DJIのAGRAS T30ってどんな機種?10個の特徴と買うべきかを解説

「AGRAS T30の特徴を分かりやすく説明してほしい」
「AGRAS T30を買うべきか判断したい」
このようなお悩みにお答えします。

2021年10月ドローンメーカー大手のDJIから最新モデル「AGRAS T30」が発売されました。
AGRAS T30」は農薬散布が効率化する様々な機能がついています。

その機能の一例がこちらです。

・農薬積載量は30Lまで搭載可能で1時間あたり16haまで散布が可能に

・8個のプランジャーポンプの搭載で水稲の他に果樹にも対応が可能に

・残量検知センサーが搭載

・折りたたみ式で持ち運びか簡単

上記は「AGRAS T30」に新しく搭載された機能のほんの一部です。
「AGRAS T30」を用いると今までの農薬散布作業が圧倒的に効率化されます。

しかし、「AGRAS T30」は新しい機能が多く、その特徴を理解して本当に買うべきかどうかを判断するのに一苦労です。
結論、「AGRAS T30」を購入すべき方はこちらです。

・大規模農園に高効率で農薬散布をしたい方

・果樹園に利用したい方

今回は「AGRAS T30」の実際の使用感、12個の特徴を説明し、あなたが「AGRAS T30」を買うべきかどうかを解説します。

※ドローンによる農薬散布のメリットデメリットや導入までの流れの全体像は、こちらの記事にまとめています。

ドローンの農薬散布とは?メリットデメリットや始め方・導入の注意点

※農業用ドローンの選び方や導入費用はこちらの記事にまとめています

農業用(農薬散布用)ドローンのおすすめメーカーは?価格や補助金、選び方もご紹介

DJI「AGRAS T30」のリアルな使用感がわかる動画2選

AGRAS T30」の特徴はメーカーであるDJIやドローン販売代理店など様々なサイトで紹介されていますが、その特徴を一番分かりやすくつかむには実際に飛行している姿を見ることが一番です。
そこで1章では、「AGRAS T30」のリアルな使用感を知っていただくために、「AGRAS T30」の特徴が分かる動画2選をご紹介します。

「ドローン アフロ DRONE ライズ」

1つ目は「ドローン アフロ DRONE ライズ」というチャンネルで、「AGRAS T30」を用いた農薬散布を行なっている動画です。
ドローンアフロDRONEライズチャンネルはドローン専門の販売店であるソラクルという会社が運営しています。
こちらの動画では実際の大きさや持ち運びやすさ、散布幅などの特徴を掴むことが出来る動画です。

ヤンマー農業チャンネル

ヤンマー農業チャンネルは、ヤンマー株式会社が運営している農業器具を紹介しているチャンネルです。
こちらの動画では「AGRAS T30」の特徴1つ1つが実際の映像とともに分かりやすく紹介されています。
AGRAS T30」の特徴を実際に操作している姿を見ながら網羅的に理解する事が出来ます。

DJI「AGRAS T30」の特徴10個を分かりやすく解説

2章では、様々な新機能が搭載された「AGRAS T30」の特徴を10個に分けて、それぞれ分かりやすく解説をしていきます。

AGRAS T30」の特徴一覧はこちらです。

agrast30特徴一覧

それぞれ特徴について、どのような機能があるのか、そしてどのようなメリットがあるのかを分かりやすく解説していきます。

※他メーカードローンとの比較はこちらの最新ドローンを紹介しているページを参考にしています

薬剤散布から播種まで! 日本で購入できる農業用ドローンカタログ<2022年版>

特徴1 1時間あたり16haの広さに農薬散布が可能に

1つ目の特徴は大規模な農園にも対応出来る高効率な農薬散布力です。
「AGRAS T30」の最大の特徴となります。

1フライトでの散布効率が圧倒的に向上し、1フライトあたり2ha、1時間あたり16haの広さに農薬を散布出来るようになりました。
前モデル「AGRAS T20」は1フライト1haの散布効率でしたので、散布効率が2倍になっています。

この農薬散布効率を実現した機能は

・30Lの大容量洗剤タンク

・高機能なプランジャーポンプ

・16個のノズル

です。

それぞれの機能をご紹介します。

■30Lの大容量洗剤タンク

agrast30タンク

引用 https://youtu.be/4zWYDcXuhS4

30Lのタンクは他メーカー農業用ドローンの中でも最大級の容量です。
前モデル「AGRAS T20」は10Lの容量であるので3倍の大きさになっています。

タンクの容量が大きければ1フライトで散布できる農薬の量も多いので、農薬を補充する回数が少なくて済みます。
AGRAS T30」では30Lという大容量のタンクにより、1フライトで2haの広さへの農薬散布を実現しています。

