしまうと、救助ヘリが飛べなくなって被害が大きくなってしまう恐れがあります。
そのためドローンを飛ばす際には、操縦者は事前にかならず緊急用務空域の確認をすることが義務付けられています。
もし事前に国土交通省に特定飛行の申請をしていて、許可を得ていた場合でも、そのエリアが緊急用務空域に指定された場合は、飛ばすことはできません。
以下のリンク先で最新情報が確認できますので、利用してください。
- 国土交通省航空局ホームページ
- 「国土交通省航空局 無人航空機」ツイッター(@mlit_mujinki)
ちなみに、「150m以上の高さ」「空港周辺」「DID」の特定飛行については、国土交通省に申請することで飛行が許可される可能性があります。
が、緊急用務空域に関しては、インフラ施設の点検や報道など必要性の高い目的以外では、ドローンの飛行許可はほぼ出ないと考えてください。
特定飛行②:6つの「飛行方法」
前章では、特定飛行のうち「飛ばす場所」に関するものを4つ説明しました。
が、前述したように、特定飛行には「飛ばす方法」に関するものもあります。
それは以下の6つの方法です。
<飛行方法>
・夜間飛行
・目視外飛行
・人または物件から30m未満での飛行
・催し場所上空での飛行
・危険物の輸送
・物件投下
これらはいずれも、ドローンを飛ばすには危険性が高い方法であるため、特定飛行として原則禁止、飛ばす場合は事前の申請が求められます。
それぞれどんな飛行が該当するか、くわしく説明しましょう。
夜間飛行
まず、「夜間の飛行」は特定飛行として原則禁止されています。
夜間にドローンを飛ばしたい場合は、国土交通省に承認申請が必要です。
要注意なのは、この場合の「夜間」とは「国立天文台が発表する日没の時刻から日の出の時刻まで」を指す、ということです。
そのため、日によって、また場所によって「夜間」とされる時間=特定飛行に含まれる時間帯が異なります。
また、飛行したい時間が「夜間」と「日中」にまたがる場合も、飛行の許可申請が必要です。
たとえば、日没が18時で、17時から19時まで飛ばしたい場合などです。
地域ごとの日没・日の出の時間は、国立天文台の「各地のこよみ」、または「今日のこよみ」で確認できます。
夕方や明け方にドローンを飛ばしたい場合は、「夜間」に該当するかどうか事前に確認してください。
【国立天文台「各地のこよみ」「今日のこよみ」】
目視外飛行
次に、「目視外の飛行」です。
「目視外」とは、操縦者が肉眼でドローンを見ることができない範囲を表します。
航空法では、ドローンの操縦者が肉眼でドローンの位置や飛行姿勢を把握し、その周辺に人や物がないかどうかの確認も確実に行える状態で飛行するよう求めています。
それができない状態での飛行は、「目視外飛行」として原則禁止、目視外でドローンを飛ばしたい場合には承認申請が必要です。
「目視」「目視外」の区別は、「肉眼で見ることができるかどうか」です。
もっとくわしくいえば、以下のようにわけられます。
目視に含まれる | ・操縦者が肉眼で見る ・操縦者がメガネをかけて見る ・操縦者がコンタクトレンズを装着して見る |
|
---|---|---|
目視に含まれない =目視外 |
・操縦者が双眼鏡で見る ・操縦者がモニターで見る ・操縦者本人ではなく、補助者が見る |
最近、操縦者がドローン目線のカメラ映像をリアルタイムで見られる「FPVゴーグル」をかけて飛ばすケースも見かけるようになりました。
このFPVも、肉眼で見てはいないので「目視外」の特定飛行にあたります。
ということは、FPV飛行をする際には、許可申請が必要だということですので、注意してください。
【FPVゴーグルでの飛行】
人または物件から30m未満での飛行
3つめの特定飛行方法は、「人または物から30m未満での飛行」です。
航空法にのっとれば、ドローンを飛ばす際には人や物から30m以上離して飛ばさなければなりません。
もし、それ以上近づけて飛ばしたい場合は、特定飛行として原則禁止されているので、事前の承認申請が必要です。
ただ、この「人」には、ドローンの操縦者自身と、それを補助する「補助者」は含まれません。
