農業用ドローンを導入するにあたり、レンタルという方法を考えている方もいると思います。農業用ドローンは高額なため、実際使ってみることで有効性を確認したいという方も多いのではないでしょうか?
農業用ドローンレンタルにはさまざまなメリットがありますが、以下のような気を付けるべきポイントも存在します。
- 農業用ドローンの操縦ができることが前提
- 農薬散布する場合の申請は自分で行わなければならない
- ライセンスがないとレンタルできないケースがある
そこでこの記事では、
- 農業用ドローンをレンタルするメリットと注意点
- 農業用ドローンのレンタルを行っている会社
- レンタル以外の方法や費用比較
- 農業用ドローンを安く購入する方法
などについてお伝えし、最適な方法で農業用ドローンを導入するための方法について提案していきたいと思います。
この記事を読めば、農業用ドローンレンタルについての知識とあわせてレンタル以外の方法についての知識も得られ、さまざまな角度から導入方法を検討した上で最適な方法で農業用ドローンを導入することができるでしょう。
※ドローンによる農薬散布のメリットデメリットや導入までの流れの全体像は、こちらの記事にまとめています。
ドローンの農薬散布とは?メリットデメリットや始め方・導入の注意点
※農業用ドローンの選び方や導入費用はこちらの記事にまとめています
目次
農業用ドローンレンタルは特定ケースの単発利用がおすすめ
農業用ドローンのレンタル利用は、以下のような場合におすすめです。
- 保有しているドローンの急な機体故障時の緊急利用
- ライセンスを取得しドローン購入を検討している
- 買い替えを検討している
次の章で詳しく紹介しますが、ドローンのレンタルにはさまざまなメリットがあります。ですが、農業用ドローンは農薬散布など特殊な用途で使用されるため、通常のドローンよりも大型なうえ手続きが複雑。
また、農業用ドローンの操縦ができることが前提であり、そもそもライセンスがないとレンタルすることができない場合もあります。このようなことを踏まえると、上記のような単発の利用にはメリットがありますが、長期的な利用であれば、保有する圃場の広さに合わせて代行サービスもしくは購入を検討した方がいいでしょう。
農業用ドローンレンタルの6つのメリット
農業用ドローンのレンタル利用のメリットは以下の6つです。
1.初期投資がいらない
2.保険加入済みなのでリスクが少ない
3.気になる機種を試すことができる
4.使いたい時にだけ使える
5.メンテナンスが不要
6.維持コストがかからない
初期投資がいらない
農業用ドローンをレンタルした場合、支払う代金はレンタル料金のみ。当然ながらドローンを購入するよりは値段が安いというメリットがあります。
農業用ドローンを導入するにあたり一番のネックは購入費用という人は少なくありません。無人ヘリに比べれば安価とはいえ、農業用ドローンは100~300万円と高価なので、大きな設備投資と言えるでしょう。レンタルであれば、数万円から利用することができるので、導入時の大きな出費を抑えることができます。
保険加入済みなのでリスクが少ない
レンタルのドローンには保険がかけられており、保険料もレンタル代金に含まれているので、破損など万が一の事態が起こってしまっても全額負担しなければならないということはありません。レンタカーをイメージすればわかりやすいと思いますが、もし仮に事故が起きたとしても免責金額を支払えばいいということになります。
※レンタルする会社によっては保険がオプションの場合もあるので、契約時に確認しましょう。
気になる機種を試すことができる
農業用ドローンレンタルは、実際に自分の圃場で使用することができるので、購入前に性能を確かめることができるというメリットがあります。農業用ドローンは高価なものが多く、「購入を検討しているけれど実際に使用してから判断したい」という方にとって大きな判断材料になるはず。
必要な時にだけ使える
農業用ドローンレンタルは、必要な時にだけ使えるというメリットがあります。年に2~3回の農薬散布の時にしか使わず後は眠らせておくのであれば、機体を所有せずにレンタルした方が合理的という考え方もあるでしょう。
メンテナンスが不要
農業用ドローンレンタルを利用すれば、ドローンのメンテナンスが必要ありません。特に農薬散布ドローンの場合、農薬を入れたタンクの洗浄などメンテナンスに手間がかかりますが、レンタルを利用することでこの手間が省け、結果として農薬散布にかかるトータルの時間を削減することが可能です。
維持コストがかからない
ドローンをレンタルすれば、整備費用などの維持コストがかからないというメリットも。ドローンは精密機械なので、当然整備が必要です。場合によっては部品交換が必要になるケースもありますが、レンタルであればもちろん不要。
農業用ドローンをレンタルする場合に気を付けるべきポイント
農業用ドローンのレンタルには、以下の点に注意が必要です。
- 農業用ドローンの操縦ができることが前提
