近年、様々なシーンでその活躍を目にするようになったドローン。
特に測量業界においては、国土交通省が取り組んでいる「i-Construction(※)」の中でも、積極的なドローン活用を勧めています。
※i-Constructionとは
生産性向上のために、建設業界にICT(情報通信技術)を導入するという国土交通省が掲げた取り組みのひとつ。
国土地理院は、i-Construction の3本の柱の一つである施工の情報化において、UAV(Unmanned Aerial Vehicle=ドローン)を測量に活用することで生産性の向上に寄与するため、工事測量にも活用可能な「UAV を用いた公共測量マニュアル(案)」を整備した。
国をあげた新技術(ドローン)導入推進の動きの中、測量現場でドローンを使いたいと考えた際、
「では実際に、ドローンを使った測量はどう進めればいいのだろう?」
「ドローン測量はどのような手順で行うのだろう」
といった疑問を持たれる方もいるかと思います。
そんなお悩みを解決するべく、ドローンメーカーに勤務されていた経歴をお持ちで、ドローン測量にも精通し、新技術関連ビジネスの支援などにも携わられている方に取材させていただきました。
その取材を元に、今回は「ドローン測量の手順」について、詳しく解説していきます。
この記事を読めば、
■ドローン測量に必要な物と事前準備
・ 最低限必要なもの5つと事前準備5項目
■ドローン測量の詳しい手順
・ドローン写真測量とレーザー測量の手順詳細
・現地調査内容から納品までの8ステップ
■効率の良い手順、方法
・作業時間を短縮する効率の良い方法やツール
といった、ドローン測量の手順についての詳しい内容がわかるかと思います。
ドローン測量を検討されている方へ:関連記事のご紹介
ドローン測量のメリットデメリット、おすすめ活用ケース、始めるまでの流れなど「ドローン測量の全体像」については、別のこちらの記事で詳しく解説しています!
ドローン測量とは?メリットデメリットや始め方(料金・資格等)をインタビュー!
こちらの記事は、過去ドローンメーカーに勤務されドローン測量領域の案件実績も多く持つプロの方に、ドローン測量に関するインタビューを行った内容を記事にしたものです。
お読みいただければ、ドローン測量はどの様な案件に適しているのか、始める際はどの様な手順を踏めば良いのか(かかる料金や資格取得の必要性)、おすすめの測量用ドローンなど、ドローン測量に取り組む前に知っておくべき情報を知ることができますよ。
目次
2種類のドローン測量手順について
ドローン測量の主な測量方法である、写真測量とレーザー測量。
手順を解説する前に、それぞれの測量方法について簡単にご説明します。
◆ドローン測量とは?
ドローン測量は、ドローン写真測量と、ドローンレーザー測量が基本的な測量方法になります。
【ドローン写真測量】
ドローンに搭載したカメラで重複させた写真を複数枚撮り、それらをつなぎ合わせて地形情報を調査する測量方法。
レーザー測量に比べ、安価な機材を使用して行えるが、木々が密集し、地表が撮影できない現場の測量は難しい。
【ドローンレーザー測量】
ドローンに搭載したレーザー測距装置から地上にレーザーを照射し、そのレーザーの反射によって距離情報を取得する。
森林や山間部など、上空から地表を写真撮影できない環境下では、レーザーを使い木や葉の間を抜けさせデータを取得する。
写真測量に比べより精度の高いデータが取得できることが多いが、レーザー装置が高額で、数百万〜1千万円程度の購入費用がかかる。
測量案件や、実施する現場環境に合わせて測量方法を選択します。
下で説明する必要な物や事前準備は写真測量もレーザー測量も共通です。
手順の一部分が違うので、その違いも合わせて詳しく解説していきます。
ドローン測量に必要な物
ドローン測量に必要な物と、事前準備についてまとめました。
【ドローン測量に最低限必要な物】
ドローン測量に最低限必要な物 |
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ドローン本体
【写真測量】