■プランジャーポンプ

agrast30プラジャーポンプ

引用 https://youtu.be/4zWYDcXuhS4

プランジャーポンプは液体を吸い込み外へ吐出させるための機械です。
農業用ドローンでは液剤タンクの中にある農薬をノズルへ送り込むための機能を果たしています。

AGRAS T30」では小型・軽量で効率的に吐出をするプランジャーポンプが搭載され、飛行の負担を抑えながら出来るだけ多くの農薬を散布する事が出来るようになりました。

■16個のノズル

agrast30ノズル

引用 https://youtu.be/4zWYDcXuhS4

AGRAS T30」で前モデル「AGRAS T20」の倍である16個のノズルが搭載され、9mという広範囲への散布が可能になりました。
農薬の散布範囲が広がれば、一度の飛行で散布できる面積も広がります。
16個のノズルの搭載により、幅広い範囲への農薬散布が可能になりました。

この「洗剤タンク」「プランジャーポンプ」「ノズル」の進化により、一度のフライトで散布出来る範囲が圧倒的に広がりました。

特徴2 果樹園への農薬散布も可能に

「AGRAS T30」では新しく果樹散布モードが搭載され、ノズルを交換することにより従来では難しかった果樹園への散布が可能になりました。

果樹園では水田の稲と異なり葉っぱの裏にも農薬を散布する必要があります。そのため、水田のように上から農薬を散布するだけでは葉の裏に散布が出来ず散布残しが発生します「AGRAS T30」のではアームを斜めの角度に変えることで横風を吹かし、葉の裏面にも散布が出来るようになりました。

こちらが実際に果樹モードで散布している様子です。

agrast30果樹園散布の様子

引用 https://youtu.be/4zWYDcXuhS4

赤枠のアームの部分が真下ではなく少し斜めの角度になっており、横風を吹かせて葉っぱの裏にへの散布も実現しています。

特徴3 肥料・除草剤の散布効率も向上

農場の運営では液剤の農薬だけではなく肥料や除草剤といった粒剤を散布する必要もあります。
「AGRAS T30」では粒剤散布にも対応しており、液剤タンクに40kgの粒剤を入れる事が可能です。

そのため、肥料や除草剤といった粒剤の散布を効率的に行えるようになりました。
前モデル「AGRAS T20」は20kgの容量の2倍であり、その他ドローンと比較してもこの40kgという容量は最大です。

農薬散布用ドローンを使った除草剤の散布については、こちらの記事で詳しく解説しています。

除草剤の散布に農薬散布ドローン導入は正解?使用できる薬剤や課題も

特徴4 液剤センサーにより農薬の交換タイミングをひと目で把握可能に

「AGRAS T30」では新しく洗剤タンクに液面センサーが搭載され、農薬の残量がひと目で分かるようになりました。

液面センサーで完治した残量は、下記のように操作画面にリアルタイムに表示されます。

agrast30農薬残量表示

引用: https://www.dji.com/jp/t30

この機能により操作をしながら洗剤タンクに残っている農薬の残量を確認する事が出来るようになり、農薬の残量を都度確認する必要が無くなりました。

特徴5 3層シーリング構造で水洗いが可能に

「AGRAS T30」では防水性能が向上し、ホースのなどで丸ごと水洗い出来るようになりました。

AGRAS T30」では水に濡れると故障の原因となるコア部分を3層シーリング構造で保護しており、機器の保護レベルを評価するIP規格では保護等級IP67に認定されています。
IP67は「完全な防塵構造で規程の圧力、時間で水中に沒しても水が浸入しない」という事を意味しており、ホースで水をかけるくらいでは故障しないレベルの防水性能である事が証明されています。
参考 https://www.ip68.jp/technicalguide/pdf/PP%20IPtoukyu.pdf

泥などで汚れる事も頻繁な農業ドローンですが、「AGRAS T30」は防水面を気にする事なく水洗いする事が可能です。

特徴6 アームの折りたたみ持ち運びがしやすい

「AGRAS T30」は収納性が高く、持ち運びがしやすい設計になっています。

AGRAS T30」は大容量タンク、広範囲ノズルを搭載しているため飛行中は3m近くのサイズになります。
しかしアームはワンタッチ式で折り畳むことが可能で、アームを収納すると通常サイズから大きさが1/5になります。
そのため1人で持つことは難しいですが2人では簡単に持ち運ぶことが可能です。

比較した画像がこちらです。

■通常時

agrast30通常時の姿

引用:https://youtu.be/4zWYDcXuhS4

■収納時

agrast30収納時の姿

引用:https://youtu.be/4zWYDcXuhS4

さらにアームにはセンサーが設置されているため、万が一アームが固定されていない場合は操作画面でアラートを流してくれます。
手軽に収納が出来、かつ万が一の事故防止にも対応している高性能なアームです。