操縦者と補助者のまわり30m未満の距離で飛ばすことは、特定飛行にはあたらないというわけです。
また、ここでいう「物」に含まれるもの、含まれないものは以下のように区別します。
「物」に 含まれる |
a)中に人が存在することが想定される機器(車両等) →自動車、鉄道車両、軌道車両、船舶、航空機、建設機械、港湾のクレーン 等 b)建築物その他の相当の大きさを有する工作物 →ビル、住居、工場、倉庫、橋梁、高架、水門、変電所、鉄塔、電柱、電線、信号機、街灯 等 |
|
---|---|---|
「物」に 含まれない |
a)土地(田畑用地及び舗装された土地(道路の路面等)、堤防、鉄道の線路等であって土地と一体となっているものを含む。) b)自然物(樹木、雑草 等) 等 |
出典:国土交通省「無人航空機に係る規制の運用における解釈について」
つまり、木の近くを飛ばすことは問題ありませんが、建物や車などがある場合は、それに30mより近づくと特定飛行となり、承認申請が求められるのです。
催し場所上空での飛行
4つめは「催し場所上空での飛行」です。
航空法では、「祭礼、縁日、展示会その他の多数の者の集合する催しが行われている場所の上空」で飛ばすことを特定飛行と定めています。
つまり、多くの人が集まるイベントでは、ドローンを飛ばすことは原則禁止、飛ばす場合は申請が必要です。
では、具体的にはどんな「催し」での飛行が特定飛行にあたるでしょうか?
国土交通省の「無人航空機に係る規制の運用における解釈について」によると、たとえば以下のようなイベントです。
「催し」に 該当するもの |
祭礼、縁日、展示会のほか、プロスポーツの試合、スポーツ大会、運動会、屋外で開催されるコンサート、町内会の盆踊り大会、デモ(示威行為) 等 →上記に該当しない場合であっても、特定の時間、特定の場所に数十人が集合している場合には「多数の者の集合する催し」に該当する可能性がある |
|
---|---|---|
「催し」に 該当しないもの |
自然発生的なもの(例えば、混雑による人混み、信号待ち 等) |
出典:国土交通省「無人航空機に係る規制の運用における解釈について」
ということは、基本的には人が何らかの目的を持って数十人集まる場合は、そこでのドローン飛行はすべて「催し上空」に該当する可能性があると考えてよいでしょう。
危険物の輸送
ドローンは、物流・輸送に活用することが期待されていますが、航空法では「危険物の輸送」は特定飛行として原則禁止しています。
もし墜落した場合に、落下地点の周囲の人や土地、建物などに重大な被害が及ぶ恐れがあるためです。
たとえば、被災地などに燃料や医薬品などを届ける場合や、ドローンに農薬を積んで散布する場合なども危険物の輸送にあたり、実施する際には承認申請が必要です。
ここでいう「危険物」に該当するもの・しないものは以下のように定められています。
「危険物」に 該当するもの |
火薬類、高圧ガス、引火性液体、可燃性物質、酸化性物質類、毒物類、放射性物質、 腐食性物質など |
|
---|---|---|
「危険物」に 該当しないもの |
そのドローンが飛行するために輸送しているもの →・飛行のための燃料や電池 ・安全装置としてのパラシュートを開くために必要な火薬類や高圧ガス ・業務用機器(カメラなど)に用いられる電池 など |
物件投下
最後に挙げる特定飛行方法は、「物件の投下」です。
ドローンから物を落とせば、その下の人や建物などにぶつかる危険がありますし、ドローン自体もバランスを崩す恐れがあるため、原則禁止されています。
近年は、農業分野でのドローン活用が普及していて、ドローンから農薬や肥料、水を散布したり、種を蒔いたりするのに利用されていますが、これも「物件投下」にあたります。
そのため、事前に承認申請をした上で実施しなければなりません。
ただ、運んでいた物を「上から落とす」のではなく、「ドローンが着陸して物を地面に置く」のであれば、物件投下にはあたらず、特定飛行として申請することなく行えます。
特定飛行に該当しなくても、申請が必要なケースがある
ここまで、特定飛行に該当する飛行空域・飛行方法についてくわしく説明しましたが、「じゃあこれらに該当しなければ、ドローンを許可なく自由に飛ばしてもいいの?」と考える人もいるでしょう。