写真測量の場合、カメラとGPS、高度計が付いているドローン。
バッテリー持続時間が長い物の方が、交換時間を短縮できる為スムーズに測量できます。
機体に搭載されたカメラでも基本的な測量を行うことができますが、高精度を求める測量案件を取り扱う場合、赤外線カメラや高性能なカメラが搭載された機体・後付けできるカメラが必要。
【レーザー測量】
レーザー測量を行う場合、レーザー装置を搭載できるドローン。
レーザー装置は数百万〜1千万円以上と高額です。
- どのような測量を行いたいか
- 機能や性能
- 機体にかけられる予算
などを考慮し、機体を選択しましょう。
測量用ドローンの選び方や、おすすめ機体についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
タブレット
プロポ(プロポーショナルシステム)と呼ばれるコントローラーにモニターが付いていない物は、フライト中に飛行内容を確認するモニター代わりになるスマートフォンやipadなどのタブレットが必要です。
一部のスマホやタブレットでは、自動操縦アプリがうまく連動しないケースもあるので、対応機体はしっかり確認しましょう。
iPadであれば、DJIの自動操縦アプリ(業界内でも利用率の高いDJI GS PROなど)の動作確認済みのため、DJIのアプリを使うならタブレットはipadがおすすめ。
※iOS App v1.5.0 、iOS 9.2 以降が必要です。
飛行許可証のコピー
飛行許可・承認が要る場合は、空港事務所または地方航空局に申請をする必要があります。
承認されると、PDFで許可証をもらうことができます。
許可証を印刷して現場に携帯しておくと、不測のトラブルが起きた時や確認作業をする際も安心。
自動操縦アプリ、データ解析ソフト
自動操縦アプリとデータ解析ソフトは、ドローン測量に欠かせないアイテム。
基本的には機体との相性を考え、メーカー推奨の物がおすすめ。
【自動操縦アプリとは?】
飛行コース等を設定し、ドローンを自動操縦で飛行させるためのアプリ。
ドローンが飛行するポイント(ウェイポイント)を作成し、そのポイントを通過するルートを忠実に飛行させる。
無料のものも多いですが、有料アプリ(3千円程度)や、一部有料な機能が備わったアプリなどがあります。
所有する機体に対応したアプリを選ぶ必要があります。
料金:基本操作は無料
POIやPhotoMap、GPSデータのインポートを実行するには課金が必要。
- POI ワンタイムチャージ$ 9.99
- POI フライタイムチャージ$ 0.99
- KML / SHP ファイルのインポート$ 49.99
- PhotoMap ワンタイムチャージ$ 299.99
対応機体:Mavic 2 Pro, Phantom 4 / Pro / Advanced, Phantom 4 Pro V2, Phantom 4 RTKInspire 1 / Inspire 2/Matrice 100 / 600 / 600 Pro / 200, Matrice 200 / 210 / 210 RTK など
【データ解析ソフトとは?】
ドローンで得たデータを解析して、オルソ画像・点群データなどを作成するためのソフト。
高度、距離、面積、体積、角度、断面などの地形情報を算出する。
※自動操縦アプリ、データ解析ソフトについてはこちらので詳しく解説しています。
ドローン測量に必要なソフトは2種類!選び方や料金・おすすめソフトを紹介!
対空標識
対空標識とは、ドローン測量をする上で重要となる、標定点(※)の位置をわかりやすく示すための目印です。
対空標識はサイズや色など規定があり、ネットからでも購入できます。
商品例)ドローン関連標識(公共測量用)
※標定点とは?
あらかじめ正確な座標(水平位置と標高)がわかっているポイント。
事前に座標を計測しておき、写真に写し込ませ、データを抽出する際の基準点とする。
※標定点の仕組みや必要性については、こちらの記事でより詳しく解説しています。
ドローン測量の標定点とは?仕組みや必要性・設置手順とそのポイントまで紹介!