特徴7 球面型全方位レーダーと前後FPVカメラにより安全性が向上

「AGRAS T30」では安全性向上のために新たに「球面型全方位レーダー」と「前後FPVカメラ」が搭載されました。

それぞれの機能をご紹介します。

■球面型全方位レーダー

前モデル「AGRAS T20」でも障害物を検知するレーダーは搭載されていましたが、水平面360度を検知するレーダーでした。
しかし「AGRAS T30」では球面型全方位レーダーを搭載しているため、機体の上方向にある障害物も感知が可能となりました。
そのため、電柱などの障害物にぶつかる可能性も回避出来るので、より安全性を保って農薬散布を行えるようになりました。

例えば、イメージ図にはなりますが下記のような農園でその性能を活かすことが出来ます。

agrast30全方位レーダー

引用:https://youtu.be/4zWYDcXuhS4

■前後FPVカメラ

AGRAS T30」では前後にFPVカメラが搭載されました。
FPVとはFirst Person View(ファースト・パーソン・ビュー)の略でドローンから見た1人称の視点の事を指します。

前モデルではカメラが前方にしかついていなかったため、後方に障害物がないか確認をするときは都度方向転換をする必要がありました。
しかし「AGRAS T30」では前後にカメラが搭載される事で、飛行中の前後の状況を方向転換無しに確認する事が出来るようになり、周囲の状況把握が容易になりました。
また、カメラには従来の2倍の明るさのLEDライトが搭載され、夜間でもよりドローンの周囲環境を把握しやすくなりました。

この2つの機能「球面型全方位レーダー」と「前後FPVカメラ」が搭載され、より安全に農薬散布を行えるようになったのです。

特徴8 額縁散布モードにより変形圃場の散布の残しが軽減された

「AGRAS T30」には新たに「額縁散布モード」が追加されました。
額縁散布モードに設定すると、農薬散布の最後の工程で、圃場の周辺一周に散布を行います。
そのため、変形した圃場でのドローン農薬散布でよく起こる、縁の散布残しを減らす事が出来るようになりました。

特徴9 バッテリー容量が向上

「AGRAS T30」ではバッテリー容量が29,000mAhと、大容量になりました。
従来の「AGRAS T20」のバッテリー容量18000 mAhであったので、1.5倍以上と大幅に向上しています。

mAhは一度の充電でどれだけバッテリーに電気をを貯められるかの単位です。
そのためこの値が大きければ大きいほど、農薬の洗剤タンクと同様に充電(補充)をする回数が少なくてすみます。

AGRAS T30」ではバッテリー容量が向上する事により、一度の充電でより長時間飛行が出来るようになり、1フライトあたりの農薬散布効率が向上しました。

特徴10 自動航行性能が向上

「AGRAS T30」ではあらかじめ飛行ルートを設定する事により、自動運転で農薬散布を行なってくれます自動航行モードが搭載されています。
自動航行中はリモコンを見る必要がないため操縦者の負担を減らしてくれるのです。

自動航行機能で飛行ルートが設定されているイメージがこちらです。

agrast30自動航行モード

引用:https://youtu.be/4zWYDcXuhS4

また、自動航行中は農薬散布に必要な作業を最適化するためのルートを計画してくれます。
農薬とバッテリーの残量を把握し、補給が必要なタイミングであらかじめ設定した補給ポイントに戻ってきてくれるのです。

そのため補給時にドローンを操作して戻す必要もなくこちらも操縦者の負担を軽減してくれる機能となっています。

DJI AGRAS T10との比較(20ha以上はAGRAS T30がおすすめ)

DJIでは「AGRAS T30」と同時にコンパクトモデルの「AGRAS T10」も発売しました。

最新機能を備えたARASシリーズを購入したいという場合はこの2つの機種から選択する必要があります。

2モデルの比較表はこちらです。

agrast30とagrast10の比較表

引用:https://youtu.be/4zWYDcXuhS4

結論、目安とはなりますが20ha以上の農地の場合は「AGRAS T30」、それ以下の農地では「AGRAS T10」の購入をお薦めします。

どちらも球型全方向レーダーシステムなどの新機能は搭載されている最新ドローンです。
しかし散布幅や洗剤タンクの容量に差があり、「agras t10」は1時間あたり6.7ha、「agras t30」は1時間あたり12haと散布効率に差があります。

そのため大規模農園向けは「AGRAS T30」、小中規模農園向けは「AGRAS T10」という様に棲み分けがされています。
最新性能のagrasシリーズを購入する場合は、運営する農園の規模がどれくらいかによって、「agras t10」か「agras t30」のどちらを選ぶか判断する必要があるという事ですね。