実は、そうとは言い切れません。
「航空法の特定飛行」には該当しなくても、他の法律や条例などによって許可が必要なケースも多くあるのです。
たとえば、「小型無人機等飛行禁止法」では、国の重要な施設や防衛関係施設などの周辺の飛行は原則禁止ですし、「民法」によって他の人の所有地の上空を勝手に飛ぶことはできません。
また、都道府県や市区町村の条例によって、ドローンを規制しているケースも多くあります。
これらはいずれも、管理者や所有者の許可が必要です。
これについては、別記事「【フローチャート付】ドローンの飛行許可が必要な全24ケースを徹底解説」にくわしく解説していますので、そちらを参照してください。
「ドローン情報基盤システム2.0(DIPS)」での特定飛行の許可申請の流れ
では、いよいよ特定飛行の許可・承認の申請方法を説明しましょう。
許可申請の方法は、以下の3種あります。
- 「ドローン情報基盤システム 2.0(DIPS)」によりオンラインで提出
- 郵送により申請書を提出
- 窓口に持参して提出
中でも国土交通省は、オンラインでの申請を推奨していますので、ここでは「ドローン情報基盤システム 2.0(DIPS)」でオンライン申請する流れを図解します。
以下の手順で進めてください。
【「ドローン情報基盤システム2.0(DIPS)」での特定飛行の申請】
1)「ドローン情報基盤システム2.0(DIPS)」を開きます。
出典:国土交通省「ドローン情報基盤システム2.0(DIPS)」
2)アカウントを開設します。
出典:国土交通省「DIPS飛行許可承認申請の手引き」
3)以下の手順で申請します。
出典:国土交通省「ドローン情報基盤システム操作マニュアル 飛行許可・承認申請編」
4)提出先の地方航空局などで申請書の審査が行われます。
→申請内容に不備がある場合は、「補正指示」がありますので補正して再申請します。
5)許可されると「許可書」が発行されます。
→許可書の写しをダウンロードすることができます。
これで申請手続きは完了、申請した特定飛行をすることが可能になります。
さらにくわしい申請手続きは、DIPSの「利用ガイド/マニュアル」ページからマニュアルをダウンロードできますので、それを見ながら進めるといいでしょう。
特定飛行に関する注意点
さて、これで特定飛行の申請ができるようになりましたので、必要があれば、原則禁止の飛行も可能です。
ただ、特定飛行に関しては、ほかにも知っておくべき注意点がいくつかあります。
最後にそれを挙げておきましょう。
- 無許可で特定飛行すると罰則がある
- 許可申請は代行してもらうことができる
- 特定飛行をする際には、飛行日誌を作成・携行する義務がある
無許可で特定飛行すると罰則がある
まずひとつめの注意点は、特定飛行には罰則があるということです。
もし許可なく特定飛行を行った場合は、50万円以下の罰金を科せられる恐れがあります。
特定飛行は原則禁止されていますが、中には「夜間に飛ばしたいけれど、ほんのちょっとの時間だから許可申請しなくても大丈夫だろう」とか、「自分の家はDID地区に含まれているけれど、自宅の庭で飛ばすくらいは無許可でもバレないはず」などと考えて、許可なしで飛ばそうと考える人もいるかもしれません。
が、それは絶対にやめてください。
実際に、ドローンを無許可で飛行させて逮捕された事例もありますので、かならず必要な許可は取りましょう。
【ドローンの無許可飛行が問題になっ主な事例】
▶︎毎日新聞
「無許可でドローン 航空法違反容疑で1人逮捕、ポーランドの学生ら3人書類送検」(2019/5/27)
▶︎沖縄テレビ放送 OKITIVE
「無許可でドローン飛行 書類送検の男性『事故起きなければ』 沖縄」(2021/9/25)
▶︎TBSテレビ NEWS DIG
「宮崎県内で初摘発 青島太平洋マラソンでドローンを無許可飛行 航空法違反の疑いで男性を書類送検」(2023/2/15)
許可申請は代行してもらうことができる
「5.『ドローン情報基盤システム2.0(DIPS)』での特定飛行の許可申請の流れ」を見て、「特定飛行の許可申請は難しそう」としり込みしてる人も多いのではないでしょうか。