対空標識の辺長又は円形の直径は、撮影する空中写真に 15 画素以上で写る大きさを標準とする。
対空標識の色は白黒を標準とし、状況により黄色や黒色とする。
ドローン測量の事前準備
ドローン測量の事前準備 |
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機材準備
機体の点検やバッテリーの充電など。
1度の測量にあたり、ドローンは長時間飛行する必要があるので、充電は100%の状態で現場に持っていきましょう。
保険加入
ドローン保険の加入は任意となっていますが、業務で取り扱うならば、信用やリスクの観点からも加入は必須といえます。
DJIドローン購入者が1年間無料で加入できる保険、日本ドローン協会(JDA)に加入することで利用できる保険(23,760円/年間)など、様々な種類の保険があるので、自社に適した保証内容で選びましょう。
飛行許可申請
航空法上の制限を超える場合、国土交通省に申請が必要です。
【飛行許可が必要な場合とは?】
申請をして許可されないと飛ばせないエリア・飛行方法がある。
空港等の周辺や人口集中地区の上空、夜間飛行や目視外飛行など。
※詳しくはこの記事の【ドローン写真測量の手順、1.現地調査(踏査)ー飛行エリアの確認】で解説しています。
また、申請には「個別申請」と「包括申請」の2つの方法がある。
■個別申請とは
ドローンを飛行させる日にちや飛行経路を確定させて申請する。
申請が通りやすいというメリットがあるが、申請した特定日しか有効ではない為、スケジュール変更ができなかったり、ドローン飛行毎の申請が必要といったデメリットもある。
■包括申請とは
同一の申請者が一定期間内に反復して飛行を行う場合又は異なる複数の場所で飛行を行う場合の申請をまとめて行うことが可能。
許可等の期間は原則として3ヶ月以内だが、継続的な飛行が決まっている場合は1年を限度として許可等を行う。
ただし、人又は家屋の密集している地域の上空で、夜間における目視外飛行、催し場所の上空における飛行は除く。
(参照:無人航空機の飛行許可承認手続/国土交通省)
また、包括申請は業務目的でのみ申請可能です。
ドローンの法律は改正も多く複雑なので、定期的な確認が必要です。
撮影日・予備日の決定と補助役の手配
天候などを考慮して、測量実施日と予備日を決めます。
ドローンは精密機器なので雨に弱く、測量実施予定日が大雨だった場合、日程変更ができるようスケジュールに余裕を持たせましょう。
また、ドローン操縦者の他に補助者の手配も必要。
補助者について
無人航空機飛行マニュアル「3-1 無人航空機を飛行させる際の基本的な体制」によると、
- 補助者は、飛行範囲に第三者が立ち入らないよう注意喚起を行う。
- 補助者は、飛行経路全体を見渡せる位置において、無人航空機の飛行状況及び周囲の気象状況の変化等を常に監視し、操縦者が安全に飛行させることができるよう必要な助言を行う。
と記載されています。ドローンを飛行させる際は、操縦者の他にも最低1人の補助者が必須となります。
ドローン測量実施日には、補助者も忘れずに手配しましょう。
関係者との調整
測量エリアの周辺に住宅などがある場合、ドローンを飛行させる旨を予め周辺住民に伝えておくと、思わぬトラブルが生じるリスクを減らすことができます。
必要であれば近隣の警察などにドローンを飛ばすことの説明も行いましょう。
ドローン写真測量の手順
ドローン写真測量の手順をご説明します。
ドローンを使った写真測量の一般的な手順は下記の通りです。
- 現地調査(踏査)
- 自動操縦飛行内容の設定
- GCP(標定点)と検証点の測定、対空標識の設置
- ドローン撮影
- 撮影データ解析・作成
- 精度検証
- 成果物の作成
- 納品
一項目ずつ、詳しく解説していきます。
現地調査(踏査)
踏査と呼ばれる、測量を行う現場調査を事前に行います。
【現地調査する内容】
- 飛行エリアの確認
- 飛行方法の確認
- 物理的障害物の有無の確認
- 通信状況の確認
- 付近の環境確認
飛行エリアの確認
飛行禁止区域、または飛行承認が必要な場所かどうか確認をします。
【原則飛行禁止区域】
・緊急用務空域
土砂崩れや山火事といった大規模災害が発生した際、捜索活動や救助、消火活動の為にヘリコプターなどが飛行している空域。緊急用務空域は国土交通大臣によって指定され、該当エリアは航空局の公式ホームページ、航空局の公式Twitterアカウントで確認できる。
【飛行許可申請が必要なエリア】
・空港等の周辺の上空
飛行機などの安全航空の妨げにならないように、空港やヘリポートなどの周辺空域の事項は申請が必要。
・人口集中地区の上空
人又は家屋の密集している地域の上空。人口集中地区に該当するかどうかは、
国土地理院の「地理院地図」で確認できる。