- 必要な時に在庫がない可能性もある
- 農薬散布する場合の申請は自分で行わなければならない
- ライセンスがないとレンタルできないケースがある
農業用ドローンの操縦ができることが前提
機体をレンタルする場合、自分で農業用ドローンを操縦できなければなりません。
農業散布用ドローンを飛ばすためには当然のことながら必要最低限の飛行実績や技能が必要ですが、通常のドローンよりも機体が大きいため、人によっては操縦に慣れるまでに時間がかかる場合もあります。
必要な時に在庫がない可能性もある
当然ながら、レンタルできる機体の在庫がなければレンタルすることはできません。ピンポイントで使いたい時にレンタルできない可能性もあるということは認識しておくべきでしょう。
農薬散布する場合の申請は自分で行わなければならない
ドローンを使って農薬等を散布する場合には、飛行開始予定日の10開庁日前までに国土交通省への申請が必要です。レンタルの場合も当然申請しなければなりませんが、レンタルする会社によってはオプション料金を支払えば代行してくれるところもあります。
ドローンの農薬散布における申請については、こちらの記事で詳しくまとめています。
農薬散布ドローンで必要な申請は3つ!手続きの流れや手順を徹底解説
ライセンスがないとレンタルできないケースがある
DJIの農業ドローンのレンタルの場合、DJI農業ドローン技能認定証名証を保有していないとレンタルできないケースがあるので要注意。ライセンスを取得するためにはドローンスクールにて講習を受ける必要があり、費用が20万円~ほどかかります。
農薬散布ドローンのライセンス(資格)については、こちらの記事で詳しくまとめています。
農薬散布用ドローンの資格(免許)の全知識。費用や必要有無などを解説
農業用ドローンのレンタルを行っている会社
農業用ドローンをレンタルできる会社はそれほど多くはありませんが、いくつか紹介しておきましょう。
Aerial Works
DJI AGRAS MG-1
セット内容:ドローン本体(プロポ含む)、充電器、バッテリー×1
価格:スクール卒業生 19,800円(24h)/一般 29,800円(24h)
DJI AGRAS T20
セット内容:ドローン本体(プロポ含む)、充電器、バッテリー×1
価格:スクール卒業生 29,800円(24h)/一般 39,800円(24h)
※対象ライセンス証保有者のみ
ドローンレンタル
DJI MG-1S Advanced
セット内容:製品一式(機体、送信機、その他)、モバイル端末(iPad)
価格:300,000円(3日間)
日本環境テクノ
DJI AGRAS MG-1
価格:スクール卒業生 19,800円~(24h)/一般 29,800円~(24h)
DJI AGRAS T20
価格:スクール卒業生 29,800円~(24h)/一般 39,800円~(24h)
※UTCオペレーター資格者のみ
ドローン農薬散布代行サービスという方法もある
機体を購入せずに農業用ドローンを利用するには、レンタル利用の他にも代行サービスを利用するという方法があります。
ドローンによる農薬散布を代行サービスに委託するメリットは、以下の3つ。
- ドローン飛行に関する申請などをすべて代行業者がやってくれる
- ドローン操縦のための練習などの手間が省ける
- ドローンのメンテナンスの必要がない
代行サービスには、どこに委託するかによって2つのパターンがあります。
1.民間業者のドローン農薬散布代行サービス
2.農協のドローン農薬散布代行サービス
民間業者のドローン農薬散布代行サービス
ドローンによる農薬散布は、作業効率の面でメリットが多く注目を集めていることから、農薬散布代行サービスを行う民間業者も増えています。農薬散布するだけでなく、データ管理や薬剤プランニングなどのサービスもあわせて提供するなど、他との差別化を図る業者も。
農協のドローン農薬散布代行サービス
農薬散布用のドローンを導入し、農薬の空中散布を請け負う支援事業を始める農業協同組合も存在します。以前からヘリコプターによる農業散布を請け負う農協はありましたが、「地形によっては散布が困難な場合がある」「多額の費用がかかる」「タイミングを指定できない」などの理由で利用できない農家も多いのが現状です。
そこで、ドローンを導入し、実証に取り組む流れが広まりつつあるのです。ただし、この農協による取り組みは広がりを見せているものの、どの県や地域でも行われているわけではないので確認が必要です。
まずは管轄の農協に確認するのがおすすめ
管轄の農協でドローン農薬散布の支援事業を行っている場合には、農協を利用するのがおすすめです。なぜなら、管轄の農協であれば地域ごとの作物や圃場環境についても熟知していおり、スムーズに作業を進めることができるから。また、農協職員がドローン操縦を行う場合などについては民間の代行サービスよりも価格が安い場合が多いので、コストを抑えられる可能性が高いです。
農薬散布の代行サービスについては、こちらの記事でより詳しく解説しています。