でも安心してください。
許可申請は、行政書士に代行してもらうこともできるのです。
インターネットで「ドローン 申請 代行」などと検索すると、代行を請け負っている行政書士法人がたくさん出てきます。
行政書士は、公的書類の作成や申請のプロですので、安心して任せられるでしょう。
行政書士に飛行申請を代行してもらう場合の、費用目安は以下の通りです。
ただ、申請内容が複雑だったり、書類が多量だったりする場合は、追加の費用が必要になる可能性が高いので注意してください。
依頼する前に、費用目安を確認し、できれば見積もりを出してもらうといいでしょう。
【飛行許可・承認申請を行政書士に代行してもらう場合の費用目安】
飛行申請:包括申請 (操縦者1名・機体1台) |
2万〜5万円程度 | |
---|---|---|
飛行申請:個別申請 (操縦者1名・機体1台) |
2万〜5万円程度 | |
操縦者の追加 | 1人当たり 2,000〜5,000円程度 | |
機体の追加 | 1台当たり 2,000〜1万円程度 | |
飛行許可の変更 | 1万円程度 | |
機体登録 | 1機目 1万円程度、2機目以降 5,000円程度/台 |
特定飛行をする際には、「飛行日誌の作成・携行」と「飛行計画の通報」をする義務がある
次に、特定飛行をする際には、国土交通省に許可・承認をもらうとともに、「飛行日誌」を作成・携行し、「飛行計画」を通報しなければなりません。
これもまた、航空法で定められた義務であり、違反すれば10万円以下の罰金が科せられる恐れがあります。
特定飛行をする際には、「飛行日誌の作成・携行」をしなければならない
「飛行日誌」とは、以下の3種の記録の総称で、ドローンで特定飛行をする際にはこれらすべてを作成し、飛行時に手元に持っていなければなりませんので注意してください。
- 飛行記録:飛行の年月日、離着陸場所・時刻、飛行時間、飛行させた者の氏名、不具合やその対応などを記載する
- 日常点検記録:日常点検の実施の年月日・場所、実施者の氏名、日常点検の結果などを記載する
- 点検整備記録:点検整備の実施の年月日・場所、実施者の氏名、点検・修理・改造・整備の内容・理由などを記載する
特定飛行をする際には、「飛行計画の通報」をしなければならない
また、「飛行計画」とは、操縦者があらかじめドローンを飛ばす日時、経路、場所、目的などを計画するもので、特定飛行をする際には事前にその計画を国土交通省の「ドローン情報基盤システム 2.0(DIPS)」に登録する(=「通報」する)必要があります。
飛行日誌と飛行計画については、別記事「ドローンの飛行日誌が義務化!書き方や制度詳細、便利なアプリも紹介」「ドローンの飛行計画|必要な場合・不要な場合、DIPSの登録方法とは」でくわしく説明していますので、実際に特定飛行をする前に読んでおくといいでしょう。
まとめ
いかがでしたか?
特定飛行について、よく理解できたのではないでしょうか。
ではあらためて、記事の要点を振り返っておきましょう。
◎ドローンの「特定飛行」とは、以下の空域・方法でドローンを飛ばすこと
特定飛行の種類 | 飛行したい場合 | ||
---|---|---|---|
飛行空域 | ・150m以上の高さの上空 ・空港周辺の空域 ・人工集中地区(DID地区)の上空 ・緊急用務空域 |
国土交通省の「許可」が必要 ※「緊急用務空域」だけは、一般的には飛行不可 |
|
飛行方法 | ・夜間飛行 ・目視外飛行 ・人または物件から30m未満での飛行 ・催し場所上空での飛行 ・危険物の輸送 ・物件投下 |
国土交通省の「承認」が必要 |
◎特定飛行に該当しなくても、申請が必要なケースがある
◎「ドローン情報基盤システム2.0(DIPS)」での特定飛行の許可申請の流れは以下の通り
◎特定飛行に関する注意点は、
・無許可で特定飛行すると罰則がある
・許可申請は代行してもらうことができる
・特定飛行をする際には、飛行日誌を作成・携行し、飛行計画を通報する義務がある
以上を踏まえて、あなたが正しく特定飛行の許可・承認を申請できるよう願っています。