・150m以上の高さの空域
地表から高さ150m以上は航空機のための空域である為、安全上申請が必要。
出典:無人航空機の飛行の許可が必要となる空域/国土交通省
飛行方法の確認
飛行エリアの他に、申請が必要な飛行方法があります
出典:無人航空機の飛行の方法/国土交通省
【飛行許可申請が必要な飛行方法】
・夜間飛行
「日没後〜日の出まで」の間にドローン飛行をさせる際は申請が必要。
・目視外飛行
モニターや双眼鏡を使用せず、ドローン操縦者の目で機体が確認できない範囲の飛行には申請が必要。
・30m未満の飛行
人または物件と30m未満の距離で飛行させるためには申請が必要。
ここでの「人」とは、ドローン飛行関係者以外の者を指す。「物件」は、関係者が所有・管理をしていない物件を指す。
・イベント上空飛行
人が集まる催し物やイベント時に、その上空を飛行させる場合には、そのイベントの開場〜閉場までの時間帯の飛行許可申請が必要。
・危険物輸送
危険物とは、爆発性又は易燃性を有する物件その他人に危害を与え、又は他の物件を損壊する恐れがある物(航空法132条の2第1項第9号)
毒物類、引火性液体、火薬類、凶器など。農薬もこれに該当する。
・物件投下
ドローンから何らかの物を投下するための飛行は要申請。
地上にいる人や物に危害を加える恐れや、投下時に機体のバランスが崩れ、飛行が不安定となる危険性があるため。
※ドローンに関する規約は定期的に改正されているので、その都度要確認
物理的障害物の有無の確認
写真測量は、上空から撮影した画像を元にデータ解析を行います。
ですので、上から見たときに樹木や草などで地表が見えない部分は、正しい計測が難しくなってしまいます。
求める測量精度にもよりますが、障害物が問題になる場合には、測量方法をレーザーに変更するなどの対処をしましょう。
通信状況の確認
通信状況に障害を起こす要因となりやすい携帯電話の基地局や無線局、高圧送電線などがあるかどうかの確認をしましょう。
このような施設や電線付近は、飛行中に電波ロストし操縦が不安定になる可能性も。
- 通信干渉を起こす可能性のある施設、物になるべく近寄らないような飛行計画を立てる
- 当日のフライト時には電波状況やGPS、コンパスなどへの干渉に注意して、常にモニターでドローンの状態チェックを行う。
といった対処を。
測量場所の電波環境を調べる方法としては、
・電波チェッカーやスペクトラムアナライザを使う
現場での無線環境がどのような状態なのか確認できるツール。
スペクトラムアナライザは高額なものも多いので、レンタルを利用する方法もあります。
・簡易的にはなるがアプリでチェックする
そこまで本格的なツールは必要ないという場合は、スマホで電波状況を確認できるWiFi アナライザーといったアプリもあります。
あまりにも通信干渉を受けると思われる環境の場合、測量計画の見直しも検討しましょう。
付近の環境確認
「周辺にプライバシー配慮が必要な民家や施設がないか」「すぐ近くを一般道路などが通っていないか」といった、付近の環境確認も必要です。
- 事前にドローンを飛ばす日時を周辺住民に通達しておく
- 一般道路と並行に飛ぶような飛行ルート※にする
などの対処をしておくと、トラブルを防ぐことにも繋がります。
※車が行き交う一般道路など、ドローンを近づけさせたくない場所へ向かわせる機会を減らす飛行ルート計画を立てましょう。
この場合、道路に接する距離よりも回数を重視します。
上の画像ですと、左側の方が飛行ルートとしては推奨されます。
一見、左側のルートの方が一般道路に接する距離が長く、危険度が高いと思われるかもしれません。
ですが、左のルートは接触回数(道路に向かってドローンが飛んで行く動き)は1回のみに対し、右のルートは接触距離は短くても接触回数が2回となっています。
進行方向に推進力は働くので、右ルートの方が道路に飛び出してしまうリスクが高まります。
そういった理由から、道路と並行して飛ぶ左側のような飛行ルートの方がおすすめです。
自動操縦飛行内容の設定
自動操縦アプリに、ドローンの飛行内容を設定・登録します。
【自動操縦アプリ設定内容と手順】
基本的な設定方法を説明します。
①ドローンを飛ばすエリアを設定する
飛行エリアを設定すると、アプリによってコースが自動作成されることが多いです。
飛行禁止エリアや一般道路が付近にある場合、そのすぐ近くを通らないルート設計ができているかなどを確認しましょう。
②飛行させる高度、ラップ率(※)を設定する
高度・ラップ率を設定すると、アプリによって飛行速度が自動設定されることが多いです。
安全面とデータ精度の観点から、高度設定に間違いはないか確認します。
※ラップ率とは?
撮影した画像が何%重なっているかの値。
前方向(オーバーラップ)と横方向(サイドラップ)がある。
ラップ率はどう決める?