ドローン農薬散布は代行サービスに頼むべき?メリットや費用比較も
農業用ドローンレンタルと代行サービスでは費用に大きな差はない
農業用ドローンをレンタルする場合と代行サービスを利用する場合の、作地面積に応じた費用コストを比較してみたいと思います。
仮に、100万円ほどの農業用ドローンのレンタルが一日50,000円(20haの場合は3日間レンタルで多めに見積もって300,000円と仮定)、代行サービスは10aあたり2000円として年3回散布することを想定して計算すると、以下のようになります。
※()内は、100万円の機体を購入した場合コスト回収までに何年かかるかを示したもの。
レンタルは、
- 自分で操縦しなければならない
- 申請などの手続きの負担がある
- 会社によって費用の差が大きい
- ライセンスがないとレンタルできない場合もある
ということに加え、代行サービス利用との間で費用に大きな差がないことを考慮すると、5ha以内の圃場における定期的な利用であれば代行サービスの方がメリットが大きそうです。また、5haを超える圃場を保有している場合は、ドローンを購入した方が費用を抑えることができるでしょう。
農業用ドローンのシェアリングサービス
レンタル・代行の他にも、農業用ドローンとバッテリーシェアリングをパッケージ化して提供するサービスも存在します。
農作業の省力化や効率化を可能にするスマート農業は注目を集めてはいるものの、先端技術の導入は農業コスト負担を増加させるという課題があります。そこで、地域内シェアリングによる機器の有効活用を行うことで、新規にスマート農業技術を導入する費用削減及び提供者の生産費削減を行っていこうというのがこのシェアリングサービスです。
農業用ドローンによる農薬散布は、散布面積が拡大するほど多数のバッテリーが必要になるため利用者にかかる経済的負担も大きいのが難点。このサービスでは、バッテリーをシェアすることでドローンの導入費用削減や可動の効率化を実現しています。
レンタルと代行サービスを掛け合わせたような形になるわけですが、利用者としては代行サービスを依頼するのと変わらないメリットがあります。費用をより抑えることが出来れば、有効な手段となるでしょう。
補助金を利用して農業用ドローンを安く購入する方法も
農薬散布ドローンは、レンタル以外にも安く導入できる方法があります。それはさまざまな補助金を利用すること。
もし価格の面だけでレンタルを検討しているのであれば、補助金を活用して購入するというのも一つの方法です。
主な補助金は以下の通り。
地域独自の助成制度が使える場合も
地域によっては、ドロ-ン導入に独自の助成金制度を用意しているところもあります。農薬散布ドローンの導入を検討する際には、まず地域のJA、自治体に相談してみましょう。
農業用ドローンの補助金については、こちらの記事でより詳しくまとめています。
【2022年最新】農業用ドローン向け補助金4種類。個人利用も可!
まとめ
農業用ドローンのレンタルについてご紹介してきましたが、もう一度大まかな要点を確認しておきましょう。
- 農業用ドローンレンタルは以下のような単発利用がおすすめ
☑保有しているドローンの急な機体故障時の緊急利用
☑ライセンスを取得しドローン購入を検討している
☑買い替えを検討している
- 農業用ドローンのレンタル利用のメリットは以下の6つ。
1.初期投資がいらない
2.保険加入済みなのでリスクが少ない
3.気になる機種を試すことができる
4.使いたい時にだけ使える
5.メンテナンスが不要
6.維持コストがかからない
- 農業用ドローンレンタルの注意点は以下の4つ。
1.農業用ドローンの操縦ができることが前提
2.必要な時に在庫がない可能性もある
3.農薬散布する場合の申請は自分で行わなければならない
4.ライセンスがないとレンタルできないケースがある
- ドローンを保有せずにドローン散布を行いたいなら、代行サービスという方法もある。
代行サービスは以下の2種類。
1.民間業者のドローン農薬散布代行サービス
2.農協のドローン農薬散布代行サービス
まずは管轄の農協に問い合わせ、農薬散布支援事業を行っているかどうか確認してみるのがおすすめ。
- 農業用ドローンレンタルと代行サービスでは費用に大きな差はなく、5ha以内の圃場における定期的な利用であれば代行サービスの方がメリットが大きいと考えられる。5haを超える圃場を保有している場合は、ドローンを購入した方が費用が抑えられる。
- 補助金を利用して農業用ドローンを安く購入する方法もある
農業用ドローンレンタルはさまざまなメリットがある半面、操縦はもちろん申請などの負担もあるため、基本的に『購入を前提としたお試し』と考えるのが無難でしょう。機体を所有せずに作業の省力化や効率化を考えるなら、代行サービスなど他の方法も検討してみることをおすすめします。
本記事で得られた知識を元に、最適な方法で農業用ドローンが導入され、あなたの圃場においても有効に活用されることを願っています。