メーカーからはそれぞれのモデルの推奨範囲はありません。
そこでドローン販売代理店数社に確認を取ってみたところ、目安として20ha以上の農地の場合は「AGRAS T30」がお勧めであるとの事でした。

どちらのモデルを購入しようか迷われている人は自身の運営している農地の広さが20ha以上かどうかを確認して判断をしましょう。

しかし20haという基準はあくまでも目安です。
1時間あたり6.7ha12ha、どちらの散布効率が自分の運営する農地にとって最適かを判断して購入をしましょう。

DJI AGRAS T30を買うべき人

これまでの章を踏まえ、「agras t30」はどのような人が購入するべきなのかをご紹介します。

結論「agras t30」の購入をお勧めしたい人は下記の通りです。

・大規模農園に高効率で農薬散布をしたい方

・果樹園に利用したい方

それぞれなぜ購入した方が良いのかご紹介していきます。

大規模農園に高効率で農薬散布をしたい方

「agras t30」は大規模農園、具体的には20ha以上の農地を持つ人に購入をお勧め出来る農業用ドローンです。

agras t30」は2章でお伝えした通り、とにかく高性能な機能による散布効率の向上を実現しています。
他メーカードローンと比較しても洗剤タンクの容量や散布幅などの性能は高いです。
そのため、とにかく広い農地を持っていて出来るだけ短時間で農薬散布を済ませたいという方には「agras t30」の購入をお勧めします。

一方で3章でもお伝えしましたが同じく高性能な機能を備えた小規模農園向けの「agras t10」も同時に発売されています。
高性能な農薬散布ドローンが欲しいが、運営する農園の規模はそこまで大きくないという場合は「agras t10」がおすすめです。

そのため、運営する農場が大規模で目安20ha以上)で高、性能ドローンで効率的に農薬散布を行いたいという方に「agras t30」はお薦めです。

果樹園に効率的に農薬を散布したい方

果樹園に農薬散布を利用したい方にも「agras t30」はお勧めです。

2章でもお伝えしましたが、「agras t30」では果樹園にも農薬を散布する事が出来る、果樹園散布モードが新たに搭載されました。
その他にも果樹園用のドローンはいくつかありますが、液面センサーや前後FPVカメラなどがついた高性能なドローンはありません。
また、先程ご紹介した「agras t10」には果樹散布モードは搭載されていません。

そのため、果樹園への農薬散布を高性能なドローンで効率的に行いたいという方には「agras t30」はおすすめのドローンです。

DJI AGRAS T30を購入するためにしなければならない事

ここまで「agras t30」の特徴をみてきて、購入したいと思われた方もいるのではないでしょうか。

しかしDJI製の農業用ドローンは、購入する事前に技術認定の取得が必要です。
また、DJI製の農業用ドローンはどこでも買えるわけではなく、正規の代理店からしか購入する事は出来ません。

そのため、「agras t30」を購入する前にあらかじめ準備をしておかなければならないのです。
そこで5章では「agras t30」を購入するために必要な2つの条件をご紹介していきます。

農業ドローン技能認定証明書の取得

「agras t30」を購入するにはドローンの産業パイロット教育・訓練機関であるUTCが発行する農業ドローン技能認定証明書という資格を取得しなければなりません。

農業ドローン技能認定証明書を取得するには国土交通省認定の教習施設を探し、教習に申し込む必要があります。
新規で取得する場合の講習費用は、教習所によって変わりますが25万円〜30万円ほどです。
また、講習日数は5日間となります。

まずは近くの教習施設から講習の申込をし、農業ドローン技能認定証明書を取得しましょう。
教習施設はこちらのページから探すことが出来ます。

AGRAS T30を購入出来る代理店を探す

DJI製の農業ドローンはどこでも購入出来るわけではなく、DJIが認定した正規の代理店でしか購入は出来ません。
そのため、まずはDJI製のドローンを扱っている代理店を探す必要があります。

現在(2022年6月時点)でDJI製農業ドローンの販売が認められている代理店は全国で17店舗です。
DJI認定の代理店が一覧で記載されているページがこちらです。
https://www.dji.com/jp/where-to-buy/agriculture-dealers

こちらのページから近くの代理店を探し、問い合わせをしましょう。

まとめ

agras t30」は前モデル、そしてその他メーカーのドローンと比較してもより洗剤容量が多くく散布効率が高い農業用ドローンです。

とにかく高性能なドローンで効率的に農業散布を行いたいという方にはおすすめの機種です。
一方で「agras t10」も同様の性能を備えたコンパクトモデルとしてラインナップされており、運営している農場の広さによってどちらを購入するか判断しなければなりません。

一つの目安として20ha以上の農地を持っている方は「agras t30」の購入をお勧めします。
とにかく大きな農地への農薬散布を圧倒的に効率化させたいと言う方には「agras t30」の購入を是非検討してみてください。