国土地理院が作成したUAV を用いた公共測量マニュアル(案)には、オーバーラップ 80%以上、サイドラップ 60%以上を確保できるよう撮影計画を立案するよう記載があります。
この数値を元に、ラップ率が自動的に設定されるアプリも。
適したラップ率は計測する地形によって若干変動する為、実際の測量現場の条件に合わせて調整をするのが望ましいです。
高度はどう決める?
ドローンを飛行させる高度は、計算式を用いて算出します。
◆飛行高度を求める計算式 H=(imW×GSD×Fr)/(Sw×100)
・H=飛行高度(m)
・GSD=解像度(cm)
★imW=画像の幅(ピクセル)
★Fr=カメラの焦点距離(mm)
★Sw=カメラセンサーの幅(mm)
※GSD(解像度)は自身が求める精度によって数値が決まります(詳細は後述にて解説)。
★の3項目はカメラスペックを見ればOKです。
高度を求めるためには、「カメラのスペック数値」と、「地上画素寸法(解像度)」が必要です。
詳しく解説していきます。
■カメラのスペック数値とは
必要なカメラスペックは、画像の幅(ピクセル)、カメラの焦点距離(mm)、カメラセンサーの幅(mm)です。
これは単純に、自身の所有するドローンのカメラスペック表を見れば分かります。
■地上画素寸法(解像度)とは?
画像を表現する格子の細かさを数値にしたもので、簡単にいえばその画像の鮮明さ・クリア感です。
出典:空撮マッピングプロジェクトにおける精度とは?(PIX4D)
地上画素寸法は、求める精度によって異なります。
下の表は国の定めるUAV を用いた公共測量マニュアル(案)に記載されている地上画素寸法の参考数値です。
【地上画素寸法(解像度)の参考例】
要求精度 |
最大 0.05 m 以内 |
最大 0.1 m 以内 | 最大 0.2 m 以内 |
地上画素寸法(解像度) | 0.01m | 0.02m | 0.03m |
この表に準ずると、要求精度を0.05m以内(公共測量が求める精度)にしたい場合、地上画素寸法を0.01mにする必要があるということです。
PHANTOM 4 RTKのカメラスペックを例に、
地上画素寸法を1cm以内にしたい場合の高度を求める計算式です。
◆飛行高度を求める計算式 (imW×GSD×Fr)/(Sw×100)=H→(5472×1×8.8)/(13.2×100)=36.48
となり、最高でも36m以下の高度設定にしなければなりません。
地上画素寸法(解像度)は同じスペックのカメラを使用した場合、飛行高度が低いほど解像度は高くなり、より高精度な情報を得ることができます。
それでは低く飛ばせば飛ばすほど良いのか、と思うかもしれませんが、そういったことでもありません。
低高度の飛行は地面に近い分、撮影する写真のサイズが小さくなり、多くの枚数と撮影時間が必要となってしまいます。
求める精度に応じて、適切な飛行高度の設定を行いましょう。
③カメラ角度、明るさの調節をする
カメラ角度について
ジンバルピッチ=カメラの角度については、斜めにすることで精度が良くなるという検証結果もあるようですが、基本的には真下方向(-90°)で設定します。
斜め撮影で精度・効率アップ?
大和ハウスグループの株式会社フジタが国立大学法人山口大学と共同で独自のドローン測量手法「斜め往復撮影ドローン(RTK(※1)搭載型)」を研究・開発。
- ドローンの飛行時にカメラ角度を斜め(10〜30度)に設定
- 複数方向から撮影
- その後、専用ソフトによるデータ解析を行う
これらの方法で、標定点の設置と鉛直方向の撮影を省略しても、規定の測量精度が確保できるという検証結果が得られた。
標定点の設置に多くの時間をとられるというのが、ドローン測量の課題の1つでもあるので、精度とともに効率アップも期待できる。
明るさについて
測量実施日の天候や地面の色を考慮し、より鮮明な画像になるように明るさを調節します。
標定点(GCP)・検証点の測定、対空標識の設置
標定点と検証点(※)の設置場所を決め、目印となる対空標識を置きます。
※検証点とは
検証点は 3 次元データに付与した座標の精度を確認するために用いる点。
検証点と標定点の座標の差から、距離や高低差を算出する。
◆標定点・検証点設置手順
①標定点・検証点の設置場所を決める
測量範囲の標定点と検証点を置くポイントを決めます。
標定点・検証点の設置場所について
UAV を用いた公共測量マニュアル 概要版によると、標定点は、測量データの精度低下を避ける為、計測対象範囲の形状、比高が大きく変化するような箇所、地表面の粒度を考慮して配置するものと規定されています。
検証点は標定点の総数の半数以上を、測量範囲に均等に配置します。
標定点設置のより具体的な手順やポイントについては、こちらの記事で解説しています。
ドローン測量の標定点とは?仕組みや必要性・設置手順とそのポイントまで紹介!
②標定点・検証点の座標を計測し、対空標識を置く
標定点と検証点の座標を計測し、その場所に目印である対空標識をおきます。
座標を測定する方法
トータルステーションを使用したり、水平位置と標高を同時に得られるGNSS測量で行います。
【GNSS操作・手順例】
- GNSSアンテナの電源ON
- プロジェクトを作成
- 測量開始
のたった3ステップ。
3ステップで簡単測量動画→こちらの動画でも操作方法を紹介しています。
対空標識は風や通行車両などでズレてしまわないように、杭打ちなどをして、しっかりと固定しておきましょう。
ドローン撮影
設定した飛行内容で、ドローンを飛ばし撮影します。
より正確なデータ取得のため、高度とカメラ角度を変え、2回(2周)以上の撮影を行うこともあります。
撮影データ解析・作成
ドローンで撮影した画像・データを、専用ソフトで解析し三次元点群モデルを作成します。
所要時間は測量範囲次第。400m×200mで約2〜3時間程。
【データ解析・作成内容】
- 撮影写真を繋ぎ合わせる
- 点群データ作成
点群データとは?
物体や地形を「点の集合体」で表現したデータのこと。
- オルソ画像作成
オルソ画像とは?
空中写真は、建物や高い木々、また写真の中心から外側にいくに伴い「ひずみ」が大きくなる。このような状態では、ひずみの影響で写真 同士の接合部分にズレが生じてしまう。
このゆがみを修正した空中写真のことをオルソ画像と呼ぶ。
- 距離、面積、体積、角度、断面等各種解析などの計測
- 3Dデータ作成 など
【オルソ画像例】
【点群データ例】
出典:オルソ画像(オルソ画像とは・国土地理院)、点群データ(令和2年点群データ・国土地理院)
精度検証
ドローン撮影時の水平位置・標高といった座標値と、作成した3Dデータの精度確認作業を行います。
成果物の作成
地形・測量数値・ドローン飛行データ・作成した図面などを、クライアントの希望に沿った形にまとめます。
納品
成果物を納品します。
以上が一般的なドローン写真測量の手順となります。
ドローンレーザー測量の手順
続いて、ドローンレーザー測量の手順です。
手順は写真測量と同じなので、写真測量と異なる内容を解説します。
自動操縦飛行内容の設定
自動操縦アプリの設定内容は、基本的に写真測量と同じですが、レーザースキャナによって、推奨される設定数値(速度・高度など)が異なります。
なので、レーザー機器メーカーの情報を元に飛行内容や数値を設定したり、実際に自分で計算する必要があります。
標定点(GCP)、対空標識の設置
写真測量よりも標定点設置数は減らすことができますが、ドローンレーザー測量でも標定点の設置は推奨されています。
レーザー測量時は、三脚やテーブルを使い、対空標識自体を浮かせて置くと認識されやすいです。
撮影データ作成・解析
レーザー測量は3次元データを直接取得できるので、写真測量で行う、「撮影した写真を専用ソフト(三次元形状復元ソフト)で解析し、三次元点群モデルを作成する」という工程を省くことができます。
また、点の集まりであるレーザーデータは、写真測量の画像と違い、色情報を取得できないものもあります。
成果物として分かりやすく色をつけたい場合は、写真とレーザーが一体化した機体を選ぶか、写真測量用ドローンとレーザー測量用ドローンを別々に飛ばし、データを重ね合わせるといった方法があります。
写真測量とレーザー測量の手順の違いをまとめました。
★1.自動操縦アプリ
設定する内容がレーザースキャナごと異なるので、メーカーが提供している数値を参考 にしたり、自身で計算する必要がある。
★2.標定点設置
写真測量よりも、少ない設置数で測量精度が保てる。
三脚やテーブルなどを使い、対空標識を浮かせて置く(データ認識されやすい為)
★3.撮影データ作成・解析
写真測量と違い、三次元形状復元計算をする必要がない。
効率の良い手順・やり方
基本的なドローン測量の手順を見て、少しでも効率よく作業できないかなと思われた方もいると思います。
この章では、効率の良い手順や方法について解説していきます。
RTKとPPKによる作業時間の短縮
ドローン測量においては、正確なデータ取得のために標定点の設置が必要です。
ですが、事前に標定点の座標を測定し、実際の現場では対空標識を設置・回収を行わなければならず、全体の作業時間の3〜4割の時間を取られてしまうという課題も。
そんな標定点を削減、または設置することなく測量できる機体・サービスが登場しています。
それがこの下で解説する、「RTK」と「PPK」です。
標定点設置数の削減が可能
RTK-GNSS 搭載型 UAV を用いた空中写真測量における標定点数削減に関する検討 によると、RTK搭載ドローンを用いた測量において、標定なし(0点)では出来形管理要領に規定されている検証点精度を確保することは出来ないが、1点以上設置すれば精度を確保できることが確認できたという検証結果が得られました。
DJI正規取扱店であるセキドでは、下記のRTK機能を搭載したDJI製ドローンを販売しています。
- PHANTOM 4 RTK…..測量専用ドローン
- MATRICE210 RTK V2….点検・測量向けドローン
- Matrice300RTK….業界用ドローン
※記事作成当時の情報です。
標定点設置は任意、または不要になる場合がある
PPK測位技術が、出来形管理要領における「標定点の設置を省略できる方法」に追加されました。
令和2年3月に国土交通省が発表した『空中写真測量を用いた出来形管理要領(土工編(案)』の改定に伴い、PPKが「カメラ位置を直接計測できる手法」の一つとして認められ、標定点の設置を任意(設置不要)とすることができるようになりました。
Phantom 4 RTK に完全対応したPPKソフトウェア「PPKGo」の販売価格は約40万円です。
従来、標定点は5点以上、等間隔の設置が望ましいとされていましたが、RTK搭載ドローンやPKKサービスの登場で、作業時間の大幅な削減が期待できますね。
まとめ
この記事についてまとめました。
◆ドローン測量に必要な物と事前準備
【最低限必要な物】
- ドローン本体:どのような測量に使いたいか、機能や価格などを考慮し機体を選択する。
- タブレット:モニター代わりになるスマートフォンやipadなど。
- 飛行許可:飛行許可・承認が要る場合は、空港事務所または地方航空局に申請をする。
- 飛行許可証の用紙、またはそのコピー
- データ解析ソフト:ドローン測量で取得した3Dデータを解析、作成するためのソフト。
【事前準備】
- 機材準備:機体の点検やバッテリーの充電など。
- 保険加入:ドローンの使用頻度や補償内容により加入保険を選ぶ。
- 飛行許可申請:申請が必要な場合、国土交通省に申請する。
- 撮影日・予備日の決定と補助役の手配
- 関係者との調整:周辺住民や、必要であれば近隣の警察などにドローンを飛ばすことの説明や調整を行う。
◆ドローン測量の手順
1.現地調査(踏査)
【調査内容】
- 飛行エリアの確認
- 物理的障害物の有無の確認
- 通信状況の確認
- 付近の環境確認
- 標定点の配置場所の確認
2.自動操縦飛行内容の設定、自動操縦システムアプリに設定内容を登録する。
【自動操縦アプリ設定内容と手順】
- ドローンを飛ばすエリアを設定する
- 飛行させる高度、ラップ率を設定する
- カメラ角度、明るさの調節をする
3.GCP(標定点)、対空標識の設置
【標定点設置手順】
- 標定点・検証点の設置場所を決める
- 標定点・検証点の座標を計測し、対空標識を置く
4.ドローン撮影
設定した飛行内容で、ドローンを飛ばし撮影する。
5.撮影データ作成・解析
ドローンで撮影した画像・データを、専用ソフトを使い作成・解析する。
6.精度検証
7.成果物の作成
8.納品
◆効率の良い手順・やり方
【RTK搭載ドローン】標定点設置数の削減が可能。
【PPKサービス】標定点設置は任意、または不要になる場合がある。
従来、標定点は5点以上、等間隔の設置が望ましいとされていましたが、RTK搭載ドローンやPKKサービスの登場で、作業時間の大幅な削減が期待できる。
いかがでしたでしょうか。
ドローン測量の手順について、より理解が深まったかと思います。測量現場にドローン導入を考えている方は是非参考にしてみて下さい。